松本駐屯地の周りを走っている36名の隊員がいた。全員が64式小銃を抱えて走っていた。
早苗「うぅ・・・」
早苗は列からどんどん置いて行かれていた。それに気づいた咲夜が傍により手を貸していた。
咲夜「大丈夫?もう少しだから・・・」
森和気「幽香!美鈴!お前らチームの仲間を無視して前に行くのか!?」
特殊作戦群屈指の鬼と呼ばれている森和気教官は、幽香と美鈴に対して怒鳴っていた。
森和気「早苗!お前が遅れるからみんなに迷惑が掛かっているんだぞ!?お前のミスはチーム全体のミスだ!!走れ!!」
咲夜「(そんな言い方は無いでしょうが・・・)」
64式小銃の重量は4.300gと通常なら軽いのだが、隊員はすでに43キロも走っている。訓練は、レンジャー以上にキツイものである。何とか午前の訓練が終了した。隊員全員がその場で倒れて寝転んでいた。まともに立っているのは、教官ぐらいである。
森和気「このぐらいで根を上げていたら持たないぞ・・・」
影涼「お前が厳しすぎるんだよ・・・ここは、特殊作戦群じゃないぞ・・・ここは、偵察作戦群だぞ」
森和気の隣にいる同じく教官の影涼は、呆れた表情で名簿に何やら書き込みをしていた。偵察作戦群の教官は全員で18名おり、中でも森和気は、屈指の鬼教官と呼ばれている。
森和気「場所は関係ない、とにかくだお前が受け持っているチームの育成くらいちゃんとしろ!あの女・・・早苗だっけ?あいつが足を引っ張ているんだ。お前がちゃんとしないとすぐに飛ばされるぞ」
森和気は、ポケットから煙草を取り出して喫煙所に向かった。偵察作戦群は4人1チームであり各チームには専属の教官が2名ついているのだ。午前の訓練は、全体で実施され午後からは各チームに分けて訓練が開始されるのだ。
午後1時半ごろになり各チームの訓練が開始された。
影涼「第七偵群整列!」
咲夜と早苗・幽香・美鈴は装備一式を装備して整列した。
咲夜「咲夜以下3名整列完了しました!」
第七偵群の隊長は咲夜である。偵察作戦群には第一偵群から第九偵群がある。ちなみに第一偵群の教官は森和気である。
影涼「さてと・・・いつも言っているが発言を許可していないわけじゃないから楽にしてくれて構わないよ。それじゃあ慧音さん今日の訓練説明をお願いします」
影涼の他に慧音も第七偵群の教官をしている。同じ特殊作戦群の人間からは、甘すぎる教官コンビとも呼ばれている。当たり前だが馬鹿にされているのだ。しかし、二人は気にするどころか無視している。今日の訓練は、格闘訓練と射撃訓練である。偵察作戦群には決まった格闘術は無い、個人で習って訓練にあたるのがほとんどである。なので自衛隊格闘術率が多い、中にはほかの国の格闘術を使う隊員もいる。
咲夜と幽香・早苗と美鈴は自衛隊格闘術を使い訓練をしていた。
午後3時から射撃訓練が実施された。4人は60メートルの距離にある標的に向けて射撃を開始していた。隊員の役割によって89式小銃に装着されている装具は違う、咲夜は近接格闘が役割で89式多用途銃剣を装着している。早苗は、狙撃なので89式小銃用照準補助具を装着しておりマガジンは狙撃の邪魔にならないように20発マガジンにしている。幽香は分隊支援なので89式小銃ではなくMINIMIを使用している。美鈴は、咲夜と同じ装具を装着している。当たり前だが二脚は標準装備なのでそのまま装着している。
射撃訓練は、単発と3点撃ちのみをしている。連射は緊急事態以外はしないのがふつうである。連射しまくるのは映画とドラマの世界の話である。あくまでアサルトライフルはフルオートもできる銃であってフルオートする銃ではない。ちなみに機関銃は、フルオートができる銃であり弾幕を張る銃である。はっきり言うと状況次第だが・・・
4人は、午後5時まで射撃をしていた。
影涼「訓練終了!整列!!」
4人は、教官の声と共に整列を始めた。訓練が終わった後は、自由時間である。
早苗「今日も疲れましたね」
咲夜「本当ね・・・朝の訓練が無ければましなのだけれども・・・」
幽香「それは言えているわね」
美鈴「確かに・・・」
