ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花”   作:ナベ白製作委員会

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第二話「侵食豹牙」

ベルリナと零号、調査団一行は高原地帯から長い洞窟を抜けようとしていた。

暗い洞窟は出口に近づく程に、徐々に染みるような寒さを感じるようになってきていたー

「おーい、全員防寒着を着用しろー」

調査団長はそう言うと、自分用の防寒着を腰のアイテムパックから出した。

腰に付いたアイテムパックは衛星軌道上にあるキャンプシップと連絡されており、

キャンプシップに登録してあるアイテムは、いつでも瞬間的に手元に物質転送受け取りが出来るようになっている。

・・・学者達がせっせと防寒着を着こむ中、ベルリナ姉妹は露出も多いままの姿で先行している。

「・・・あ、あの妹さんはともかく、ベルリナさん、寒くないんですか?」

余りの寒さに震えた学者の一人が思わず、ベルリナに訊ねた。

妹であるベルリナ試作零号機は、”ともかく”という言葉に少しムッとなっていたが、

寒さなど気にしないベルリナはその声に振り向きながら

「私たちの全身はフォトンコーティングされていますから、温度調節とか不要なんですよー」

と微笑みながら返事をした。

「オジサンたち一般人とはフォトンの出力が違うんだよ、フンっ!!」

零号は鼻息荒く自慢げであった・・・・

 

アークスに支給されるスーツは着用者の体内から発せられるフォトンを利用して身体の新陳代謝、体温のコントロールを行うほか、

ハードポイントに装備される防具や使用される武器等にそのフォトンを安定供給する機能を持っていた。

スーツ自体の機能は、ほぼ既に完成されたものなので、使用者は自分の気に入ったデザインのスーツを着用するのがアークス内の流行(はやり)となっている。

ただし、武器や防具はフォトンの個別適正があるため、個人の選択になるのであった。

それはキャストでも同様であったが、食事を必要としない分、関節部等を動かす基本電源にフォトンバッテリーを使用していた。

 

出口に近くなるにつれ、そこから差し込む光が白く眩しいものになってきて・・・ やがて視界がひろがるとー

そこは一面白銀の完全凍土であった。

「う、うぅぅ・・・・」

学者の一人が慌てて防寒着のフードを被り直した。

 

惑星ナベリウスは平野部は温暖な気候であったが、それに連なる高原山岳部は地球で言う熱帯とも言える森林に覆われていた。

だが、その山岳部のごく一部に”凍土地帯”と呼ばれる局所地域が存在していた。

”凍土” ー 氷河期を思わせる氷に覆われた大地と降りしきる白い雪、重防寒服でなければ生きて帰るのは不可能とまで言われている。

「・・・・しかし、あいかわらず雪なのね、ここは・・・・」

ベルリナは遥か遠く北にそびえ立つ碧い大樹を眺めながら呟いた。

大樹の枝先は雪雲に隠れて見えないほど空に広大で”深々と降りしきる粉雪はこの樹から舞い落ちている”とまで言われている。

この不思議な気候の根源とも言われているのがこの凍土地区の中心にある碧い大樹なのであった。

 

学者の一人が計器をみながら言った。計器が指し示す先は、北の大樹であった。

「・・・どうやら、あの樹の元に磁場変動の特異点と思われる場所があるようです」

「ならば、行って調べてみるしかないか・・・」

キャンプシップと通信を行っていた調査団長は顔をあげて答えた。

 

「最近さー、ちょっと暴れ足りないって感じだし、ダーカーとか出てくれても良いのになー」

零号の、その不謹慎とも思える発言に、調査団一同、ビクッとなったが、ベルリナは冷静に答えた

「もう、零号ちゃんったらー ご心配なく、私が必ず守ります。」

(別に僕が呼び出すわけじゃなんだけど・・・ プンプンっ)

 

一行は先を目指した。幸い今日の凍土の気候は比較的穏やかで、粉雪が舞う程度ではあった。

零号が何かの曲を鼻歌で歌っていたその時、前方の小高い雪山が突然四散し、雪が舞い上がり一面、真っ白になった・・・・

あまりのことに、調査団全員の動きが止まったが、零号は身構え叫んだ!

