R-WITCHES   作:Leni

7 / 10
2012/04/01に書いた作品です。


連合軍〇四〇一資料

 

◆ザイオング慣性制御システム

 

 Rユニットの登場により、ライト姉妹の時代から続いていた航空機の歴史、そして魔女の箒の歴史が終わった。

 従来の飛行脚からRユニットへと機体を乗り換えたウィッチ達の中で、心に衝撃を受けなかった者は存在しないのではないだろうか。

 Team R-TYPEが1936年に提唱した魔導動力理論。それはまず戦闘脚の見た目を変えた。

 

 第一次ネウロイ大戦で戦闘脚が初めて世に出たとき、多くの人々は驚いたことだろう。あの大きな装甲車が、航空機が鉄のブーツと背負い鞄へと変わってしまったのだ。

 ただし、乗れるのはウィッチだけであり、飛行脚となるとウィッチの中でも一握りの才能のある者しか使いこなせない。

 ウィッチをよく知るものはこう思っただろう。軽い木の箒が亀のような重石に変わったと。

 装甲車を走らせたことのあるウィッチはこう思っただろう。何これ薄い装甲しか無いのに戦車みたいに遅いと。

 航空機を駆ったことのあるウィッチはこう思っただろう。操縦桿が機関銃に変わっただけで宙返りで酔うのは変わりがないと。

 

 戦闘脚という新しい靴を手にしても、人は慣性という物理法則から逃れることはできなかった。

 歩行脚はキャタピラで走るし、飛行脚はエーテルの海を泳いでいるだけだ。

 

 魔導動力理論が発表されたときも、過去の大戦を経験した元ウィッチ達はまた乗り物の形が変わるだけだろうと予想していた。

 しかしこれはそんな生やさしいものではなかった。

 まず最初に驚いたのは魔導工学研究者達だった。何これ難しすぎて訳わからんと。

 次に驚いたのは物理学者達だった。何これ本気で言っているのと。

 最後に驚いたのはウィッチ達だった。何これザイオング慣性制御システムとか超かっこいいと。

 

 結果として魔導動力理論を基にした戦闘脚は急遽各国で作成されることになった。

 魔導動力理論は機体の縮小化、シールド魔法の普遍化、搭乗者の身体強化、音速突破による衝撃波の対消滅、風防、防塵と戦闘脚に必要な様々な機構が書かれている、理論と言うよりはマニュアルとでも言うべき代物だった。その中でも特に注目を集め新型戦闘脚の開発を決定させた機構が、ザイオング慣性制御システムである。

 その名の通り、慣性を制御するシステムだ。加速してもGがかからない。旋回しても遠心力がかからない。進行方向を反転させても慣性が残らない。間違いなく空を飛ぶウィッチの世界が変わる理論であった。

 

 もちろんRユニットを駆るウィッチは今も慣性に悩まされている。理論上は全ての慣性を打ち消せるザイオング慣性制御システムだが、打ち消せる慣性の大きさは魔導回路の精度と消費魔法力の大きさによって変わってくる。

 だがそれでも、各国が試作機として作りだしたRユニットは、それまでの飛行脚が飛んでいたような速度空域でウィッチに対して慣性を感じさせるようなことは全くなかった。

 

 Rユニットを初めて履いたウィッチ達は驚いた、そして混乱した。

 それまでの操縦技術が、一切通用しない。陸戦ウィッチはまだ良い。あくまで平面上の機動だ。前後左右を自在に動けるようになっただけ、操作の自由度が爆発的に上がっただけなのだ。最高速度も三十倍以上に上がっていたが、それは慣れるまで速度を落とせば良いだけのことだった。

 しかし航空ウィッチは混乱するしかない。まず問題として、空の上で一切の加速をせずにぼんやり立つということができてしまうのだ。それは古いウィッチの飛行魔法でしか味わえない感覚だった。第一次ネウロイ大戦の戦場において航空ウィッチが空中静止する姿を陸上の兵士達は見たことがあるかもしれないが、あれは空中で踏ん張らないといけない地味に難しい技術なのだ。

 次の混乱の原因が、全方向どこへ進んでも身体にかかる感覚が変わらないというもの。慣性がない。落下しても上昇しても前進しても旋回しても身体には何も感覚が伝わってこない。地面という足場がない状態で慣性から解き放たれるというのは、非常に恐ろしい感覚だった。

 身体に一切の重圧がないというならまた話は変わってくるのだが、Rユニットは空と地面の上下感覚が狂ってしまわないよう、あえて身体にかかる一定の重力を残すようにしてあった。空中で静止して、その場で頭が下になるように回転すると、しっかり頭に血が上る。重力は落下の恐怖を連想させる。全てを忘れて縦横無尽に動こうという、旧来の飛行脚から脱却するために必要な思考を落下の恐怖が邪魔をした。

 

 新しい感覚に各国の航空ウィッチ達は白旗を揚げた。

 すごいのは解ったけどそこからどうすれば良いかが解りませんと。

 

 そのメッセージはTeam R-TYPEへと伝わった。彼らは各国の軍が用意した試作機などとは比べものにならない性能を持つ機体、Rシリーズを準備していた。この程度で躓いてもらっては困る、と操縦マニュアルを公開した。

 

 えほん よくわかるかんせいせいぎょ

 

