キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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2分割後半。


10:ざわめく心と

「それで、これが一番重要な話です。おねえさんの中から出てきた《ホロウエリア》の利用履歴を確認したところ、おねえさんとおにいさん、須郷以外の誰かが《ホロウエリア》にログインして、尚且つホロウデータの一つを回収し、アインクラッドに持ち込んだみたいなんです」

 

 

 ユイやユピテル、リラン達ではない存在が《ホロウエリア》に侵入した――その言葉だけで、俺はこの話が如何にとんでもない話なのかを理解する事が出来た。

 

 

「そ、そんな事が出来た奴がいたのか。一体、誰なんだ」

 

「わたしにもよくわかりません。けれども、おねえさんの中にある履歴の中には、確かにおねえさんとおにいさん、須郷以外の利用者が居たという記録が確かに残っていたんです。そしてその人物は、《ホロウエリア》にいるプレイヤーを忠実に再現したAI、ホロウデータの一つを回収した後に《ホロウエリア》を脱し、そのままアインクラッドに戻り、ホロウデータを解き放ったと思われます」

 

 

 アインクラッドにホロウデータがいるという状況を頭の中で咄嗟に想像したが、俺はそこで首を傾げる事になった。ホロウデータがアインクラッドにいるプレイヤーを忠実に再現したものならば、同じ名前、同じ姿、同じデータを搭載したプレイヤーが二人存在する事になる。そんな事が、アインクラッドで許されるのだろうか。

 

 

「ま、待てよユイ。そうなると、同じプレイヤーが二人アインクラッドに存在していた事になるぞ。そんな状況、システムが狂うんじゃないのか」

 

「思い出せキリト。あの時は須郷のおかげでカーディナルシステムが麻痺していたのだ。普通ならあり得ない事だって、あり得る状況だったのだ」

 

 

 咄嗟のリランの言葉で、俺は思い出す。確かに、あの頃のアインクラッドは須郷の工作により、支配システムであるカーディナルシステムが麻痺し、基本的なシステムを除いて機能していない状況にあった。だからこそ、あの時のアインクラッドでは、同じプレイヤーデータが二つ存在していても不正と認識されなかったのだ。

 

 

「だけど、誰が何のためにそんな事を――」

 

 

 そこで俺は頭の中に強い閃光が走ったような錯覚を覚えた。そして直後、頭の中に浮かび上がってきた内容に、指先や足先から熱が抜けて、一気に身体の中が冷たくなったのを感じた。それを悟られないようにしながら、俺は咄嗟に隣にいるイリスに目を向けた。

 

 イリスもまた、とんでもない事に気付いてしまったかのような、険しい表情を浮かべていた。

 

 

「イリスさん……」

 

「……なんだい、キリト君」

 

「アインクラッドに本物とホロウデータが同時に存在する状況になったとして、どんな事になりますか。どんな事が、出来ます、か」

 

「……奇遇だね。私も同じような事を考えていたよ」

 

 

 そこでイリスは軽く上を眺めて、腕組みをした。そのまま、ゆっくりと吐き出すように言葉を紡ぎ始める。

 

 

「本来テストをするためのAIでしかないけれど、あるプレイヤーと完全に同じ性質と姿を持っているホロウデータの使い方と言えば、やはり死地に送り込む事だろう。AIならば、例えやられても誰も死なないから、身代わりになる。そればかりか、もしアインクラッドのシステムそのものがホロウデータをプレイヤーと認識していたならば、ホロウデータが死亡した際、第1層にあった生命の碑に横線が引かれる事になるだろう。

 だけど、その場合死んだのはあくまでホロウデータであり、本人は死亡したわけではない……だが、生命の碑には横線が引かれている。――真の意味での、《死んだふり》が出来るね」

 

 

 アインクラッド内で死亡すると、第1層にある生命の碑の名前に横線が引かれるようになっていた。更にそこには死因も書かれるようになっているため、誰が生存していて、誰が死亡しているかを確認するのは容易だった。

 

 しかし、もしホロウデータが死亡した際にも同じような事が起こるのだとすれば、本人が死亡していないにもかかわらず生命の碑の名前には横線が引かれてしまう。――死んでないのに、死んだように見せかける事が出来る。