 

「何か、来るよお姉ちゃん! 強い、感じる・・・殺気だ!」

「皆さんは、そこの岩陰に隠れて、テレパイプでキャンプシップに一端、戻って下さい!、はやくっ!」

ベルリナは導具、零号は双機銃を手に持ち、盾になるべく前に出ていった。

調査団長はアイテムパックからキャンプシップ帰還転送装置を起動する”テレパイプ”を使用した。

テレパイプが起動するまでには5〜10秒ほど掛かる・・・ その僅かな時間すら長く感じる・・・

やがてテレパイプがキャンプシップと連絡し、次々に調査員たちが転送されていく・・・・

 

「奴だ、スノーバンシーだ、どうする? お姉ちゃん?」

 

スノーバンシーは、この凍土エリアに住む全長15mにもなるネコ科の豹にも似たモンスターであった・・・が、

こちらから悪意を以て攻撃しない限り襲い来ることは無いはずであった。だが・・・・、

ベルリナは左手を左目にかざし、出したグラス型計測器を見ながら叫んだ。

「ダーカー侵食度90%以上。攻撃対象承認されたわ!」

「つまり、殺っちゃって良いってことだね、えへへっ」

零号は待ってましたと言わんばかりに愛双機銃にフォトンをチャージしながら突進する。

スノーバンシーの肩口にはダーカー侵食核が取り憑き、その眼は真っ赤に血走っている。

その恐ろしいまでの殺気と野生の叫びは並のアークスなら逃げ出す程である。

「バックアップ頼む、お姉ちゃん!」

そう言うと、零号の身体が宙に浮いた。スノーバンシーの前足による初撃を躱し、空中にジャンプ側転した。

双機銃特有のアクション”スタイリッシュロール”である。

「零号ちゃん、シフデバ(補助) いくよ!」

「エルダーリベリオン!」

零号の双機銃が火を放つと、いま襲いかかってきたバンシーの前足の爪を破壊する!

スノーバンシーは仰け反りながらも立て直し、怯むこと無く零号に襲いかかる。

スタイリッシュロール(空中側転)で回避した零号は続けざまに後足の爪を目掛け最大火力で畳み掛ける

バッバババ・・・バンバンバンッ!

「どうだ、これで爪なし、飼い猫だー!」

零号が放ったPA(フォトンアーツ)が正確に後足の爪を吹き飛ばし、スノーバンシーは氷上で足を滑らせもがいている。

「グググォォーーッ・・・」

何かを呼ぶような悲しい悲鳴にも似た声を上げるスノーバンシー。

「何だよ、あっけない・・・ これで終わりだ」

空中より着地した零号が銃を構えたその時、ベルリナが叫んだ。

「ダメっ零号ちゃん、もう一つ来る。ダーカー侵食度100%!」

「グォォォーーーッ!」

その瞬間、立っていたはずの零号の身体が空中に吹っ飛んでいた。

「・・・ぐっ!」

ダメージを受けた零号のフォトンシールド係数はイエローゾーンにまでなっていた。

「クッ、痛ててぇーーーっ」

よろよろと立ち上がる。吹き飛ばされ、見上げた零号の目にはスノーバンシーより大きな爪と牙、そして更に血走った二つの眼が有った・・・

 

(スノーバンサー・・・ )

凍土エリアに住むスノーバンシーの雄型、スノーバンシーとスノーバンサーは良く”番い”で行動することがあるが、同時に2体ともダーカーの侵食を受けているのは珍しい

もともと攻撃性の低い雌のバンシーに比べ、雄のバンサーは比べ物にならないくらい凶暴だった。そのうえ二回りは大きい。

「零号ちゃん、大丈夫? レスタっ!」

ベルリナが投げた投擲か零号の近くで光を放つ、削られたフォトンシールド係数がみるみるグリーン色で満ちていく・・・

「くっ、油断した・・・。お姉ちゃん、ありがとー、もう怒ったんだからーっ! 」

零号は続けざまに襲いかかるスノーバンサーの猛攻をスタイリッシュロールで回避して、着地の瞬時に長銃に持ち替えた。

さらに手元から真紅の弾丸を長銃に充填した。

「ウィークバレットっ!」

長銃から発射された弾丸はバンサーの顔面を捉え、着弾点に赤いマーキングが形成される。

カチャっ!