 全世界のウィッチに向けたマニュアルだ。ウィッチは年若い少女ばかりなので、Team R-TYPEは彼女達に配慮して絵本にした。元はカールスラント語のものだが、あらゆる言語の翻訳版も用意してあった。

 マニュアルに載っていた最初の項を文章にまとめると次のような内容だ。

 

 Rユニットは陸と空を区別しない。陸戦ウィッチでも空を飛べるし航空ウィッチでも大地を走れる。ちょっと頑張れば海も泳げる。

 

 つまり、慣性から解き放たれたRユニットは、キャタピラ付きの陸上ユニットでも空を飛べるのだ。

 ただし空は中級者向け。まずは全員陸で慣れろと書かれてあった。

 車輪もキャタピラもない航空ウィッチでも、シールドを下方に展開すれば陸を走ることができる。

 ただしシールドは多数展開できないので実戦では使わないようにと書かれてあった。

 

 マニュアルを読みながらウィッチ達は練習を繰り返した。特に、扶桑皇国のウィッチは必死だ。扶桑海に大規模な怪異が発生していたためだ。扶桑海軍が作りだした試作機の名前はロ式艦上戦闘脚。艦上戦闘脚の名から解るとおり海軍主導の製作だが陸軍海軍問わず多数配備され、ネウロイを相手に大きな戦果を上げた。それを受け、各国も扶桑へ試作機とウィッチを扶桑へ派遣。扶桑海は人類の実験場と化した。

 陸戦ユニットが海の上を走ったり、航空ユニットがネウロイを海の中に引きずり落としたり、魔法力に余裕のできたウィッチが固有魔法を連発したり、中型ネウロイを生きたまま捕獲してTeam R-TYPEが狂喜乱舞したりと色々あって扶桑海事変は終結する。

 各国とも実験結果を持ち帰り研究を進める、が、Team R-TYPEはそれらの国のどこよりも先を行き新しい兵器を揃えていった。

 

 1939年9月、とうとうネウロイが人類に対し大規模な侵攻を開始した。

 即座にダキアとオストマルクは陥落。ネウロイはオストマルクを拠点として欧州全域へと散っていく。

 

 世界国は連合軍を編成しネウロイへと応戦する。しかし、Rユニットを以てしても数に勝るネウロイの戦線拡大を止めることは難しかった。

 同年9月末、満を持してTeam R-TYPEが本当のRユニットをロールアウトした。

 R-9A "ARROW-HEAD"。人類がネウロイに対し放つ魔法の矢だ。

 新型機を受け取った連合軍は、オストマルクを取り戻すべく第一次ネウロイミッションを発令。R-9A大隊のウィッチ達は新型機を訓練する間もなく、オストマルクに向けて飛び立っていった。

 

 ここで初めて、ザイオング慣性制御システムの真の姿がウィッチ達に顔を覗かせる。

 

 慣性制御された従来機の何十倍ものスペックを持つ本当のRユニット。

 それは士気を上げるウィッチ達にとって諸刃の剣であった。

 

 魔法力で強化された視界の中、彼女達は自分がどれほどの速度で動いているか理解できなかった。

 本来ならばシールドで守りさえすればどうもない地面、瓦礫、ネウロイ装甲の残骸。それらは超速度の戦闘下では、わずかに触れただけで肉体がはじけ飛ぶ恐怖の兵器となった。

 ザイオング慣性制御システムはウィッチにとってネウロイよりも恐ろしい悪魔のシステムであった。

 悪魔はウィッチの耳元でささやく。もっと速く飛べるだろうと。

 

 R-9Aは結果的にオストマルクを解放するが、人類はこの第一次ネウロイミッションで非常に多くのことを学んだのであった。

 ウィッチ達は心底思った。ネウロイの侵攻があと一ヶ月遅れてさえいれば、と。R-9Aの配備が一ヶ月早ければ、ではない。R-9Aのスペックと装備のネジの外れっぷりを体感してしまうととてもTeam R-TYPEに何かを言う気が起きなかったからだ。

 

 

 

◆模擬戦

 

 Rユニットには模擬戦用の装備が組み込まれていない。

 これは、Rユニットの開発を行ったTeam R-TYPEのメンバーが、ウィッチのことを消耗部品と考えていたのが原因である。

 実戦形式の訓練をわざわざ行わなければ使い物にならないウィッチは欠陥品で、他の優秀なウィッチと交換すべしというのが彼らの考えだ。

 

 しかし地球一般的にはウィッチは非常に希少で貴重な人材である。

 ウィッチの家系でなければ魔法力が発現する可能性が低く、また二十歳前後で魔法力が急速に衰え複雑な魔法の使用が不可能になる。さらには魔法力を持っていても、使い魔との契約を得られなければウィッチにはなれない。

 ウィッチならばどれだけ能力が低くとも軍曹以上の階級に任官されるのがその希少性を表している。なおRユニットを操作できるウィッチの99%以上は女性である。

 

 Team R-TYPEに対して最初に模擬戦用装備の開発を要請されたのがレールキャノンである。

 超高速電磁レールキャノンは魔導電磁作用で金属の小さな弾頭を飛ばすというもの。口径は小さいがRユニットと直結した魔法力強化の威力は高く、薬莢と発射薬が不要という点もあって弾倉内に込められる弾の量は非常に多い。陸戦ウィッチはこの弾倉をベルトに十数個取り付けて出撃することで無補給で一週間戦い続けられたというアフリカ戦線での報告がある。

