キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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災いの陰影(かげ)


12:災いの陰影

           □□□

 

 

《おい、我はキリトと共にいるのだ、離さぬか》

 

「いてて、やめなさいっての。君は空気を読むのが得意なのか、不得意なのかよくわからない子だな」

 

 イリスはリランを連れて、教会の廊下を歩いていたが、リランはイリスの胸の中で暴れ回り、何としてでもキリトの元へ戻ろうとしている。普段は利口なリランがわがままを言う様子に、イリスは若干の戸惑いを感じていた。

 

「いつもの君なら、キリト君から離れても平気じゃないか。なんたって今日はそんなふうなんだよ」

 

《我だって気分くらいある。今日は、いや、これからずっと、キリトと一緒に居たいのだ!》

 

「それは君が彼の《使い魔》だからか? その割には、今のキリト君の心が読めてないような感じだな。《使い魔》なら主の様子くらい理解してると思ったんだけど」

 

《なんだと》

 

 リランがようやく動きを止めたところで、イリスはキリトとシノンのいる部屋の方角へ向き直る。今のシノンにはキリトが必要であり、キリトもまたシノンと共にありたそうにしていたのを、ここに来る前にイリスは察していた。二人には二人きりでいる時間が必要であり、今がそれなのだ。

 

「キリト君は私達よりも、シノンと一緒に居たいんだよ。そしてそれは、誰にも邪魔されたくなかったんだ。だからこそ、皆でこうやって部屋に出たんだろう」

 

《そう……だったのか》

 

「驚きだな。君があんなキリト君を見て何も察しないなんて。キリト君から聞く限りじゃ、君は察しが良かったりするのが特徴だって話だぞ。キミ、最近鈍くなって来たんじゃないのかい」

 

《キリトは……シノンが、大事……》

 

「そうだよ。君はそういうのをわかっているんじゃなかったのかい。

 というか、キリト君とシノンの夫婦と一緒に居ればわかるような事のはずだぞ」

 

 リランはイリスの胸元から、キリトとシノンのいる部屋に顔を向ける。

 

《キリトとシノンは、夫婦……》

 

「そう、互いを愛する者同士だ。その片割れがあんなふうになれば、もう片割れはその傍に居たがる。まぁ、彼らはそう言う事が出来ているからいいね」

 

 リランの顔に目を向けたその時に、イリスは少しきょとんとなった。表情が少しわかりにくい狼竜のその顔には今、如何にも悲しさを感じているかのような表情が儚く浮かんでいた。

 

「どうした、そんなわかりやすい顔をして」

 

《……キリトとシノンが愛する者同士……ならば我とキリトは……》

 

「《使い魔》である竜と主である人間の関係だね」

 

 リランはがばっと顔を上げて、イリスの赤茶色の瞳と目を合せた。あまりに人間じみたその赤色の瞳を目の当たりしたイリスは思わず驚く。

 

《ならば、現実に帰った時、この城を登り切って、現実に帰った時には、キリトとシノンはどうなるのだ》

 

 イリスは軽く上を見て、前から聞いているシノンの話を思い出していた。自分の部屋にやってきたシノンの話を聞くと、毎回その口からは「現実に帰ってもキリトと一緒に居たい、恋人になりたい」という言葉が出てきている。

 

 シノンのキリトへの思いは本物だし、キリトのシノンへの思いもまた真実の愛と言っても過言ではないもの。それに、シノンはこれまで自分以外の人間に興味を示したり、信じようとしたりしない冷たい娘だったが、キリトと出会ってからは、驚くほど穏やかで、本質を取り戻したような娘に変わっている。その様子を見て、専属医であるイリスは嬉しさを感じずにはいられなかった。

 

 このゲームをクリアし、現実に帰った時にはシノンの治療を続け、やがてはキリトの現実での居場所を突き止めて、シノンに会わせてやりたいと考えている。シノンの傷付いた心を癒してくれた、たった一人の少年の元へ、シノンを連れていきたい――それがイリスの思いだった。

 

