ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
・・・ふと、真っ白なフラッシュバックに、微笑むベルリナの笑顔が浮かんだ・・・
「先生っ、何してるんですか? また変なもの作ってるんでしょ・・・」
(あぁ・・・そういえばユリ姉も”こんな笑顔”をする人じゃったな・・・)
ベルマリアは、その穏やかでいて、少し天然な笑顔が大好きだった。
「あ、そういえば、今日はお弁当作って来たんですよ、あとで一緒に頂きましょう・・・」
(おいおい、いま戦闘中ではないのか?)
可笑しくなって声を出して笑いそうになった・・・・
・・・そうだ、ワシは知らずの内にベルリナ君にユリ姉の姿を見ていたのかも知れぬ。
ルーサーの言葉では無いが、ワシはユリ姉に憧れていた。大好きじゃった。
でも、羨ましくてチョッと悔しい事も多かった。・・・それでもユリ姉が大好きじゃった。
ーーーーっ!!
その時・・・
突然視界が真っ黒になり、微笑んでいたベルリナが背後から現れた巨大な手に握り締められた・・・
「ああっ、わきゃっ・・・、いやっ!!」
苦しむベルリナ。
(だめじゃ、やめろっ やめてくれ!! これ以上、ワシから大事なものを奪わないでくれ・・・)
「いやっ、やだやだ・・・・ あぁ・・っ!!」
苦痛に歪むベルリナの美しい顔・・・・
(ダメじゃ、頼む、やめてくれ・・・・)
手を伸ばしても何故か届かない。触れることも出来ない。まして助けるなど出来もしない・・・・
握り締められたまま暗い闇に引きこまれていくベルリナ・・・
「助けて、先生・・・助けてーーーーっ!!」
「やめるんじゃーーーーーーーーっ!!」
ベルマリアは目が覚めた。
天井の照明に向かって伸ばした手が宙を泳いでいた。
ハッとなり、辺りを見渡した。どこかの病室のようだが、妙に見覚えがある。
ーーーーシュッ!!
・・・そのとき病室の扉が開いて、誰かが駆け込んで来た。
「・・・所長、目が覚めたのですね、はぁ・・・良かった。もう大丈夫だ・・・」
入ってきた40歳くらいの男は安心すると、ベルマリアが寝ているベッドサイドの操作パネルを幾つか操作した。
「あれ?! 雅君じゃないか? ・・・そうか、ここはウルフェンシュタイン研究所・・・なのか?」
キョロキョロ見回すベルマリア・・・
「しかし、なぜワシは此処に居るのじゃ・・・・」
雅と呼ばれた男がベッド横のスイッチを操作しながらヒョイと顔を上げて答えた。
「所長とベルナルドさん、あと青いキャシールの娘が凄い大怪我で研究所前に空間転移してきたんです
連れてきたのが”例のベルレーヌ”だったので、どうしようかと思ったんですが・・・
事情はベルレーヌとベルナルドさんから聞きました。にわかに信じられない話ではありましたが・・・」
ベルマリアは、しばらく考え込んでいたが、急に思い出したように大声を上げた。
「おい、雅君っ! 今日は何日じゃ?! 、皆は無事なのかっ!? ・・・うっ、 痛たたっ・・・」
ベッドから急に身体を起こしたベルマリアは治りきってない身体が痛むのか
そのまま、うずくまって丸くなった。
雅はベルマリアを支えて言った。
「今日はアークス標準歴で30150604です。あと運ばれてきたベルナルドさん達は当研究所内の
所長のデータベースにあった最新資料から物理修理を終えています。全員無事です。」
「み、みんな無事か・・・ とりあえずは安心か・・・・」
バフっ!!
安心したベルマリアはベッドに再び倒れこんだ。
ーーーーシュッ!!