 破壊力と継戦能力の高さの他に挙げられるレールキャノンのもう一つの特徴は、魔導兵器であるということ。ウィッチ以外には使用できない欠陥兵装、という意味ではない。レールキャノンはRユニットと直結して魔法力を流して使うのが本来の使い方だが、魔法力の供給さえできるなら別にRユニットを用意する必要がない。Rユニットへの適性がないウィッチでも、シールドを張れなくなり上がりを迎えたウィッチでも、最低限の魔法力さえ流せるなら弾丸を飛ばせるのだ。R機乗りだけが戦場のエースではない。魔法力持ちなら誰でも歩く自走砲になれる、それがレールキャノンだ。

 

 まさしく魔導兵器の歴史を塗り替えたレールキャノンであるが、欠点がある。魔導電磁作用を用いているため、金属弾以外を飛ばせないのだ。すなわち、ペイント弾を飛ばすことができない。

 航空ウィッチも陸戦ウィッチも歩兵ウィッチも模擬戦や演習を訓練として行うのは非常に重要だ。レールキャノンの腕だけで航空トップエースの十倍もの戦果を残したスオムスの歩兵ウィッチも言っている。練習だぜベイビーと。

 

 そんなこんなで模擬弾の重要性を軍の偉い人から説かれたTeam R-TYPEは、いい加減軍の話を聞くだけで研究時間が潰れて鬱陶しくなってきたという理由でネウロイを解析して確立した流体金属技術を用いた非殺傷弾を提唱した。弾丸に付与される魔法力強化をカットする機構もセットでだ。

 構想三分製作三日間である。製作に時間がかかったのは「当たっても死なないけど肌に触れると細胞をわずかに侵食する」という問題点を解決せずに送りだそうとして駄目出しを受け、作り直しをしたからだ。

 

 しかし、流体金属弾は一般の軍事企業の技術力では作成コストが高く付いてしまうため、採用は見送られた。

 結局ウィッチは旧式の自動小銃とペイント弾を用いて模擬戦を行っているが、ペイント弾は重いうるさい遅いと、非常にウィッチ達からの評判が悪い。

 一般歩兵はその旧式の自動小銃や機関銃で戦場の陸戦ネウロイと戦っており、年配の士官も銃は重い物であると思っているので、現場では意見のすれ違いがいまいち多いようである。

 ちなみにウィッチは見た目細腕の少女揃いだが、使い魔との同一化で身体強化されているため男性の兵士よりはるかに怪力である。

 

 

 次なる模擬戦用装備として作成を求められたのがフォースだ。

 フォースは今までの武器の歴史に似通ったものが一切存在しなかった新しい概念の兵器である。盾であり、砲弾であり、銃身であり、エネルギー鈍器であり、素敵ビーム兵器でもある。

 当初フォースを支給されていたのは各国のエースウィッチ達。彼女達から模擬戦用のフォース支給を望む声が上がっていた。

 しかし、フォースは原材料にネウロイコアを必要とするというその特性のせいで量産が不可能な兵器であるため、模擬戦用の擬似フォース作成の優先度は低かった。

 エースにしか使えない特殊兵器なら、ウィッチ本人が自分で使いこなせるよう何とかしろという軍上層部の判断だった。

 お偉いさんにとってフォースは「何かよくわからない代物」でしかなかったのだ。

 

 だが戦局の拡大により状況は変わる。フォースの運用が重要視されるようになったから、ではない。

 生きたまま捕縛されるネウロイの量が爆発的に増えたのだ。

 ネウロイコアは帰巣本能を取り除かれ、ネウロイ素子を無色化され、物質という形の枠組みをぶち壊され、束積エネルギー生物兵器と変えられてフォースとなる。生産コストの高さとは裏腹に大量に生産されたフォースは、Rユニット持ちのウィッチへと次々と配備された。

 フォースは生物兵器であり、戦いの中で微妙にエネルギーの質や量を変え成長していく。元々使い魔というパートナーと一緒に戦うのが日常であったウィッチ達は、自分のフォースに愛着を持つようになる。

 

 そしてウィッチ達の訓練用フォースを作れという声は次第に大きくなっていった。

 フォースの秘めている破壊力はレールキャノンの比ではない。訓練で下手に扱おうものなら演習場が一つこの世から消滅しかねない。

 まあそれなら作ってみるか、と動いたのはなんとTeam R-TYPEの本部研究所だ。彼らはちょうど極秘裏にRユニット装甲へのネウロイ因子添加の研究を進めており、害のないフォース作成はちょうど良い課題だったのだ。

 そして用意されたのが、水で希釈された液体ネウロイ兵器だ。「毎朝コップで一杯ずつ飲んでも人体に影響なし」を売りにしたクリーンな兵器である。

 模擬戦用に軽量化され角を取られた演習用コントロールロッドを二本用いることで、ネウロイ液はフォースに似た球状になる。

 デルタ・ウェポンは演習用コントロールロッドを一本へし折ることによって発動する『ネウロイ液ぶちかまし』だ。飛び散ったネウロイ液は新たなコントロールロッドを用意することで一ヶ所に集まる。ロッドは消耗品扱いである。

