ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
惑星ウォパル
全面を水の膜に覆われた惑星で、自転速度の関係で昼夜の変化がアークス標準時に比べ三倍以上、気温が常に三十度近くあるという、リゾート向け惑星である。
ベルマリアの担当する生徒、約五十名はキャンプバスを使用しウォパルまで移動することになった。キャンプバスは大型なため惑星間移動に ほぼ一日掛かる。
ベルリナ一行は休暇中で有ったが、特務扱いでキャンプシップの使用を許可された。
キャンプシップは数時間で現地まで移動出来るため、ベルリナ達は一足先にウォパルに到着、惑星周回軌道上にキャンプシップを待機させようとしていた。
-- キャンプシップ内 --
「アークス標準時16:08分、惑星ウォパル到着。機内外オールグリーン、航行管制をウォパル管制に譲渡。これより惑星周回軌道に移動、その後、惑星周回航行に入る。」
ベルナルドMk-IIのアナウンスと共に惑星間航行が終了し、
キャンプシップ内に安堵の空気と共にシートベルトを外す”カチャッ!” ”カチャッ!”という音が鳴った。
「これより一時間後に惑星渡航の手続きに入るわけじゃが・・・」
ベルマリアが立ち上がり、全員に告げる。
「惑星に降り立つとイベントレコードされるので、ここで個人的なミーティングを済ませたいのじゃが、良いかな?」
その声に全員が無言で頷いた。
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キャンプシップ内のブリーフィングルームに集合した一同、ベルマリアがミーティングの指揮を取った。小さめのテーブルに三人がつき、ベルナルドMk-IIは奥のカウンターで飲み物を用意していた。
「まずは、みんなご苦労じゃ、さて、これからの事についての打ち合わせの前に、
今までの経緯とそれに関する話をしようと思うのじゃ。・・・主だっては、個人的の話もある・・・」
ベルナルドMk-IIがカチャ、カチャと着座しているメンバーに飲み物を配ってまわった。
「さて、最初に零号、お主についてじゃが・・・」
ベルマリアは零号に向き直り、話し始めた。
「うん」
零号はソファに座り直して背を伸ばした。
ベルマリアは話を続ける・・・
「色々と聞きたい事も有ろうが・・・ まず、最初に言っておきたい事は・・・
お主に掛かっていたリミッターを限定的に解除した事じゃな」
零号には当然の話題で有ったので驚く程の事では無かったらしかったのだが、
「・・・限定的?って」
意味の分からぬ事をベルマリアに聞いた。
「”単純に解除”では本部からの許可は下りんからのう・・・ 条件を付けたんじゃ」
ベルマリアは”ずずーっ”っと珈琲を飲む。そして話を続けたー。
「リミッター開放時は精神状態が正常である事に加えて、ベルリナ君と精神リンクする様にしたんじゃ、それによって暴走した場合もベルリナ君側からある程度コントロール可能になっているんじゃ、 幸いベルリナ君は成績優秀なため信頼も有る・・・」
零号はベルリナと顔を見合わせた後、確認するように言った。
「例の”-- spiritual linkage--(精神連携)”ってやつだね、お互いの考えてることが直接頭に流れ込んで来る感じだったね、ベル姉ちゃん・・・」
「・・・だね。」
・・・しかし、ベルマリアは何故か不機嫌な顔になって説明を続けるー
「こいつは同じDNAであるお主らじゃから可能なのじゃが、
・・実は、この機能は元々”零号のブラックボックス”に有った機能なんじゃ」
聞きなれない単語に首を傾げ、零号が質問した。
「・・・ん? ブラックボックスって何?」
テーブル上の3Dモニターに説明用のCGを表示、零号の回路図を指してベルマリアが説明を始める。