「ベルマリア ・・・起きたか?」
扉が開いて部屋にベルレーヌが入ってきた。
ベルレーヌも怪我を負っているようだが、比較的軽度に見える。 ・・・が疲労の色が濃い。
「すまんじゃった。ベルレーヌ、本当に助かった・・・ 礼を言う、ありがとう。
しかしお主がダーカーの能力で此処に全員を空間転移させたということは・・・アレじゃな?」
「さすがベルマリア、察しが良いな・・・ 今、私たちはアークスから追われる立場に有るようだ。私のせいだな、すまない・・・」
渋い顔をして、ベルマリアが両手を挙げて悔しがる
「いやぁ、まんまとルーサーに踊らされたワシの失態じゃ、気にするな。
・・・ったく、ルーサーという男、抜け目が無さ過ぎるな、可愛くない。
えーっと・・・ところで雅くん、キャストの2人はどんな感じなのじゃ?」
「物理修復は終わっていますが、パーツ損傷が激しかったため最終動作調整が上手いきません。
・・・所長が復帰されたらお願いしようかと思っていたところです。すみません」
真面目な雅は勢いよく頭を下げた。
「いやいや、上出来じゃ。ご苦労、あとはワシがやろう。場所はいつものキャス研で良いんじゃろか?」
ベルマリアが再びムクリとベッドから起き上がった。
「はいっ、お願いします所長。・・・でも大丈夫ですか? まだ休まれたほうが・・・」
ベッドから立ち上がるベルマリアを支えながら雅は心配そうに顔を覗き込んだ
「何言っておるのじゃ、時間が惜しい。完全凍結遺体を復帰させるのに掛かる期間は一週間程度・・・
つまり・・・逆に言えば、ベルレイン復活まであと三日しか無いという事じゃ、急がねばならぬ。」
ベルマリアはそう言うと、”よっこらしょ”という足取りでベッドから降り、
二人のキャストの居る研究室へ、ひょこひょこと歩き出した。
-- 第四キャスト研究室 --
ムーッ、ウムムーーッ。ガタガタ、ガッタン・・・
「うわっ、何じゃこれは?」
研究室に入ったベルマリアはキャスト調整台に”さるぐつわ”でグルグルに縛り付けられている零号を見た。
「今すぐ、助けに行きたいんだとさ、目が覚めてから、ずっと暴れてるんだ。仕方なく雅が縛ってたよ」
隣の調整台で横になっていたベルナルドが、首だけ向いて苦笑って答えた。
ベルマリアは涙目になって暴れている零号の”さるぐつわ”を解くと諭すように話した。
「お前、今のまま戦いに行けば、また操られるだけじゃぞ・・・」
ーーーーっ!
暴れていた零号は急に暴れ無くなり、その眼からボロボロと涙が流れ出した・・・
「でも、・・・でも。僕が、僕があんな事になったからお姉ちゃんが・・・ベル姉ちゃんが・・・ うっ、くっ」
零号の涙が止まらない、泣くなんて機能は無かったはずだ、学習型AIだとしても異様な光景だった。
ベルマリアは零号の顔をその薄胸に抱きしめ、やさしい声でつぶやいたー
「お主だけのせいじゃない。ワシも悔しくてハチ切れそうなんじゃ。
もう時間が余り無い・・・ 頼む、お主のチカラをもう一度、ワシに貸してくれ・・・」
零号を抱きしめる腕にチカラが入った。零号の眼から涙が止まり、ベルマリアを見上げ頷いた。
「・・・判った、何でもするよ、何でもやってやるっ! 必ずお姉ちゃんを取り戻すんだっ!」
ベルマリアは頷くと、そこに居た雅に向かって叫んだ
「今から半日で二人の調整と改造を終える。それに必要なパーツとマテリアルリストを出すから
雅君、今から調達を頼むっ! さいわい此処なら、何でも揃うしな、」
「わかりましたっ! 任せて下さい。」
雅は至って真面目な顔で返事をした。
「あとは・・・ ナベリウス凍土までの足をどう確保するかじゃが・・・・
ベルレーヌに今、空間転移を行わせるのは体力的に無理じゃろう? ・・・どうじゃ?」
ベルマリアは、疲労しきったベルレーヌに向かって投げかけると同時にベルナルドの調整を始めた。
「そうだな・・・ このクラスのダーカー能力は消耗が激しく、一度使うと回復に一週間は掛かる・・ すまん。」
ベルレーヌは眼を落とすと頭を下げた。
ベルマリアは暫く考えてー
「うーむ。アークス・キャンプシップが使えればのう・・・ 仕方ない、気乗りはせぬが親父殿を頼ってみるか・・・
雅君、本部長とのホットラインは使えるのかのう?」
「大丈夫です。所長のIDは凍結されてしまってますが、私のIDが使えます。」
雅は部屋の隅の通信端末のパネルを操作して確認した。
「いつもすまないのう・・・、雅君、認証呼び出しだけ、してくれぬか?」
言われた雅は通信機をホットラインモードに切り替えて、
アークス本部長”マーク・ウルフェンシュタイナー”との交信準備に入った。
(見てろ、ルーサー・・・ 受けた屈辱は250%にして返してくれるっ!)
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