 ネウロイ液の水分は日数の経過により揮発するため、定期的な水の供給が整備兵の仕事だ。なお、水分が揮発しきって液の純度が高くなった際に起きる問題については一切責任を負わないとTeam R-TYPEは述べている。

 水が沸騰する温度下では使用されているネウロイ素子も死滅するため、模擬戦に加熱兵器を使用しても問題は無いので安心されたし。

 

 

 

 フォースもいいけどビットもね。

 そう話が流れるのは当然のことだったと言える。

 ビットは人工的に作成される小型フォースだ。人工的とは原材料にネウロイを使用しないことを指す。一般の工場で生産されることも多い。

 その特徴からビットはR機乗りに早くから支給されていた。扶桑のR機乗りには、これを近接用の武器として使いこなす者が割と見られる。曰く「二刀流」だとか。

 打診を受けて、Team R-TYPEは針金と接着剤と溶剤を各国の軍に送った。面倒だから針金の張りぼてでやってろということである。ちなみに針金の強度は高く、付属の説明書に従ってペイント弾を込めた銃器を取り付けることでビットレーザーの再現も可能だ。

 なお接着剤や溶剤の原材料は明らかにされていない。

 

 

 

 次は波動砲を、と言われたTeam R-TYPEは「固有魔法でも使ってろ」とだけ返答した。

 波動砲は機械で固有魔法を再現するのを目指して作り出されたものだ。模擬戦用に彼らがわざわざ用意するものなど何もない。

 模擬戦での攻撃的固有魔法の使用は、魔法を受けるウィッチにとっては死を意味する。

 

 

 

 ネウロイとの戦いの中Team R-TYPEがこのような適当な対応を繰り返したおかげで、各国の軍部は激戦の中Rユニットをもって他国を侵略するという邪な考えを抱かずに済んだという。

 Team R-TYPE最大の善行が思わぬところで積まれていた。

 

 

 

◆ズボン

 

 古くは中世の時代からドレスとして様々な装飾細工を施され、女性独自のファッションとして愛され続けてきたミニズボンであるが、第一次ネウロイ大戦で戦闘脚と共に個性豊かなミニズボンを履きこなす世界各国のウィッチの姿が新聞で報じられてからと言うもの、世界中で爆発的なミニズボンブームが起き、やがて特に若い女性の生活にとって必要不可欠なものとなった。

 第一次ネウロイ大戦が終結してから世界にひとときの平和が訪れると同時、世界中で様々なズボン文化交流が行われた。

 現代を生きる女性にとって、ズボンとは生活する中で自身とは切っても切り離せない存在だ。

 何しろ、女性には下半身に下着をつけるという文化が古より存在しなかったのだ。ガリア貴族の長ベルト、扶桑の着物など、下着もズボンも履かずに一日を過ごすのは近代になるまで女性にとってはごく当たり前の事実であった。

 すなわち、ズボンは現代の女性にとって下着でもあるのだ。下着を身につける文化というものは、一度定着してしまうとなくなることはない。

 ブームに乗りハイカラなトータルコーディネイトを目指し、ファッション性の高いズボンを求める若い女性達。しかし、再び言うがズボンは女性にとって下着でもある。つまりは、非常に汚れるのだ。

 男性にとっては想像も付かないことかもしれないが、女性のズボンというものはとても汚れやすい。外側ではなく内側がだ。

 第一次ネウロイ大戦でウィッチ達が履いていたズボンは汚れにくい魔法糸製のものだったが一般市民にとっては高級品だ。代わりにズボンに合わせて様々な生理用品が発売されたが、ファッション性を求める若い女性達は生理用品の使用を嫌った。

 肌にぴったりと密着するミニズボンの特性上、生理用品を身につけるとその形がくっきりと浮かび上がってしまう。ミニズボンとは、脚の美しさ、そして尻の美しさを見せるためのもの。ウィッチともなれば、ズボンの上に自慢の使い魔の尻尾や尾羽が飛び出すのだ。生理用品を用いて形の美しさを損なうのはあってはならないことだ。

 そんなこともあり、やがてズボンにはファッション性だけではなく下着としての機能性までも求められるようになった。新たな市場に次々と参加する企業。ズボンの製造に公的資金を投入する国も出るようになる。

 その結果として引き起こされたのが1929年の世界恐慌だ。

 

 話を戻す。女性は下着を履かずにズボンを履く。

 戦闘脚を履くウィッチにとってズボンのファッション性など二の次三の次だが、ウィッチはミニズボンを履く理由があった。

 厚着をして戦闘脚を履くと、戦闘脚の操作が難しくなってしまうのだ。

 戦闘脚に差し込まれたウィッチの脚は別位相の空間へと転送されるが、脚の感覚が無くなるわけではない。むしろ、戦闘脚の操作はその別次元に存在する脚で行うのだ。その際、衣服という余計なものが間にあると操作が機体へ正しく伝わらなくなる。

 戦闘脚を操作したことのない人へ解りやすく説明すると、分厚い手袋を付けた手と何も付けていない手、どちらが器用に指を動かせるかということだ。

 素肌の方が伝達精度が向上する。その事実と発想があの迷機N-3C "SEXY DYNAMITE"を生み出したのだ。

 あれはいけない。そして後続機はもっといけない。いくらなんでもあんまりである。もう二度とあのような、ウィッチを別の意味で冒涜するような機体が生まれないことを願う。

 