「彼女達は、現実に帰った直後は会えないだろうけれど、いずれはまた出会うだろう。そして、この世界での彼女達と同じように、互いを愛し合うようになるだろうね」

 

《……つまり、キリトとシノンは、別れない……》

 

「そうだけど……どうしたんだい、そんな話をして。君らしくないじゃないか」

 

《キリトとシノンは別れない……現実に帰っても一緒だ……だが、我は……我は……》

 

 リランが深く俯く。

 

《わ……たし……は……》

 

 その声を聞いて、イリスは思わずリランを瞠目する。今、リランの一人称が変化を遂げていた。もしリランが普通に声を発していたのであれば、聞き間違いか何かだと思っていたかもしれないが、頭の中に響く《声》だから、聞き間違いは有り得ない。

 

「り、リラン!?」

 

 イリスの声を受けたリランは驚いたように顔を上げる。

 

《な、なんだ》

 

「いや、だって、君は今……」

 

 リランは顔を下げて、客人の来ているであろう教会の入口の方に視線を戻した。

 

《なんでもない。取り乱したようにしてしまって悪かったな。ほら、客人に会いに行くぞイリス》

 

 イリスはリランの言動が腑に落ちなかったが、これ以上尋ねても何も答えないとわかり、とりあえず教会の入り口の方に視線を向け直した。

 

「……そうするよ。いたのが変人だったなら、火炎放射してくれよ」

 

《承知した。もっとも、お前が剣を抜いて一撃はなった方が早そうに思うが》

 

「そう言うなって」

 

 そんな言葉のやり取りを交わしながらイリスは再度歩みを進めて、少しだけ古びた風貌の廊下を歩き、階段を下り、すっかり使い慣れているというか、毎日使っている教会の玄関口へ赴いたが、そこにいた人物に少し驚いた。

 

「貴方達は……」

 

 玄関口で待ち構えていたのは、自警団を作り上げてこの街のプレイヤー達を守っている、すっきりとした緑色の戦闘服を身に纏った黒色の髪の毛の男性シンカーと、金髪で特殊な髪飾りを付け、白色を基調とした戦闘服と鎧を混ぜ合わせた豪勢な装備をその身に纏った男性だった。

 

「イリス先生、いらっしゃったのですね。よかった」

 

「シンカー君と……もう片方は」

 

《アルベリヒだ。血盟騎士団の幹部の一人であるぞ》

 

 その名を聞いたイリスは少し驚きを感じた。アルベリヒと言えば、キリトの話にも結構な頻度で出てきているプレイヤーの名前であり、血盟騎士団の中でもっとも最も豪華な装備を身に纏っているプレイヤーだと聞いていた。

 

「あぁー、君がアルベリヒ君か。話は君の団長から聞いてるよ」

 

「あれ、僕の名前を知ってるんですか。なら、話が早い、ここに団長がいますよね」

 

「キリト君の事か。確かに今ここにキリト君はいるけれど……面会したいとか?」

 

 アルベリヒは頷く。

 

「はい。というよりも、それが目的でここに来たんですが……」

 

 イリスは教会の中に振り返る。キリトは今、シノンと一緒に居るから面会するのは少し難しいだろう。そもそも、シノンがこの人達を拒まないとは思えなかった。

 

「アルベリヒ君。君が血盟騎士団の幹部なら、《ムネーモシュネー》の討伐戦は知っているはず。というか、参加してただろうに」

 

「いいえ、僕は当日欠席してました。如何せん体調が優れなかったものでして」

 

「そうだったのか。なら、団長夫人が重傷を負って、団長は夫人の看病で手一杯だと仲間から聞いてるんじゃないのか」

 

「いえ、他の仲間からはとにかく団長に会いに行けと言われまして……そしたら、このシンカーさんと出会って、話を聞いたらとんでもない事になってる事がわかって……」

 

 イリスはアルベリヒと比べるとかなり地味に見えるシンカーに顔向けする。

 

「シンカー君、何があったんだい。君が直接赴くって事は、君もキリト君目当てって事かい」

 

