キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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03:花の園

 風見鶏亭のチェックインを済ませて、一階のレストランで食事をする事になった。前菜といえる軽食を食べ終えた後に、シリカは軽く溜息を吐き、愚痴をこぼすように言った。

 

 

「なんであんな意地悪言うのかな……」

 

 

 シリカがロザリアの事を思い出しているのはすぐにわかった。そしてなぜ、あんなふうな態度を取ったり意地悪をしたりするのか。それはこれ以外のMMOならば理由はわからないでもない。

 

 

「シリカはMMOをやるのは、SAOが初めてか」

 

「はい」

 

「どんなプレイヤーでも、アバターに身をやつすと人格が変わる奴は多いんだ。その中でも、進んで悪人を演じたり、他のプレイヤーを攻撃するようになったりしてな。恐らくロザリアさんもそのクチ……だと思ってたんだ」

 

 

 シリカの目が少し見開かれる。物事が、あまりよくわかっていない時の目つきだ。

 

 

「というと?」

 

「このゲームはデスゲームだ。それはわかるだろう?

 

 今、俺達の頭の上に出ているカーソルはグリーンだけど、殺人などの犯罪を行うと、オレンジ色に変色する。そしてこの殺人を犯した事のあるプレイヤーは殺人者(レッド)プレイヤーと呼ばれるんだ。

 

 従来のゲームならば悪人を気取り殺戮の限りを尽くすなんて言う遊び方をする事が出来た。だけどこのゲームはプレイヤーが死ねば、現実でも死ぬようになってる。遊びで済まされない仕様……そのはずなのに、アイテムを奪ったり、殺人を犯したり……取り返しのつかない事を繰り返す奴があまりに多い。

 

 出会った相手に意地悪をしたり出来るような余裕なんかないはずなんだ。ロザリアさんだって、あんな事をしている場合じゃないはずなのに……」

 

 

 これまで見てきた犯罪者プレイヤー達の姿や情報が頭の中いっぱいに広がって、腹の奥底から怒りが込み上げて来てたまらなくなる。気付けば、ぎりぎりとコップを握り締めていた。

 

 

「きっと、この世界で悪事を働くような奴は、現実世界でも性根の腐り切った奴だって、俺は思ってるよ」

 

 

 こんな命がかかっている状況なのに、ゲーム感覚で人を殺す連中の顔が浮かんできて、思わず手に持っているコップを握り潰しそうになる。やがてコップを本当に握り潰しそうになったその時に、手が急に暖かくなった。

 

 シリカがテーブルに乗り出して、俺の手をその両手で包み込んでくれていた。目の前に目を向ければ、真剣そのものになっているシリカの顔があった。

 

 

「キリトさんはいい人です。あたしを助けてくれたんですから。それに、きっとキリトさんがいい人だから、リランちゃんっていう《使い魔》が一緒に居るんだと思います!」

 

 

 シリカの言葉は耳を通じて心の中に流れ込んでくるような気がした。同時に、それまで頭の中に浮かび上がっていた犯罪者プレイヤー達の言動や話し、情報が一気に消えてなくなり、心の中に立ち込めていた嫌なもやもやと怒りがすっと晴れて行くのを感じた。

 

 

「《使い魔》を失った君を慰めようって思ってたんだけど……俺の方が慰められてしまったね。ありがとう、シリカ」

 

 

 思わず笑んでしまった瞬間、シリカは突然顔を赤くして俺から手を離し、自分の席に戻って忙しなく周りをきょろきょろし始めた。

 

 

「あ、あっれぇ、ご飯まだですかねえー、すみませーん、ご飯まだですかー?」

 

 

 俺とリランは目を点にしながら、じっとシリカの事を見つめていた。

 

 

  ◇◇◇

 

 

 夕食を終えて部屋に戻り、俺はベッドに横になった。時刻の方を確認してみれば、午後8時を回っている。

 

 

「中々の夕食だったな」

 

《あぁ。特にシリカの推していたチーズケーキは絶品であったな》

 

 

