防衛省装備施設本部に呼ばれた影涼と慧音は、制服で中に入って行った。市々谷駐屯地内に設置されている自衛隊の装備品・駐留軍の使用施設や区域の取得など開発から事務的なことまでしている機関である。
慧音「私・・・初めて入るぞ・・・」
影涼「何で防衛省じゃなくてここなのか・・・」
慧音「余程、大事な話があるんじゃないのかしら?幕僚長も陸将も呼ばれているみたいだし」
陸自の制服姿で入っているので通り過ぎる研究員たちは、なぜか嬉しそうにしていた。もちろん、2人を誘導しているのは、ここの職員である。小さな会議室の中に入ると、制服姿の神奈子とレミリアがいた。
影涼「神奈子幕僚長!レミリア陸将!」
慧音「ご無沙汰しております!」
2人は、ビシッと敬礼をして挨拶をした。
神奈子「元気そうでよかった」
レミリア「先日の演習の結果はすでに聞いているわ、おめでとう」
田中「はいはい、おしゃべりは終わりだ」
後から、防衛大臣の田中義信が入って来た。4人は、田中の前に横一列で並んで敬礼をした。影涼・慧音・村田の3名を処分したのは、この田中である。当初は、自衛隊をやめさせる方向で発言していたが、神奈子・レミリアの働きで何とか教官勤務に免れたのだ。もちろん、田中は3人の事が気に食わないのだ。
田中「さてと、神奈子幕僚長にレミリア陸将には忙しい中来てもらってすまない」
神奈子「影涼も慧音も忙しい中来ておりますよ?田中大臣」
田中は余程2人の事が嫌いなようだ。
田中「そうだったなぁ・・・ヘマをしたからなぁ」
慧音は、田中大臣を睨むように拳を握りしめた。
田中「来てもらったのは、君たちが担当している第七偵群を偵察作戦群最初の実戦部隊にしようと思う」
影涼「では、特別行動権が第七偵群に適用されるのですね」
田中「そうだ、偵察作戦群の名に恥じない働きを期待しているよ」
個人装備を開発担当している開発者たちが、2名入って来た。大き目の段ボールを抱えて。机の上に黒い手にすっぽり収まる棒が出された。
影涼「特殊警棒?」
田中「ナイフを街中で携帯されても困る・・・これを彼女たちに常に持たせておけ・・・それと」
黒いスパッツと半袖の体操服のようなものが4着出された。
田中「活動する際は、これを着て任務にあたってくれ」
慧音「・・・なにこれ?」
田中「液体ボディアーマーだよ」
影涼「こんなものを、防衛省では開発していたのですか?」
田中「アメリカはこの計画を2007年には終了し特殊作戦軍に継承されたが・・・我々はアメリカが開発した物より優れた液体ボディアーマーを開発したのだ」
液体ボディアーマーの原理は、ケブラーのようなアラミド繊維に流体を染み込ませて加工する。ポリエチレングリコールの流体に液体中に固体のシリカ粒子が分散して入っているもので、普段はただの布と変わりないが、銃弾などの衝撃エネルギーが普段の粒子の持っている反発力を超えると、ハイドラクラスターと呼ばれる塊ができる。これが防弾の機能を果たす。衝撃エネルギーが散免されると元の状態に戻り、ただの布レベルに戻る。わかりやすく言うと片栗粉を水に溶かすと、普段は液体なのに握ると手で掴めるような感じである。アメリカでは、ソルジャー2025と言う全身に装着するタイプらしいが、防衛省では服の内部に着るタイプを開発した。
慧音「こんな薄いので大丈夫なのか?」
田中「小銃レベルの運動エネルギーなら耐えられる。」
そのほか、高性能の通信機などの装備品を渡された。
田中「以上を渡してくれたまえ・・・任務は、神奈子幕僚長を通じて連絡する・・・解散」
用も終わり、4人は防衛省装備施設本部内にある休憩所で一休みをしてから帰ろうとした。自販機で4人は、同じコーヒーを買って飲んでいた。
神奈子「村田は元気にしているか?」
影涼「仕事をおもっきり楽しんでいますよ」
神奈子「はは、だろうな」
レミリア「・・・あなた達にはいつも感謝しているわ」
神奈子「あぁ・・・ほんとだ・・・」
影涼と慧音が第七偵群の教官を務めているのは、偶然ではなく神奈子とレミリアのお願いで第七偵群の教官をしているのだ。簡単に言うと早苗と咲夜がいるからだ。早苗の保護者が神奈子と諏訪子で3人は別々の部隊・役職なので会える日が極端に少ないのだ。レミリアも同様だった。神奈子は、何とか傍にいてあげたいができないので一番信頼できる影涼と慧音・村田に偵察作戦群の教官を務めさせて、早苗達を見守ってほしいが為、配属させたのだ。
神奈子「影涼、これを早苗に渡しておいてくれないか?」
影涼「手紙ですか?」
神奈子「手紙をポストに出す暇も無くてな・・・」
レミリア「私もお願いしてもいいかしら?」
影涼「構いませんよ」
早苗・咲夜宛ての手紙を受け取り、影涼と慧音は松本市に戻って行った。
影涼「以上だ。今後は、幕僚長を通じて任務に当たってもらう・・・あと、この装備品を装着しておくのを忘れずに・・・」
時の奇跡店内で、影涼が4人にお昼に聞かされた内容を言っていた。
咲夜「私たちが最初の実戦配備・・・」
