キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

35 / 564
引き続きリズベット回。


06:心の温度Ⅲ

         □□□

 

 目を醒ますと、そこにキリトの姿はなかった。というかいつの間にか、寝袋のようなものに入っている。昨日はそんなものに入って眠った覚えはないのに、いつ入ったんだろうか。

 

 自分の身に起きた事について考えながら上を見上げると、夜空が僅かに明るくなっているのがわかった。今の時刻は日の出前、即ち午前4時頃のようだーーそんなふうに思った直後、近くから物音がして、リズベットは不思議に思いながら目を向けた。そこにあったのは、何かを探しているように雪の中をごそごそと触っているキリトの後ろ姿だった。

 

「あれ、キリト……?」

 

 キリトは振り替えって、掌をリズベットに見せつけた。挨拶の代わりになるジェスチャーだ。

 

「なにやってんのよ、雪の中をごそごそと」

 

「ちょっとした探し物だ。ところで調子はどう。ぐっすり眠れた?」

 

 リズベットは自らの身体を包み込む寝袋に目を向けた。そういえば、これはいったい何なのだろうか。寝袋なのには間違いないが、それ以前にこんなものを見た事がないし、使っていた覚えもない。

 

「これ、寝袋? あたしこんなの使って寝たっけ?」

 

「最初はあの時のまま眠ったんだけど、途中で寒くなって目が覚めてさ。丁度防寒機能付き寝袋を持ってたから、君を起こさないようにその中に入って寝たんだ。暖かくてよく眠れただろう?」

 

 キリトの説明をリズベットは何も考えずに聞いていたが、やがてある事に気付いて、驚くと同時に顔を真っ赤にした。キリトは自分が眠っている間に寝袋を用意して眠ったと言っていたが、二つ用意したとは言っていないし、更に自分を起こさないように気を付けていたとも言っていた。

 

 ここから考えられる事は、いつの間にか自分はキリトと一緒に眠っていたという事だ。その証拠に、この寝袋は二人で寝ても差し支えがないくらいのサイズになっている。

 

(あたし、キリトと一緒に……寝てた……?)

 

 他人と、ましてや男性と寝具を一緒にして眠った事などない。だが、自分は昨日の夜から今朝までキリトと共に眠っていたのは間違いない。まさか共に一夜過ごしたキリトと、寝具まで共有して眠ってしまったなんてーーリズベットは顔を押さえて下を向いた。自分の顔が火のように熱くなっているように感じられた。

 

 しかしすぐに、キリトが大きな声を出した。

 

「お、やっぱりあった!」

 

 リズベットは顔を上げてキリトに視線を向けた。キリトはいつの間にか青白い結晶のようなものを手にしていて、それを無事に見つける事が出来て喜んでいるような仕草をしていた。

 

「何よ、それ」

 

 キリトはリズベットに向き直し、手にしている結晶のようなものをグランポーションの時と同じようにぽーんとリズベットに投げた。小瓶を受け取った時と全く同じように受け取り、じっくり見てみたところ、アイテムウインドウが出現、クリスタライト・インゴットという名前の金属鉱石である事がわかったが、金属鉱石という名前を目にしたリズベットは閃いた。

 

「これ、もしかして目的の鉱石!? でもなんでここに?」

 

 キリトはリズベットに歩み寄り、腰を下ろした。

 

「多分、あのドラゴンの腹の中から出てきたんだ」

 

「あのドラゴンの中から出て来た? あ、確かに情報によるとそんなふうだった。でもそれは、あのドラゴンを倒す事によるドロップなんじゃないの」

 

 キリトは首を横に振った。

 

「確かにそれもあるだろうけれど、体内に溜め込んでいるとあれば、手に入れる方法は倒すだけじゃないって思ってたんだ。あいつの体内にあるっていう設定なら、()()()()()()()()かのどちらかの方法を取ってもいいはずなんだ。そしてここ。この縦穴はきっと、あのドラゴンの巣なんだよ。もしかしたらって思って探してみたら、案の定あった。それで間違いないだろ」

 

