GOD EATER ~龍と虎を背負いし兄弟〜   作:ミスターポテトヘッド

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act.31 不吉な予感

 

「なんか分かりましたか?博士」

「いや、あまりにもイレギュラーというか特殊というか...まだなにも分からないよ。というか10分かそこらでなにか分かるものではないからね?」

 

支部に戻ってからカゲトラはサカキ博士に先の任務の事の経緯を話し、コアの解読を行っていた。

負傷したタツヤはそのまま医務室に運ばれて行った。幸いにもヘリの中で意識を取り戻したため、ちょっとした精密検査と暫しの入院生活くらいだろうといったところか。

何事もなく復帰したとしても神機が使い物にならないのでどのみち暫くは任務も受けられないのだが...

 

「まぁ、この事はリンドウさん達にも報告して支部全体にも知らせた方がいいですよね」

「そうだね、支部の方には緊急会議で伝えるとしよう」

「了解です。では俺はこれで」

 

カゲトラは研究室を後にし自販機でコーヒーを買うとそのままの足で病室に向かった。

病室に入ると案の定タツヤが入院服に身を包みベットに腰掛けていた。そしてベッド脇のパイプ椅子にはアリサが座っていた、様子を見るになにか話していたのだろうとカゲトラは察する。

 

「しゃーねーから見舞いに来てやったぜ」

 

カゲトラはそう言うとコーヒーの缶をタツヤに向けて放り投げた。そしてタツヤはそれを片手でキャッチし銘柄を見ると自分がいま好んで飲んでいるコーヒーだった。

 

「ん、サンキュートラ。よく好みの銘柄が分かったな」

「何年弟やってっと思ってんだよ、それくらい分かるわ。それより、もしかしてお取り込み中だった?」

 

カゲトラはアリサとタツヤを交互に見ると、意地の悪い笑みを浮かべながらそう呟いた。

それを聞いたアリサら頬を少し赤く染め、タツヤは頭を押さえながら軽く溜息を吐いた。

 

「まぁ、さっきまではお取り込み中と思われても仕方ないような事にはなってたよ...どっかの誰かさんのせいでね」

「うグッ...」

「いやぁ...看病してくれるという言葉は素直に嬉しかったけどまさか着替えまでやると言い出すとわねぇ...しかも拒否したら挙句襲われたしねぇ」

「ウゴゴゴ...」

 

タツヤの辛烈な口撃を耳にする度、アリサが唸り声を上げる。

それを聞くカゲトラはやや引き攣った笑みを浮かべ聞いていた。

 

「なんつープレイしてんだあんたら」

「いやまさかアリサにあんな性癖があるとは...」

「それ以上はやめてください!!」

 

とうとう限界を突破しアリサが耳まで真っ赤になった顔を上げタツヤの胸をぽかぽかと叩き始めた。

 

「人が心配してるのにその言い草はなんですか!そもそもタツヤが怪我をするのが悪いんです!だから私は悪くありません!!」

「なんだそれ...つかその理由理不尽すぎね?」

 

 

タツヤの苦労は続くのであった。

 

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3日後

 

「ふぅ、やっと退院か」

 

伸びをしてからタツヤは病室をでると研究室から出てきたソーマとちょうど出会った。

 

「よう、やっと出てきたか」

「あぁ、シャバの空気は美味いぜ...」

「...とうとう頭がイカレやがったか」

「んなわけあるか、余りにも病室が薬品臭かったんで言ってみたくなっただけだ。だからその哀れむような視線やめてくれ」

 

タツヤの言い分に少し納得する部分があったのかソーマは視線を直し真面目な顔つきでタツヤに口を開いた。

 

「俺はサカキのおっさんから聞いただけだが、新種の蘇り能力をどう見る?」

「...俺も気を失ってたからなんとも言えないけどもしかしたら予備のバッテリーの様なものかもしれないんじゃないかな?」

「予備のバッテリー?」

「そ、万が一コアに異常が起きても暫く動けるようにコアとは別の場所にエネルギーが蓄えられてる所があるのかもしれない...まぁ、これは俺の推測でしかないから真実は謎だけどね」

