「ふう……」
宣言通り、あいつは文字通り、あたしたちの前から消えた。事前に聞いてはいたけど、本当デタラメよね。
「ノ、ノジコ……今のは一体……」
「いきなり消えちまったぞ!」
「まさか、幽霊か何かか!?」
何が起こったか理解できていないゲンさんたちがざわめきたつ。ま、それも仕方ないけど。
「違うわよ。あの子は人間。ちょっと手品ができるだけの、ね。今ごろは海の上よ」
「しかし、あれは手品なんてレベルじゃ……」
「悪魔の実の能力らしいわよ。詳しくは知らないけど」
「あ、あの子も能力者だったのか!」
「そういうこと」
麦わらといい、あいつといい、能力者は変人ばかりなのかしら。
「よかったのか?」
「……何が?」
「何がって、アーロンが来て以来、あんなに楽しそうにしてたお前は初めて見たぞ。それなのに……」
「いいのよ」
ため息ひとつ吐いて、立ち上がる。
「あの子には家族がいる。帰るべき家がある。こんな所にいつまでもいる訳にはいかないでしょ」
「ノジコ、お前……」
ゲンさんからの視線を振り切るように、あたしはその場を立ち去ろうと歩き出す。
「ノジコ、どこへ?」
「帰る」
なんだろう。胸がポッカリ空いたような気がする。
「らしくないわね、同居人が一人いなくなっただけで、こんな気分になるなんて」
沈んだ気分のまま、帰宅すると、テーブルの上に一通の手紙が置いてあるのに気づいた。
これ、あいつが……?
封を切り、便箋を広げる。
『よう、もしかして寂しくて泣いてるぅ? もう、ノジコちゃんったらかわいいところもあるじゃ……』
グシャ
思わず手紙を握りつぶしてしまった。けど、あたしは悪くない。
「あれ? もう一通……」
一通目の下にもう一通の手紙があるのに気づいた。
『おれの秘蔵のせんべえは二番目の棚にしまってあります。食べちゃっていいよ』
「もうちょっと他に書くことあるでしょうが」
最後の最後まで相変わらずな元同居人に、思わず苦笑がこぼれる。
沈んでいたはずの気分は、いつの間にか元に戻っていた。
あいつがここで過ごしたのはほんの一週間だったけど、もっと長い間一緒にいたような気がする。
突然現れて、魚人に追いかけられてるところを助けて……
なんか流れでウチに住むことになって……
四六時中ボケ続けて、それにあたしがツッコんで……
ゲンさんや村のみんなをおちょくっているのをシバいて……
「よくよく思い出してみると、ほとんどの時間、あいつに振り回されてたわね」
思えば、誰かと一緒に気兼ねなくご飯を食べたりしたのは、ベルメールさんが死んで以来だった。
こうして静かになった家にいると、まるであの日々が幻のようだけど……確かにあいつはここにいた。
「あたしも楽しかったよ、あんたと過ごした日々は……」
手紙を机の引き出しにしまい、収穫用の籠を持って外に出る。
「さーて、今日も元気に仕事しますか!」
今度会ったときに辛気くさい顔してたら、あいつに笑われちゃうしね。
同時刻、ゴーイング・メリー号の甲板にて、
「これ、何かしら」
「あっ」
オレンジ髪の女によってダンボールが取り払われる。
バカなっ、かの有名な蛇男御用達のスニーキングアイテムがこうも簡単に!?
こやつ、できる……!
「あ、ああああああんた!?」
「どうも、この度、麦わらの一味の捕虜として乗船させていただきました。どうぞ、よろしくお願いします」
おれたちの冒険はまだまだ続くっぜ!
はい、という訳で、ひとまずここで終わります。
まさか、原作主人公が一言も喋らずに終了するとは想定していなかった。てか、ノジコさんとゲンさん、ついでにナミぐらいしか喋ってねえ……
まあ、リハビリ作品らしく、無駄に広げずにパパっと終わらせました。これからは本命の作品の構成に戻りたいと思います。
もしかしたらこの作品も続けるかもしれませんが、その時はここまでの話を序章。次からを一章という形にすると思います。
それでは皆様ごきげんよう。