 リズベットは頷いた。キリトの求める剣を作れる素材は、あの結晶の竜の体内で形成される特殊鉱石であると聞いていた。そしてキリトが言うからにはこれがあのドラゴンの腹の中から出て来た特殊鉱石であるというので、これが目的の代物である事に違いはない。

 

「確かにこれで間違いないけれど……これって何?」

 

「何って?」

 

「いや、だから、これがあいつの何なのかって聞いてるのよ。特殊鉱石なわけだけど、ただの特殊鉱石じゃないでしょ」

 

 キリトは納得したような顔をした。

 

「あぁ、そういう事か。これはつまり、あいつの排泄物だよ」

 

「排泄物?」

 

 そう聞いて、リズベットは思わず顔を蒼くした。あのドラゴンの腹の中から出て来たという事は、恐らくだがあのドラゴンが食べた結晶が腹の中で変異し、出来上がり、そして排泄されてきたモノという事だ。即ちコレは……。

 

「って事はこれ」

 

「あぁ。その鉱石の正体はあいつのン」

 

「言わんでいい!!」

 

 リズベットはドラゴンの排泄物であるインゴットを手放しそうになったが、失ってしまったらここまで来た意味が無くなってしまうため、何とか持ち直した。それでも、あのドラゴンの腹の中から出て来たと思うと、手放したく……というかどこかに投げ捨てたい気分になったが、何とか押さえ込んでアイテムウインドウの中に放り込んだ。

 

「さてと、一応はこれで鉱石入手クエストは完了したわけだけど……」

 

 言おうとした次の瞬間、リズベットはある事に気付いた。あのドラゴンの排泄物があるここは、あのドラゴンの巣。そして情報によるとあのドラゴンは夜行性であると聞いていた。現在時刻は日の出の刻……あのドラゴンが帰って来てもおかしくない時間帯だ!

 

「まっずい!」

 

「え、何が」

 

「何がじゃないわよ! ここはあのドラゴンの巣なんでしょ!? あのドラゴンは夜行性、んで、今は朝。って事は、あいつが帰って来てもおかしくないわよ!」

 

「あっ」

 

 急に黙り込んだキリトと、焦り続けていたリズベットは上空を眺めた。丸く切り取られた白い空間の中に、黒い影が生まれ、更にどんどん大きくなって行き、二枚の翼と長い尾に鉤爪を生やした四肢が確認出来た。一瞬リランではないかと思ったが、青白く輝くごつごつとした甲殻と結晶のような角で、リランではなく結晶の竜である事がわかり、リズベットは叫ぶように言った。

 

「来たぁ――――ッ!!」

 

 リズベットの叫び声に呼応するかのごとく、地上にいる二人に結晶の竜は甲高い方向を叩き付ける。その直後に、キリトは何かを思い付いたような顔をして咄嗟にリズベットを抱きかかえた。何事かとリズベットが声を出す前に、キリトは剣を抜いて振るい、周囲の雪を巻き上げて煙幕を作り上げる。

 次の瞬間に結晶の竜が飛びかかってきたが、その爪と指の間をキリトは走り抜けて、壁に着地、昨日脱出を試みた時と同じように壁を駆け上がった。

 

 まさかまた壁を駆け上がって脱出するつもりなのかとリズベットが思った直後、キリトは両足で思い切り壁を蹴り上げて宙に舞い、そのまま結晶の竜の背中目掛けて落ちた。そして目標を見失って隙だらけになっている結晶の竜の背中に剣を深く突き刺した。突然の背中の痛みに結晶の竜は悲鳴を上げながら翼を大きく広げ、そのまま急上昇を開始した。

 

「う、うわあぁぁぁ――――――ッ!!?」

 

「お前じゃないけど、人竜一体! リズ、しっかり掴まってろよ!」

 

 リズベットは無我夢中でキリトの身体にしがみ付いた。耳元で風を切る轟音が鳴り響き、目の前が一気に明るくなり、やがて白一色に染まった。

 眩い白に耐えながら目を開くと、いつの間にか、リズベットは宙を舞っていた。キリトもまた剣を竜の背中から引き抜いており、同じように宙を舞っていた。その顔には、物事が上手く行った時のような達成感に満ちた表情が浮かべられている。