 さて、女性用ズボンやN-3Cの話ばかり書いてきたが、ウィッチには男性も存在する。

 Rユニットを操作できるウィッチの99%以上が女性だが、つまりは1%以下の人数だけRユニットを操作可能な男性ウィッチ、すなわちウォーロックが存在するということだ。

 ウォーロックは女性ウィッチより体力に優れるため、軍としては数は多ければ多い方が良い。

 しかしながら、Rユニットを正確に動かすためには、素肌の脚をユニット内に突っ込まなければならない。

 これを読む諸君の中に、男性が街中で若い女性達が履いているようなミニズボンを身につけているのを見たことがある方はいるだろうか。

 筆者はこれまで世界各国を巡ってきたが、未だに男性がミニズボンを履く文化の国に行ったことがない。

 居たとしても幼児か、海水浴場での水着姿か、女装パブの店員か、といったものだ。

 ミニズボンより僅かに丈の長いズボンを履く男性は赤道近くの国ではよく見たし、全裸が標準という部族がネウロイに襲われているのを見たことがある。しかしついぞミニズボンを履きこなす男性集団というのを見ることは適わなかったのだ。

 

 地球的な男性の価値観として、どうやらミニズボンを履いて日常を過ごすというものは恥ずかしい行為であるようだ。

 女性にとってズボンは下半身を美しく見せるための装飾品だ。ミニズボンは脚線美と肌の色をファッションの一部として取り込むという意味合いがある。

 しかしながら、どうも男性はたっぷりと筋肉のついた美しい脚を日常生活で人前にあまり見せたがらないようなのだ。

 そして男性ウィッチ、ウォーロックである。現代のウォーロックの多くは軍人なので、脚には鍛え上げられた筋肉の塊が付いているだろう。そのウォーロックが世界でも数少ないRユニット乗りならば、ミニズボンを履き、脚を露出して出撃に備えるのが任務の一つとなる。が、世界各地のウォーロックを見てきた結果、どのウォーロックもミニズボンの着用を非常に嫌がっていたのだ。

 以前Rユニットへの適性のある民間のウォーロックを軍へスカウトしに向かったことがあるが、彼はどう説得してもRユニット乗りになりたくないとこちらの誘いを拒否したのだ。世界の危機と言っても、士官扱いだと言っても、女性達にもてると言っても、かたくなに拒んだのだ。曰く、下着を履いて人の前で戦うなんてとてもじゃないがやってられないと。

 そう、男性にとってミニズボンとは下着なのだ。機能的な意味ではなく見た目的な意味でだ。筆者もブラジャー姿で戦場に行けと言われたら受け入れがたいものがある。

 結局、Team R-TYPEにズボンを履かずにRユニットに乗れる手段があると伝えることで、そのウォーロックをRユニット乗りにすることができた。そのときの経験により世の中の多くのウォーロックは、初めからRユニットを履くのを拒否している可能性が高いことが解った。

 Rユニットを操作できる99%以上が女性というのは、このズボン文化の価値観の違いが原因なのではないだろうか。誰も搭乗を試していないのなら統計にも表れない。

 

 軍のウィッチ諸君がウォーロックに会う機会があれば、彼らにはっきりとこう伝えてあげて欲しい。

 パンツじゃないから恥ずかしくないもんと。

 

 

 

◆使い魔

 

 ウィッチとなるには使い魔との契約が必要だ。契約方法とは、使い魔の資質を持つ動物が魔法力を持つ人間の尻を触るという、わけのわからないものである。古典魔法学や魔導工学で説明が可能かもしれないが、実際に使い魔を持ち共に生活を続けてきたウィッチの感性からすれば、その契約方法は変態的の一言で言い表せる。

 使い魔となった動物は普通の動物と比べて非常に知性が高くなる。また、使い魔となる前から魔獣として元々高い知性を持ち合わせている個体も居る。

 そして、高度な使い魔になると、人語を喋るものさえいる。可愛らしい姿で人語を喋る使い魔が前線の基地に居たら、その使い魔はたちまち基地の兵士達の人気者になる。

 戦場の兵士達は癒しに飢えている。しかし癒しの存在であるウィッチは高官であり、彼女達に失礼な態度を取れば銃殺刑もありうるのだ。癒しどころじゃない。身に抱えた爆弾だ。

 代わりの癒しとなる存在が使い魔の動物たち。犬猫狐狸狼虎熊燕烏鷲鳶と選り取り見取りだ。虎や熊で癒されるのかどうかは解らない。熊を使い魔にしたウィッチはネウロイ相手にフォース抱えて体当たりしてもきっと平然な顔をしているのだろう。

 硝煙の臭いに染まった前線の兵士達にとって、可愛らしい使い魔はまさに清涼剤だ。

 しかし先ほども述べたとおり、使い魔には様々な種類が居る。動物の種類ごとに生態が違うため、知識のない者が手軽に扱って良いものではない。与えた食べ物がその使い魔にとって毒でぽっくり死亡、なんてことになったらそれはウィッチを殺したのと同じことになるのだ。

