アンジュがヴィルキスを覚醒させてから数日。
チームワークなんて無視の戦いを繰り広げるアンジュ。
「相変わらずの無茶をするわね……」
アリシアはラグナメイルが置かれているハッチでメイにアンジュの戦歴を見せて貰っていた。
もちろん、これは本来見せることができない物であり、アリシアは特別に見せてもらっているに過ぎない。
「総取りだよ。ちょっと不味いかも」
「まぁ、そうね。真っ先に死にたがっているように見えるけど……これは、あれだね」
アンジュの戦歴は他の人に比べて圧倒的だった。
ラグナメイルの出撃だってタダではない。
弾薬に燃料が報酬から差し引かれる。
下手したら赤字だってなり兼ねない。
「ここは……あれをやりますか」
「えっ!? まさか、あれを?」
メイはアリシアの口から出たアレが何なのか知っていた。
アリシアがこのアルゼナルに来てから数年経った時に始めた行事。
天国か地獄の行事を開催すると言い出したのだ。
「メイ。開催の宣伝をお願い」
「う、うん。あんまりヤバいのはやめてよね」
「大丈夫よ。簡単な物だから」
そう言って、アリシアは立ち去った。
そして、ラウンジでいつよりも賑やかになっていたのだ。
「ねぇ、聞いた。今日アレが行なわれるらしいよ」
「うんうん。私なんて、今日の為に練習してきたんだよ」
普段とは来ない連中から他の部隊の者が集まっていた。
「何よ……この集まり」
アンジュはいつもスカスカのラウンジに人が集まっていることに驚いていた。
「アンジュも参加するの」
ヴィヴィアンがアンジュを見つけて声をかける。
「参加?」
「あれ? もしかして知らなかった?」
「アンジュちゃんは新人だから、アレのことは知らないと思うよ」
「ああ!! そうだった」
エルシャがアンジュがアレのことを知らないことをヴィヴィアンに説明すると、ヴィヴィアンがそれに気付いた。
「さっきからアレとは一体何よ」
「それはねぇ……」
ヴィヴィアンが言いかけた所で、アリシアの声が遮る。
「皆集まったわね。これより、祭りを始めるわよ!!」
その言葉に皆の声がこの場を支配した。
「今日のゲームはブラックジャックよ!!」
ラウンジの一角をアリシアが指差し、皆の目がそちらに向く。
「あれは……」
そこには、アンジュにも見覚えのある物が置かれていた。
カジノとかに置かれているテーブルがあったのだ。
「そして、今回の賞金は三十億キャッシュよ」
テーブルの横に被せられていたシーツが剥がされ、出てきたのは山積みになったこのアルゼナルの通貨キャッシュがあった。
それを見て、全員が唾を呑んだ。
「さて、最初の相手は誰かしら? もちろん、罰ゲームはいつも通りだから」
アリシアはディーラー席に着くと、四つのトランプを器用に混ぜ始めた。
「最初はあたいらだよ」
最初に勝負に出てきたのは、ヒルダとロザリー、クリスだった。
「いいわ。始めましょう」
そして、勝負が始まった。
◇
「これは、一体……」
アンジュはいきなり始まったカジノに戸惑っていた。
「年に何回かあるボーナスよ」
サリアが説明する。
「あやって、アリシアがストレス発散と一緒に金稼ぎをやるのよ」
支払われるキャッシュは場所によって決められている。
そのため、こういったことをアリシアが行うことで、その人によってはボーナスになるのだ。
「ふ~ん。上は何も言ってこないの?」
「もちろん、この行為は上公認よ。あり得ないことに」
そのことにアンジュは驚く。
上がまさか、この行為を認めているとは思ってもいなかったのだ。
「くそぉ!!」
そんなことを言っている内に最初の勝負が終わったようだ。
「また、アリシアの勝ちのようね」
ヒルダたちの掛金が無くなりアリシアが勝った。
「そんじゃ、ヒルダには罰ゲームを受けてもらおうかな?」
アリシアのその笑顔にヒルダがヒクヒクと顔を動かし、アリシアが取り出した物を手渡した。
「今日一日これ着て生活ね」
ヒルダは手渡された服を持って、ジャスミンモールに向かう。
そして、その試着室から出てくると、皆から笑い声が響く。
「くそぉ……」
ヒルダの姿は不思議の国のアリスにエプロンを付け、機械のウササ耳だった。
「あれは……」
「罰ゲームよ」
先程の勝負で巻き上げられたキャッシュを返す代わりにアリシアからの罰ゲームを受けなければならない。
もちろん、最初に持っていた金額なので、その後で勝った分は別に支払われるから、多少の儲けはある。
「ほらほら。さっき渡したセリフあったでしょ?」
「うっ」
アリシアはそんなヒルダを見ながら、キャッシュを見せびらかす。
欲しければ、言いなさいと脅迫する。
「はろーはろー! みんなのアイドル。篠ノ之束だよ~」
ぶはっ!!
その場にいた全員が吹く。
中には腹を抱えている者もいた。
「…………」
アンジュはそんな中、マジ引きしていた。
「あら、アンジュもいたの? どう、やらない?」
皆が笑っている中、アリシアがアンジュを見つけ、手招く。
「あんた……容赦ないわね」
「あれぐらいの歳になれば、これぐらいが丁度いいのよ」
シャッフルしながらアリシアは話す。
「そう。ヒットよ」
配られたカードを確認して、アンジュはヒットを宣言する。
「バーストよ」
「む……」
結局、アンジュもアリシアに勝つことはできなかった。
「アンジュへの罰ゲームは何がいいかな……」
アリシアもアンジュがここに来るとは思ってもいなかったので、罰ゲームを考えていなかった。
「そうだね。あの日に歌を歌ってもらいましょうか」
「あの日?」
「子供たちの歌の発表会があるのよ」
その日に歌ってもらう約束をアリシアから一方的につける。
「わかったわよ」
「素直でよろしい」
そう言って、アリシアは笑顔で見送った。
結局、アリシアに勝った者はいなかった。