ファンタシースターオンライン2外伝”ナベリウスの白い花”   作:ナベ白製作委員会

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第七話「ベルレインの胎動」

深々と夜空から雪が舞い降りていた、どおりで今夜は寒いはずだ・・・・

今より遡ること四年、外宇宙を周るアークスシップから離れること約五十光年・・・

かつて”地球”と呼ばれていた惑星”テラ”は惑星としての資源が尽き、その役目を終えた・・・

ただ、その惑星の過去”ドイツと呼ばれていた国”が人類初の人造ニューマンを生み出したということからニューマン遺伝子工学やフォトン工学のメッカとなっていた。

特に国の西に有る”ウルフェンシュタイン研究所”は有名であった。

その研究所に当時のベルマリア・ウルフェンシュタイナーが居た・・・

彼女は自分の大きな机に向かっていた。

 

「あぁ・・ だからじゃ、ルーサー殿、その件は報告を入れた通りじゃ、納得してくれんと困るんじゃが?」

ベルマリアは誰かとモニター越しに通話していた。

「まぁ・・・ 良いでしょう。不明な点が有るのは気になる性分なので、つい・・・、 ははは・・・」

画面内の男はあからさまな愛想笑いだった。

「・・・ったく、食えん男よのう、お主は・・・、それでは、報告は以上じゃ、案件は任せる。」

さも、嫌そうに通信を切りたがっているベルマリア。

 

しかし画面内の細身で銀髪ショートのルーサーと呼ばれた男がベルマリアのご機嫌を伺うように訊ねた。

「マリア・ウルフェンシュタイナー殿・・・ あー、ところでウチのやつらは上手くやってますかね?」

質問に対してあからさまに訝しげな顔をしてベルマリアは答えた。

「んっ?・・・ あぁ、フルネームは止めて貰えぬかのう・・・ ルーサー殿。

まぁー、何やっているのか? 知れたものではないがのう・・・それでは失礼するぞい。」

ーーーーーーー。

ベルマリアは通信を終わって、深い溜息をついた。

 

「・・・ふ~ん。マリアがここまで嫌がる相手も珍しいな・・・何か有るのか?」

奥から淹れたての珈琲を持ってきた彼女の助手”ベルナルドMk-II”は呆れたように言った。

珈琲を”ずずずーーっ”と飲みながら、さも嫌そうに左手を振り振りベルマリアが答えた。

「まーぁ、何というか・・・ キレる人物なクセに、馬鹿を装う・・・というか、彼奴は只者では無いはずじゃ、そもそも、あの若さで本部の研究室長じゃからのう・・」

珈琲カップを両手で抱えるように持ち直してベルマリアは続けた。

「・・・何か・・・企んでおるのう、あやつは・・・」

「あぁ・・・アレか、例の部屋でやってるニューマン生成実験ってヤツか?

ベルリナ計画・・・とか言ってた人造キャスト兵器開発。」

ベルナルドMk-IIはベルマリアの机に軽くもたれながら自分用に煎れてきた珈琲を飲みながら続けたー

「同属を嫌う・・・ その若さで只者じゃないというなら、マリア、お前もそうじゃないか、・・・あははっ」

 

その夜、降りしきる雪のウルフェンシュタイン研究所の一室で、その実験は開始された・・・

その場に居た3人の研究者は頷き合うと実験開始のスイッチを入れた・・・

 

ヴゥー、ヴゥー、ヴゥーッ!

突然の警報と共に赤いランプが点滅した。

自室で何かの書類に目を通していたベルマリアは目を上げた。

「マリアっ!、例の研究室で何か有ったようだ、来てくれっ!」

ベルマリアの通信機からベルナルドMk-IIの声がした。

「チッ」ベルマリアは短く舌打ちをして、自室を飛び出した。

 

そもそも、アークス本部特務機関”研究室”のルーサーから研究設備を貸して欲しいと連絡があった時から、こういう事態は何となく想像がついていたのだ・・・ 確証は無いが、勘・・?というヤツだ。

 

ベルナルドMk-IIと共に”第一研究室”と書かれた部屋に飛び込むとベルマリアは叫んだ。

「大丈夫かっ?怪我はないか?」

 

ーーーーーーーー。

 

だが、そこには誰も居なかった。 ---いや、強化ガラスで出来た被験体培養ケースの中に暴れている何かが居るのが見えた。

ニューマン培養は何度も見てきたが、一見でそれが異常事態で有る事が見て取れた。

 

「どうなってるんだ? 何故誰も居ないんだっ!」

ベルナルドMk-IIは辺りを見渡し叫んだ。

「取りあえず、状況確認をして事態を収拾する。ベルナルドMk-IIは近辺ルームの避難の告知に回るんじゃ!」

「判った、危険になったら、呼んでくれ。」

ベルナルドMk-IIは部屋を後にした。

 

「・・・さて、どうしたものか?」

ベルマリアは今起こっている事態が”昨日の義務報告”と異なっている事に戸惑っていた。

目の前で暴れている被験体は初見である。交配途中のため、どのような人物だったかは不明だが、まだ生きている・・・

 

「まずは調べてみるか・・・?」

と、思ったその時、ガラス容器の中の被験体が暴れ出し、破損強度警報が鳴りだした。

「悠長な事はしておられんな・・・」

彼女は目の前にあったパネルを操作して研究内容の全容把握を試みた。

 

「”Barlinir計画”人造完全体ニューマン製造・・・ふむ・・・ 内容は特に変わって無いが・・・ あっ?」

データを見ていたベルマリアは、おかしな事に気づいた。

「モンスター名称”ベルレイン”とはなんじゃ? こんな生体モンスターモデルは聞いた事が無い・・・」

 

ニューマンは人間とモンスターの遺伝子的掛け合わせで造られる。

そのあまりに特殊な生命ゆえに、自然派生しないのが普通だ。

自然交配は100%近く失敗する・・・

 

「ベルレインのDNA・・・今まで見たことも無いレアパターンじゃな、一体どのようなモンスターなんじゃろう・・・。しかし暴れるのはどうしてなのじゃ? 単にDNA融合出来てないのか、いや違うな・・・」

パネルを操作して被験体のデータを参照していたベルマリアはとんでもない事を発見した。

「なんじゃこれは・・・ この被験体、ダーカー因子を持っておるわい。 ・・・だから暴走して・・・」

 

ベルマリアは考えた・・・・ この被験体を今、殺処分することは容易い。

・・・だが、元の被研体は生きているのだ、もう二度と目の前で罪無き人が死ぬところなど見たくない。

 

「ダーカー因子の侵食が始まったら間違いなく彼女を殺さなければならない・・・どうするんじゃ?、どうすれば・・・ せめて、ダミーでもあれば・・・そうじゃ。その手がある」

ベルマリアはパネル横のネットワーク端末から何かを検索し始めた。

「使用可能DNAパターン検索・・・シンクロ率候補・・・」

 

(そう、もう一つ交配用マテリアルを急速培養し、それにダーカー因子を固定出来れば、人体モデルA02356894は救える)

 

「・・・適合一件、まぁ一件でも有れば良い・・・良い・・・えっ?」

 

その適合者の名前は

アークス登録AS02-100069532169547 ”マリア・ウルフェンシュタイナー”




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