「じゃあ、サリア。説明してくれ」
「…………」
「何があったのかを」
「イエス・マム……」
指令室ではジルとサリアの二人しかおらず、先程の作戦の報告をおこなっていた。
「シンギュラーまで、約一万の所でアンジュが編隊から離脱。目的は自国への帰還。
「新兵達にはアリシアが付いていたはずだが?」
「はい。アリシアは新兵に群がるドラゴンと交戦……ですが、数があり過ぎて手が回らなかったもよう。逃亡防止の為、アンジュが乗っていた機体のスラスターを撃ち落としますが、不運にもゾーラ隊長と交戦していたガレオン級の攻撃に2機とも巻き込まれ、墜落。戦闘後、近くの浅瀬で機体を発見。機体を回収、両名を収容しました」
「うん。こちらが映像と音声で把握した通りだ」
「イ、イエス……マム…………(だったら……どうして私に……)」
「サリア、お前は副長としての責任をどう思っている?」
「…………」
サリアは一瞬、悩む。
「私が……あの時、すぐに撃っていれば…………」
「そうだ……死者は新兵一名のみで済んだかもしれない」
「次は……撃ちます……」
「それが聞きたかった。サリア、今回からお前が第一中隊の隊長だ。働きに期待しているぞ」
「イエス・マム」
報告を終えたサリアは指令室を出る。
「失礼します」
指令室に残ったジルは考えていた。
(ゾーラ……『リベルタス』の前にお前を失うことになるとは…………。しかし『指輪』と『あいつ』は残った……。これが……どう出るか……)
◇
「運命は決して変わらない……」
アリシアは考えていた。
この後、撃ち漏らしたドラゴンと対峙する。
そして、ヴィルキスの覚醒。
「……雨が降って来たか」
雨が降っていることを確認したアリシアはそのまま、部屋を出る。
向かった先は、墓のある丘。
「…………どうして……。今だけ……ほんの少しだけ、マナが使えないだけで……。それだけで……」
雨の中、しゃがみ込むアンジュ。
「それだけで……こんな地獄みたいな所に……。あまりに理不尽ではありませんか!?」
「その通りよアンジュ……」
パシャ、パシャと雨の降る中、アリシアは傘をささずにアンジュの元へと歩いてくる。
「アリシア……」
「この世界は理不尽の塊でしかないのよ……全ては
アリシアは手に持っていた3つの花束を墓の前に置く。
「それにね。ココなんて、まだ12になったばかりだったんだよ?」
「12……」
その言葉にアンジュは自分の妹であるシルヴィアと重ねる。
「違う……!! シルヴィアとは違います! だって……」
「『ノーマは人間ではない』……か?」
ジルはアンジュの襟を掴もうとするが、アリシアが止める。
アリシアはここは私がやりますと言わんばかりに、アンジュの襟を掴む。
「だったら何? 皇女でもなくなり、マナも使えない、義務も果たせない、敵前逃亡で仲間を殺す。だったらあなたは何?」
そして、サリアがドラゴンが見つかったことを知らせに来る。
「立ちなさい、アンジュ。この世界は不平等で理不尽……だから『殺す』か『死ぬ』かの二択しかないのよ」
アリシアは無理矢理持ち上げ、アンジュの目線を自分に合わせる。
「それが出来ないのなら……私があなたに呪いと言う名の枷を着けてあげる」