 リズベットは周囲に目を向けた。眼下には51層のフロア全景が広がっていた。雪山、雪原地帯、雪を被った村、そしてそうではない街と迷宮区がある円柱状の塔。51層のなにもかもが視界いっぱいに広がっていて、尚且つ出たばかり太陽に照らされて、美しく煌めいている。

 

「わ、わぁぁぁ……!」

 

 あまりの美しき風景に釘付けになっていると、その視界の中にキリトの手が入り込んできて、リズベットはハッと我に返った。キリトは微笑みを浮かべながら、手を差し伸ばしている。伸ばされた手を両手で握って、暖かさを感じ、リズベットは咄嗟に頭の中を巡らせた。

 この世界は美しい。この世界はこんなにも美しいものだった。もし、昨日キリトと出会って、ここまで来なければ、この世界が美しく、そして暖かい事を知る事は出来なかっただろう。心の中のキリトへの感謝の気持ちがどんどん大きくなり、やがて心からあふれ出した時に、リズベットは思い切り笑んで叫んだ。

 

「キリト――ッ!」

 

 暴風のせいなのか、あまりよく聞こえていないようにキリトは答える。

 

「なに――ッ?」

 

「あたし――ッ、キリトの事――ッ、好き――――――――ッ!!!」

 

「なんだってぇ――!? 良く聞こえない――ッ!!」

 

「なんでもな――――――いッ!!!」

 

 リズベットは一気にキリトに近付いて、その身体を抱き締め、これ以上ないくらいの大声で笑った。そして、リズベットが笑い声をやめると、キリトがまた何かを思い付いたように言った。

 

「なぁリズ、この風景、もう少し楽しんで行こうと思わないか!?」

 

「え、そんな事出来るの?」

 

「あぁできるさ! ちょっとでかい声出すぞ!」

 

 そう言うと、キリトは思い切り息を吸い込み、やがて吸い込んだ空気を外に叩き付けるように声を出した。

 

「リラン―――――――――――――――ッ!!!」

 

 キリトの身体の底から出された声に、リズベットは一瞬きょとんとしてしまったが、すぐさまそれが、キリトの相棒であるリランへの号令である事に気付いて、リズベットは周囲を見回した。そして眩しい光を放つ太陽の方に目を向けてみたところ、その光を背に受けて何かが猛スピードで飛んできているのが見えた。白色の甲殻と白金色の毛並みで、狼の輪郭に良く似た顔をしていて、頭部に人間の頭髪のような金色の長毛、その額から剣のような形状の角を生やし、大きな白い翼を背中から生やしている竜が向かってきているというのが一瞬でわかって、リズベットは目を輝かせた。

 

「リランが迎えに来た!!」

 

 直後、キリトはリズベットの身体をしっかりと掴んで急に落下し始めた。が、その刹那にキリトは何かに着地して跨り、リズベットはキリトの背中へ降りた。身体の下で別な生き物の筋肉が脈動しているような感覚が起こり、リズベットは下を向いた。そこにあったのは、白金色に光り輝く剛毛で、目の前にあるキリトの肩から前を覗けば光浴びて煌めいている大きな剣、金色の長毛があった。

 

 それがキリトの相棒であるリランのものである事に気付くのにそんなに時間はかからず、気付いた途端にリズベットは心躍った。今、リランの背中に乗っている!

 

「待たせたな、リラン!」

 

《全く、あの竜と共に穴から出てくるとは思わなんだぞ。我が受け止めなければどうするつもりだった。あの高さから落ちたら、今度こそお前達は一溜りもなかったぞ》

 

「いやいや、あれはイベントによるものだったんだ。あの竜に飛び乗って出てくるっていうイベントな。だからあそこで落ちたとしてもダメージは受けなかったと思う」

 

 そうだったんだとリズベットが納得した直後に、リランは溜息を吐くように言った。

 

《まぁお前達がちゃんと生きていた事には感謝しよう。一時はどうなってしまったかと思って、穴の周りを周回したりしていたのだからな。我一人では家に帰る事も出来ぬしな》

 

