ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
ここはナベリウスの凍土。しかし今は、もはや凍土ではない場所。
ここにある、雪を降らせていた北の大樹は青白く発光し、その根元の大地は緑が戻り、
本来のナベリウスの緑大地に戻りつつあった。
大気までは早急には変わらないのであろう、肌寒い風と降りしきる雪は、いつもと変わりなかった。
その地下の風穴ではルーサーによるベルレイン復活の準備が着々と行われていた。
あ・・・ あ・・・・ んっ・・・
生暖かく薄暗い風穴内に怪しく光る計器類の光・・・・ その光を見ながら、
ルーサーは酒をあおりながら、椅子でくつろいでいた・・・
・・・うぅ・・・あぁ・・・ あぁ・・・んっ・・・・
暗い室内に、艶っぽい女の声が絶え間なく響いていた・・・
硬い金属製のベッドに四肢を拘束され、沢山のフォトンケーブルを青いネイバークォーツの全身に取り付けられたベルリナから出され続ける喘ぎ声だった・・・
あぅ・・・ いやっ・・・・もう、もうっ・・・ あぁ・・・ん・・・ んんんんっ
揺れるブロンド・・・ 涙を溜めた光のない瞳、大きく息をするたび揺れる胸・・・
ルーサーはそれを見ながらグラスを傾けて冷ややかに笑った。
「さすがベルレインの巫女、フォトンが枯渇する気配が全く無い・・・
精々・・・解凍が完了するまで搾り取らせてもらいますよ・・・・ふふふっ」
ベルリナに取り付けられたフォトンケーブルの艶光は凍土大樹の光と同じものだった。
あぁん・・・・ うっううう〜んっ・・・・やだ・・・いやんっ。それ以上・・・吸わないで・・・
開いた口から涎がしたたり落ちた・・・・
凍土は緑が戻り始め、全ての凍結がいま、終わろうとしていた・・・・
(・・うう、動けない ・・・だ、誰か・・ た、助けて・・・零号ちゃん・・・ 先生っ・・・・・)
---------------------------------------
-- ウルフェンシュタイン研究所 --
「・・・うむ。そうじゃ、資料は暗号回線で圧縮していま送っているから、一読してくださらぬか?
あと凍土地区の特異点の場所とその資料も付けている、
・・・・ いや、此処で待機するつもりは無い、時間が無い。我々がルーサの野望を阻止する。
なので高速キャンプシップを一艇、よこしてもらえぬか?
出来れば装備の充実した最新型がありがたいんじゃが・・・」
ベルマリアは実父であるアークス本部長マーク・ウルフェンシュタイナーと交信していた。
「しかしな、マリア。アークス内部でもお前たちの反逆は映像と共に確定され、
いま、身動きすることは自らの首を縛る結果となるぞ。
・・・確かにアークス内でもルーサーのやり方に反目する者は多い、だが
仮にルーサーをお前たちで倒せたとしても、それを正当化できるかどうかも怪しい・・・」
ベルマリアはその言葉を聞くと”プッ”と吹き出し、笑いながら答えた
「親父殿は相変わらず、心配症じゃのう・・・ じゃが、
これは”ワシらナベリウスの白い花”の沽券に関わる問題なんじゃ
もう後戻りは出来ぬ、ヤツを阻止する・・・ いや、場合によっては倒す。
資料を開示して皆で決めてくれ、・・・じゃが時間が無い事は忘れないでくれ」
ベルマリアと話していた本部長は、腕を組み暫く考え込んだが・・・
やがて諦めたように、手を上げ、答えた。
「・・・ったく、誰に似たんだ、お前。母さんが生きていたら泣いて止めるぞ?」
しばしの沈黙の後、
「あははははーーーーっ!」
二人は大笑いした。
「ねぇ、あの二人、仲いいのかな?」
その会話をキャスト調整台で聞いていた零号がベルナルドに聞いた。
ベルナルドは遠い昔を思い出すように零号に話した。
「長官は昔からあんな感じだぞ、堅物で心配症で真面目で・・・
俺が初めてマリアの家に呼ばれて行った時は
ガチガチに硬くなってたわ、長官も俺も・・・ はははっ」
・・・と、思い出したように、本部長が話を始めた。