 黒パンとビーフシチューという簡素なものだったけれど、シリカがおすすめしていたデザートのチーズケーキは、まるで高級ケーキ店のそれを思わせるかのように、まろやかで美味しいものだった。俺はその味に軽く驚いてしまったけれど、それよりも驚いたのは、リランもそれを食べた事だ。

 

 

「まさかお前がチーズケーキを食べるなんて思ってもみなかったよ。たまに人間みたいだよな、お前って」

 

 

 ベッドの枕元に横になっている、カレーもチーズケーキすらも食べる白き小竜がフンと鼻息を鳴らす。

 

 

《我は竜だぞ。人間ではないが、まぁ考えている事や食性は人間に似通っているのかもな。それよりも、あのシリカは随分と良い事を言ったものだ》

 

「何が?」

 

《お前が悪者ではないという言葉だ。お前を見ていると、我も本当にそう思う。お前は決して悪人ではない。だから、我はお前についていこうと思ったのだろうな》

 

「お前までそんな事を言うのかよ。嬉しいけどさ」

 

 

 リランが俺に顔を向ける。

 

 

《もしお前が悪人であったならば、今頃お前は地獄で鬼に許しを乞いている頃だろう。そうではないという事は、お前は悪人ではないという事だ》

 

 

 リランは非常に言葉達者だ。それに語彙も沢山あるみたいで、話せばいろんな言葉を返してくる。でもたまに地獄で鬼とか、恐ろしい言葉を言って来る事もあるから時々怖くなる。

 

 

「シノンも言ってたけど、たまに怖い事を言うなお前。あまりそういう言葉は使うもんじゃないぜ」

 

《そうさな。こういう言葉は心底腹が立った相手にだけ言うとしよう。今のところは確認出来ないがな》

 

 

 リランは上半身を起こし、隣のシリカの泊まる部屋の方に目を向けた。そこで《声》も止めるものだから、思わず不思議になって、俺はリランに声をかける。

 

 

「どうしたんだよ」

 

《いや、シリカは大丈夫かと心配になってな。あいつはずっと《使い魔》と共にいたはず。きっと《使い魔》のいない夜は今日が久しいに違いない》

 

「……それもそうだな」

 

 

 見たところ、シリカはピナという《使い魔》を大事にしていたように見えた。そうでなきゃピナを失ってあんなに悲しむわけがないし、わざわざ47層に出向いてまで生き返らせようなんてしないはずだ。けれど、今晩はピナがいない事に変わりはない。……大事な友達が傍にいなくて寂しいだろう。

 

 

「シリカ、寂しがってなきゃいいんだけど……無理だよな」

 

 

 そう言ったその時、ドアをノックする音が聞こえてきた。《こんな時刻に客人だろうか》とリランが言った直後に、俺はベッドから立ち上がって出入り口のドアに近付き、戸を開けた。すぐに、薄着を身に纏った明るい茶色の髪の女の子……リランとの話に出てきていたシリカの姿が目に映った。

 

 

「シリカ。どうしたんだ」

 

 

 シリカはぎこちなく、呟くように言った。

 

 

「えっと……47層の事とか教えてもらいたくて。あたし、47層まで赴いた事が無いので、どう進めばいいのかなぁって、気になって……」

 

「あぁそうか。君はまだ行った事が無いのか。じゃあ説明するけれど、階下に行こうか?」

 

「いいえ、出来ればこの階でお願いします。他の人に盗み聞きされたら悪いじゃないですか」

 

「それもそうだな。じゃあ部屋に入って。47層について説明するよ」

 

 

 シリカが頷いたのを確認すると、俺は一歩後ろに下がり、シリカを部屋に招き入れた。そしてシリカを近くの椅子に座らせて、その隣に椅子を持って来て座った後に、俺はアイテムストレージから小物のようなアイテムを取り出し、テーブルに置いた。

 そのアイテムを静かにクリックすると、アイテムの上部に水色の光の球体が姿を現し、シリカの目は輝きを宿した。

 

 

「うわあ、綺麗……!」

 