「悪かったよ、心配かけて」

 

 キリトは笑みを浮かべて、目の前の空に視線を向けた。

 

「リラン、早速だけどお前にやってもらいたい事があるんだ」

 

《なんだ》

 

「フライトだ! 俺がいいって言うまで、51層を飛び回ってくれ! 戦闘以外でお前に乗る事なんて、あまりなかったからな」

 

 リランは呆れたような《声》を出す。

 

《全く、出て着て早々頼む事は空を飛ぶ事か。まぁよいわ。しっかり掴まっておれよ》

 

 キリトは振り向いて、背中に掴まっているリズベットに声をかけた。

 

「リズ、聞こえてたか? 振り落とされないようにしっかり掴まってろよ!」

 

 リズベットはキリトの胸の方へ手を回し、頷いた。

 

「わかってるわよ! 行ってキリト、リラン!」

 

 リズベットの笑顔をちらと見て、キリトもまた笑み、前を向き直した。朝焼けに身体を染めながら、キリトは高らかに

 

「行くぞリラン! 51層フライトツアー開始だ!」

 

 キリトの指示に答えるかのごとく、リランは天高く咆哮し、二人を乗せたまま51層の空を飛び始めた。きっとキリトに出会わなければ出来なかったであろう空の旅に、リズベットは心をこれ以上ないくらいに躍らせて、そしてこれ以上ないくらいの笑みを顔に浮かべた。

 

 

 

 

 約15分程に渡る空の旅を終えた二人は、51層の街の周辺に降り立ち、そのまま転移門へ直行し、たった一日しか時間を置いていないのにもかかわらず懐かしく感じる48層の街リンダースに戻り、そのままリズベット武具店へ向かった。

 

 その道中、キリトが「もう結晶の竜が無意味に殺される事はなくなるだろう。あいつもきっと安心しているはずだ」と、結晶の竜の身を案じるような事を言ったが、リズベットはその言葉に不思議な説得力を感じた。キリトの連れているリランの背中に乗って空を飛んでいる最中、リランは、この世界の全てがただのデータの塊ではなく、本当に生きているのだと、リズベットは思い知った。だからこそ、キリトの言葉にも頷けた。

 

 リズベット武具店に戻ってくると、店を出る前に設定しておいた店番NPCが「お帰りなさいませ」と声をかけてきたが、リズベットは軽い返事をした後にキリトを連れて工房へ直行、手に入れたクリスタライト・インゴットを窯で熱して加工可能の状態にした。そして加工用のハンマーを取り出して、リズベットは構えたが、咄嗟にごくりと唾を呑み込んだ。

 

 このゲームの武器作成によって出来上がる武器は完全にランダムであると言われている。中には、ハンマーでたたく回数や頻度、テンポによって武器が良くなったり悪くなったりすると説明する鍛冶屋もいるが、リズベットはそんな事を信じたりはしなかった。だからこそ、この苦労して手に入れた鉱石を叩いたとしても、キリトが望むものが本当に出来上がるとは限らない。もし、ここまで着てキリトが望むものが出来なかったらどうしようと言う大きな不安がリズベットの心の中に、濃霧のように立ち込めて、額に冷や汗が出て来た。

 

「この鉱石はすごくいい素材よ。だけど本当にいいものが出来上がるとは限らないわ。それでもやるのね」

 

 キリトは咄嗟にハンカチのような布を呼び出してリズベットに近付き、その額に流れる冷や汗を拭き取った。いきなり汗を拭かれた事にリズベットがきょとんとすると、キリトは微笑みを浮かべながら言った。

 

「あれは面倒くさい仕組みではあるけれどちゃんとしたクエストで、何度でも受ける事が出来るんだ。出来なかったらまた取りに行けばいいさ。だから、思い切りやってくれ。大丈夫、リズならできるよ」

 

 キリトに言われた瞬間、リズベットは心の中に立ち込めていた霧のような不安が一気に固形化し、根元からガラガラと音を立てて崩れ去ったのを感じた。同時に、キリトと一緒に話をしたりして過ごしたあの時に感じていた暖かさが心の中に蘇る。

