早苗「幽香さん」
早苗・霊夢・神奈子は、松本駐屯地に到着してすぐに、幽香がいる部屋に入って行った。
霊夢「何かあったの?」
幽香「ついさっき、こんな手紙が届いたのよ。差出人は不明よ」
幽香は、一枚の紙を早苗に手渡した。霊夢と神奈子も横から手紙を覗き込んだ。手紙には数字が乱雑に書かれていた。
3251511283139412414210241332493・444341#14・124221#81・7143
霊夢「暗号かしら?」
早苗「一体、何を意味しているのでしょうか?神奈子様は見たことがありますか?」
神奈子は、腕を組みながら首を傾げた。
神奈子「いや・・・このパターンの暗号は確か・・・いや、おかしいぞ・・・」
神奈子は、1人でブツブツと言いながら、部屋を後にした。
霊夢「何か知っているのかしらね?」
早苗は、暗号と思われる数字をもう一回読み直していた。
影涼「しまった・・・」
影涼は、ハンドルを握りながら舌打ちをした。慧音も同様に舌打ちをした。ラーンチーの入り口付近で、警察が検問をしていたのだ。中国からの無断入国の為、厄介な事になる一方、敵に居場所を知らせる羽目になるため、2人は焦っていた。検問まで200メートル、影涼と慧音はどこか、道がないか探していたが、残念な事に検問まで一本道だった。さすがに、警察の前でUターンをするわけにもいかないので、このまま、進むしかなかった。
慧音「影涼、どうするんだ!?このままだと・・・」
影涼「分かっていますよ!」
影涼は、辺りを見渡したが、車を乗り捨てれるような場所も無く、ゆっくりと検問に近づいて行った。
警官1「お疲れさまです。この先、交通事故が多発しています。貴方達は観光客ですか?(ベンガル語)」
影涼は、覚えている唯一の英単語で、自分は観光客だ。言葉が分からないっと何とか警官に向かって言った。警官も察したのか、英語で話し始めた。
警官1「交通事故が多発していますので運転には注意してくださいね」
警官が、右手を水平に上げて行っていいですよと合図を出した。影涼は、サンキュウーと言って検問を通過していった。
慧音「あ・・・危なかったな・・・」
慧音はホット一息した。影涼も安心したのか、座席に深く座り込んだ。どうやら、日本で言う交通安全運動みたいなもので、検問を設置してドライバーに注意を呼び掛けているらしかった。
慧音「パスポートはありますかって聞かれなくてよかった・・・あの警官の言ったことは分かったか?」
影涼「運転注意してくださいねしか分からなかった。まぁ、とりあえず無事にラーンチーに入ることができましたね。このまま、ラーンチーを出てラクナウ・ジャイプルそして、パキスタンに入国しましょう」
慧音「不法入国だけどね」
車を走らせること3時間、そろそろお腹が空いてきたので、影涼は人目につかないところに車を駐車して、老舗の雰囲気を醸し出している一軒の店に入った。中に入ると、軽快なジャズが流れていた。店の中は狭く細長かった、カウンター席とテーブルの席が3つ、壁に沿う形であった。影涼達は、カウンター席に座った。
店主「いらっしゃい、何にするんだ?」
黄金色に日焼けして、頭にターバンを巻いた50代の店の者が注文を、英語で聞いてきた。もちろん、影涼は英語が話せないので、メニュー表を指さして注文をした。男は、怪訝そうな表情で厨房に向かった。
慧音「怪しまれてないか?」
慧音は、影涼の耳元でこそっと言った。
影涼「そうですね」
影涼は、周りをチラッと見た。カウンターの奥には、煙草をふかしている男が1名、テーブル席には酒を飲んでいる男が4人いた。雰囲気はかなり悪かった。客も、店員と同じように怪訝そうな表情でじろじろと影涼と慧音を見ていた。慧音は、思わず影涼の服の裾を掴んだ。
影涼「料理はお持ち帰りにした方が良さそうですね」
店主「お待ちどう」
男が持って来たのは、パンの上にカレーがついているシンプルな料理だった。影涼は、何とか片言の英語で持ち帰りにしてもいいかと聞いた。男は、嫌な顔をして店の奥に入って行った。
慧音「影涼!」
慧音が、悲鳴に似た声で影涼を呼んだ。影涼は周りの異変に気がついた。店の入り口に、大きな刃渡り20センチのナイフを持った男と拳をパキポキと鳴らしている男が2人、入り口を塞いでいた。身長は170センチだった。そして、テーブル席に座っている男4人も立ち上がり影涼と慧音に近づいて行った。
店主「箱に詰めたぞ」
料理を箱詰めにして、影涼の前に置いた。影涼は、黙ってお金を置いて店を出ようとしたが、そこに180センチの大男が立ちはだかった。影涼と慧音は、避けて出ようとしたが大男は、両手でそれを阻止した。
大男「待ちな、兄ちゃん。俺たちと遊ばねえか?」
ニヤニヤと大男は、影涼を見下していた。しかし、大男の言語がヒンディー語の為、何を言ってるのかわからなかった。
影涼「どいてくれないか?」
影涼は、日本語で言った。大男は、どうやら日本語を理解しているらしい、次は日本語で話し始めた。
大男「俺たちと遊ばないか?」
影涼「断る・・・こっちは、忙しいんだよ」
大男「その女・・・中々の美人だな」
影涼は、慧音を守るようにシステマの構えを取った。
店主「動くな!!」
影涼の頭に向かって銃を突きつける店の男、どうやら、この店とあの大男達は仲間のようだ。影涼は、ゆっくりと構えを解いた。慧音の手を握り会話をした。
