午前中は快晴で嵐が来るとは思わないくらい晴れていた。
「~~~~♪~~~~~~♪」
アリシアは墓の前で“永遠語り”を歌っている。
ノーマにとってパラメイルは棺桶、そしては墓は家である。
「あれから11年……」
アリシアがアルゼナルに来てから11年の年月が経った。
ミスルギ皇国は大きく変わり、私のことを覚えている者は少なくなっていた。
人間と言う物はそういもの。
「今日の夜には、来るでしょうね」
シナリオ通りに進めば、今日の夜は嵐……そして、アンジュリーゼが運ばれてくる。
全て分かっていたことだ。
「みんな、また来るね」
そう言って、アリシアはその場を後にする。
◇
そして、始まりの時が来た。
外は嵐。そんな中、一人の女性の悲鳴がアルゼナルに響わたった。
翌朝、第一中隊のゾーラたちは外で新人の観察をしていた。
「あれがウワサの皇女殿下か……」
胸元に薔薇の入墨がされた女性。
第一中隊の隊長であるゾーラはいつもより機嫌がよかった。
「やんごとなき御方の穢れを知らない躰。甘くて美味しそうじゃないか」
「あっ……!」
ゾーラは近くにいた赤髪の女性の首に腕を回しそのまま、胸を触る。
「新しく入った娘なら誰でもいいんでしょ……」
てれながら、ヒルダは答える。
「うん」
「うん」
それに合わせて、新人の2人は頷く。
「何だぁ~~~~~~? 妬いてんのか? 可愛いなぁお前達は!」
「隊長! スキンシップは程々に……!」
副長、サリアは真面目な話に入るが……
「新兵からも『揉み方が痛い』と苦情が出ています」
「はいはい~~~~~~。気を付けるよ~。副長~~~~♪」
そう言いながらもゾーラは指をくねくねさせる。
「はーい。ココちゅん、ミランダちゃん」
同じく第一中隊のエルシャはサリアが持っていたアンジュの経歴書を新兵のココとミランダに見せる。
「これが今日から入る。新兵さんよ。年上だけど仲よくしてあげて下さいね」
「「は、はいっ!!」」
ヴィヴィアンもそれの書類を覗き。
「ねぇ、サリア。クイズ、クイズ~!!」
ヴィヴィアンのお得意のクイズが始まった。
「誰が最初に死ぬかな?」
「「えっ?」」
ココとミランダは驚く。
それもその筈、いきなりそんな事を言われれば、驚かない訳がない。
「死なないように教育するのが、私たちの役目でしょ!?」
「いたっ……いたいっ! 死ぬる死ぬる~っ!!」
サリアに頭をぐりぐりとされるヴィヴィアン。
「そう言うけど、ゾーラ隊長と新兵の2人から死相が見えるだけど……」
「「えっ!?」」
「アリシア……縁起の悪いことを言うなよ……」
ゾーラは今回ばかりは、まともに返した。
アリシアの言うことは、殆ど当たる為、一部からは預言者と言われている。
「まあいいわ。あたしは先に行かせてもらうよ」
そう言って、アリシアは先に行く。
◇
アリシアが向かった先はパラメイルの置かれている区画の先にある所だった。
そこには一機のパラメイルが置かれていた。
だが、そのパラメイルは他のパラメイルとは違い、ボロボロだった。
まるで石化したかのように光が全く感じられない。
「もう直、あなたのご主人様が来るわ……ヴィルキス」
物語の中心であるヴィルキス。
それに乗れるはこのアルゼナルに3人しかいない。
「また来ていたんだ……」
「邪魔をしているよ。メイ」
小柄な少女のこと、メイはアリシアの隣に立ち、ヴィルキスを眺める。
「別に大丈夫だよ」
「そう。ならいいけど……」
メイはアリシアが皇女だと言うことは知っている。
けれど、ヴィスキスは彼女を選ばなかった。
「メイ。近い内にこの子が必要になるから、頼んでいい?」
「……わかった。完全な状態にしておくよっ!!」
「ありがとう」
それを言い残して、アリシアは集合の場所へと向かった。
◇
「ようやく来たか……」
射撃場で遠距離砲撃のパターンを試していたゾーラは遅れてきたアリシアを見つけた。
アリシアが遅れて来ることはいつのもの事の為、特に注意する必要はなかった。
「現状は?」
「エルシャ・ロザリー・クリスがここで遠距離衝撃。サリア・ヒルダ・ヴィヴィアンが新人教育をやっている」
「ふ~ん。ちょっこら、新人の所に行ってくるよ」
「そうかい」
「うんじゃ」
手を振りながらその場を後にし、新人達がいるパラメイルのシミュレーターのある所へとアリシアは向かった。
到着と同時にサリアのいるシミュレーターを覗くと面白いものが見えた。
「へ~え。流石だね」
「!? アリシア……来ているなら言いなさい」
「それは、ごめんよ。で? どう見るこれ」
「どう見るも、異常よ」
「一応彼女の経歴を見ているから、こんなの予想の範疇だったけどね」
「あんたの情報網はどこから来ているのよ」
「秘密だ。それにそれを知ったら今のサリアだと生きて帰れなくなるぞ?」
「…………」
「冗談だ」
サリアをからかいながらも、アリシアは全てのシミュレーターを覗く。
まともに出来ていたのは、やっぱりサリアの所だけだった。
◇
本日の訓練が終わり、全員シャワーを浴びる。
新兵のココとミランダはいきなりのアレだった為、吐いていた。
「いや~大したもんだな!皇女殿下は!」
さらにご機嫌斜めなゾーラはどうやらアンジュを気に入ったみたいだった。
アリシアにとってはそれは予想の範疇であった。
「そう言えば、アリシアってアンジュに似ていない?」
ヴィヴィアンのさりげない質問に全員、お互いを比べる。
「そう言えば……」
「金髪に赤目……」
「うん……似ている」
上からロザリー・ヒルダ・クリスの順で話が入る。
「あ! そう言えば挨拶がまだだったね。アリシアだ」
「…………」
アリシアはあえて他人のふりで自己紹介をする。
それを見て、アンジュは何かを言いたがそうにするが、言わなかった。
「…………(あえて、ここで言いたくないか……)」
大方予想していたが、彼女とは何時でも話せると言うことで、一旦話を終わらす。
◇
「ここがあんたの部屋」
「…………」
「足りない物はこれで揃えて」
サリアはそう言って、アルゼナルでの通貨・キャッシュを手渡す。
「明朝5時に点呼よ」
それを言い残して、サリアは行ってしまった。
アンジュはそのまま、指定された部屋に入る。
「…………」
最初に目に付いたのは紙だった。
床には楽譜が散らばっていた。
アンジュは無言のままそれをかき集め、近くの机に置く。
部屋には二つのベットと机とバイオリンがだけが置かれていた殺風景なところだった。
「…………寒いわ……モモカ……」
現実というものを間を辺りにしたアンジュは呟いた。
その後、この部屋の同居人が入って来る。
「あんたは……」
「ん? ああ、同居人はアンジュか」
殆ど瓜二つである者。
アリシアがアンジュの同居人だった。
「一つ問いたい」
「いいよ」
「あんた、何者なの……」
「…………アリシア。それ以上それ以下でもない」
「…………」
「明日も早いんだし、寝るわよ」
まだ、聞きたいことがあるアンジュだが、時間が時間だった為、仕方なく寝ることにした。