ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花”   作:ナベ白製作委員会

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第三話「ぬりえとベルリナ」

次の日、ベルマリアの研究室には、アークスを始めとする沢山の人でスシ詰め状態であった。

・・・皆、この日を待っていたのだ。今日、この日、零号の修復が終わり初めて炉心に火が入る。

 

「先生・・・ どうですか?」

 

カタカタカタ・・・・ 昔ならキーボードから そんな音でもしそうな感じの指さばき・・・

ベルリナが覗きこむ先で、ベルマリアがキーボード操作しながら沢山のモニターとにらめっこしていた。

 

「・・・・主電源電圧正常、炉心開放・・・、パワープロセッサ正常、反応炉運転開始・・・ 臨界プラズマ値到達、NFC臨界到達、スェリング値、冷却水温正常、モニター・オールグリーン・・・・よしっ、いけるぞぃ!」

 

ベルマリアが”ニコッと”コレまで見たことないような笑顔でベルリナに微笑みかけ、そしてーーー

「BP-01(ゼロワン)改:ベルリナ試作零号機・・・・ 起動っ!」

 

周りの機器がウィィィーーンと唸りを上げ始めた。

一般のキャストがフォトンバッテリー(電池)で稼働しているのに対して。

零号は元々マイクロ核融合炉を搭載し、可動限界時間と出力を大幅に向上させていたが、

ベルマリアは破壊された零号の機体に搭載されていた融合炉とモーター類を一新し、

従来の零号の出力を理論上、倍にすることに成功していた。

 

調整台上にベルトで固定されていた灰色の”ベルリナ試作零号機”の機体・・・

そのボディに通電を意味する電圧強化装甲が色付き始めた・・・

それは、かつての弱い零号のブルーでは無く、リミットブレイクした時の零号の強い赤色そのものであった。

 

ヒュウウ〜〜〜〜ン・・・・・

やがて、周りの機器が起動の役目を終えて運転収束し、静かになっていく。

 

シーーーーーーン。

 

皆が見つめる中・・・キャスト特有の駆動モーターの音が微かに聞こえ始め、その、まぶたがユックリと開かれた。

「・・・・・・!?」

零号がパチっと眼を開けた。

 

「〜〜〜〜っ!!」

ほとんど音になっていない発音で出たその言葉を聞いてベルリナが破顔した。

 

「・・・あれ? 随分広角に見えるんだな・・・・って、あ、ボディが変わってるのか・・・・・」

零号は首だけ動かすと周りを見回した。

 

「零号ちゃーーん!!」

堪らず、抱きつくベルリナ、周りから上がる大歓声!!

 

「おおおおーーーーーーっ!!」

「やったーーー!!」

「お帰りなさい、零ちゃんさんっ!」

 

「機体固定解除、・・・・おい、ベルリナ君! 離れんと怪我するぞ!」

ベルマリアは至って冷静にベルリナに話しかけた。

 

「あ、はいっ、でも、 ・・・すみません先生、あははっ!」

注意されてもベルリナは破顔し、抱きついたままであった。

 

零号を固定していたベルトがカシャカシャと外れた。

端末で操作していたベルマリアが、調整台にユックリと歩み寄り、そして零号にやさしく声を掛けた・・・

 

「おかえり、我が娘・・・零号・・・・・」

 

うおおおおおーーーーーーーっ!!

更に上がる歓声、飛び交う祝福の声々・・・

 

「ただいま、何でみんな、そんなに喜んでるの?

・・ん?・・あれっ?、このボディ・・・やけに軽いな・・・・」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝・・・・

ぬりえのオーダーのためにゲートロビーへ向かうベルリナとベルマリア。

昨日のうちに本部に申請して、アムドゥスキア行きのキャンプシップを調達してあったのだが・・・

 

「う、痛たた・・・、誰じゃ酒とか持ち込んだのは・・・前世の代物じゃぞ、あれは。

これが二日酔いというものか・・・・、噂には聞いておったが・・・・」

ベルマリアは頭を押さえつつ、キャンプシップ発着場に向かって歩いていた。

 

「私はお酒? 大丈夫でしたよ、先生。」

 

ベルリナはフラフラ歩いているベルマリアを支えながら歩いていた。

 

「不覚じゃ、仕事前じゃというにここまで潰れるとは・・・・アークス失格じゃわい・・・・ いたた・・・」

 

「あははっ・・・・先生でも苦手なものがあるんですね!」

「いや、普通に苦手は有るぞ、100億年も生きてる御器目の昆虫とかな・・・ うぅ・・ぶるぶる」

 

二人は、てくてく歩き、待ち合わせのカウンター前に到着した。

遠くに緑の双葉リボンがみえたー

 

「おはようございますっ! ベルリナさんっ、マリア先生っ!」

少し離れた場所に二人を見つけたぬりえが仔犬のようにブンブンっと手を振った。

朝から元気いっぱいである。

 

「うぇぇ・・・。何故かワシ、ぬりえ君は苦手じゃわい。ベルリナ君・・・宜しく頼んだ」

ベルマリアは、顔をしかめるとベルリナにアイコンタクトした。

 

「はいっ! 任せてください!」

ベルリナは元気いっぱいの声を出した。

 

「うっ、ベルリナ君・・・ あまり大きな声を出さんでくれぇ・・・」

ベルマリアが涙目で呟いた・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

三十分後

三人を乗せたキャンプシップはアークスシップ2番艦を出立した。

 