 キリトはこの世界がこんなに美しい事を自分に教えてくれた。そして、今もこうして自分の事を信じてくれている。

 

 これまで自分は、男性プレイヤーと仲良くしようと思わなかった。そんな事になれば、いつか恋心を抱いてしまうかもしれないと思ったからだ。この世界の、偽りの恋心を。

 だけど、それは最初から、自分の思い違いによるものだった。この世界に偽りなんてなく、全てが真実で、全てが現実なのだ。キリトと過ごした一夜の事も、あの時感じた暖かさも、今朝感じたこの世界の美しさも、そして今も尚心の中に湧き上がっているキリトへの思いも、全てが偽りではない事実なのだ。

 

 ちゃんとした剣が出来上がったら、キリトに全てを告白しよう。そしてこの思いをハンマーを介してこの金属に注ぎ込めば、きっと強い剣が出来上がる。そんな思いに駆られて、リズベットはゆっくりと深呼吸し、ハンマーを両手で握った。

 そして、そのまま赤熱するインゴット目掛けて、力強く振り下ろした。

 

 強い剣よ出来上がれ!

 

 あたしの心よ、届け!

 

 届け! 届け!! 届け!!!

 

 そんな思いを乗せながら、リズベットは手慣れたハンマーで、一定の頻度でインゴットを叩き続けた。そして叩いた回数が15回ほどに達したその時に、叩かれた事により平たく変形していたインゴットは紅い光に包み込まれ、瞬く間にその形を一本の片手剣に変えていった。ただの鉱石が剣の形になった事にキリトとリランは目を丸くする。

 

「おぉ……」

 

《剣が、出来上がるぞ……》

 

 二人が呟いた直後、赤い光は突如弾けて、光に包まれていたモノがその真の姿をその場にいる全員に見せつけた。光の中より現れ出でたそれは、白に限りなく近い薄緑色で、先端が多少大きくなっている、少し特殊な形状をした立派な剣だった。

 

「出来た……」

 

 リズベットはすぐさま剣をクリックし、詳細情報ウインドウを呼び出して確かめた。分類片手剣(ワンハンドソード)、固有名は<闇を打ち払う者(ダークリパルサー)>。その数値は、全てがキリトの持つ<エリュシデータ>に限りなく近いものになっている。これまで作ってきた剣の中で、最も強い能力を持つ剣だ。勿論、昨日リランの攻撃に耐えられず、折れてしまった、自信作だったあの剣よりもはるかに強力で、自信作だ。

 

「名前はダークリパルサー……闇を打ち払う者っていう意味ね。情報屋の情報にこんな剣は載ってなかったから、この剣が生まれたのはこれが初めてね。試しに使ってみてよ」

 

 キリトは何も言わずにその柄を握り、じっとその刀身を見つめた。薄らとだが、刀身は鏡のようになっており、キリトとその肩に乗っているリランの顔が映っている。そしてキリトはリズベットから離れて、数回剣を力強く振り回して、技を放つような仕草もして見せた。一頻り剣を試すような仕草を繰り返して、ようやく行動を止めた時に、キリトは剣を握り締めたまま、リズベットに顔を向けて、笑んだ。

 

「この前の剣よりもはるかに重いし、使い勝手もすごくいい。これはいい剣だ。いや、最高の剣だよリズ」

 

 そう言われて、リズベットは大きな声を上げて喜びたい気分になったが、すぐさまそれを呑み込んだ。キリトが最高の剣だと言ってくれたという事は、紛れもなく自分の願望も叶ったという事。それはつまり、今こそ、キリトに思いを打ち明ける時だという事だ。

 先程も言ったのに、キリトは聞いてくれていなかった。だから今こそ言うべき時なのに、上手く言葉が出てこない。

 

「さてと、これだけの剣が出来たんだから、お金を払わないとだな。いくらなんだ、リズ」

 

 機嫌良さそうに尋ねるキリトに、リズベットはその首を横に振った。

 

「お金はいらない」

 

「え、なんで?」

 

「あのね、キリト」

 

 いきなり縮こまったリズベットにキリトは首を傾げた。キリトが口を開く前にリズベットは続ける。

 

