ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
ベルリナ試作零号機 BP-01
・・・ベルリナ★プファンクーヘンのDNAを元にアークス研究室が設計したワンオフのフルデジタル式クローンキャストである。
通常、キャストは生来あるいは疾患等による虚弱な身体を機械部品に置き換えたサイボーグ似類を指すのだが、
零号は頭脳器官も人工的に物理メモリに置き換えられている。
全世界でも生体部品が一切使用されていないフルデジタル機は零号だけである。
専用DNAパターンを使用することでフォトン出力が従来のキャストの3倍近く向上している。・・・だが、
その身体には対ダーカー決戦兵器に相応しく小型の重水素爆弾を内蔵し、起爆すれば30km範囲を蒸発させる。
起動は本人の認証によるものだが、現在は暴走による暴発を防ぐためリミッターが掛けられフォトン出力が七割程に制限されていた。
-- アークスシップ本部ショップエリア --
ベルリナ一行は無事アークスシップの本部に戻って来ていた。
今回の一件は第四研究所事件と同様、最重要機密扱いとなり、一部関係者と上層部のみに知らされただけであった。
ベルリナたちは消耗が著しい事から一週間の特別休暇が置かれ、ダーカー侵食を含む健康診断が行われる事になった。
ベルリナとベルマリアは検査治療入院に丸ニ日を要したが、零号の検査は半日程度で終わった。
・・・デジタルは速かった。
先に検査が終わった零号は一人でショップエリアに来ていた。それは検査前にベルマリアに言われたからである。
(自分が気に入った銃を買ってくるんじゃ、それをお主用に調整してやるから・・・)
零号はベルマリアに結構な大金を持たされ、それを資金に武器ショップを数軒回った。
「うわーっ、ヴィスクーの新型が出てるーっ!、ヤスミ7800SWまであるーっ」
最近、ろくにショップ巡りをしていなかった零号は、それぞれの店に並ぶ新製品に一喜一憂した。
ひとつひとつ手にとって、構えて、ウハウハしていたのだが・・・
「うーん、悪くないんだけどなぁ・・・ 物足りないっていうか・・・ うーん。何だろ?」
特に気に入ったものは見つからなかった。
仕方なく、壊れた双機銃の部品をショップに見せて同じものを探して回ったが、
「腕の立つ職人のワンオフじゃないかな・・・? ・・・また来たまえ。」
・・・と、言われただけだった。
「うーん。店売りじゃないのか・・・ なら個人出店見てみるかなー・・・」
仕方無く、アークス公式オークションである”マイショップ”をアークスコミュニティ端末”ビジフォン”でチェックしてみた。
ビジフォンシステムはオークション出品されている武器や防具をヴァーチャル試着まで出来るのだ。 ・・・だがしかし。
「う〜ん、どれも、今ひとつ手に馴染まない、・・・というか、違うんだよねぇ、・・・もしかしたら下位武器のクラフトなのかな・・・」
悩み悩んで。結局3時間近く閲覧していたその時、
「零・・・さん、・・・ちゃん、・・・・零ちゃんさん」
不意に後ろから声を掛けられていることに気づいた零号は慌ててビジフォン画面を閉じて後を向いた。
「だ、誰っ・・・・ って、何だ リサちゃんじゃない・・・・」
零号に”リサ”と呼ばれた人物は濃紺の細身の女性キャストであった。
ちょっと不機嫌そうな顔をしながらリサが零号に話しかけた。
「”何だ”はチョッとぉ失礼なんじゃないですかぁー、うふふーっ。
ところで零ちゃんさんこそ、こんな所で珍しい・・・なにしてるんですかー? 」
(・・・あっ、そうだ、ベルレーヌの件は内緒にしなければいけなかったんだっけ・・・)
零号は少し苦笑いしながら答える・・・
「いやぁ、ちょっと失敗しちゃって愛用の双機銃壊しちゃってさー、新しいのを探しているんだよー」
「えーっ、アレを壊しちゃったんですかー? 勿体無いですねー・・・」
「ところでさ、リサちゃん、武器の有名クラフターとか知らない?」
「リサのォ知り合いにはいませんねぇー。あっ、 えーっと、有名かどうか知りませんけどぉー 伝説の匠の噂はぁー聞いたことが有りますよぉー」
「な、何それ。冗談っぽい。で、・・・伝説って何?」
零号はあからさまに訝しげな顔をして聞き入った。
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結局ショップエリアを一通り回った零号だったが、何も情報を得る事も無く 気に入った銃も見つからなかった。
陽も傾いてきた頃、ワラをも掴む気持ちでリサに言われた通り、ショップエリアの隅の噴水の縁に腰掛けた。
ここに居ると、伝説の匠に気に入られた者のみ話しかけられるらしいのだ。
「リサちゃんが言ってたのって此処だよね・・・ 有り得ないよねー、騙されてる気分だよー。
まぁ都市伝説みたいなもんだよね、たぶん・・・」
・・・しかし、当たり前の様に誰も来ない。・・・待てど暮らせど誰も来ない。
オレンジに翳ってきた陽の中で”ひとりで”待っている内に零号は、いつの間にか先日のベルレーヌとの死闘を思い出していたー。
(・・・だめだ、やっぱり今の僕じゃ勝てる気がしない、根本的にパワーが違い過ぎる。
どうしたら良いんだろう・・・お姉ちゃんを守る事が僕の生きてる価値なのに・・・)
零号は今までこんな苦しくなるような気持ちを経験した事がなかった・・・
笑ったり、怒ったり、拗ねたり・・・ お姉ちゃんと一杯、楽しんだり笑ったりしてきたけど、こんな気持ちは初めてだ・・・
アイテムパックから壊れた双機銃のグリップを出してみたー・・・
今までの僕の自信は何処に行ってしまったのだろう、もしかしたら愛銃と共に壊れちゃったのかな?
じっと見ていた愛銃だった部品が歪んで見える・・・・
「おかしいな・・・目の調整機能が壊れちゃったのかな、オイルが漏れているのかな・・・」
先生に修理調整してもらった筈なのに・・・。
あわてて顔を擦ってみた・・・
「何か水が出てる・・・ 目が壊れちゃったのかも。もう今日は帰ろう・・・」
零号が立ち上がろうと思った、その時 ふっと声が掛かった。
「その銃はどうしたんじゃ、壊したのか・・・?」
決して優しい声では無かった。・・・零号は目が壊れて水が出ているのを見られるのが妙に恥ずかしくて顔を背けながら答えた。
「うん。僕は弱いんだ。だから壊しちゃったんだ・・・もっと頑張らなくっちゃいけないんだ・・・」
太陽を背にした黒い人影は先程とは違い、今度は優しい声で語りかけた。
「そうか、じゃが本当に弱い者は、悔し涙など見せぬもんじゃよ」
ーーーっ!?
零号は顔を上げて改めてその声の主を見上げた。
マントを羽織った黒いキャストだった。外観はイカツい様にみえるのに怖さは全く無かったー。
(ナンパ? ・・・いや違うな。そんな気配じゃない・・・)
零号は改めて、その男に声を掛けた。
「オジサン、誰・・・?」
クックッ・・・ と少し笑いながら黒い男のキャストはこう言った。
「どうだ、お嬢ちゃん、ちょっと気晴らしにエクストリームでも付き合わんか?」
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