 仮に必死で動物の生態を覚えたとしてもさらに問題がある。使い魔は軍のウィッチにとって非常時に備えて一体化しているべき武装だ。そうそう基地の中をうろついていてはくれない。ウィッチの中には、魔法力を失った後も使い魔と一体化したまま過ごしている者もいる。一体化したまま使い魔の存在を忘れてしまう元ウィッチまでいる。

 さて、使い魔からの癒しを得られないところで登場するのが、人語を話す使い魔だ。彼らは賢い。人間達の動物知識を取り込んで、自分自身の種族としての習性を把握している。やってはいけないこと、やって欲しくないことはちゃんと自分から言う。さらに知性が高いので、散歩をしたいから一体化を解いてくれとウィッチに伝えることもある。そうして喋れる使い魔は前線基地を闊歩し、兵士達から銀幕のスターのごとき人気を得るのだ。

 

 だが待って欲しい。使い魔は賢い。人間社会や人間の生態を理解する。そしてまれに喋る。まさに動物の姿をしただけの人間のような存在。

 そんな存在が契約の際、尻に触れるのだ。誰よりも使い魔の賢さを知るウィッチ達が、口を揃えて変態的と言うのも理解できるのではないだろうか。

 ウィッチが女性でも男性でも、使い魔が雄でも雌でも。それぞれのシチュエーションに変態性が見いだせる。

 そんな変態的な儀式だが、実は今世界のあらゆる国で、年若い少女達に流行している遊びがある。

 様々な動物を捕まえてきて尻を触らせる、というものだ。

 ウィッチを増やす行為として、その怪しい遊びは推奨されている地域すら存在する。

 

 ネウロイの侵攻の結果、世界各地でウィッチが不足している。ウィッチは何も軍だけで必要とされているわけではない。

 古よりウィッチは様々な魔法を使いこなし世界に影響を与えてきた。魔力革命を迎えて魔法力が機械の動力として用いられ、さらには魔法が機械で増幅されるようになってからはそれが顕著だ。ネウロイと人類の戦いだけではなく、平和な日々の暮らしにも魔法は切っては切れない関係なのだ。

 機材の揃った大病院に医療ウィッチがいれば、外科手術で死亡する患者数が半分以下に減る。雨雲を呼んで凶作を防いだ農家のウィッチもいるし、魔眼で精密加工を覚えたウィッチが歳を取り魔法力を失った後も染みついた感覚のおかげで超一流の職人のままでいた、なんて例もある。シールドを張れなくなって軍を退役し民間警察へと所属したウィッチが、フォースもビットもシールドもないRユニットで市街地に襲来したネウロイを撃退したなんてすごい事件も起きている。

 そんな世界情勢。ウィッチは一人でも増えて欲しいと誰もが考えているのが地球と人類の現状である。

 

 だが待って欲しい。それで良いのか少女達。動物相手だからといって無差別に尻を触らせまくっていいのか。

 純潔が軍人ウィッチの条件だからって性知識に乏しすぎないか。獣は人間に欲情するし、人間は獣に欲情することもあるのだ。田舎だとそれは顕著だ。

 そして使い魔になる意思のない動物を偶然でも何でもない人の意思で使い魔にしてしまっていいのか。多くのウィッチ達に話を聞いたところ、使い魔が自然で自由かつ過酷に生きていた頃が良かったと思念を送ってきたという例もある。

 少女達はいまいち使い魔という存在を重要視していないように思える。使い魔はウィッチのパートナーなのだ。そこらの動物を無差別に捕まえてきて、という出会いははたして良いものなのか。ネウロイとの戦争の激化でウィッチ当人ばかりが注目されているが、ウィッチ達は使い魔が共にいるからこそ戦い続けていられるのだ。ウィッチにとって使い魔は戦友よりもRユニットよりも身近な存在である。

 使い魔になった動物は知性と魔法力を与えられる。普通より長生きしたりする。だからこそ、ウィッチは使い魔との死別の時心が裂けそうになるくらい辛い体験をする。死別の瞬間だけではない。死別を考えただけで辛い思いをすることもある。

 

 カールスラントでの事例である。

 あるウィッチは、上がりを迎えた後も使い魔と共に生活していた。しかしウィッチは己の魔法力の低下と共に、使い魔へと渡っていた魔法力が減っているのに気づいた。

 唯一無二の家族である使い魔が寿命で先に死んでしまうことを恐れたウィッチは、つてを頼りにTeam R-TYPEの下へと訪れた。使い魔の寿命を魔導工学で延ばして貰うためだ。古より、魔法学では様々な不老不死の法が語られていた。綿密に計算されて作り上げられた術、偶然が重なって発生しただけの環境作用、不老不死を望んだ愚者に対する罠、己の老化を止める固有魔法。ウィッチはTeam R-TYPEならばそれらの存在するかも怪しい魔法を知っているだろうと考えたのだ。そして実際、最先端の魔導工学研究機関でもあるTeam R-TYPEにとってすれば、小動物の寿命を延ばす程度造作もないことだった。

 使い魔の老化は止まった。さらには衰えていた知性が飛躍的に上がった。

 幸せに過ごすウィッチだったが、数年後使い魔は自殺してしまったという。使い魔に遺書を残す習慣などないため自殺の原因は明らかにならなかったが、推測として上がったのが知性が上がり己の変貌を理解してしまった使い魔は、いつまで経ってもやってこない死を自ら望んだのではないかというもの。

