ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花” 作:ナベ白製作委員会
当時、ぬりえはマシロ工業会長の愛娘”真白ふみえ”の初娘として産声を上げた。
初孫娘であった”ぬりえ”は随分可愛がられた。
「おじいちゃーん!」
転がるように真白光雄のもとに走る、ぬりえ・・・
ぬりえには兄が居た。名前は”アキラ”。
もちろん、マシロ工業の後の後継者ともなろう兄は会長や社長である父の英才教育を受けて育った。
その関係か、兄は非常に冷徹な性格であった。
「お兄ちゃん、遊ぼ?」
「あ?・・・あぁ、またな・・・」
それでも、ぬりえは爺ちゃんである光雄が、兄のアキラが大好きであった。
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「おにいちゃん・・・・」
眠るぬりえの瞳から一筋の涙が伝い落ちたー
その顔を覗き込むベルリナ・・・
「何か悲しい夢を見てるのかな・・・」
ダークファルスの攻撃を退けたナベ白の一行は、いったんアムドゥスキア探索を中止し、
自らのチームルームであるアークス研修生付属学校の第一研究室に戻ってきていた。
仮眠室のベッドに横になっているぬりえの横にソファを寄せて、
チームナベ白のメンバーが顔を合わせていた。
「・・・以上が、俺が調べてきた、マシロ工業の人物関係だ」
ベルナルドMk-2は手持ちの端末をテーブルに置くとソファに座り直した
「うーむ。人物関連からは特におかしな部分は見当たらないのう、父親が消息不明・・・っていうのが気にかかるが・・・。
マシロ会長の経歴もフォトン工学の研究から発展して会社を設立した・・・違和感も無しじゃ」
ベルマリアはソファの背もたれに身体をまかせると腕を組んで天井を見上げた。
「・・・先生?」
ベルリナはチラリと、ぬりえを見た後、少し小首を傾げて、ベルマリアに尋ねた?
「なんじゃ?」
ベルマリアは何を聞かれるのか知っていたかのように、やはり、チラリとぬりえを見た後、身体を起こして姿勢を正した。
「ぬりえちゃんの事・・・ そろそろ聞いて良いですか?」
ベルリナは一瞬、眠るぬりえに目を配ると、真剣な顔でベルマリアに尋ねた。
ベルマリアは天井に一瞬目をやり・・・ベッドに横たわるぬりえを見た後、
腕を組んで絞りだすように話し始めたー
「アシミレータのことじゃな? そうじゃのう・・・ 今から10年ほど前、フォトン工学の研究発表会でひとつの学説とその発展開発に関する論文が出されたんじゃ、それがぬりえ君のお爺さんであるマシロ工業会長「真白光雄氏」じゃった」
ベルマリアは目の前に置いてあった珈琲カップを手に取ると冷めた珈琲を少し口に含んだ
「・・・その真白光雄氏が提唱したのが”フォトンアシミレータ”という遺伝子レベルでのフォトンメソッドの開発じゃったんじゃ」
「そう、その”フォトンアシミレータ”って言うのが、・・・あっ、今ひとつ分からないんです」
ベルリナは一瞬、声を荒らげ、ぬりえを見て慌てて声を絞った。
手持ちの端末で何かを探していたベルマリアは、見つけ出した情報をテーブルの上に置いた。
「零号にはビジュアルメモリーをデータ転送したからぬりえ君の行動を見て確認してくれ、彼女はここに書かれておる”フォトンアシミレータ”そのものじゃ」
机の上の端末の画面を切り替え当時の論文を皆に見せながらベルマリアは続けた・・・
「フォトンアシミレータ・・・というのは、自身にはフォトンを生成するチカラが無い代わりに、
他人の持つフォトンの流れを自身の物として扱い、コントロールする事が出来る遺伝子体のことじゃ
・・・例えば、ぬりえ君はベルリナ君の持つフォトンのチカラを自分のチカラとして行使する事ができ、
ワシの持つPAをそっくりそのまま行使する事が出来るのじゃ」
ベルリナは”ハッ”となって身を乗り出した。
「それで、あの時・・・急に私のチカラが無くなって、ぬりえちゃんが凄いテクニックを撃ち出したんですか!」
ベルマリアは無言で頷くと、話を続けた。
「もっとも、彼女の場合、それを扱うだけの身体が満足に出来ていないために、著しく消耗が激しいようじゃ。・・・ 最悪、昏倒事態になるやもしれん。ワシも迂闊じゃった・・・」
ベルマリアはぬりえを少し見やって、話を続けた。
しかしじゃ、謎はそれだけでは無い・・・ 第一、論文提唱されたのは、もう10年も前じゃ・・・
このデータ類は理論値で書かれたものではなく、実サンプルから取られたものだと思って、まず間違いないじゃろう・・・」
ベルナルドMk-2がお替わりの熱い珈琲をカップに注ぎながら、首をひねった。
「それは、変だな・・だってよー。その頃だとぬりえちゃんはまだ10歳にもなってないぜ」
再び珈琲の良い香りが広がった・・・
「そうじゃな、このデータは30代後半ぐらいの成人女性のデータじゃ・・・ ぬりえ君の母親かのう?