影涼「(目立つことは避けたいが・・・仕方がないです・・・慧音さん、1、2、3で床に伏せてください。行きますよ・・・1、2、3!!)」
慧音が床に伏せるのと同時に、影涼は店主が持っている銃を掴み、素早く武装解除をした。スライドを外し銃が使えないようにして、大男の膝を蹴り、大男の重心が崩れた瞬間、膝で大男の顔面を蹴り上げた。近くにいた3人の男が一斉に影涼に向かって襲い掛かって来た。影涼は、カウンター席に置いてあった砂糖の入った容器をすぐ近くにいた男に向かって投げ付けた。男の顔面に命中してそのまま倒れた。残りの二人は、影涼の上半身・下半身を分担して掴み掛かった。影涼は、カウンター席に後頭部をぶつけて意識がもうろうとしたが、左膝で、下半身にしがみついている男の股間を蹴り上げた。嫌な感触と共に、男は悶絶して股間を押さえて床に転がった。入り口にいた男達も、やばいと思ったのか、影涼に向かって襲い掛かって来た。影涼は上半身に掴み掛った男から繰り出されるパンチを顔面に食らっていた。しかし、影涼は苦痛表情を浮かべなかった。
慧音「(すごい・・・すべて衝撃を受け流している)」
慧音は、影涼の方をチラッと見た。影涼は、全ての攻撃を食らっているが、衝撃を受け流していた。いや、衝撃を分散していた。分散することで、体に直接かかる負荷を軽減していたのだ。影涼は、男に向かって右手でパンチをした。男の顎に命中し、男は一瞬ふらっとしたがその隙を影涼は見逃さなかった。すぐに、パンチした右手をそのまま、男の首に向かって振り下ろした。手首の力で、男を床に叩きつけた。男を片づけて起き上がった瞬間、入り口にいた男が突進して来た。その後ろから、ナイフを持った男がゆっくりと近づいてきた。影涼は、壁に叩きつけられた。影涼は、しがみついている男の背中を肘で攻撃をしたが、男は腕に力を入れて影涼の胴体を絞めつけていた。ナイフを持った男は、影涼の首に目掛けてナイフを突き刺そうとした。
慧音「やめろ!!」
慧音は、ナイフを持った男の膝裏を蹴った。男は、不意を突かれてその場で膝をついてしまった。影涼は、にやりと笑い、しがみついてくる男の股間を蹴り上げ、男の締め付けが緩んだ瞬間に、男の首を絞めに掛かった。男は暴れていたが、段々と抵抗も無くなった。気絶したのを確認した影涼は、男を絞めていた腕を解いた。ナイフの男は慧音がすでに倒していた。そして、影涼は、カウンター席に置いてある料理の入った箱を手に取った。
影涼「これを返すよ」
カウンター席の奥で、恐怖のあまり座り込んでいる銃を突き付けていた店主に向かってスライドを投げて返した。影涼と慧音は店を出て、駐車していた車に向かった。
慧音「無茶をしないでよ!私だって、戦えることぐらい知っているでしょう!?」
影涼「あの狭いところで、2人が同時に行動したら邪魔でしょ?だから、床に伏せてって言ったのですよ」
慧音「もう・・・って、影涼!血が」
影涼の額には血が出ていた。どうやら、切っていたようだ。傷自体は軽い切り傷だった。慧音は、ポケットからハンカチを取り出し血を拭きとろうとしたが、影涼はその場で立ち止まった。慧音は、影涼の目線の先を見た。
???「見事だったよ・・・お前は民間人じゃないな?」
影涼と慧音が駐車した車の近くで煙草をふかしている男がいた。その男は、さっきの店でカウンターの奥にいた男だった。身長は170くらいで、ジーパンにハワイ風のTシャツを着ており、肌は黄金色に日焼けをしていた。
???「あの動き・・・私は見たことがあるぞ・・・あれはシステマ・・・ロシア武術だな?そしてアジア系の顔つき日本語・・・さしずめお前は、武術を習得した警官?もしくは・・・自衛官」
影涼と慧音は身構えた。男は、笑いながら両手を上げた。
???「私は、敵じゃない・・・ただの軍事オタクさ」
男は笑いながら、近くに駐車していたバイクにまたがりエンジンを掛けてどこかへと行ってしまった。
影涼「・・・何者なんだ・・・あの男は」
慧音「私達の事を、自衛官って見破ったわね・・・しかし」
影涼「えぇ・・・あの男、恐らく兵士でしょう・・・どこの所属かは分からなかったが・・・日焼けのおかげで顔つきがいまいち分からなかった」
慧音「影涼、早くここを離れた方がいいんじゃないか?」
影涼「そうですね、お昼ご飯はこの箱に入っていますし、食べながらラクナウに向かいましょう」
すぐに車に乗り込み走りだした。運転している最中の影涼の額の血を慧音は、ハンカチで拭きとっていた。
神奈子「貴女が送ったのではないのね?」
神奈子は、松本駐屯地の駐車場で誰かと電話をしていた。
???(当たり前よ、それに、その暗号は本当にあれだったの?)
神奈子「あぁ、間違いない・・・あの暗号は、私とお前、そして候補生しか知らないはずの暗号だ」
???(分かったわ、とにかく暗号は解読して、咲夜・早苗・美鈴・幽香だっけ?その娘達にも伝えなさいね)
神奈子「まて!どうして、咲夜達の名前を知っているんだ!?おい!」
通話が切れる音を確認した神奈子は、携帯をポケットに閉まった。
神奈子「(どうせ、日本に帰国して情報管理室で記録を見たのでしょうね・・・まったく、帰国したなら顔くらい見せなさいよ)」
神奈子は、クスッと笑いながら早苗達のいる部屋に向かった。