 

 そして、イリスが言うには、ホロウデータを未実装システムのテスト以外に活用できる方法と言えば、死地に送り込める身代わりだという。――それを聞いてから、俺は頭の中では、ある死地が思い出されて仕方がなかった。

 

 

 俺が犯してしまった最大の過ちであり、アインクラッド史上最悪の戦い。最悪の死地。それは他でもなく、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》討伐戦だ。あの戦いで俺はリランを暴走させてしまい、リーダーであるPoH、幹部であるザザとジョニー・ブラックを含めた《笑う棺桶》全員を根絶やしにするという暴挙を許してしまった。

 

 しかし、あの時《笑う棺桶》全員がそこに集結して、尚且つリランが一人残らず皆殺しにした事から、あれ以来《笑う棺桶》の残党のようなものが俺達攻略組の目の前に現れる事はなかった。

 

 だが、もし……あの時に……。

 

 

「おい、キリト!」

 

 

 突然聞こえてきた声に俺は悲鳴を上げそうになった。びくりと全身を言わせてから顔を上げてみると、金色の長髪と白金色の狼耳が特徴的な少女が居た。

 

 

「どうしたのだ。顔色が真っ青になっているぞ」

 

 

 如何にも心配そうな表情を浮かべている少女――あの時《笑う棺桶》を全滅させた張本人でもあるリランに向き直り、俺は冷や汗を垂らしながら問うた。

 

 

「なぁ、リラン……嫌な事を思い出させるかもしれない。……《笑う棺桶》の討伐戦、憶えてるか」

 

「ッ……!」

 

 

 リランはまるで背中に氷でも当たったかのように身体をびくりと言わせ、一瞬驚いたような顔をすると、徐々に悲しそうな表情を底に浮かべていき、俯いた。

 

 

「……憶えておるよ。あの時、我は自分を失い、本能のまま殺しまわったのだ。そして《笑う棺桶》を、文字通り皆殺しにした。あの時は本当にお前達に迷惑をかけたし、もう少しでお前を殺すところでもあった」

 

 

 そこで、リランは顔を上げた。今度はその顔には、戸惑っているような表情が浮かべられている。

 

 

「だが、何故今その話をする。お前は今、何を思い付いたのだ」

 

「もし……あの時にホロウデータが混ざっていたのだとすれば……?」

 

 

 俺の言葉で、一瞬全員から驚きの小さな声が上がり、部屋中が完全に静まり返った。窓が閉まっているせいで、風の音さえ入って来ず、完全なる静寂に包みこまれている部屋。そこを静寂と同時に、重さのよくわからない沈黙が覆っていったが、それを破ったのはリランだった。

 

 

「お、おい待て。まさかお前、あの時の戦いに、《笑う棺桶》の誰かが身代わりを入れていたとでもいうのか」

 

「……《笑う棺桶》の中に、あの戦いがあんなふうになる事を、前もって知っていた奴がいたんだ。そしてそいつは、自分がそれに巻き込まれるのを嫌がって、ホロウエリアに侵入して、自分自身のホロウデータを持ってきてアインクラッドに解き放ち、あの戦いに向かわせたんだ。

 そして、あの時ホロウデータだけが破壊されて、当の本人は生き残った……《笑う棺桶》が壊滅した後は、自分が《笑う棺桶》だった事を隠して生き延び……ログアウト、した……」

 

 

 自然と声と言葉が漏れ出して、頭の中にあった考えを全て部屋中の者達に伝えた。自分でもあり得ないのではないかと思いたいけれど、どうしても、それ以外の考えを作り出す事が出来なかった。そんな俺の耳元に、隣のイリスの声が届いて来た。

 

 

「……もし、キリト君の話が本当なのだとすれば……《笑う棺桶》にはただ一人だけ生き残った奴がいたって事になるね。そしてそいつは恐らくカルマ回復クエストを行ってグリーンに戻り、アインクラッドに潜伏し、やがて無事にログアウトを果たしたのだろうね。《笑う棺桶》は、完全に死んじゃいなかったって言うのか……?」

 

 

