ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
零号と黒いキャストの男はゲートエリアからエクストリーム・システムルームに来ていた。
エクストリームシステム
アークス研究室が開発した”ヴァーチャル空間(VR)システム”をベースにして開発された模擬戦闘訓練システム。
アークスが過去に戦闘したことの有るエネミーデータがそのまま仮想モデルとして使用され、実戦さながらの訓練が行える。
基本的には初心者アークス向けではあるが、各種ステージにはクリア条件を付与する事が出来るため、
熟練者の苦手克服にも度々使用される。
零号は”見知らぬ者と来るなんて僕、どうかしてるな・・・”と思ったが、
この黒いキャストからは邪悪なものを一切感じなかった上、落ち込んでいた気晴らしには良いか・・・と思っていた。
黒いキャストは窓口で登録を済ませた。
妙に窓口のおねえさんがペコペコお辞儀をしていたのが気になる・・・
黒いキャストは零号に聞いた。
「お嬢ちゃんは、エクストリームをやったことがあるかの?」
「もちろん有るよ、研修生の頃は散々お世話になったよー。
まぁ、正規アークスに成ってからこの三ヶ月、全然やってなかったけどね・・・あははっ」
ルーム内の操作パネルを弄りながら黒いキャストが眼を細めながら言った。
「正規昇格は最近なのか・・・ 道理で若葉マークが付いておるわけじゃな・・・」
零号はアイテムパックから予備の双機銃を装備しながら不機嫌そうに視線を流した。
「フンっ、新人だからって余りナメないほうがいいよ・・・オジサン」
「そうか・・・それじゃチョッとお手並み拝見といこうかの・・・今回のプログラムはワシが手動で入力することにするぞ、・・・武器はどうするんじゃ? 壊れてるんじゃなかったかの?」
黒いキャストは自分のアイテムパック内を探し始めた・・・ が、その様子を見ながら零号は予備の双機銃を見せて笑った。
「予備で充分。全力で行かなくても余裕だよっ」
「そうか、それでは撃破数で競い合いでもするかの? お嬢ちゃん、 あっはっは。」
そう言うと、黒いキャストは双機銃を装備したー
「双機銃は本職ではないんじゃが・・・」
(普通の双機銃だなぁ・・・ さっきの窓口のおねえさんのペコペコ態度からして、凄い人かと思ったんだけど思い過ごしだったのかなぁ・・・)
零号は双機銃を構え大きな声を出した。
「いつでも良いよっ、さぁ、来いっ!!」
エクストリーム空間は100m四方は有ろうかという広さが有る。ダーク・ラグネなどの大型エネミーが配置される場合もある・・・
-- エネミーを二十体倒せ --
バババ、バッバッバッ・・・・
零号と黒いキャストは現れた四足ダーカーの”ダガン”と”エル・ダガン”を一斉に倒し始めた。
予備の銃とはいえ、この程度であれば零号も楽勝である。
「ほぅ、お嬢ちゃん、結構なスピードが出せるんじゃのう・・・」
「フンっ、こんなのお試し以前の朝飯前だよー」
あっさりクリアした二人は次々にステージを進めていく・・・・
-- 背後からエネミーを十体倒せ --
-- 状態異常のエネミーを二十体倒せ --
-- ニ分間体力回復をするな --
・
・
次々にステージをクリアしていく二人。
だがステージが進むにつれ、零号は違和感を憶え始めていたー
(おかしいなぁ・・・ 今のステージ、僕は1/3位の数しかエネミーを倒してないと思うんだけど・・・
残りの数は黒のオジサンが倒したって事? そんなまさか・・・)
少し零号は黒いキャストの動きを観察することにしてみた・・・
(派手な動きも無いし、そんなに撃破数が多く見えないんだけど、何が違うんだろう・・・ 普通に戦っているようにしか見えない・・・・ あれっ?)
黒いキャストは殆ど立ち位置が変わっていない・・・それどころかエネミーが吸い寄せられているかのように集まって来ているように見える・・・
(黒のオジサン、一撃で二~三匹は倒してる・・・どうなってるの・・・?!)
そう思った時には、声に出ていた・・・
「リバースタップ? いや・・ゾンディールなワケが無いし・・・」
-- エルアーダのみを四体倒せ --
黒いキャストはエルアーダを2体まとめて撃ち落としたあと、”ニマっ”と笑って零号に話し始めた。
「・・・ようやく、気付き始めおったか・・・」
ワラワラ集まってきているダーカーから残りのエルアーダのみをキッチリ撃ち落して
黒いキャストは零号に語り始めたー
「お嬢ちゃんの動きは直情的すぎるんじゃよ、それでは折角の速さも意味を持たないんじゃ・・・
どんなに速い動きであっても、次の動作が丸見えだと、それは隙にしかならんのじゃ」
「ど、どういうことだよ・・・」
「つまりじゃ、相手の動きが見えなくても、次にどこを攻撃されるかが判っていれば、すべて受け流せる・・・ ということじゃな、そして・・・」
最小限の動きで次々とエネミーを倒してゆく”黒いキャスト”・・・
「相手の攻撃を弾いてしまえば、相手は隙だらけじゃ」
ーーーーーーっ!!