 これは何が悪かったのか。明確な答えはない。ペットを動物病院へと連れていくのとどれだけ状況が違うのかは、ウィッチと使い魔によって異なる。

 

 少女達の遊びでこんな悲劇がそうそう起きるとは考えられない。が、実際に遊びでウィッチとなり、正しい使い魔との付き合い方を知らぬまま過ごしてしまう可能性は高い。

 しかし、使い魔探しを少女達自身の手に任せている現状は良いものではないのかもしれない。何しろ使い魔と契約するまで自分に魔法力があるか全く解らなかったなんてウィッチも多数いるのだから。

 少年少女達と魔法力、霊力のある動物とのお見合い手順を、連合軍主導でマニュアル化すべき時期に来ているのかもしれない。

 それと、尻タッチに代わる新しい契約方法の模索もである。

 

 

 

◆水着

 

 R-9Aの後続試験機R-9A2 "DELTA"が扶桑皇国に配備されたのはR-9Aがロールアウトした1939年9月より僅か半月後のことだ。

 人類はTeam R-TYPEに対し、同時並行開発していなければもっと早くR-9Aをロールアウト出来ていたんじゃないかと総突っ込みをしようとした。しかし、R-9A2の現状を見て別の突っ込みを入れたのだった。基本試験をよその軍使ってやるつもりか、と。

 ちなみにTeam R-TYPEは無国籍の研究開発チームである。テストウィッチも複数所属していたが、彼女達は時々消息が掴めなくなったり、いつの間にか墓が立っていたり、死亡記録があるのに何故か生きていたりする。

 そしてR-9AとR-9A2の同時並行開発だけではなく、リリースタイミングからして第二次ネウロイミッションに使われた三機のR-9カスタム "WAR-HEAD"の準備もしていたと思われる。R-9カスタム。あの悪魔のパッケージングウィッチ機構ANGEL PACが初めて施された機体だ。

 さらにTeam R-TYPEはこの時点で秘密裏にRユニットへのネウロイ素子添加プロジェクトを進めていた。NX-T "DANTALION"の暴走事故で前所長ジム・クライアント博士が死亡したのが1939年、あの有名な宮藤一郎博士の所長年頭挨拶が1940年1月、事後法として有名なネウロイ素子添加プロジェクトを承認する国際法案が通ったのがそれらよりずっと後の1942年であるから、いかにTeam R-TYPEがやりたい放題なのかが解る。

 

 さて、扶桑皇国の海軍に試験配備されたR-9A2であるが、試験を行う傍ら最前線にも送るという豪快な運用をされたことで有名だ。

 ネウロイを素材にしたフォースは魔力回路を新たに追加した新型で、波動砲もR-9Aとは違うものであった。それで試験が完了していないというのだからいつ爆発四散してもおかしくないのだが、R-9A2は扶桑皇国海軍からスオムス、カールスラント、そして第一次ネウロイミッションで解放したオストマルクへそれぞれ一機ずつ、計三機が派遣された。

 オペレーション・ラストダンスで試験機が次々と投入された第二次ネウロイ大戦末期とは違い、この当時軍に所属するウィッチの数はとても少なかった。そして正式なR開発コードを持つRユニットの生産台数はさらに少なかった。つまりRユニット試験機三機とはとてもいっぱいと言い換えることができる。

 欧州戦線に投入されたR-9A2は無事戦果を上げていくのだが、それと並行して扶桑皇国では機体試験が行われていた。

 機動テストや波動砲テストは問題なく消化された。しかし、問題はフォースのテストだ。

 

 この扶桑海軍のR-9A2テストウィッチは、扶桑海事変で活躍した過去を持つ、後に扶桑皇国最強と言われるようになる優秀なウィッチであった。

 扶桑海事変では慣性制御を使いこなし、本当の意味での格闘戦を行って他のウィッチ達の度肝を抜いた。

 戦闘中に彼女の唯一の武装である銃器が破損したのだが、その後離脱するでもなくシールドでネウロイのレーザーを弾きながらその相手のネウロイを掴み取り、慣性制御をあえてオフにして遠心力を付け、他のネウロイに投げつけることで二機撃墜するという変態飛行を行った。

 Rシリーズに標準でレールキャノンと波動砲が搭載されるようになってからも刀剣やフォースでの格闘戦を好み、ビームサーベル・フォースやパイルバンカー波動砲を生み出してはネウロイに衝突死を繰り返してきた扶桑皇国軍。そのRユニット使いとしての戦いの原点は彼女にあるのかもしれない。

 

 そのR-9A2のテストウィッチ。実はこのテストの一年前に扶桑海事変時代の戦友をTeam R-TYPEの機体実験で失っている。事故原因の詳細まで公表されている死亡事例は珍しい。だが彼らは特に実験で死亡したテストウィッチの存在を隠しているわけではなく、詳細を公表するのを面倒くさがっているだけというのが連合軍司令部の見解だ。

 戦友の死の知らせはテストウィッチの下へも届いたという。死亡原因は試作フォースをテスト機のユニット底部に装着しての波動砲照射実験。波動砲の魔導回路技術は事故当時すでに確立しており、死亡の原因は波動砲そのものではなく、機体の調整不足と開発の終了していない新兵器フォースを用いたことだ。

