ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花”   作:ナベ白製作委員会

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第二十八話「ルーサーの誤算」

「うぐっ、うあぁぁーーーっ」

 

強力なコントロール波を受け、激痛で頭を抱えて苦しみだす零号。

耐えかねて、その場に足を折り、膝立ちで、耐えていた。

 

「零号、大丈夫か? しっかりしろっ!」

前に出たベルナルドMk-IIが心配そうに零号に振り返った。

 

「馬鹿ね、姉さん、そんな小細工でルーサー様の勅令から逃れられると思って?」

ブラック・シャドウは率いた量産型を前面に出し、迎撃体勢に入った。

ベルナルドMk-IIとベルマリアは量産型と対峙した。

 

「うううう・・・・、く、くそぅ・・・ こんな痛みなんかで・・・」

零号は痛みに耐えて眼を閉じた。

・・・その時、零号の後ろから叫び声がした。

 

「どうしたっ!  お前のベルリナ君への想いはその程度のものじゃったのかっ! しっかりしろ!」

そう叫んだベルマリアの顔は、優しく厳しい母の顔であった・・・

 

(くっ・・・そうだ、こんな痛みがどうしたっ! 

僕はこんな痛みに負けるワケにはいかない・・・お姉ちゃん・・・ お姉ちゃん)

 

膝立ちだった、零号はフラフラと、だが大地を踏みしめて立ち上がった。

零号の全身から紅いフォトンが噴出し始めた・・・ Spiritual・Linkage!

 

・・・だが、零号は真紅に染まらない・・・ リミッター解除出来ずに青いままだった。

 

「はぁ? 何やってるのよ?  あのベルリナとかいう巫女は、

いま昏倒状態でリンケージなんて取れないわよ?馬鹿じゃないの? あははーっ!!」

 

ガシィっ!!

ブラック・シャドウは面白がって零号の顔を思い切り蹴った。

「ぐわっ!!」

ゴロゴロと転げ、頭を抱え、痛みに耐える零号・・・

スピリチュアル・リンケージを始めた零号だったが、そこにベルリナの心を見つけられなかった。

 

「リミッター解除出来ない姉さんなんて、ゴミ以下ね・・・ あははーっ!!」

今度は零号のボディにガシガシっと強く蹴りを入れはじめた。

 

「くっそーっ、いい加減にしろっ!!」

ベルナルドMk-IIは手持ちの銃剣でブラック・シャドウに斬りかかった。

 

「あはははっっ・・・ 面白いわーっ!!」

後ずさり、高笑いするブラック・シャドウ

 

苦しみに耐えていた零号・・・

暗闇の中、いくら探しても 愛おしい姉の心が見つからない・・・

もう・・・絶望しか、無いのか・・・・

 

「・・・・んっ?」

 

・・・ふと、真っ暗だと思っていた自分の心の隅に影をも映さない暗闇が有ることに零号は気がついた

 

(以前、お姉ちゃんの心の中に見えたやつだ・・・)

 

その暗い闇を彷徨う内、零号フルデジタル・キャストが見たものが夢か記憶かは不明だが・・・

忘れ去ったはずの、壊れて消滅したはずの記憶を零号は心の中に見た。

 

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-- 過去 -- アークス第四研究所 --

 

「なぜ・・・部屋が燃えているんだろう。 火事かな?大変な事になっているような気がする・・・・」

目覚めた零号は目の前に燃え盛る炎を見た。

 

零号は身体を起こそうとしたが、手足に何か拘束するものが有って動けない・・・

・・・・と、近くから叫び声が聞こえる。 ・・・何処かで聞いたような声だった。

 

「何故、邪魔をするベルリナっ! コレはお前が一番、嫌がっていた兵器開発なのだぞっ!」

 

「そんなのわかんないよ、でも・・・もう、この人には命が有るんだよ、ベルレーヌ姉さん。

生まれたものが意味なく死ぬなんて、絶対おかしいよっ!」

 

「何が”ひと”だと言うのだ? こんなもの只の殺戮機械兵器では無いかっ!

どうしても邪魔をすると言うなら、お前から先に倒すっ!」

 

兵器? ・・・機械? ・・・ 倒す?

 

零号はメモリをたどってみた・・・ 

その記憶が創られたものなのか自分が体験したものなのか?

・・・良く判らなかったが、・・・僅かに、わかった事がある。

 

自分の身体がキャストと呼ばれる機械であり意志を消されたロボット兵器であること。

ベルリナと呼ばれた女が自分のDNA提供者である事。・・・そして、

殺戮兵器 と言われたのが自分、アークス研究所所属 形式番号”BP-01 試作零号”というもので有る事。

 

ついに目の前の二人は戦い始めた。

ベルレーヌと呼ばれた褐色は大剣を振り、

ベルリナと呼ばれたブロンド髪を圧倒していた・・・

・・・いや、ベルリナには戦う意志が感じられない。止めたいだけのようだ。

 

(無茶・・そんなの ・・・・無理。)

 

キンッ!!