4人は、装備を外しながらシャワー室に向かった。廊下を歩いていると途中影涼教官と森和気教官が何やらもめていた。森和気は、4人が近づいてきたのを確認するとどこかへ行ってしまった。
早苗「影涼教官どうかしましたか?」
咲夜「また、喧嘩していたのかしら?」
影涼と森和気はいつも喧嘩をしている。実際は森和気の一方的な事で影涼は相手にしていない、過去に何があったかは何も話してくれないので原因は不明なのだ。
影涼「いつものことだよ・・・それよりも訓練お疲れ様、また明日も頑張ってね」
影涼は、笑いながら言って教官の待機室に入って行った。
4人は、敬礼をしてからシャワーを浴びに行った。
慧音「最近、私たちの印象は悪くなる一方だな」
慧音は、パソコンに打ち込み作業をしながら笑って言った。
影涼「森和気が勝手にしていることだろう?気にするな、人間はどこでも敵を作りたがるんだからな」
サイダーを飲みながら影涼は、慧音の作業を見ていた。
慧音「いつも言っているが、炭酸の持ち込みは禁止されているぞ」
偵察作戦群の自販機には、微炭酸はあるが炭酸は置いてないのだ。持ち込みも禁止されているが、影涼は秘密裏に持ち込んでいる。三度の飯より炭酸飲料がモットーである。
影涼「この部屋には、私たちしかいませんよ?」
慧音「まぁ、私は何も言わないが・・・」
パソコンの画面に映し出されているのは、4人の訓練データがぎっしりと表示されていた。体力・射撃の腕・潜入能力などなど
影涼「体力面以外なら全員優秀だけどな・・・」
早苗の体力項目だけAからDの判定でC判定だった。そのほかはA判定だが・・・
慧音「体力向上訓練を組み込んだほうがよさそうだな・・・また、森和気に嫌味を言われるぞ」
影涼「いや・・・必要ない、神奈子幕僚長の指示だ。第七偵群は、十分実戦に投入できる基準に達しているからな」
慧音「総合判定の話だろ?第一偵群と第七偵群だけが総合判定では、実戦に投入できる基準に達しているが、個人判定だと第一偵群のほうが優秀だぞ?」
発足されてまだ、2年しか経っていない偵察作戦群は、特殊部隊としては、まだ赤ちゃんに等しいのだがそれを補うために特殊作戦群の隊員を教官にしているのだ。
影涼「あぁその優秀どうのこうのの話だけれども、さっき森和気からな・・・」
幽香「ごめんみんな・・・先に行っといて」
咲夜「今日もなのかしら?」
幽香「先生に呼ばれているのよ」
幽香は、基地内にある精神保健室と書かれた部屋に入った。風見幽香は、一度だけ訓練中に事故を起こしたことがあるのだ。夜間山中訓練時に擬似的にコンバットストレスを体験する訓練を行ったのだが、その際に、重度のストレスが幽香を襲い、銃を乱射するという出来事が起きた。幸いなことに、空砲なので怪我人はいなかった。もちろん、重大な事故に変わりないので始末書を50枚書いた。教官である影涼と慧音が・・・幽香の場合は、被害者扱いされた。
村田「そこに座ってくれたまえ」
心理カウンセラーでもあり特殊作戦群の隊員の村田は、カルテを取り出しながら言った。
村田「さてと・・・昨日の検査結果がでたよ」
幽香「もう、通う必要ないよ・・・じゃなかったら殴るわよ?(笑顔)」
村田「脅しはいいから・・・君の言う通り通う必要はないよ、おめでとうさん、村田診療所最初の患者であり最初の退院者だ。」
幽香「あら、よかったわ」
幽香は、ほっとした表情で立ち上がり部屋を出た。幽香は、私服に着替えてから外で待機している車に乗り込んだ。中には、私服姿の早苗・咲夜・美鈴がいた。
美鈴「以外に早かったのですね」
幽香「もう、通う必要はないって」
早苗「そうなんですか?退院おめでとうございます」
幽香「ありがとうね」
咲夜「そろそろ出発しようかな・・・早苗、出していいわよ」
早苗が運転するカローラアクシオは、松本駐屯地から国道296号線を南下して二子橋東を右に曲がりさらに3ブロック先の曲がり角を右折してとある雑居ビルに到着した。車を駐車場に止めて4人は、5階建ての雑居ビルの5階に行った。
咲夜「お客様まだ当店は開店していないのですけども?」
ドアの前に影涼と慧音がいた。
慧音「もうすぐ開店するんだろ?」
早苗「待っていてくださいね」