「はい、そうです。この事実は、キリトさんに知らせなければと思いまして」

 

「今言った通り、キリト君はちょっと手が離せないし、メッセージに出るのも難しい。

 話ならば私が聞いておくよ。リランもここにいるしね」

 

 シンカーはイリスの事を見つめた後に、その口を開いた。

 

「ならばここで、お伝えしておこうと思います。実は……」

 

「拘留していたはずの《ムネーモシュネー》のボスもしくは構成員が脱獄した、とか?」

 

 シンカーの話にイリスの口が入ると、まるで予測していなかった出来事に出くわしたかの如く、シンカーとアルベリヒは酷く驚いたような顔をした。

 

「な、なんでわかったんですか」

 

 イリスは手で顔を覆って、大きな溜息を吐いた。

 

「一番有り得てもらいたくない最悪のパターンを言ったつもりだったんだけど……やはり悪い予感に限ってよく当たるもんだね……んで、どんな状況なの。ボスは脱獄して《ムネーモシュネー》全員を脱獄させたのかい」

 

 シンカーは首を横に振る。

 

「いいえ、脱獄したのはボスだけです。シノンさんを狙ったっていう白い仮面の男……そいつが、いつの間にか看守の目から逃れて牢獄からの脱獄を……」

 

《ちょっと待てシンカー。その看守は今どんな感じになっている。お前に報告をした時、なんだかわけのわからない報告をしていたりしなかったのか》

 

 シンカーはイリスに抱えられている小さき狼竜へ顔を向ける。

 

「看守はNPCです。俺達プレイヤーがやっているわけではないのですが……それにしても妙な現象が起きていたような気がします。何というか、異様な言動を繰り返したり、突然妙な行動を取ったりして……」

 

 やはり、とイリスは思った。白き仮面は《壊り逃げ男》であり、このアインクラッドのプレイヤー達に《疑似体験の寄生虫》を憑かせて感情の採取を行っていたような犯罪者であると同時に、高度な技術を持つ技術者だ。

 

 看守のNPCに何かしらの工作を行って動作不良を引き起こさせ、そのまま脱出したと考えるのが妥当だろう。

 

「そんな気はしてた。白い仮面の男は、NPCに何かしらやって、脱出したんだ。

 私達一般プレイヤーからは全く考えられないような方法だね」

 

 シンカーとアルベリヒは驚きっぱなしになる。

 

「まさか、そんな事が可能だと言うのですか」

 

「この世界のNPCにそんな事をするなんて、あ、有り得ない!」

 

「有り得ないだろうね。でも有り得てる。相手は《疑似体験の寄生虫》をプレイヤーに就かせるような奴だし、この世界を弄繰り回す事さえできる奴だ。もはや何をしたって不思議じゃないのかもしれない」

 

 シンカーは戸惑ったような表情を浮かべてイリスに問うた。

 

「じゃ、じゃあ、キリトさんの言っていた危機が、また始まったって事ですか」

 

 今までは、《ムネーモシュネー》のアジトを突き止めて、そこにいる構成員達を残らずひっ捕らえ、そしてリーダー格の存在さえも捕縛する事に成功していたからこそ、もうアインクラッドに危機が訪れる事はないと言えた。

 

 しかし、後々調査や推測により、白き仮面のリーダーが《壊り逃げ男》だった事が判明したところで、既に危機がすぐ目の前に迫ってきている事がわかり、そして今回の《壊り逃げ男》の脱走がアインクラッドの危機の再来を決定付けた。

 

「そう言う事になるね。白き仮面の男、そいつは例え一人でも行動できてしまうような奴……いや、元々単独犯だったのかもしれない。仲間がいなくたって、奴は奴の目的のために行動できるはずなんだ」

 

一人軍隊(ワンマンアーミー)ってところですか」

 

 イリスはアルベリヒに向き直り、きょとんとしたような顔をする。

 

