マボロシ少年の航海日誌   作:ネメシスQ

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序章
ぷろろーぐ


 

 

 拝啓、ばあちゃん

 おれは今日初めて魚人と会いました。意外と人間と外見変わらないですね。色々話もしました。そして今、その魚人はものすごい形相でおれたちを追いかけております まる

 

「ふむ、魚人って陸上でも中々足速いのな。しかし、十傑集走りを極めたおれの走りにはついて来れまい」

「確かに速いけどその走り方は一体何!? どうやったら上半身ぶれずにそんなスピード出せるのよ!? しかも足の動きは見えないし、なんか気持ち悪いわ!」

「努力のたまもの。そして気持ち悪いとは失敬な。この素敵走りは無駄に洗練された無駄のない無駄な技術を結集したものだというのに、それが分からんとは……やはり年増にはこのセンスが分からんらしい」

「殺すぞ」

「申し訳ありません」

 

 隣を並走するノジコなるおねーさんからものすごい殺気を向けられたので即座に訂正した。

 それはともかく、魚人とのリアル鬼ごっこが始まってから、かれこれ十五分程経った。かなりしつこく追ってくるため、中々撒くことが出来ない。

 これ以上やっても不毛なだけなので、その場でブレーキを掛けて立ち止まる。

 

「追われるのも飽きてきたので、そろそろ吾輩の真の力を解放するとしよう。ノジコ、遺書の用意はできてるか?」

「できてる訳あるか! 真の力はどうした!? 勝算があるんじゃなかったの!?」

「勝算などある訳ないだろう常考。おれ10歳児。戦闘能力皆無なおれが魚人に勝つなぞ逆立ちしても無理。でも逃げ切ることはできるよ!」

「どうやって?」

「こうやって。チンカラホイっと」

 

 某青狸に登場した魔法の呪文を唱えると、あら不思議。今までおれたちを追いかけていた魚人が踵を返して帰っていくではあーりませんか。

 

「何……したの?」

「イリュージョン」

 

 ドヤ顔で答えたら頭をはたかれた。解せぬ。

 

「よく分かんないけど、とりあえず助かったみたいね」

「ふっ、おれのおかげだな。感謝するがよいぞ」

「追いかけられたのもあんたのせいだけどね」

「そうだっけ? おれのログには何もないが」

「とぼけんな。あんたが魚人をおちょくったからこうなったんでしょうが」

「そんなことより腹が減ったでござる。どっかに美味い店ない?」

「人の話を聞かないガキんちょね。教えてもいいけど、あんた金持ってんの?」

「…………この世には宝払いという支払い方法が……」

「無銭飲食する気か! はあ……こうなったのも何かの縁だし、家に来な。一食ぐらいは奢ってあげる」

「なんと、飯を恵んでくれるとは。感謝っ……圧倒的感謝っ……! よっしゃ! 今夜は飲み明かすぜ!」

「あんた未成年でしょうが。酒は出しません」

「なん……だと……?」

「当たり前でしょ。ほら、行くわよ。着いてきなさい」

「承知」

 

 そうして歩き出したノジコの後に続く。

 

「あ、そういえば……あんたの名前、まだ聞いてなかったわね。何て言うの?」

「テンセー=シャと申す。ちなみに偽名です。よろしこ」

「自分から偽名だってバラす奴なんて初めて見たわ……なんか事情があるんでしょうし、深くは聞かないでおくわ。それでいいでしょ?」

「気づかい乙。しかし特に深い理由はないのだが」

「ないんかい!」

 

 真っ昼間のココヤシ村にノジコのツッコミが響き渡った。

 

 

 

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