「・・・そうだ、二日ほど前からナベリウス凍土の凍結がすごい勢いで
氷解を始めているという報告を受けている、しかも調査に向かわせた者が全て行方不明になっている」
「やはりそうか、 ・・・あの不自然な局所的永久凍土はベルレインの遺体を冷凍補完するために
ルーサーが創ったものじゃったのじゃな ・・・ふーむ。やはり、もう猶予はないな
・・・すまぬ、親父殿 ワシらは行く、止めても行くからな、良いな」
「判った、キャンプシップは開発完了の最新型03-Xaがテスト用に理由を付けて回せるはずだ。
明日の朝にはそちらに着けるようにする。 あと、こちらでも何か手を打とう、 ただし評議会の爺を説得せねばならんので、動きは遅いぞ」
「上等じゃ、親父殿、見なおしたわい。」
ベルマリアは、ここまで強気な発言であったが、急に大人しい口調になって目を細めて実父に言った。
「すまん、親父殿。いつもいっぱい迷惑を掛けて・・・、感謝の言葉も無い。」
「何を言ってるんだ、子が親に迷惑を掛けるのは権利みたいなものだろう・・・ 頑張ってこいっ!」
「ありがとう、親父殿・・・ 行ってくる。」
ーーーーープツッ。 通信が切れた。
---------------------------------------
翌朝、アークス本部から最新鋭のアークスシップが到着した
それに合わせてベルマリアは徹夜で、零号とベルナルドの調整と改良を終えた。
眠い目を擦りながらベルマリアは新型アークスシップのブリーフィングルームに全員を集めた。
「ルーサーが零号のコントロールに使用していたリモコンは、中性子コントローラーと言われる特殊なものなんじゃ
このコントロールの弱点は到達距離が数百メートルしか無いという点だけでコントロール波の劣化が ほぼ無くジャミングも完全不可なんじゃ、コントロール波はカット出来ん。
そこで、そのコントロール波を打ち消す方法として、もっと強いコントロール波で上書きする
という方法を取った、短時間で対抗するにはそれしか方法を思い付かなんだ」
ベルマリアはクマのできた眼を擦りながら全員に説明を行った。
「あー、良くわからないんだけど、簡単に説明してくんない?」
零号がチンプンカンな顔をしながらベルマリアに聞いた。
「ふうむ・・・ そうじゃな。簡単に言うと、ヤツのコントロール波を受けると
その”大きさに比例して激痛が起こる” という感じじゃな・・・」
「えーっ、痛いの? もう少し何とかならなかったの?」
「無理言うな、中性子コントローラーは今のところ世界で唯一のノンジャミングが売りなんじゃからなぁ」
それを聞いて、零号は暫く考えていたが、おもむろに顔を上げニッコリ微笑んだ
「うん、それで良いよ、頑張る。痛いのも耐えて見せるよ、 おかあさん・・・・」
ベルマリアは、一瞬”おかあさん”という言葉に”ハッ”となったが、咳をして話を続けた
「お、おか・・・ あ、いや・・ コホンっ。
ベルナルドに関しては、単純に高性能超小型のプロペラントタンクを取り付けた
鬱陶しいとは思うが、全力可動でも通常のキャスト並に動けるはずじゃ」
「うむ。・・・ただ、少し重心位置が変わる関係で慣れが必要になるな・・・・」
ベルナルドは背中についた小型タンクを見て呟いた。
「何でもこの最新鋭のアークスシップには、VRシステムもついておるらしいぞ、
ナベリウス到着まで約半日はある。それまでに慣れてくれ、頼んだぞ・・・
・・・しかし、ワシも驚いたわい、最新鋭機。・・・親父殿、ありがとう。感謝するぞ」
ふーっと。ベルマリアは暫く下を向いていたが、顔を上げて、皆に叫んだ。
「ベルリナ君を助けに行くぞ、皆、ワシに付いて来てくれっ!
・・・あー、すまん。ワシは寝る。 もう限界なん・・・じゃ・・・」
バタッ・・・・
ベルマリアはその場で突っ伏す様に眠りに落ちた。
それを抱きかかえるように、支えながらベルナルドは言った。
「ご苦労さん、マリア・・・今は、ゆっくり休んでくれ」
(C)SEGA PHANTASY STAR ONLINE 2