「おぉ、上手い例えじゃないか。まぁそういう事さね。そして今まではそいつを捕まえる事が出来ていたけれど、今、このアインクラッドに解き放たれてしまった」

 

 シンカーが恐れを抱いているかのような、震えた声を出す。

 

「奴は、奴は今どこにいるっていうんです」

 

「私に聞くんじゃないよ。今まで使われていた実験場は、ディアベル君率いる聖竜連合、キリト君率いる血盟騎士団の皆で破壊しまくったし、研究データも残さず消去したから、使い物にならない。

 そこに行っている可能性はゼロだとは思うんだけど……如何せん、この世界に、私達やシステムに気付かれないように後付(アップデート)を行うような怪物だからね。また別なところに実験場を作っているかもしれない」

 

 アルベリヒが顎に手を添える。

 

「また騒ぎがこのアインクラッドで起こるかもしれないってわけですか。あんな恐ろしい事はもう起きて欲しくないところなんですけれど……どうにかならないのでしょうか」

 

「あるよ」

 

 シンカーとアルベリヒはイリスに注目する。恐らく《壊り逃げ男》があのような実験を出来ているのは、プレイヤー達がナーヴギアという脳に接続する機械を使う事によって来る事が出来ているこの世界だからだ。

 

 現実世界ではもっと大掛かりな実験場のような場所が必要になるし、そしてそれを誰にも見つからないようにするのは困難極まりない。それに何より、《壊り逃げ男》のやっている実験というのはそもそも、誘拐拉致や人体実験と言った、法に触れる物のみだ。

 

 そんな実験を、誰にも見つからず、そして警察に逮捕されないように行うのは現実では不可能。即ち、この世界が終了して、プレイヤー達がログアウトしてしまえば、もう実験は不可能になるし、計画は完全に頓挫する。

 

 今までキリトにも同じ事を話して来たけれど、《壊り逃げ男》の存在が、そしてそれがアインクラッドに深刻な影響を及ぼしている今となっては、これを急ぐ必要があるだろう。

 

「この世界をクリアしてしまえば、あいつはもう何も出来なくなるはずだ。あいつのやっている実験は、現実世界では再現不可能のそれだからね」

 

「つまり、これ以上の被害を防ぐ方法は、この世界をクリアする事、という事ですか」

 

 アルベリヒの言葉に、イリスは深く頷く。

 

「そういう事。血盟騎士団の団長は、団長夫人の看病で動けないけど、副団長ならギリギリ動けるはずだ。これ以上の被害を防ぐためにも、どうか攻略の方をよろしくお願いしたい」

 

 イリスが頼み込む中、リランは驚いたような顔をしてイリスを見つめていたが、やがてアルベリヒの方に顔を向け直した

 

《あ、アルベリヒ》

 

「えっ、なんですかリランさん」

 

 リランは言いにくそうな事を言う直前のような仕草をした後に、《声》を送った。

 

《攻略は、そんなに無理して行うようなものではない。そも、もう96層まで来ているのだ、キリトとシノンが復帰してからでも、遅くはない。だから、そんなに急いで攻略を進める必要は、無いぞ》

 

 イリスの攻略を急げと言う言葉の後の、リランの攻略は遅らせるべきだという相反する言葉。それを受けたアルベリヒは瞠目し、イリスもまた同じように驚く。

 

「お、おいリラン、何を言ってるんだ。攻略は早くしないといけないんだぞ。

 そうでなきゃ、《ムネーモシュネー》が復活して、またアインクラッドに混乱が来るかもしれないんだぞ」

 

《我はお前達を心配しているのだ。これからの攻略はもっと厳しいものになるかもしれないし、ここまで来て犠牲が出てしまう可能性だって低くはないはずだ。だからこそ、お前達はキリトとシノン、そして我を待って……》

 

 まるでプレイヤーの最終目標を否定しているかのような言葉を発し続けるリラン。アルベリヒは驚いたような顔のまま、じっとリランを見つめていたが、やがて険しい表情を浮かべて、首を横に振った。

 