「その代わりと言ってはなんだけど、あたしをあんたの専属スミスにしてほしい」

 

 キリトは「へっ?」と、リランは「なに?」と言って目を丸くした。リズベットは構わず続けた。

 

「攻略が終わったらここに来て、装備のメンテナンスをさせて。毎日、これからずっと」

 

 リズベットは頬が熱くなり、心臓の音が耳元に響くようになったのを感じた。一瞬、現実世界の自分の身体も同じような状態になっているのかと考える。リズベットの言いたい事が通じたのか、いつも柔らかな表情を浮かべていたキリトの表情が驚いたようなものに変わり、瞬く間に薄赤く染まる。

 

「そ、それって……」

 

 リズベットはキリトに聞かれないように息を吸い、言い放とうとした。

 

「キリト、あたしね、あたしね――」

 

 リズベットが心の中の全てを一つにまとめて、キリトに届けようとしたその次の瞬間だった。いきなり工房のドアが開き、

 

「リズ、心配したよ――ッ!!」

 

 ドアの外から何かが途轍もない勢いで飛び出し、リズベットに体当たりするかの如く抱き付いた。一瞬何が起きたかわからないような顔を、リズベットは浮かべたが、ふわりと浮かび上がった栗色の美しい長髪が確認できて、すぐさま抱き付いているのがアスナである事を理解した。

 

「あ、アスナ……」

 

 アスナは顔を上げて、呆然としているリズベットに力強く言った。

 

「メッセージは届かないし、店は閉まったままだし、マップ追跡も出来ないしで、一体どこに行ってたのよ! 私達黒鉄宮まで確認に行ったんだからね!?」

 

「ごめんアスナ……って、あんた達って?」

 

 直後、ドアの外からアスナとは違う女の子の声が聞こえてきた。

 

「見つけた、リズベット!」

 

 声に誘われるように、リズベットはその方向へ顔を向けた。そこにあったのは昨日友達になったばかりのシノンの姿だった。アスナと同じように、こちらをようやく見つけて安堵したような表情を浮かべている。

 リズベットがその名を呼ぶ前にシノンは階段を駆け下り、アスナの隣に並んだ。

 

「アスナと一緒になって探したわ。店に戻ったかと思ったら店は閉まってるし、メッセージ送っても無反応だしで。一体何をやってたわけ?」

 

「あぁちょっと、ダンジョンで足止めを喰らってたのよ」

 

 アスナが驚いて、リズベットの両肩に手を乗せる。

 

「ダンジョンに? リズが一人でダンジョンに行ってたの?」

 

 

「いや、別な人と一緒に行ってて……」

 

 シノンは「そうなんだ」と言った後に、心配そうな表情を浮かべた。

 

「実のところ私と一緒に暮らしてる人もリズベットと同じような状態だったのよ。メッセージは無反応、マップ追跡も出来ないし……ねぇ、何か知らない?」

 

 リズベットは少しハッとして、丁度二人の死角にいるキリトを指差した。

 二人の視線がキリトに向けられた瞬間、アスナは口と目をぽかんと開けたまま軽く固まって、シノンは瞬きを何度もした。そして、ほぼ同時に声を上げた。

 

「キリト君!?」

 

「キリト!!!」

 

 二人に一斉に声をかけられて、キリトは少し驚いたように言った。

 

「や、やぁ二人とも。二日ぶり……」

 

 アスナが何かに気付いたように言う。

 

「もしかして、リズと一緒にダンジョンに潜った人って、キリ――」

 

 言いかけたその時に、シノンがいきなり走りだし、そのままキリトの胸に体当たりするかのようにぶつかった。突然の行動にその場にいたシノンを除く全員が吃驚する最中、シノンはキリトの胸で拳を握り、俯きながら言った。

 

「どこに行ってたのよ……家に帰ってもいなくて……どんな方法で見つけようとしても見つからなくて……一回……てっきり…………死んじゃったんじゃないかって思ったのよ」

 

 シノンの今にも泣き出してしまいそうな声色を聞いたキリトは小さく喉を鳴らし、すまなそうな表情を顔に浮かべて、シノンの両肩に手を乗せた。

 