零号はベルレーヌとの戦闘を思い出していた・・・
全ての攻撃を弾かれ、一方的に攻め込まれていた自分・・・
攻撃目標しか目に無かった自分・・・
全力で、それだけを撃破しようとしていた自分・・・
そう思った時には、既に零号は声に出していた。
「・・・で、でも、どうすれば・・・」
もう、零号は、攻撃を忘れて棒立ちになっていた。
・・・だが、出てくるエネミーを次々処理しながら黒いキャストは続けたー
「攻撃しているのは自分だけじゃない・・・相手だってお主を攻撃しておるのじゃよ
お主の次の動きを読んで、そこを狙ってくるんじゃ、四体居れば四体一斉じゃな・・・
ならば、自分の動きで同時にソレを誘導してやれば良いだけじゃ。攻撃なんぞ一回で充分じゃ、使えるものは全て使えっ!」
-- 判った --
なるほど、そう思って黒いキャストの動きを見れば納得できる。
黒いキャストは全てのエネミーの攻撃を最小限の動きで躱し、今まで自分が居た場所にエネミーの攻撃を集めている・・・
(なるほど・・・これなら、最小限度の動きで、エネミーを殲滅できる・・・ でも・・・)
「そんなに上手く、エネミーの動きが読めるものかな・・・」
ステージクリアした黒いキャストは「カカカッ」と笑いながら言った。
「お嬢ちゃんの速さと経験なら、躱してロックオンなど造作もなかろうて・・・」
-- ダーカーのみを倒せ --
「よしっ」
零号は自分の周りに居る五匹の”ダガン”を注視した。
後ろは見えない・・・もう、気配で察知するしかない・・・ 出来るか?
前にいる敵・・・横に居る敵・・・後ろの敵の気配・・・
(飛び掛かって来るな・・・ 今だっ)
零号は態を躱し、全速力で飛び掛って空振りしている敵全てをロックオンし、双機銃を撃ち放った。
バババ、バッバッバッ・・・・
四匹が倒され、一匹だけが外れていた。
(少し弾道がブレるな・・・)
惜しい・・・ と言う顔で黒いキャストは零号に指示をだす。
「全ての敵との距離感を常に感じ取るのじゃ、常に次の段階を思い浮かべるのじゃよ」
「うんっ!」
零号は何度も敵に囲まれながら練習を繰り返した。
そうしているうちに、コツを掴みワンアクションで複数のエネミーを殲滅できるようになった頃・・・
-- ステージ20 --
黒いキャストはステージ開始の操作パネルに何やらデータを打ち込みながら、意味深に言った
「お嬢ちゃんもう、行けそうじゃな・・・
次がラストじゃ、トラウマ克服はヒーローには付き物じゃからなっ」
開始ボタンが押されたその瞬間、お題が表示される・・・
と、同時に禍々しい声がステージに響くー。
「さあ始めるぞ、猛き闘争をな!」
-- ファルスヒューナルを倒せ --
零号の中で”ヒューナル”が”ベルレーヌ”とオーバーラップする・・・
ヒューナルを撃破するだけなら、以前の零号でもゴリ押しで何とかなる・・・
しかし、今やらなければならない事はー
「全ての攻撃を見切って、撃破するっ」
零号は双機銃を構えて、ヒューナルと対峙した・・・
(今なら判る、次の攻撃は僕の一番動かない身体の部位を撃って来るっ!)
ヒューナルが高速接近し、零号に拳を繰り出した。
(くっ、速いっ・・・しかし・・・)
零号は半身で攻撃を躱し、ヒューナルに双機銃を向けた・・・
バッババ、バッバッバッ・・・・
だが・・・
(だ、だめだ・・・僕のロックオンのスピードに銃の剛性が付いて来れない・・・)
零号は最高速でターゲットを狙っているのだが、振りかざした予備の双機銃は照準がブレて狙いが僅かに外れてしまう。
ヒューナルから少し距離を離す零号・・・そこにヒューナルの血の飛び蹴りが高速で落ちてくる。
(イケるっ、次の攻撃が見える・・・ならばソコを狙い撃ちだ・・・)
ヒューナルのとび蹴りをSロールで回避する零号・・・ 2cmと離れていない回避であった。
「回避は問題ない・・・だけど・・・」
双機銃をヒューナルの頭にロックオンする零号・・・
・・・しかし、余りの動きの速さに双機銃の剛性が付いてこれずに、照準がブレる・・・
バババッ、ババッバッ・・・・
「くそっ! ダメだ・・この銃じゃまともに狙えない・・・」
ヒューナルに数発の弾丸が当ったが、真芯で捕らえられていない・・・
(くそっ、あの銃が有ったら・・・壊れて無かったら・・・)
零号は悔しくて歯を噛み締めていた・・・
・・・と、黒いキャストがアイテムパックから”何か”を零号に投げた。
「もう、良いじゃろう・・・コレを使えっ!」
宙に投げられたものをジャンプで掴み取る零号・・・
手に蘇る、ズッシリとした重みと圧倒的なフォトンのチカラ・・
いや、それ以上か・・・
ーーーっ!! こ、コレっ!?
双機銃のグリップには壊れた愛銃と同じ”JIG”のネームが有った。
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