「航路セット、惑星アムドゥスキア周回軌道プライベートコース、航海認証:P-00119875登録、

20分後に亜空間航行に入るぞぃ、全員シートベルトを着用じゃ!」

ベルマリアがキャンプシップのコックピットに座り、自身のアークスカードをかざし、航路登録した。

 

ベルリナはぬりえがシートにきちんと着座したのを確認し、話しかけた。

「到着まで小1時間ってところかな・・・ ところで、ぬりえちゃん?」

 

「はい? 何ですか?ベルリナさん」

胸に掛かるシートベルトの位置を気にしながらぬりえが答えた。

ベルマリアはコックピットで本部と何か通信しているようだった。

 

「ぬりえちゃんは研修候補生だからクラス登録まだだろうけど、何を選ぶつもりなのかな?」

シートベルトを付けたベルリナは首だけぬりえのシートに向けて話し始めた。

 

「う~~ん。クラスですか・・・」

気軽に聞いたベルリナであったが、ぬりえは少し真剣な顔になり、俯きそして続けた

「あたし、クラス適正試験受けたら、実は全部落ちてダメだったんですよ・・・

 ”卒業したら本部事務にでもなりなさい”・・・って言われて。

・・・ 才能無いんですかね? ・・・あははっ・・・」

 

ベルリナは”しまった!!”っという顔になったが、それでもぬりえに尋ねた

「・・・それでも、アークスになりたいのは何故? 何か夢があるのかな?」

 

ベルリナはフォローするつもりで話を続けたが、

その言葉を聞いたぬりえは暫く俯き、本当に黙り込んでしまった。

 

(・・・ん?)

通信中であったベルマリアも妙な沈黙に気づいて後ろの二人を見た・・・

 

(あれ?またやっちゃったかな・・・)

 

と思ったベルリナが謝ろうと、

「ご、ごめん、別に話したいことじゃなければ・・・」

ぬりえに声を掛けようとしたその時、ゆっくりと、ぬりえが話しはじめた・・・・

 

「うち・・・おじいちゃんがアークス、嫌いなんですよ。・・・詳しい理由は知りませんけど

親の敵ぐらいに大嫌いなんです・・・」

ぬりえは、ボソっとそれだけ言うと、また俯いてしまった。

 

コックピット席からベルマリアが声を掛けようとしたが、ベルリナの眼を見てから、

(・・・ここは若い者同士に任せたほうがいい・・・かのう?)

と、声を掛けるのをやめて、耳だけそちらに向けた。

 

「おじいちゃんって、マシロ工業の会長さんだよね、アークスにも製品提供してるのに嫌いって・・・」

ベルリナはぬりえの顔を見た。

ぬりえは無表情なまま、何かを考えている様子であったが、何か決心したような顔でベルリナにしっかり答えた

 

「おじいちゃん、アークスを無くしたいんですよ、そのためにアークス製品を専有したがってる

そのうち・・・おじいちゃんが何かとんでもない事をするんじゃないかって、心配で・・・

昔は優しいおじいちゃんだったんです・・・・。 でも、あたじゃ、おじいちゃん止められないし・・・」

ぬりえは悲壮な顔で答え続ける・・・

 

「お兄ちゃんも、同じでおじいちゃんに昔に戻って欲しくて、大反対されたのにアークスになった・・・

それで、説得してた・・・ だけど、事故で意識不明になっちゃった・・・ 、あたし、もう、どうしていいか分からなくって・・・」

ぬりえはまた、ボロボロ泣き始めた・・・

 

(・・・あれ、私と同じ?)

ベルリナはぬりえに昔の自分を見ていた。

 

姉のベルレーヌの気持ちも知らずに、ただ行動を止めたくって、チカラ任せに頑張っていた・・・

誰かを助けたいのに、自分のチカラが足りない・・・ そんな悲しみは一番つらい・・・だけど

チカラを求めるためだけにアークスになろうとしている、

ひとりで背負い込もうとしている ぬりえは間違っている・・・

今なら判る・・・ 相手を理解する事が先なんだ!

 

(・・・今重要なのは、私がそれを止めることじゃないよね!)

 

何かを決心したベルリナにもう、迷いは無かった。

この娘のチカラになって、この娘自身に解決させてあげよう!

もしかしたら、そこから自分、ベルリナ★プファンクーヘンの存在意義が見えてくるような気がしたのだー

 

「・・・そう、わかったわ。おじいちゃんの説得は私も協力する・・・

でも、とりあえずお兄さんを助けるのがが先ね! がんばろうよ! 私も協力するよ」

 

「ーーーーーーーーー!」

ぬりえは、びっくりした。

そんな答えが返ってくるとは思わなかったのだ・・・

 

「あれ? ベルリナさん、皆みたいにバカにしないんですね・・・ 変な人だ・・・」

ぬりえはバカにした言葉を吐き出したが、その顔は嬉しくて涙が浮かんでいた。

 

広がる沈黙・・・ 

だが気まずさはもう無かった。

 

「コホン、おふたりさん、亜空間航行に入るそい! 喋ってると舌噛むぞ・・・ ふひひっ」

ベルマリアは見てないフリから二人に声を掛けた。

 

浮かんだ涙をこすると、ぬりえはベルリナをみてから、ベルマリアに返事した。

 

「はいっ!! マリア先生。見ててください! あたし頑張りますよーっ!」

 




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