「悪かったよ。すっごく心配かけたな。ごめん……ごめんなさい」

 

「許さない。一緒に家に帰るまで、許さないんだから……」

 

 キリトは「うん」と小さく言って、シノンの後ろ頭に手を添えた。

 その瞬間を目の当たりにして、リズベットはすべてを察した。昨日、シノンが言っていた一緒に暮らしている人とは、キリトの事だったのだ。そしてキリトは、シノンにとってとても大事な人であり……あのクールな雰囲気のシノンが感情を露わに出来るような相手だ。即ちキリトは……シノンが好きな人だ。

 

 どうしよう。

 どうしよう。

 

 そんな言葉ばかりが頭の中を渦巻き、身体の至る所から熱が抜け出し、力も一緒に抜けていき、息の吸い方がわからなくなる。気持ちが、ガラガラと音を立てて崩れ去っている……。

 

 呆然とするリズベットの耳に、アスナの言葉が入り込む。

 

「そういえば昨日、シノのんがすごく心配そうにしてたな……キリト君が見つからない、家に帰ってもいないって言って……それで私と一緒に黒鉄宮に行ったりしたんだけど……それでもいなかったから、キリト君が死んじゃったんじゃないかって思い込みそうになってたんだね」

 

 その言葉を聞いて、崩壊の音が更に大きくなったような気がした。昨晩、キリトから受けていた暖かさは、本来シノンが受けるべきものだったのだ。それを自分が横取りしていたようなもので、その結果としてシノンがあんなに心配して、不安に駆られる事になってしまった。

 リズベットは何とか息を吸い直すと、表情をつくろい、アスナの耳元で囁いた。

 

「あれは、恋だわ」

 

 いきなりリズベットに言われて、アスナはきょとんとする。

 

「えっ」

 

「だってそうでしょ。シノンはキリトの事が好きなのよ。昨日は何とか隠してるような感じだったけど、意外と簡単にぼろを出すものね」

 

「そ、そうね……あの接し方は完全に、恋人……」

 

「そうでしょ。でもシノンも大変だわ。キリトの奴、まず最初にあたしの自信作だった剣をへし折ったのよ。リランの角で耐久試験(クラッシュテスト)やってね」

 

「えぇっ!!」

 

「それで、ね。あの人が要求する数値の剣を作り出すにはレア素材が必要だったから、それを取りに行ったわけ。そしたらトラップに引っかかって、動けなくなったのよ。メッセージ無効エリアみたいなところだったのね、あそこは」

 

 アスナが納得したような顔になる。

 

「そうだったんだ。道理でリズの居場所もキリト君の居場所も把握できなくなるわけだわ」

 

 シノンとキリトの方に目を軽くむけて、更にリズベットは言った。

 

「だけどシノンは同時に幸せだと思う。あいつは変な人だけど悪い人じゃない。でもあの人とやっていくのはシノンも苦労するだろうから……あたし達で応援してやりましょ、アスナ」

 

 そう言って、リズベットはアスナの顔から自らの顔を離した。そしてアスナに顔を覗き込まれる寸前で、大きな声を出した。

 

「あ、いっけない! 仕入れの約束が今日にあった事をすっかり忘れてた! ちょっと外まで見てくるね!」

 

「えっ、店の方はどうするのよ!?」

 

「アスナとキリトとシノンの三人で見てて頂戴! それじゃあ、よろしく!!」

 

 リズベットは階段を駆け上がり、工房を、更に店の中を出て、街の中を走り回った。プレイヤーのいない場所を見つけなければ、いや、プレイヤーのいないところへ行きたい――。

 そう思って一心不乱に走り続けていると、どんどんプレイヤーの数が消えて行き、ついにはいなくなった。そこは既にフィールドだったが、敵のいない区画だったのか、モンスターの姿はなく、静まり返っている。そして、周囲を見渡せば、大きな樹が等間隔で植えられているのが見えた。リズベットはそこに駆け込むように向かって、そのうちの一本に手をかけた。次の瞬間、目の前が一気に歪んで見えなくなり、喉の奥から声が漏れて、止まらなくなってしまった。何度も、大粒の涙が頬を伝い、地面へと落ちて行く。