間髪入れず、再び双機銃に持ち替え、ブンブンという鋭い爪のパンチの嵐を巧みに躱しながらありったけのフォトン光弾をバンサーの顔面に叩き込んでいく。

「おりゃ、おりゃーーっ!」

先程のバンシー戦の時とは違う通常攻撃のようであったが、その着弾点には”キンキン”という金属音にも似た音と共にブルーのチェイントリガー・マークが浮かび上がっていた。

見る間に着弾しているマーク部位にはフォトンが充填されていくー

更に襲いかかるスノーバンサーの牙を巧みに紙一重に避けながら零号の身体が弾丸を放ちながらクルクルと空中に翻った。

「サテライト・エイム!」

ババババーーーッ。 充填されていたフォトンが一気に爆発的なダメージを与えた。

それは、まるで回りの風景やエネミーがスローモーションに見える程の速さであった。

「ぐぉおぉ~~っ」  ・・・・・・ ズダーーーンッ

一瞬にしてスノーバンサーは倒された。

「どんなもんだいっ!やったーっ」

 

その間、ベルリナは爪を無くしたスノーバンシーに向かって攻撃テクニックを唱えていた。

スノーバンシーも爪を無くしたとはいえ、噛み付かれればタダでは済まない・・・

導具から長杖に持ち替え、攻撃を躱しながら呪文を紡いでゆく・・・・

それは、まるでステップを踏むレディの様に軽やかで優雅な舞にすら思えた。

(乗となれ、痛み・・・・苦痛。燃え盛れ闇の炎・・・・・)

スノーバンシーの額に白紫の魔法陣が広がってゆく・・・・・・・

「ナ・メギドっ!」

ベルリナが、そう叫ぶと一気にフォトンが開放され、フォトンが爆発した!

倒れるまでも無く一瞬でスノーバンシーは文字通り蒸発して消え去った。

・・・・そして、辺りに満ちていた殺気も消え去ったのであった。

 

「これは・・・ どういうことかしら? ・・・・零号ちゃん大丈夫?」

ベルリナは長杖をアイテムパックに収めながら零号に声を掛けた。

「わかんない、凍土の浅い地域でここまで高いダーカー侵食、初めてだよね? お姉ちゃん?」

白い氷原に残された二人に雪がやや強く降り始めていた・・・。

 

その場のデータやサンプルを拾ったベルリナ、零号はテレパイプを使い、一端キャンプシップに戻った。

危険度から言って今のメンバーでの、これ以上の調査が不可能で有ることと、報告のため一端、アークスシップに戻るためだ。

アークスシップはアークスの本部であり基地(ベース)である。

 

ナベリウス惑星周回軌道上、キャンプシップの転送装置から二人の女性のシルエットが現れた。

「おぉーーっ、お二人とも、ご無事でしたか?心配していたんですよ、 さすが”ナベリウスの白い花”だ」

先にキャンプシップに戻っていた学者たちが無事帰還したベルリナ達を笑顔で迎えた

「フン、あんなもん、ちょろいもんだよー」

零号は久々の大型エネミーとの戦闘という事もあって、やや興奮気味であった

「最近はまともな戦闘とか無かったから、身体が鈍っちゃって、すっかり動きが固かったよー」

さすがに”吹っ飛ばされた事”は言えない零号に少し呆れ顔の調査団長だったが、

「ナベリウス凍土で何が起こっているのかは、とりあえず調査で採れたサンプルとデータをアークス本部に持ち帰り解析して調べて頂きましょう」

そういうと、早速、ベルリナから転送で送られたサンプルとデータの整理に掛かろうとしていた。

妙な胸騒ぎを感じながらベルリナは自分に言い聞かせるようにその場に居た全員に言った。

「・・・・そうですね、あとこの先の調査は多分私たちアークスの仕事になるでしょう・・・。 危険度から言って」




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