「残念ですがリランさん、それには少し従えません。僕達は2年もかけて、ついにここまでやって来たのです。今更立ち止まる事なんて出来ませんよ。

 僕達は引き続き攻略を進めます。99層辺りまで行く事が出来た、もしくは僕達ではどうにもならないようなボスが出てきたら、団長にお声掛けするとお伝えください」

 

 アルベリヒの拒否の宣言を聞くや否、リランは再びイリスの胸の中で暴れ出したが、イリスはそれをしっかりと押さえつける。

 

《お、おい聞け! 攻略は我らが戻ってからでいい! 止まれ!》

 

「リラン、何を言ってるんだ君は! なんでそんなに攻略を否定するんだ」

 

 イリスはがっちりとリランを押さえつけたまま、アルベリヒに向き直る。

 

「アルベリヒ君、言っておくけれどね、キリト君とシノン、アスナは非常に攻略に前向きだ。彼らの願いは、この城の天辺への、一刻も早い到達。ので、攻略を続ける事に問題は一切ない。君達は君達で、攻略を続けるんだ」

 

 アルベリヒはイリスに頷く。

 

「わかっています。僕は血盟騎士団本部に向かい、次のボス戦や層の攻略会議をします。

 お身体とお心をお大事にと、団長夫人に伝えてください」

 

 そう言うと、アルベリヒは一礼して、街の方へと向かい始めた。その背中を追い求めるかのように、リランは暴れ続け、イリスの身体をやたらと押す。

 

《おい、待つのだ、アルベリヒ――ッ!!》

 

「だぁかぁらぁ、なんでそんなに攻略を嫌がってるんだ君は!」

 

 攻略を真っ向から応援するイリスと、真っ向から否定するリランという、まるで磁石の対極同士のような二人を、シンカーは目を点にして眺めている事しか出来ない。しかし、しばらくしたところでイリスはシンカーに気付き、声をかけた。

 

「あぁシンカー君、報告をありがとう。これはキリト君に伝えておくから、君は戻って警戒を続けるんだ。

 《ムネーモシュネー》のボスが、この第1層を、ここにいるプレイヤー達を狙わないとは限らないし、他の構成員を解放させるために逆襲に来るかもしれない。そう言う事に対応できるように、気を張っておくんだ」

 

「あ、はい。キリトさんによろしくお願いします」

 

 ようやく届いたイリスの言葉にシンカーは頷き、振り向いて街の方へ消えていった。

 玄関口に静寂が取り戻され、来る前と何も変わらなくなったところで、イリスは胸元のリランに声をかける。

 

「リラン、どうしたっていうんだよ。君はキリト君達に死んでほしいのか!?」

 

《何を言うかッ。我はそんな事考えておらぬ!》

 

「攻略が遅らせるのはね、キリト君達を死に近付けるって意味なんだよ!

 彼らの現実の身体はもう既に2年以上も放置されている。これ以上時間がかかったならば、彼らの身体が衰弱死するかもしれないんだ! そしたら君はどうするんだよ。主も仲間もいなくなったところで、どうするんだよ!」

 

 イリスが力強い言葉を聞くや否、リランはぴたりと動きを止めた。そして、驚きに満ちた顔をして、イリスの目を見つめる。

 

《キリトや、皆が、いなく、なる……?》

 

「ようやく気付いたか、どこの人間が作ったのかわからない馬鹿AI。あんな事を抜かす君はまさか、キリト君の《使い魔》をやめたいとか思っているのかい」

 

《そ、そんな事はない! そんな事だけは絶対にない!》

 

「ならなんであんな事を言うんだ。さっきの君の言葉は明らかに、キリト君達から真向に対立するそれだったぞ」

 

 リランは黙り込んで、イリスから視線を逸らす。

 

《……我にもわからないのだ。わからないのだ……》

 

「……もしかして君は……まさか」

 

 それを最後に、リランは何も言わなくなった。どんなにイリスが声をかけたとしても、それに応じようとはしなかった。

 




解き放たれた《壊り逃げ男》。その事だけで一回使っちまった回。

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