 

そこまで話し、2人はエレベーターに乗り込む。

 

「にしても、ソーマって随分雰囲気変わったよな。なんて言うか前より明るくなったみたいな?」

 

タツヤがソーマの顔をじっと見ながらそう言うとソーマは壁に寄りかかったまま右目だけを開けてこちらを見た。

 

「そうか?自分では自覚がないからなんとも言えないがな」

「言うなれば今の言葉もだよ、昔なら『 うるせぇ...』としか言わなかったのにさ」

 

2人が喋っているとエレベーターが到着し扉が開く。すると少し離れた所に白い服を着た少女がこちらに、いや厳密に言えばソーマに元気よく手を振っている。

 

「それもこれもシオちゃんの影響かな」

「...うるせぇ」

「そ〜ま~、早く行こうよー!」

「チッ、じゃあ俺はお守りしなきゃならねぇから行く。最近前線に出ずっぱりだったんだ、神機が直るまでの間しっかり休んどくんだな」

 

ソーマはタツヤにそう言うとシオのもとへ歩き出し、出撃ゲートの中へと消えていった。

 

「ホント変わったな、前は忠告なんてしなかったのに」

 

タツヤはそう呟くと神機保管庫へ向かうため出撃ゲートの中へと入った。

 

 

 

 

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「あ、タツヤくんどうしたの?神機ならまだだよ?」

 

保管庫に入るとリッカがタツヤの神機の前で作業をしていたのが直ぐに目に入った。そしてリッカもタツヤに気付くと手を止めてタツヤの元に歩み寄ってきた。

 

「修復が済んでないのは分かってる。ただ暫定的でいいから修復が終わるのはいつ頃か知りたい」

「そうだね、正直言うと今回破損した装甲だけでなく他のパーツも結構ガタが来てるからねぇ、それにオリジナルの刀身パーツを使ってるからどうしても時間が掛かってしまうんだよね。今の所予定では1週間かな、作成したユウカさんがいればもっと早かっただろうけど生憎今は本部に出張ってるからね」

 

リッカはそう言うと若干苦笑いで頬を人差し指で掻くような仕草をした。

 

「1週間もあれば十分な休養になるな...迷惑かけるけど修復のほう頼んだよ」

「いいよ、これが仕事だし。微調整も含め最高の状態にしたげるから期待しててよ」

「おっ、なら期待して待ってるよ」

 

そう言ってタツヤは保管庫を後にして自室へと戻った。

タツヤがゲートの中に消えたのを確認するとリッカは再びタツヤの神機の修復作業に取り掛かった。

 

 

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さらに3日後

 

 

「あー、ヒマだー」

 

タツヤは現在エントランスのソファーに腰掛けダラダラとしていた。任務に行きたくても神機の修復は終わっておらず、話し相手を見つけようにもタツヤと親しい間柄の人物は全員任務に出張っているため八方塞がり?な状態である。

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

「あん?」

 

余りにも暇なのでそのままソファーで一眠りしようとした所でけたたましい警報音でタツヤの眠気は一気に冷めた。

 

「...神機使いになって随分立つけど、この警報音鳴った時って嫌なことしか起きねーんだよなー」

 

そう言ってタツヤはソファーから起き上がり一度背伸びをした。

 

「タツミさん!緊急事態です、その場から離脱して至急支部まで帰還してください!」

「ヒバリさん、一体何が起きてるんです?」

 

タツヤが座っていたソファーはエントランスの二階部分、つまり受付の真上にあるため、顔を柵から出し真下にいるオペレーターのヒバリに状況を聞いた。

 

「あ、タツヤさん。えと外部居住区にアラガミが3体侵入しました、現在そのうちの1体がこちらに向かって来ている状態です」

「ふむ、現在支部には対処できる神機使いが居ないから1番近場にいるタツミさんを帰還させて対処するってことですか?」

「今ところそうなりますね」

 