手に持ったウォンドを弾かれて、ベルリナが吹きとばされた。

 

(あの人、殺されるな・・・・)

 

零号は心の中に感情のない状況を描いた・・・ 

(何をやっているんだろう、このベルリナという女は。

僕が壊されたところで、この機械の意識が消えるだけじゃないか・・・。

まだ僕には指令が与えられていない、いま息絶えても問題ない・・・)

 

それでも ベルリナという女は大剣をギリギリで躱して姉ベルレーヌに向かって叫ぶ

 

「あうっ!! ダメーーーっ。零号さんは壊しちゃだめーーーっ。」

 

(余程の馬鹿か? 合理性に欠ける。・・・人という生き物は判らない・・・)

 

「姉妹で殺しあうなんて、絶対ダメなんだから・・・ あうっ!!」

 

大剣の斬撃が当って、ベルリナが倒れた。

シールド係数が赤く見えるが、もう昏倒どころか死亡する直前に見える・・・

 

ーーーーーーーードクン!!

 

その時、零号の心の中に意味不明な気持ちが芽生えてきた。

(なんだ・・・ コレ・・・?)

 

「きゃぁーーーっ」

 

(殺させてはならない・・・・ この人は、僕が守らなければならない・・・)

 

「さらばだっ! ベルリナっ!」

 

・・・その時、零号の心の中で何かのスイッチが入った・・・

自視界の左上のステータス表示横に何やら微かに緑色の文字が点滅し、

やがて浮かび上がった。

 

スピリチュアル・リンケージ・・・? 何だ? これは・・・

 

・・・・あの人”ベルリナ”は僕を守ろうとして、命を掛けている・・・

そうだ・・・ 僕はこの人を・・・姉を守るのが 僕の生まれた理由なんだ・・・

守らなければいけない・・・ その理由は判らないが、

僕は自分の意志で守らなければならないっ!

きっとプログラミングされていたんだろう・・・でも、それが僕の使命ならは・・・

 

(手足の拘束が邪魔だが、引きちぎれるぞ・・・・ こんなもの・・・)

 

「や・・・・、や・・・め・・ろ、 ・・・その人から離れろ・・・・ぉぉ」

 

第四研究所の調整台上で当時起動すらやっとの筈の

”ベルリナ試作零号機”は突如再起動し、ベルレーヌに向かって言葉を発した。

 

「・・・・えっ!?」

「・・・何っ!!」

 

驚いた二人は、その場で固まり、零号が横たわる調整台を見た。

調整台上の零号は、手足の拘束や接続されていたケーブルを引きちぎり、

ぎこちなく上半身を起こし、近くの台上にあったアサルトライフルを手に持ち言葉を続けた・・・

 

「その人を殺させは・・・しない・・・ それが僕の生まれた理由なんだ・・・」

 

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-- 惑星ナベリウス凍土エリア 特異点 --

 

零号は思った・・・

 

ベル姉ちゃんの心のなかに見えた黒い影・・・

あれはお姉ちゃんの中に残っていた”僕への記憶”だったんだ・・・

僕が生まれて第四研究所でベルレーヌと戦って、壊れて、

あの時の”気持ちの”記憶を忘れていたから、ブラックアウトしていただけなんだ。

黒い影は僕の心の投影だったんだ・・・

 

ふと、零号は思い出していた・・・いままでのベルリナとの生活や冒険を。

「零号ちゃん、ダメじゃないっ! そんなこと言っちゃ。」

怒られることも度々あった。

 

「あははっ、楽しいね、零号ちゃん」

楽しく遊んだ事もいっぱいある・・・

 

「どうしよう? 零号ちゃん・・・」

一緒に悩んだ事もあった・・・

 

確かに、僕が”お姉ちゃんを守り、利用されるため”に造られたのは

あいつ・・・”ルーサー”の計画だったのだろう・・・

 

「だけど・・・」

 

この心の中にある”温かい気持ち”は造られたものじゃない。

この想いがある限り、指示されて動くだけのロボットになんてなったりしない! 

そうだ、僕はベル姉ちゃんを守るために、生きているんだ。

僕が望む僕の心・・・ 僕は誰にも動かされたりしない。

そのためなら、どんな困難にも打ち勝ってみせるっ!

たとえ、この生命が尽きようとも・・・・ 絶対にベル姉ちゃんを守るっ!

 

「べ、ベル姉ちゃん・・・・っ!! んっ・・・・!!」

 

ヒュイィィィーーーンっ!!

零号の噴出する赤いフォトンが色濃くなり、それがボディを真紅に染め上げる。

自視界のステータスに浮かぶ従来の”金色”では無い

更に光輝く”虹色の-- LIMIT BREAK spiritual linkage--”の文字

 

「ぜ、零号・・・ お主・・・」

ベルマリアは零号が自力でコントロールの呪縛を離れリミッター解除した事に驚いた・・・だが、微笑みながら頷くように呟いた・・・

「・・・・分かっていたぞ、お主はベルリナの妹じゃからな・・・」

 

その様子を見ていたブラック・シャドウは慌てた。

「な、何でリミッター解除出来るの? おかしいじゃない?

 ルーサー様はリミッター解除は絶対無いと言ってたんだっ!!」

 




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