 《笑う棺桶》が生きている。死んだと思われていた《笑う棺桶》は、実は一人だけ特殊な方法で生き残っており、ログアウトして現実世界に解き放たれている。そう思った途端、濁流のように頭の中に考えが押し寄せてきた。心の中に不安が湧いて出てきて、身体が小刻みに震えてきて、思わず自らの身体を抱き締めた。

 

 そいつは一体誰だ。リーダーか、幹部か、それとももっと末端の奴らか。

 いや、そもそもそいつはどうやってホロウエリアに入ったんだ。

 そもそもどうやってそいつはホロウデータを取ったんだ。

 どうやってそいつはホロウデータをアインクラッドに――。

 

 

「……ッ!」

 

 

 突然、項の辺りに暖かいものが当たった。次の瞬間、頭の中に押し寄せてきていた考えの濁流が止まり、一気に静まり返って、心の中の不安と疑問が一気に弱くなっていき、身体の震えが止まっていく。しかし、何が起こったのかは一切わからない。

 

 そのまま硬直してぼーっとしていると、横からすっと何かが出てきて、俺の顔を覗き込んできた。金色の長い髪の毛に白金色の狼耳、紅玉のような紅い瞳――相棒であるリランだった。

 

 その顔を見た途端、いつの間にかリランがユイの隣から俺のすぐ横まで移動してきていて、尚且つ俺の項に手を当てて、MHHPの機能である精神治療を行った事を把握する。

 

 

「……リラン」

 

「……深いところまで行きそうになっていたから、強引に戻させてもらった。今回は、耽りすぎだぞキリト」

 

「……」

 

 

 リランは俺の瞳をじっと見つめながら一息吐いた後に、もう一度その口を開いて、言葉を紡いだ。

 

 

「確かに、ホロウデータを持ち出すなんていう事を誰がやったのかわからぬから、《笑う棺桶》ではないかと勘繰ってしまうのもわかる。だがな、もしかしたら《笑う棺桶》ではないのかもしれぬのだぞ。それにな、《笑う棺桶》だって猛威を振るえたのは、あの世界がゲームの世界であると同時にデスゲームだったからだ。

 だが、現実世界に戻った今となっては我らの居場所がわかるわけがないし、突き止める事だって困難だ。それに、万一このALOとかで出会えたとしても、デスゲームではないから殺す事は出来ぬ。出来る事と言えば、戦闘不能に陥らせる事だけだ」

 

 

 リランにしては随分長々と喋った直後、その顔に微笑みに近しい表情がふわりと浮かんだ。

 

 

「お前は他人の事が言えぬよ。お前は我にデスゲームは終わったから、もう気を付けなくていいと言っておるが、お前だってあの世界に居た時のように必要過多に気を張り巡らせて、備えなくていい事を考える。お前も、あの世界の時の感覚が抜けきっていないのだ」

 

 

 言われて、俺はフッと我に返る。確かに、俺はSAOに居た時、なんとしてでも自分を含めた皆を生き延びさせたいという願いから、様々な作戦を考えたり、身の回りのものに気を張り巡らせていた。言われてみれば、今はその時の状態に近いような気がする。

 

 

「キリト。もう、そんなに深く考えるな。デスゲームは終わった。仮に《笑う棺桶》に生き残りが居たとしても、お前達を殺す事なんて不可能だ。だからもう、《笑う棺桶》の事は、考えなくていいのだ……」

 

 

 リランの優しげな声を聞き、俺は顔を半分右手で覆う。確かにデスゲームは完全に終結しており、今いる世界であるALOもただのVRMMOでしかない。それに、アミュスフィアの個人情報を読み取る術さえ存在していないから、人が他人の住所を把握する事だって出来ない。ホロウデータを使っていたのが《笑う棺桶》だったとしても、あの世界から脱出した俺達を襲う事など不可能だ。

 

 今更になって、何も不安になる要素なんてなかった事に気付き、俺は深い溜息を吐いた。

 

 

「そうだな……そう、だな。リランの言う通り、だな。俺も、お前にあの世界から抜け切れてないなんて言えなかったんだな」

 

「お互い、あの世界で生きている時間が長かったからな。あの世界の感覚というものはなかなか抜けないものだ」

 

