マボロシ少年の航海日誌   作:ネメシスQ

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 行く宛もないのでノジコの家に世話になることになった。

 現在夕食中。シチューうまかっ、です。

 

「ふーん。アーロン一味ねぇ……」

 

 とりあえず島の現状だけは聞いておいた。何やらこの島は8年前からアーロン一味という魚人の海賊団に支配されているらしい。

 

「海中に生息するくせにお金を要求するとかイミフ。店で食い物買うわけでもないのに何に使うんだろね」

「国を作ろうとしてんのさ。東の海をまるごと魚人の帝国にするつもりなんだ。奉具はそのための資金らしい」

「それこそ余計にわからん。魚人が人間を力で支配するのにお金は必要ないだろ。ぶっちゃけそいつらの野望は夢物語。人間より圧倒的に数の劣る魚人が東の海を丸々支配するとかどう考えても無理ゲー。数の暴力はバカにならんよ」

「あんたは魚人の恐ろしさを知らないからそんなことを言えるのよ」

「かもしらんね。まあ、本気でまるごと支配を考えてるなら、奉具の使い道は十中八九海軍への賄賂か。手の回らない地域を支配、かつ本部に連絡がいかないようにするために金で支部を買収する心算にちまいない。海軍本部に来られたらさすがに魚人たちもたまったもんじゃないだろうし」

「なっ……!」

「そもそも8年前から高額賞金首がうろついてると分かってる島に海軍が攻め込まない理由がないし、いくら本部が忙しいと言っても、視察に来た本部の船についでにアーロン捕らえろって命令があってもおかしくない。それがないってことはつまり、ここの海軍がアーロンからうまい汁啜ってるのは確定的に明らか」

「嘘でしょ……仮にも海軍がそんな事を……」

 

 何やらショックを受けた様子のノジコだが、これくらいの事なら別のとこでもやってる海軍はいる。しかし、どうするか。告げ口しようにも連絡手段がにぃ。さすがにお手上げ状態である。

 

「おろ?」

 

 そうして、あれこれどうするか考えていたら、ふいに頭の中にいくつかの映像が浮かんで来た。

 おお、久しぶりだな、これ……

 

「まあ、でも大丈夫じゃね? 麦わら帽子被ったゴム人間が助けてくれるって」

「何よそれ」

「や、たまーに見覚えのない光景がふっと頭に浮かぶんだよね。一種の未来予知? それでキザっ鼻がぶっとばされんの見た。ただし、今んとこの的中率は不明」

 

 つい今しがた頭に浮かんだ光景をノジコに話す。多分ここでの出来事で間違いないはず。村で見かけた風車のおっさんがちらっと見えたし。

 

「………………ぷっ、それ本気で言ってる?」

 

 正直に言ったんだが、嘘だと思われたようだ。しかし先程より雰囲気は明るくなった様子。

 

「そういやあんた、家族は? 心配してるんじゃないの?」

「ばあちゃんが一人いるが、大丈夫だと思う。おれがいなくなるのは割りと日常茶飯事だし」

「こんな孫を持ったおばあさんが気の毒すぎる……まあ、あんたは危険な目に巻き込まれてもけろっとしてそうだから確かに心配は要らないのかもしれないけど……」

「ん。何よりばあちゃん、おれのビブルカード持ってるから生死の確認はできてる筈」

「ビブルカード?」

「詳しくは知らんけど、持ち主の居場所の大まかな方角を教えてくれる不思議アイテム。命の紙とかいう厨二な別名がついている。何故か持ち主が死にそうになると焦げるらしい」

「つまりそれがあれば安否は確認できるって訳ね」

「そゆこと。てな訳で家族の心配はしなくてもよいかと」

 

 ノジコも納得したようなのでこの話は打ちきり。シチューの残りをかっこむ。美味しゅうございました。

 夕食を終え、食器も片付け終わるとすることがなくなる。

 

「元々ヒマ潰しのために家を出たというのに、出た先でヒマをもて余しているとはどういうことか」

「そんなにヒマなら寝れば?」

「その発想はなかった。しかし食べてすぐ寝ると牛になるという呪いが……」

「太るだけでしょ」

 

 太るのも嫌なのでまだ起きることにする。

 結局ノジコとしばらく雑談した後、就寝した。久しぶりにフカフカのベッドで寝れたので朝までぐっすりでした。

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

 という間に一週間が過ぎた。何となく居心地がいいので住み着いてしまっている。まあ、この島から出る手段がないのもあるが。

 さすがにいつまでもヒモでいるのは心苦しいので、魚を釣って家計の足しにしている次第。

 

「どうだい、釣れてるかね?」

「んー?」

 

 今日も今日とて、朝っぱらから崖に腰かけて釣糸を垂らしていると、ふいに声をかけられたので振り返る。

 そこには最近仲良くなった、警官帽に風車を刺したおっちゃんが。

 

「ゲンゾウのおっちゃんか。まあ、ボチボチかな」

「そうかい」

「おお。さっき魚人が釣れたんだけどな、不味そうだったんでリリースした」

「ブーッ!」

 

 先程釣った大物の話をしてみたらおっちゃんが吹いた。きちゃないな。

 

「なっ、なななな……っ」

「おっちゃんが壊れたようです。斜め四十五度で叩けば直るやも」

「壊れてないわっ!」

 

 どうやら叩く前に復活した模様。で、どしたん?

 

「いや、ノジコの奴に頼まれてな。ほれ、差し入れだ。朝食も食べずにここに来たのだろう?」

「あ、忘れてた。感謝感激雨あられ。お礼に魚人の釣り方を教えてしんぜよう」

「そんな心臓に悪い釣り技術はいらんよ。それにしても、ノジコの言った通り本当に変な子供だな、お前は」

「ふっ、照れるぜ」

「誉めてないのだが」

 

 結局おっちゃんは差し入れを届けに来ただけのようで、すぐに帰っていった。おれは帰ってもヒマなだけなので、籠の容量が一杯になるまでは続けることにする。そうこうしているうちに釣竿に反応が。

 

「おっ、かかったかかった。今度は何が釣れるやら」

 

 一気に引き上げる。

 牛が釣れた。

 ココヤシ村は今日もいい天気である。

 

 

 

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