早苗は、扉の鍵を開けて中に入った。中には、様々なお酒が並べられていた。いわゆる、ここはバーテンダーなのだ。偵察作戦群の隊員は何らかの形で、このように周りに溶け込んで活動をしている。咲夜がたまたまバーテンダーに必要な3つの資格を持っているので開店しているのだ。ちなみに、日本では資格がなくてもバーテンダーになることができるが、実力を証明する際に取る人がほとんどである。
咲夜は、バーテンダーにふさわしい服装に着替えてお酒を作り始めた。ほかの三人も着替えて咲夜の手伝いをしていた。ちなみに店名は、時の奇跡
咲夜「慧音さんのいつも頼むサムライです」
慧音「ありがとう」
サムライは、日本酒をベースにして作られるお酒である。日本酒・ライムジュース・レモンジュースなので爽快感が強く、好む人は好むだろう。
早苗「影涼さん、どうぞ」
影涼「待ってました!」
出されたのは、ラムネである。お酒を全く飲まないかわり炭酸は結構な量を飲む、早苗もお酒は飲めないのでジュースを出すくらいである。そもそも、お酒が飲めない人がバーテンダーに来ること自体ないので、ジュース類はすべて、影涼が飲んでいる。
ちなみに、基地の外にいるときは上下関係は無い、身分を隠すためとかそんなのではなく歳も近いし仲良くしようという考え方からである。
幽香「で?」
影涼「で?」
幽香「こっちが聞いているのよ?こんなに早くここに来るという事は、何か大事な話があるんじゃないのかしら?」
幽香は、グラスを拭きながら素っ気なく言った。
影涼「あらま、ご名答・・・実は大事な話が急に入ってきたのですよ」
美鈴「大事な話?」
慧音は、鞄から4人に紙を一枚ずつ渡した。渡し終えたあと影涼は説明をした。
影涼「今から一週間後に第一偵群と実戦演習を行うことが今日決定された。」
咲夜「廊下でもめていたのはそういう事なの?」
影涼は頷き説明を続けた。
影涼「演習は市内で行われる。偵察・工作・潜入の3つの要素がすべて入っている。市内の中に、外国からの工作員が破壊活動を行おうとしている。それを見つけ阻止するのが演習内容だ。武器使用は禁止、その他は制限なしだ」
早苗「市内って・・・やっぱり」
影涼「そうだ、民間人がいる中での演習だ。失敗は許されないぞ?」
咲夜「なんで、私たちと第一偵群が演習をしないといけないのよ?」
慧音「森和気が勝手に進めてきたのよ」
影涼「偵察作戦群内では、第一第七が今のところ同じくらいのレベルだから、圧倒的な力の差を見せつけたいんだろうな・・・この演習の結果次第では、偵察作戦群最初の実戦部隊として日々どこでも行動することが可能になる」
咲夜「あの鬼教官め・・・」
咲夜を含む4人は、森和気がとてつもなく嫌いである。
慧音「演習にあたって私たちが指揮をするわ」
早苗「影涼さんと慧音さんが指揮官という事ですね」
美鈴「第一偵群は気の毒だな」
咲夜「鬼が指揮官だなんてね(笑)」
影涼「とにかく、了承しておいてくれ・・・さてと、伝えるものも伝えたしお勘定」
咲夜「慧音さんは340円です。影涼は大サービスで9999円で・・・」
影涼「ほぼ1万じゃないか!?私は知っているぞ?私が飲んだラムネは120円で仕入れていることを・・・」
咲夜「な!?」
影涼「ちゃんと戸締りはするんだな・・・」
咲夜「カギは閉めたはずよ!?」
驚いている咲夜を横目に影涼は指先で喚起ダクトを指さした。
影涼「ちゃんと戸締りはするんだな・・・はいっということでまた明日」
影涼は慧音の分も払って二人は店を出た。
早苗「あの・・・咲夜さん?」
咲夜「・・・次は、ちゃんとぼったくってやるわよ!!」
幽香「犯罪だからやめなさい・・・」
店を後にした二人は慧音のアクアに乗って帰路に着いた。
慧音「不法侵入とは・・・よくやるよ」
影涼「入れる場所があったから入っただけだ・・・それに、ぼったくられてはお財布が泣いてしまうよ」
慧音は笑いながら運転をしていた。
慧音「ちなみに、演習の話だが・・・見込みはあるのか?」
影涼「教官である私たちが教え子を信じなくてどうするのですか?」
慧音「そうだな・・・愚問だった」
影涼「気にしないでください・・・それに、彼女たちならきっと成功に導きますよ」
影涼は、外の風景を見ながらフッと笑った。