ヒバリから現状起こっている事を聞いたタツヤは、顎に手を当て少し考え込んでから一つ提案した。

 

「それだとタツミさんが戻るまで被害が拡大するな...となると」

「タツヤさん?」

「ヒバリさん、俺が出ます」

「えっ!?無茶ですよ!神機の修復がまだ済んでないのにどうするつもりですか!?」

 

出撃ゲートに走っていくタツヤをヒバリは声を荒らげて引き止めようとする。これは当たり前の反応と言っていいだろう。神機を持たずに戦場に行くなど誰しも止めることだ。

 

「ヒバリさん、俺は普通の神機使いとは違うんすよ。ある程度の時間稼ぎはできます、それにタツミさんの帰りをただ待つだけでは被害が拡大するだけです」

 

そう言ってタツヤは出撃ゲートの中へと走っていった。

 

「タツヤさん!!」

 

 

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「これで最後と」

 

神機保管庫ではリッカが神機をケースに入れる作業を行っていた。そして最後の1区画をケースにしまおうとしていた時、ゲートから1人入ってきた。

 

「ん?タツヤくんどうしたの?神機ならまだ完成してないよ?」

「神機はいらないよ、時間稼ぎするだけだから」

 

タツヤはそうリッカに言いながら彼女の横を通り過ぎると、正面のゲートが突然爆発した。

 

---ギャァァァァ!

 

それと同時に、一体のヴァジュラテイルが侵入してきた。

そしてヴァジュラテイルはタツヤ達を視界に入れるとタツヤ達に向かって走り出した。

 

「チッ、時間稼ぎどころじゃねぇな」

 

タツヤはそう吐き捨てると右手のみをアラガミ化しヴァジュラテイルに肉薄、その勢いですれ違いざまに右腕を振るいヴァジュラテイルを切り裂き絶命させた。

 

「ふぅ、はえーとこエントランスに避難しな。俺はこのまま外で暴れてる奴らァ相手してくるからよォ」

 

タツヤはそう告げると居住区に向かって走り出した。

 

「はは...タツヤくんに神機って必要あるのかな?」

 

残されたリッカはタツヤのあまりの強さにその場に座り込み苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

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その後は至って順調であった、タツヤが他の2体を引き付けつつ侵入された穴の前に立ち新たなアラガミの侵入を阻止し時間を稼ぎ、到着したタツミ達に後は任せ自身は帰還した。

 

 

帰還後にタツヤは鬼の形相のツバキに捕まり、有難い説教と罰を受けたが、それよりも支部に侵入したヴァジュラテイルの行動に不信感を抱いていた。

なんとヴァジュラテイルは支部に到達するまで逃げ惑う人間達には目もくれず、まるで操られているかのように支部に向かってきたのだという。

 

(...妙な胸騒ぎがする、このまま何事もなければいいんだが)

 

 

 

 

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ヴァジュラテイルたちが殲滅された同時刻、極東支部上空に黒い影が支部を見下ろしていた。

 

「ふむ、ヴァジュラテイルでの実験は成功といった所か。次はもう少し大型で試してみるか」

 

右腕が禍々しい悪魔のような腕となり顔に仮面を付けた男は黒い龍に跨りながら不気味な薬品のようなものを見つめ、もう一度極東支部を見下ろした。

 

「極東支部、桐生兄弟。貴様らは私がこの手で滅ぼす!!行くぞコクリュウ!」

 

男はコクリュウに指示を出しその場から遠くへ消えていった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様お久しぶりです、ポテトです。
えー、皆様お気付きかと思いますが2話ほど前から1話あたりの文字数を増やしました。理由としては過去に投稿した話を見返してみたら余りにもひどい有様だったので、今まで約2000文字だったのを1話あたり約4000~5000文字にしました。まぁ、文字増やしたところで駄文には変わりないのですが...
ですが昔書いていたのがあそこまでスカスカな内容だったことに私自身少々戸惑っておりまして、リメイクor編集ですこし修正をかけて過去に投稿した話に少し肉付けしようかなと思っていたりします...

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