「お主のブレインメモリ、CPUとワークRAMの間にセットされている回路でアークス研究室ルーサー謹製の回路の事じゃ、・・・なぜこのような回路が組み込まれているのかは不明なのじゃが、これが零号の基本動作の一部と特殊機能を管理する回路になっておって、コレが入っているのが、ジョーカー(重水素爆弾)が取り外せない原因になっておる・・・生体機能を完全停止せずに外せばジョーカーが起動する仕様じゃ・・
ちなみに・・・回路データの提供を指示したのじゃが、研究室特権で開示を拒まれた・・・ 全く腹の立つ・・・。まぁ、廃棄決定を無理言って修復再登録した関係上、こちらとしても強く言えないんじゃ。
・・・ 以上が零号に関する報告じゃ、すまんワシのチカラが足りんばかりに・・・すまぬ」
ペコリと頭を下げるベルマリア、それを見てブンブンと両手を振ってベルリナが恐縮した。
「先生、謝らないで下さい。」
「そうだよ、むしろ僕は感謝してるんだ・・・」
それに頷く零号。
・・・頭を上げベルマリアが話を続けた。
「そう言ってもらえると助かる・・・ あー、次に言わなければならぬ事なんじゃが」
そういうと、ベルマリアはパイロット席に移動したベルナルドMk-IIを見た。
「・・・ベルナルドMk-IIはワシのサポートパートナーとしてフルデジタル試作として作られた事になっておる。じゃが・・・ 実際には”ベルモントの兄”ベルナルド・アークランドの脳髄が移植されておる」
・・・あれっ?・・・という表情で首を傾げるベルリナ。
「・・・でも、ベルモント君のお兄さんは先の大戦で亡くなったって聞いてますけど・・・?」
ベルマリアは俯いて話し始めた。その表情は見えない・・・
「ベルナルドと私の姉は”ユリア”はアークスとして大戦時にダーカー討伐に参加していた・・・
当時、まだアークスになっていなかったワシを助けようと・・・して・・・亡くなった・・・んじゃが・・・」
ベルマリアの両瞳からボロボロと涙が溢れて言葉が紡げなくなっていた・・・
「・・・せ、先生・・・・ 別に話せない事なら無理に話す必要ないですよ・・・いいんですよ」
慌てて立ち上がって、ベルマリアに駆け寄ろうとするベルリナ・・・
しかし、右手のひらを挙げてそれを止め、ベルマリアは話を続ける。
「・・・いや、すまんかった、大丈夫じゃ・・・」
ふぅーーっと、大きく息を入れ、涙を拭いた後、キッっと顔を上げて語り始めた。
「先の大戦はアークスシップ内にまでダーカーの侵入を許す重大な戦いになった。
ただの研究者でしか無かった当時のワシは、たまたま遊びに来ていたアークスシップの市街地でダーカーに襲われ、ベルナルドと姉が守ってくれたおかげで・・・ワシは命を救われた、・・・じゃがそれは同時に二人の命を奪った・・・・」
ベルマリアは珈琲カップを両手で持つと中の珈琲をクルクルと回した・・・
「そして、ワシは自分のチカラの無さを恥て、アークスに成ろうと思ったんじゃ。
もう二度と罪なき人が死んでいくような世の中にはしない・・・と。」
ベルリナが悲しい顔でベルマリアを見つめて言った。
「先生・・・最初からアークス志望だったわけではなかったのですね・・・」
ベルマリアは黙って頷き、更に言葉を続けた。
「その時、姉の遺体は焼失してしまったが、目の前で息を引き取ったベルナルドは、ワシがキャストとして再生させたんじゃ・・・」
ベルリナと零号は言葉を失い、同時に驚いた・・・ が・・・
ベルリナは合点がいかぬ顔で尋ねた。
「・・・あれ? でも確か・・・死んだ人からキャストを作るのはダメだったんじゃ・・・」
珈琲に口を付けていたベルマリアはカップを静かに置き、強く言った。
「そのとおりじゃ、脳死に至っていなかったは通用せぬじゃろう、ワシは情に流され法を犯しておる。
告発するなら、それも構わぬ。・・・もちろん罰も受ける。」
ベルリナと零号は顔を見合わせ頷きあって声を合わせて言った。
「誰にも言わないよ・・・ というか、言う必要が無いもの・・・ね? ベル姉ちゃん」