 

 だんだんと心の中が暖かくなってきて、リランと同じように笑めるようになった頃、俺は肩に重さを感じた。顔を向けていれば、隣に座っていたイリスが俺の肩に手を乗せて、微笑んでいた。

 

 

「リランの言う通りだよ、キリト君。確かに君の話も可能性としてはあるかもしれないけれど、奴らの生き残りがいたとしても、君達の現実世界での居場所を突き止めるのは不可能だ。それに、万が一そいつがまだ君達位だったとしても、そもそもSAOの中で《笑う棺桶》だったような奴は専用の少年院行きになっているんだ。だから、そんなふうに怯える必要だってないし、気を付ける必要だってないよ」

 

 

 イリスにリランと同じような事を言われて、俺はもう一度自分の中で気持ちを整理する。確かに《笑う棺桶》の生き残りがいるかもしれないけれど、それはあくまで可能性の一つにすぎないし、仮にもしそうだったとしてもそいつは俺達を直接襲う事など出来っこないのだ。だから気を付ける必要もないし、変に怯える必要だって、ないんだ。

 

 ……しかし、俺はその考えに至っても尚、《笑う棺桶》が一人だけ生き残っているのではないかという可能性を捨てきる事は出来なかった。

 

 

「そのとおりですね。俺も、ちょっと深く考え込みすぎていたみたいです。けど……」

 

「けど?」

 

 

 頭の中がすっきりした俺は、改めて考えを回して、ある存在の事を思い出す。《笑う棺桶》がたった一人だけ生き残っているという可能性が捨てきれないのは、その存在のせいと言っても良い。その事を告げる前に、俺は冷静さを取り戻させてくれたリランに向き直る。

 

 

「リラン、まずお礼を言うよ。お前のおかげで冷静になれた。お前のそれって精神を安定させるだけじゃなく、冷静にさせてくれるんだな。それに、安心させてくれたありがとう。

 けどな、俺はやっぱり、《笑う棺桶》が生きているっていう可能性を捨てきれないんだよ。イリスさん、ハルピュイアっていうプレイヤーを知ってますか」

 

「ハルピュイア?」

 

 

 そこで俺は、イリスにハルピュイアの事を、ハルピュイアに出会ったリランが感じ取った事を全て話した。その話が終わる頃には、イリスは椅子に深く座り、顎もとに手を添えていた。

 

 

「なるほど……突然襲い掛かってきた辻デュエリストか。そしてリランはそれから、《笑う棺桶》の者達のような気配を感じていた、か」

 

「はい。それに……」

 

 

 あの時は突然襲撃されていたから、気が動転して見間違えたのではないかとも思ったのだが、冷静に考えてみると、見間違いではなかった事に気付いた。あの時、ハルピュイアがディアベルを仕留めるために取ったやり方は忍び足スキルを使って足音を一切立てずに相手の背後に忍び寄り、猛毒ナイフで喉元を掻き切るというやり方。

 

 

 まるで暗殺のようなその戦い方を得意としていたのは他でもない、《笑う棺桶》の幹部である毒短剣使い、ジョニー・ブラックだ。――あの時ハルピュイアは、そのジョニー・ブラックと全く同じ動きをしていた。

 

 

「ハルピュイアの戦い方は、《笑う棺桶》の幹部の動きにそっくりだったんです」

 

「なんだって」

 

「だから俺、ハルピュイアこそが《笑う棺桶》の生き残りなんじゃないかって今なら思うんです。ハルピュイアこそが、ホロウデータを使って死地を切り抜けて、カルマ回復をして、アインクラッドを生き延びたんじゃないかって思うんです」

 

 

 そこでイリスは気難しそうな顔をして、顎もとを指先で掻き始めた。いつもならば指先で髪の毛をいじり始めるんだけれど、今回は珍しく顎元を掻いている。

 

 

「確かに、《笑う棺桶》の幹部と同じような動きが出来ているならば、そいつが生き残った《笑う棺桶》幹部だって思うのが普通だ。このゲームだって現実と真反対の性別に性転換(トランスジェンダ)が可能だから、自分が《笑う棺桶》の生き残りだって気付かれないように性別を変えて、尚且つ仮面で顔を隠して……。