「このアイテムはミラージュスフィア。一度行った事のある層の構造とかを確認できるアイテムで、言わば立体地図といえる代物なんだ。それで今映っているのが、47層の構造だよ」

 

 このアイテムを手に入れたのは、ごく最近だ。ミラージュスフィアなんて言うよくわからない名前で、何のためのアイテムかわからずに起動させたら、こんなものが出てきて驚く事になったのは記憶に新しい。

 シリカが目を輝かせる中、俺は立体地図に手を入れて、説明を始める。

 

 

「この中心にあるのが47層の街。ここから一気に離れて、奥に進んだところにあるのが思い出の丘で、その一番奥にあるのがプネウマの花だ。だけど俺の記憶が正しければ、この途中に少々手ごわいモンスターがいるんだけど……まぁ俺とリランがいるからどうにでも――」

 

《キリト、盗聴だ! 部屋のドアの前で聞く耳を立てている者がいる!!》

 

 

 いきなりリランの《声》が聞こえてきて、俺は驚いたと同時に、ドアの方へ目を向けて、索敵スキルを展開した。リランの言う通り、ドアの外からプレイヤーの気配を感じ取る事が出来た。

 

 

「そこにいるのは誰だ!!?」

 

 

 椅子から立ち上がり、ドアに向かって走り出し、力強くドアをこじ開けて周囲を確認する。宿の廊下のどこにも人影はなかったが、耳を澄ませてみれば人が走り去るような音が聞こえてきた。やはり、誰かに盗聴されていたようだ。

 

 

「くそ、聞かれた上に逃げられたか……」

 

 

 後ろから、シリカの不安そうな声が耳に届く。

 

 

「どうしたんですかキリトさん。急に立ち上がって」

 

「拙い事になったかもしれない。部屋の外に盗み聞きをしている奴が居たんだ。情報を、盗まれた」

 

「えぇっ。で、でも他のプレイヤーはドアの向こうの音を聞く事が出来ないはずじゃ……」

 

 このゲームにおいて、宿屋のドアの向こうの音は、他のプレイヤーは聞く事が出来ない仕様になっている。しかし、数多のスキルの中で、聞き耳スキルというものを上げておけば、その仕様を無視して、部屋の向こうの声を聞く事が出来るようになる。

 

 

「恐らく聞き耳スキルを上げているプレイヤーだ。聞き耳スキルを上げておけば、ドアの向こうの声も聞けるようになる……そんなスキルを上げてる奴なんかいないと思ってたが、そうでもないらしい」

 

 

 あのプレイヤーには47層の情報を聞かれてしまった。恐らくだが、犯人はあの集団の一人だろう。シリカが47層に向かうが故に、聞き耳を立てていたに違いない。

 

 

「シリカ、明日は用心しよう。何が起きてもいいようにしておくんだ。だけど、不安にはならないでくれ。俺が君をプネウマの花の元まで無事に送り届けて、ピナを生き返らせてやるから」

 

 

 振り返ると、シリカはきょとんとしていたのが見えた。聞き耳スキルを上げている奴が居て、盗み聞きされていた事に余程驚いているのだろう。……その割には少し顔が赤いけど。

 

 

「わ、わかりましたキリトさん。明日はよろしくお願いします」

 

「うん。ところで、これからまたメッセージを送るから、ちょっと待っててくれ」

 

 

 俺はそう言った後に、メッセージウインドウを起動して、ホロキーボードで文字を打ち込み始めた。宛先は勿論、俺にタイタンズハンドの討伐を依頼してきたあの男。

 

 内容は、明日、タイタンズハンドとの戦いになるだろうというもの。恐らくだが今の奴はタイタンズハンドの輩だ。奴らは47層でシリカを狙い、姿を現すはず。その時こそが、奴らを捕まえて牢獄へ入れてやるチャンスであり、あの男の依頼を達成する時だ。それにあいつは全財産をはたいて回廊結晶を買ったと言っていたから、何か金目になりそうな土産を持って行ってやらないと。

 

 