「そうだよね、悪いことしたんじゃないんだから・・・」
二人の言葉を受けて、ベルマリアは答えた・・・
「すまぬ、今回の一件が片付いたら、報告し裁きを受けるつもりでおる・・・」
辺りに沈黙が訪れた。再び珈琲に口を付けていたベルマリアは思い出したように付け加えた。
「あー、ちなみにベルナルドMk-IIの時はベルナルドの基礎思考部分だけで動作しておる・・・・」
”えーっ”・・っという顔をする零号。
「基礎思考・・・? 本能の間違いじゃないの?」
軽く吹き出し、ベルマリアは少し笑って答えた。
「まぁ、・・というか、ここまでエロ反応するとは想定外じゃったが、あはは・・・」
ベルリナ姉妹二人はベルナルドMk-IIを訝しげな顔でマジマジと見た。
「でも、ベルナルドさんって確か三英雄の一人だと聞きましたが・・・」
「英雄、色を好む・・ってやつなの?」
三人はベルナルドMk-IIを見た・・・
彼はパイロット席に座り、ウォパル管制と交信中であった、
それを見ながらベルマリアが呆れながら言った。
「零号には可笑しな知識情報が入っとるのう・・・ まぁ、実際の三英雄とは違うんじゃが、
ベルナルドとジグと姉の”ユリア”の三人を称して新三英雄と呼ばれていたのは確かじゃ・・・
・・・しかし、付き合っていた時は、そんなエロ好きな感じではなかったんじゃがのう・・・」
”付き合っていた”・・・その単語にベルリナの瞳がキラキラしてテンションがマックスになった。
「えっ、えっ、えーっ、二人はお付き合いしてたんですか? えーっ」
自らの失言に”しまった”という顔をしながらベルマリアは真っ赤になりながら答えた。
「・・・あ、い、いや、付き合う・・・というか、何というか・・・/// まぁ何じゃ・・・アレじゃ」
身を乗り出すベルリナをよそに零号が冷めたように姉を諭した。
「あー、多分、気づいてないのベル姉ちゃんだけだよ・・・ どんだけ鈍いんだか・・・」
「えーっ、わたし鈍くないもんっ・・・」
「鈍い」「鈍くない」で言い合いを始めるベルリナと零号・・・
しめた・・・とばかり、ベルマリアは咳払いをして、話を切り替えた。
「コボンっ、話をつづけるが、ベルナルドMk-IIはシステム書き換えして再起動する事でベルナルド本人として活動出来るようになっておる、今までは起動キーが”ワシの昏倒”であったが、今回からワシの認証だけで起動出来るように変更した・・ そう、ベルレーヌに対抗するためじゃな。
ただし、ベルナルドの時はフォトンバッテリーの消費が激しいため長時間の活動は出来ないのが欠点でもある・・・ これは憶えて置いて欲しいのじゃ。」
取っ組み合いをし掛かっていたベルリナと零号は首をベルマリアに向けると、返事した。
「・・・あ、はいっ!」
「うん、わかったよ」
その時、パイロット席からベルナルドMk-IIの声がした。
「ウォパル周回軌道に乗った、認証システム・オールグリーン。15分後には渡航ゲートに入れるぜ」
その伝達を聞いてベルマリアは、まとめに入った。
「さて、最後に・・・
今回のウォパルの臨海学校じゃが、実はベルナルドMk-IIの報告によると、ベルレーヌからの誘致が有ったらしいのじゃ、ベルナルドMk-IIの暴挙では無かったと・・・・? いや作為は感じるが・・・」
「えっ?、どういうことですか?!」
「つまり、逢いたいと言って来たってこと?!」
ビックリする二人、ベルマリアは続けるー
「真意は判らぬが降参した・・・ということでは無いと思うのじゃ。
ワシら三人で来いと・・・ 罠かも知れぬ、しかし行かねばならぬじゃろう、場所と時間まで指定してきておる」
「姉さんにもう一度会える・・・」
「次に会った時は・・・」
ベルリナ、零号二人の心に思う気持ちがそれぞれあった。
「時間は明後日の夕方、海上施設跡じゃ」
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