 だけど、もしもそうならば、君達はそいつと面識があるはずだから、向こうから声をかけてくるものじゃないのかい」

 

「いいえ、あいつは無言を貫いていました。何も言わずにデュエルを申請してきて、断ったら無言で襲い掛かって来て。何かをされても悲鳴も上げなかったし、掛け声も出しませんでした」

 

 

 俺もハルピュイアとの戦いを終えた後、頭の中でそれらを整理したものだけれど、もしもハルピュイアがジョニー・ブラックだったならば、何らかの掛け声くらい出すだろうし、何より自らがあの時のジョニー・ブラックである事を伝えるはずだ。

 

 しかし、ハルピュイアはその一切をすることなく、ただ俺達に斬りかかり、そのまま逃げて行った。これだけでは、ハルピュイアをジョニー・ブラックと断定する事は出来ない。恐らく同じような事を考えているのだろう、イリスが複雑な考えをしているかのような表情を浮かべた。

 

 

「駄目だな……ハルピュイアが本当にそのジョニー・ブラックとやらなのか、判断できない。今のところは、様子を見るしかないね。それに、あいつはプレイヤーに襲い掛かる傾向を持っているから、もう一度出てきた時を狙って、聞いてみるしかない。お前はジョニー・ブラックなのかって」

 

 

 確かに、それが一番手っ取り早い方法であるし、俺自身も、ハルピュイアがまた来そうな気を感じている。きっと近いうちに、俺達はまたハルピュイアと戦う事になるだろう。その時に、武器を抜く前に尋ねるのが一番良さそうだ。その時にこそ、全てがはっきりするはず。

 

 これからの事を、リランのおかげで冷静になった頭で整理したその時に、とことこと言う足音が届いてきて、俺はそこに向き直った。すまなそうな、心配そうな表情を顔に浮かべたユイの姿がそこにあった。

 

 

「ユイ」

 

「パパ、ごめんなさい。わたしがこんな話をしたばっかりに、パパを混乱させてしまって……お話し、しない方がよかったですね」

 

「いいや、そんな事はないよ。ユイが話してくれたおかげで、あの世界の事がわかったし、これから気を付けないといけない事もわかった。全部ユイが話してくれたおかげだよ。ありがとうな」

 

 

 そこで、俺は気付いた。ユイと同じような顔をしたユピテルとストレア、クィネラの三人が、俺の元へと近付いて来ていたのだ。恐らく、リランと同じようにMHHPとMHCPとしての本能が働いたのだろう。

 

 

「キリトにいちゃん、大丈夫?」

 

「あぁ。お前のねえさんのおかげでなんとかなったよ。俺も考えすぎるのには注意しないと行けなさそうだ。俺はもう大丈夫だから、そんなに心配しなくたっていいよ」

 

「本当に大丈夫なの。ちょっと休んだ方がいいんじゃないの、キリト」

 

「確かにそうかもな。軽く休ませてもらう事にするよ。どうせここは、休むための場所だからな。イリスさん、もう少しここに居させてもらっていいですか」

 

 

 心配そうな表情を浮かべる三人から目を逸らして、イリスに顔向けすると、そこには腕組みをしたイリスが居た。その顔は、診察をする時のそれに似ても似つかないものだった。

 

 

「別に構わないよ。リランの精神治療を受けた後は、しばらく安静にしておいた方がいいからね。それに、君達と会うのは一週間ぶりだから、その間の事を聞こうじゃないか」

 

 

 俺は頷き、椅子に深く座り込んだが、頭の中はあまり落ち着いていなかった。

 

 ホロウデータを使って生き延びたのが本当に《笑う棺桶》の者だったならば、この世界でハルピュイアのように襲い掛かってくる可能性も捨てきれないし、ハルピュイアだってまたいつ襲い掛かってくるかわからない。もしそうなったとき、どう対処すべきかを考えておくべきだろう。

 

 攻略をする際に気を付ける事は山のようにありそうだと思った途端、深いため息が口から出た。

 

 




何かが生きている。

そして次回、ヤバげかもしれない。
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