 新フォースの初実験。テストウィッチはまさに戦友の死と同じ状況に追い詰められたということである。この場合、追い詰められたで正しい。

 そんな彼女の心情を顧みたのか詳細は不明だが、フォースのテストは扶桑皇国本土列島を離れ、赤道近くのビキニ環礁で行われることになった。

 

 赤道と環礁といえば海水浴である。ウィッチの間では海岸訓練と海水浴はセットと言っても良い。ウィッチは軍人と言っても年若い少女揃いなのだ。適度な休養と娯楽を与えないと潰れてしまう。荷物に水着を忍ばせても苦言をこぼす上官はいない。

 ところで扶桑海軍のウィッチが着用している軍服のインナー、実は水着であるというのをご存じであろうか。

 正確には水練用に開発されたボディスーツである。軍服の上着は由緒正しい水兵服で、十九世紀の頃から世界中の海軍が採用しているものだ。

 このボディスーツと水兵服は扶桑皇国の女学生用の制服に採用されるほど人気が高い。学生の制服、つまり扶桑の女子は日頃からズボンの代わりに水着を着用しているのだ。ちなみに扶桑皇国陸軍の赤と白の軍服は巫女服。巫女、すなわち魔女のことである。

 テストウィッチも海軍所属のため当然ボディスーツという名の水着を着用しているのだが、ビキニ環礁のテストに合わせてTeam R-TYPEは試験専用の水着を用意した。彼らはそれをマイクロボディスーツと呼んだ。

 それまでファッション界では刺激的な水着の代表として、ガリアのズボン会社が発売したアトムと呼ばれる水着が存在した。その水着は上半身用と下半身用に分かれ、下半身は一般的なミニズボンのような形状、上半身はブラジャーのような形状という非常に肌の露出面積の大きいものであった。

 だがそのマイクロボディースーツはそんなアトムを遙かに超えた代物だった。上半身は乳輪を最低限隠すもの。下半身は性器を最低限隠すものというほぼ裸と言っても過言ではないものであった。ミニズボン文化の定着で女性に下の毛をそり落とす文化がなければ、テストウィッチの水着、いや、ボディースーツからはいろいろはみ出ていたことであろう。

 これは同行していた記者団に大きな衝撃を与えた。そしてマイクロボディースーツを身にまとったテストウィッチは、顔を真っ赤にしながらフラッシュの嵐に耐えた。当時の各地の新聞でもその写真が掲載されたが、記者が漏らしたのか新聞のモノクロ写真ではなくカラー写真が好事家の間で出回ったのも確認されている。

 テストウィッチの胸は人種的な関係で慎ましいサイズであったが、そのマイクロボディスーツはアトムとは異なり胸が小さい方が似合うという理由もあったのだろうか。その布面積の小ささと見えそうで見えない大胆さというインパクトから、マイクロボディスーツは新しい水着として注目を浴び、後日初めて披露された地名にちなんでビキニという名を付けられ世界中の水着メーカーから次々と発表されることとなった。

 

 さて、そんな衝撃のビキニ水着だが、テストウィッチがビキニ水着を身につけたのは別にファッションショーのためというわけでもなく機体のテストを行うためだ。どういうテストかというと、フォースに搭載されたDOSEシステムとスペシャルウェポンのテスト。一般にデルタ・ウェポンと呼ばれているフォースの兵装だ。

 R-9A2に搭載されているデルタ・ウェポンはニュークリア・カタストロフィ。核融合を誘発させ対象物を熱エネルギーで消滅させるというものである。核融合とは、第一次ネウロイ大戦前に物理学界で発表された相対性理論というもので存在が認められていた物理現象。Team R-TYPE曰く、地上に小規模な太陽を発生させるもの。太陽と言えば光と熱を地球に届ける生命の恵み、と多くの人が考えていることだろう。だが、近年の学問の発展、そして相対性理論のおかげで実は太陽は生命にとって有害なもの、放射線を大量にばらまいていることが解っている。当然のごとく、ニュークリア・カタストロフィでも放射線がばらまかれる。デルタ・ウェポンを使用するウィッチは当然のことながらその放射線を身に受ける。それをRユニットで強化・保護されたウィッチが防げるかというのが、肌を極限まで露出させるビキニの意図なのだ。

 本来ならば裸でテストを行うのが望ましい、とTeam R-TYPEは述べていたが、随伴する海軍の男性兵士、そして記者団を考慮してこのビキニ水着が用意されたのだ。

 

 そんな新水着登場の裏でニュークリア・カタストロフィのテストは成功に終わった。

 結果としてビキニ環礁では放射線による汚染が見られたが、ネウロイに人類が対抗するためには仕方のない犠牲だったとTeam R-TYPEは語る。

 なお裏市場にカラー写真が出回ったのを知ったテストウィッチは必死で写真を回収しようと頑張ったようだが、これについても問題はない。ビキニ水着はビキニ環礁でのテストが行われた後年世界的にヒットしたため、ビキニ写真の一枚や二枚出回ったところで恥ずかしくなくなるのだ。

 

 

 

◆4月1日

 

 この資料が作成されたのは4月1日の事であるが、ここに書かれた出来事は全て実際に起こったことである。

 

 Team R-TYPEテストウィッチ班兼連合軍総司令部所属 スゥ=スラスター

 

 

 

 -連合軍軍事資料より抜粋-

 

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