う〜む・・・ どうやら真白会長に逢って話を聞く必要があるようじゃ・・・」
カップを手に取るとベルマリアは腕を組みソファに大きくもたれ掛かった。
「・・・それにさー」
ぬりえの隣に置かれた調整台で横になっていた零号がベルマリアに話しかけた。
「あの時現れたダークファルス・・・・ リミネータって言ったっけ? 奴の出現がチョッと出来過ぎな感じだよね?」
「!?」
ベルリナは言われて思うことがあるようだった。そんなベルリナの顔を見ながらベルマリアが答えた
「ふむ・・・ 彼奴は間違いなくワシらを待ち伏せておった。何かの糧にするとも言っておったな・・・
何やら、ワシらは誰かの策略の中に取り込まれようとしている気がするのう・・・」
「でも、あのリミネーターってダークファルスと戦っていた時に感じたんですけど、
あの人自身じゃない誰かの命令で動いていたような感じがしました・・・」
ベルリナは少し空を見ながら思い起こしていた。
「ま、そっちの親玉の件はさておき、取り敢えず真白会長に面会しに行ってみるかの? ベルナルドMk-2よ、ぬりえ君の面倒を少し頼む」
ベルマリアは腰を上げると、ベルナルドMk-2に向き直って言った。
「その必要は・・・・ありません。わたしも、行きます・・・ おじいちゃんに逢いに行きます。」
一同が、その声に驚き、一斉にぬりえのベッドを見た。
寝返りを打ち横になったぬりえは、しっかりと眼を開け全員を見ていた。
「ぬりえちゃん!起きてたの・・・・ もしかして聞いてた?」
ベルリナの声は少し尻すぼみになった
「はい・・・途中からですけど、おおまかなお話の内容は理解しました。私もおじいちゃんに確認したい事が出来ました・・・ 連れて行って下さい。」
ベルマリアは頷きつつも厳しい顔でぬりえに言った。
「・・・・もしかしたら、お主にとって辛い話になるかもしれんが・・・」
「構いません、お兄ちゃんの事もありますし、おじいちゃんには会わなくちゃいけないと思ってましたから!」
”大丈夫です!”・・と、言わんばかりに大きな声でぬりえは答えた。
「ぬりえちゃん・・・!」
ベルリナはぬりえが今回の一件で意気消沈しているのでは?と思っていたため、その言葉で一気に笑顔を取り戻した。
ベルマリアは大きく溜息をつくと、呆れたような顔をしてー
「まぁ、そういうことになるんじゃないか?とは思っておったが・・・・」
そう言うと、壁際の通信端末をいじり、誰かと通信を始めた。
「あー、マリアです。・・・はいっ、例の件ですがワシたちのチームで引き受けます。・・・宜しくお願いします」
通信相手はベルマリアの父親であるアークス本部長であった。
・・・・・・・・
通信が終わると、皆に振り向きベルマリアが大きな声でー
「今回のアムドゥスキアの一件はチーム”ナベリウスの白い花”がアークス公認オーダーとして請け負う事になった
。・・あと、ぬりえ君の身柄は私達のチームで預かる事にする!」
「・・・えっ!?」
ぬりえは驚くとともに、理解できずに不審な顔で皆を見た。
「豆鉄砲食らったような顔しているなぬりえちゃんよぅ・・・ お前さん、危なく研究科送りにされるところだったんだぜ」
ベルナルドMk-2はドヤ顔で、ぬりえに話し始めた。
「・・・えっ!?」
ぬりえは尚、判らない表情であった。
「あー、つまりさ、ぬりえお姉ちゃん、今回のダークファルスの一件でお姉ちゃんの身柄は拘束され、研究科送りになるところだったんだよ、解剖されるところだったかも・・・ふへへ〜」
零号もドヤ顔であった。
「ちょっと零ちゃん、偉そうな言い方しないの! ・・・ぬりえちゃん! 私達と行きましょう。そして謎を解き明かし、お兄さんを助けましょう」
ベルリナはぬりえにスッと手を差し出した。
「あ・・・・・ はいっ!」
すべてを理解したぬりえは、慌ててベルリナの手を取り、涙を少し浮かべ、微笑んだ。
「話しがまとまった所で恐縮なんじゃが・・・1日待ってもらえまいか?」
笑っていたベルマリアは急に真面目な顔になり、全員に声を掛けた。
「・・・?」
全員がベルマリアの顔を見た。
「零号の調整もあるんじゃが、その・・・ぬりえ君の特殊能力の処理をどうするか考えねば迂闊に行動を起こすことすら危険になるんでのう・・・ すまぬ」
・・・と、すまなさそうな顔をしながらも悪戯っ子のような笑顔をでベルマリアが続けた。
「まぁ、偶然事故で事情を聞いてしまったぬりえ君がどういう行動を起こすか?なんてワシらの想像出来ない事じゃからのう・・・あははっ」
「呆れた、もう付き合ってらんないよ・・・あははは」
零号も大きな声で笑った。
ぬりえを除く全員が合唱するように笑ったー
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