 色々考えながらメッセージの入力を完了し、宛先をあの男のところへ向けて、送信ボタンを押すと、送信しましたと言う文字の書かれたウインドウが出現し、すぐにホロキーボードとメッセージウインドウごと消えた。

 

 明日は間違いなく厄介な事が起こる日になるだろう。シリカの身に危険が及ばないように、シリカの事をしっかりと守ってやらないと。

 

 そう思って振り返ったその時に、俺の目は点になった。いつの間にかシリカがベッドに寝転んで、すやすやと寝息を立てていた。しかもその腕でリランの事をしっかりと抱き締めており、そのリランもまたぐっすりと眠りに就いている。

 

 

「ありゃ……寝られたか……」

 

 

 寝顔を見てみると、とても安心して、心地よさそうなものだった。本当なら起こして部屋に行かせるべきだろうけど、ここまでよい寝顔をされていると、流石に起こし難い。それにシリカの事だから、部屋の方はしっかりと鍵を閉めてやってきているだろう。開錠スキルなんてものは持ってないし、シリカの事はここで寝かせるしかない。

 

 

「……」

 

 

 シリカはリランの事をしっかりと抱いて、気持ちよさそうに寝息を立てている。きっとリランのフカフカが、シリカの《使い魔》であるピナのフカフカに似ているんだろう。今晩は《使い魔》がいないせいで、寂しくて眠れないのではないかと、リランの言葉を聞いて心配に思っていたけれど、いつの間にかリランがそれを解決していた。

 

 ……俺のベッドはなくなってしまったけれど、シリカの寝顔を見ると、そんな事はどうでもよくなった。今日は床で寝よう。現実世界ならば変な姿勢をして寝ると筋肉痛に襲われるけれど、この世界はゲームの中だから筋肉痛なんてものはない。

 

 

「仕方ないや。このまま床で寝よう」

 

 

 俺は横になる寸前、シリカの頭にもう一度手を乗せた。きっと明日、この娘の命は狙われる。いや、タイタンズハンドの目的が殺戮にあるのか、レアアイテムの強奪にあるのかどうかまではわからない。けれど、確実にシリカは明日危険に晒される事になるだろう。

 

 

「何があっても……守ってやるからな……」

 

 

 小さく呟いた後に壁を軽く叩いて、照明を消し、眠りの中に俺は転がり込んだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 朝方に突然聞こえてきた大きな声で俺もリランも起床した。何事かと思って身構えてみれば、そこにいたのは顔を真っ赤にしたシリカの姿だった。シリカにどうしたんだと尋ねてみたところ、首を振って何でもないと答えられ、どうして叫んだのかまでは聞かせてくれなかった。

 

 何だかよくわからない朝を迎えたけれど、シリカも俺もぐっすり眠る事が出来たらしく、昨日よりも調子がよく感じられた。これなら47層も問題なさそうだ。

 

 

 1階に降りて朝食を摂り、チェックアウトを済ませて宿屋から出ると、俺達は隣にある道具屋に行き、ポーション類を購入。これから冒険に出かけて行くであろうプレイヤー達と、徹夜で戦い続けて疲労しきっているプレイヤー達を横目に見ながら転移門へ向かい、47層の街へと転移した。

 

 

「うわああ!!」

 

 

 47層に辿り着くなり、シリカは悲鳴のような喜びの声を上げた。

 47層の街の転移門周辺は、色とりどりの花々で満ち溢れていた。円形広場と細い通路が設けられているが、その他はすべて赤い煉瓦で囲まれた下段になっており、その中では無数の草花が咲き誇っている。まさに極彩色の乱舞、《フラワーガーデン》。

 

 

「この層は通称フラワーガーデン。街だけじゃなくて層全体が花に覆われてるから、プレイヤーの間じゃかなり人気の高い層になってるんだよ」

 

 

 シリカは頻りに花の揺れる様子を見たり、その香りを嗅いだりしていた。そして気が済んだのか、やがて立ち上がって、周囲を見渡し始めた。今度は何を気にし始めたんだろうと思った直後に、シリカは振り返って「早く行きましょう」と言って歩き始めてしまった。その時の顔が少し赤くなっているように見えたが、気のせいだろう。