早苗「訓練よりも過酷なんですよね・・・」
幽香「何とかなるわよ」
美鈴「影涼さんと慧音さんは今後はどうするのですか?」
影涼「もちろん、君たちと行動を共にするよ・・・でも、任務中は指示しかできない」
咲夜「一緒に戦うことはできないのかしら?」
影涼「出来ないな・・・その代り、様々な補助はするから」
話を逸らすように、影涼は言った。
影涼「おっと忘れるところだった・・・これは、私からのお祝いの品だ」
影涼は、ケースからグロック24を4丁取り出した。アクセサリーパーツで、サプレッサー・フラッシュライト・拡張グリップに斑点迷彩が施された予備のグリップを出した。
早苗「これどうしたのですか!?」
咲夜「てっきり、9ミリ拳銃かと思っていたけど・・・」
美鈴「これって・・・オーダーメイドじゃないですか!?」
幽香「すごいわ・・・手にしっかり馴染むわ」
4人は、驚きを隠しきれなかった。銃を手に取り細部まで見ていた。
影涼「私が、何とか注文したんだよ・・・ものすごいお金がかかったけどね」
早苗「昨日言っていたのは、このことだったんですか!?」
影涼「あぁ・・・みんな訓練の時9ミリ拳銃の反動をしっかり抑えれてないからね・・・女性にも扱いやすいグロックを無理言って購入したんだよ」
咲夜「よく見ているわね・・・」
慧音「みんな知らないと思うが、影涼は全自衛隊のトップに君臨する射撃の腕を持っているのよ」
早苗「ですから、影涼さんに教えてもらってから銃の腕が上がったんですね」
影涼「驚くのはまだ早いよ・・・銃のフレームを見てくれ」
4人は、銃のフレームを見た。そこには、緑色の筆記体でそれぞれのコードネームが日本語表記されていた。
咲夜「へぇ・・・なんだかうれしいわね」
幽香「そうね」
4人は、嬉しそうに銃に刻まれた自分のコードネームを眺めていた。
影涼「みんな聞いてくれ」
影涼の呼びかけで4人は素早く切り替えて、銃をカウンターに置いて整列した。
影涼「君たちが偵察作戦群最初の実戦部隊として行動してもらう・・・日本には、たくさんの諜報員・未知の特殊部隊や工作員が残念ながら潜伏している。君たちは、そいつらをこれから対処してもらう、基本的に交戦は許可されていないが敵が撃ってきた際は問答無用で発砲が許可されている・・・しかし、街中で撃つのは目立つため、サプレッサーの装着を忘れずに・・・君たちが使っていた89式は、普段は使えないが任務によっては使用するのでそのつもりで・・・」
咲夜・早苗・幽香・美鈴「了解!!」
影涼「あと・・・早苗さんと咲夜さんに手紙があるんだった」
神奈子・レミリアの手紙を渡した。
影涼「後で読んでおいてくれ・・・任務がいつ来るかは不明だ。その間は、基地で訓練するなり、ここにいるなり自由にしてくれ・・・特別行動権があるからな」
美鈴「寝ていてもいいのですね!!」
影涼「ちゃんと起きれるなら」
慧音「遅れたら大変な事になるわよ?」
美鈴は、頭を掻きながらですよねーっと笑いながら言った。とにかく、第七偵群が実戦配備されることを伝え終えた影涼と慧音は、店を後にした。
慧音「銃をプレゼントするなんて、すごいわね」
影涼「反動が抑えれない銃を使ったところで肩を痛めるだけですよ・・・」
慧音のアクアに乗り込み発進した。2人は、特に会話も無くただ黙って基地に向かっていた。沈黙を先に破ったのは影涼の携帯だった。
影涼「非通知?」
非通知表示がされていたので、影涼は出るかどうか迷ったが通話ボタンを押した。
影涼「もしもし」
???(非常に失礼だと思うが、君のアドレスを調べさせてもらった。影涼射智河君かな?」
影涼「そうですが・・・どちら様ですか?」
???(諸事情につき名を名乗れない・・・そうだなぁ私の事はラットと呼んでくれ)
影涼「ネズミか・・・アメリカ人の話は聞きたくない」
影涼は、これでもかと言うほどアメリカとアメリカ人が嫌いなのだ。どうしてかは不明だが・・・
ラット(どうして私がアメリカ人だと思うんだ?)
影涼「英語特有の発音の癖は日本語には無いからな・・・子供でも分かるぞ」
ラット(日本語は難しいんだよ・・・本題に入ってもいいかな?)
影涼「聞いてなかったのか?アメリカ人の話は聞きたくない・・・」
ラット(黙って聞くんだな!!死なない幽霊!!)
影涼と隣で聞いていた慧音は驚いた。慧音・村田も含めて影涼のコードネームは、特殊作戦群と陸将・幕僚長・防衛大臣しか知らないはずの情報なのになぜかラットと名乗るアメリカ人は、知っているのだ。
ラット(明日のお昼に松本駅で待っている・・・歴史喰いと心の人形も連れてくるがいい)
通話は一方的に切られた。
慧音「・・・何者なんだ?」
影涼「わからんが・・・だいたい予想が付く・・・村田に連絡しないとな・・・」
慧音「まさか・・・私たちの過去を知っての・・・」
影涼「まさか・・・いや、コードネームを知っているからもしかしたら・・・」
2人は、悩みながら基地に戻って行った。