 

 俺は慌ててシリカに追いつき、花に覆われた47層の道を歩き続けていたが、そのうちシリカが俺に声をかけてきた。

 

 

「あの、キリトさん」

 

「なんだい」

 

「あたしに似てるって言う妹さんの事、話してもらってもいいですか」

 

 

 思わず目を見開いてしまう。ここアインクラッドで、現実世界の事を尋ねるのは基本的にはタブーだ。理由は色々あるけれど、この世界を現実と同じ世界だと思い込ませ、死に対する感覚が麻痺するのを防ぐためだと言われている。

 

 俺だって、他の誰かに現実世界の事柄を話す気にはなれないし、絶対に離さないつもりでいる。……だけど何故だか、シリカには、妹の事とかを話してやってもいいという気を感じていた。その後に、俺の口は動いた。

 

 

「妹って言ったけれど本当は従兄妹なんだよ。生まれた時から一緒だったから、妹の方は知らないはずだけど……そのせいなのかな、距離っていうか溝を作っちゃって……。

 それから、祖父さんが厳しい人でさ。俺が八歳だった時に、俺達を無理矢理剣道に通わせたんだよ。だけど俺はどうもそれに馴染めなくて、2年で辞めてしまった」

 

《無理やりやらせるのは感心せぬな。お前がそんな行動をとったとしても、何ら不思議ではないかもしれぬ》

 

 

 俺は思わず下を向く。

 

 

「そしたら祖父さんはブチ切れて、俺の事を散々殴りまくったんだけど、その時に妹が泣きながら割り込んできて、自分が二人分も頑張るからって殴らないでって庇ってくれたんだ。その時からだな、俺がコンピュータにのめり込んで行ったのは。一方妹の方はぐんぐん剣道に強くなっていって、全国大会で上位クラスまでいくようになってた。あいつがあれだけ打ち込んでくれたんだ、祖父さんもさぞかし満足だったろうな」

 

 

 俺は途中で首を横に振った。頭の中に剣道着を身に纏った妹の姿が浮かび上がり、剣道で活躍してる時の光景がフラッシュバックする。

 

 

「だけど、俺はそんなあいつに引け目を感じた。あいつにだって、もっとやりたい事があったんじゃないかって……途中で剣道を投げ出した俺を恨んでたんじゃないかって、そんな事を考えてたら余計にあいつを避けるようになっちゃって……」

 

 

 シリカは何も言わずに俺の事を見つめていた。

 そんなシリカの瞳から目を背けつつ、俺は呟くように言った。

 

 

「君を助けたくなったのは、そんな妹への罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない。結局は俺の自己満足みたいなものさ。巻き込んでごめんな、シリカ」

 

 

 そこでシリカは俺の目の前に躍り出て、首を横に振った。

 

 

「妹さんは、キリトさんを恨んでなんかいないと思います。きっと心の底から剣道が好きなんですよ。そうでなきゃ、全国まで行けるわけがありません」

 

 

 シリカの言葉を聞くと、昨日のように胸の中が暖かくなり、心の中に広がっていた後悔の気持ちが消え去っていくのが感じられた。頭の中と心の中がスーッとすると、俺は思わずシリカに笑んだ。

 

 

「君には慰められてばかりだな……ありがとうシリカ。そうだな、そうだといいね……」

 

 シリカは一瞬俺から顔をそむけた後に、もう一度顔を向けて、にっと笑ってくれた。

 直後、リランが俺の隣に並んで、《声》を送ってきた。

 

 

《これだけ言ってくれるのだ。この者の事は守るぞ、キリト》

 

「あぁ、勿論さ」

 

 

 俺はリランの顔に手を当てると、シリカの隣に並びながら、目的地である思い出の丘に急いだ。何が起こるかはわからないから、慎重行かないと。

 

 




今のところ原作沿いなので、原作で出てきた台詞を多数使わなきゃいけない事もあるから原作の大幅コピーにならないか不安になる。

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