 

 泣くのはこの世界に来てから二回目だった。この世界に閉じ込められてパニックを起こした時以降、リズベットは一度も涙を流した事が無い。そのせいなのか、涙は止まる事を知らないかのように流れ出て、零れ落ち続ける。あの時、シノンがキリトの事が好きであるとアスナに伝えた時、「実はあたしもキリトが好きなんだ」と何度も言いそうになった。しかしそんな事を言うのが許されるわけもなかった。

 

 先程のキリトとシノンのやり取りを見たその時から、キリトの隣に自分の居場所など存在しない事をリズベットは悟っていた。

 あの時、シノンは必死にキリトを心配して、ようやく辿り着いたようにキリトを求めていた。あれは卑しい感情など一切ない、純粋な愛情を持っている証拠だ。シノンは純粋な心で、キリトの事を愛しているのだ。そしてキリトは剣で、そんなシノンを守ろうとしているように見えた。きっと自分に剣を依頼した理由も、少しでもシノンを守る事の出来る要素を増やしたかったからに違いない。

 

 キリトとシノンがどれくらい長くいるのかはわからない。けれど、あの二人は心の底から愛し合っている。そんな二人の間に、自分が入り込む隙間など一切ない。そもそも、自分はキリトに出会ってまで一日しか経っていない。恐らく、今まで体験できなかった事を体験して、心が驚いているだけなのだ。だから、時間が経てば熱も冷めて、消えて行く。――そう思っても、瞳からこぼれ出る涙は相変わらず止まろうとしてくれなった。

 

 目を閉じれば、昨日と今日で作り上げたキリトとの思い出が、暖かさが次々浮かび上がる。消そうとしたって消えない。消えてくれない。

 忘れようとしても、忘れられない。どんなに泣いても、涙は思い出を洗い流さない。そればかりか、尽きる事なく流れ出て行く。

 

 もしかしてこのまま止まらないんじゃないかと、思ったその時だった。

 

《リズ》

 

 頭の中に響いてきた《声》に驚き、リズベットは立ち上がって周囲を見回したが、すぐさま《声》の主を見つけた。

 リランがすぐそこに立っていた。大きな翼を背中で畳んで、宝石のように紅い瞳でこちらを見つめている。

 

「駄目だよ、来ちゃ……今は誰にも会えないような状態なのに……」

 

 リランは音を立てながら少しずつ近づいてきて、やがて静かに座り込んで、穏やかな《声》を送ってきた。

 

《……キリトの事を考えていたのだな》

 

 リズベットは頷いたが、答えは返さなかった。

 

「……どうしてここがわかったのよ」

 

《フィールドに出て空に浮かび上がったらわかったのだ。キリトとシノン、アスナもいないから安心するといい》

 

「飼い主の事を放っておいて、あたしのところに来たの?」

 

《そういう事だ》

 

 思わず笑いそうになったが、涙がそれを妨げる。

 

「ごめん、ごめんリラン。早く、キリトのところに戻ってあげてよ。あたしは、大丈夫だから」

 

《お前が大丈夫そうに見えないから、我はここに来たのだ。……というのもあるが、本当は違う目的だ》

 

「え?」

 

 リランは表情を和らげた。

 

《我は、お前に礼が言いたくて来たのだ》

 

「あたしにお礼? なんで? あたしあんたに何もしてないよ」

 

《キリトに関してだ。お前は知らないと思うが……と行っても我も最近知ったのだが……キリトは元々孤独を好む奴だった》

 

 リズベットはきょとんとしてしまった。

 

「そう、なの?」

 

《あぁ。昔あいつはギルドに所属していた事があったのだが、とある事柄でギルドメンバーを全滅させてしまったのだ。それ以来、人に近付く事を拒むようになっていたのだ。

 だから普段からあいつは我やシノン以外のプレイヤー達とつるむような事は避けている。だがな、それでもキリトはあるものを求めているのだ》

 

「あるもの?」

 

 リランは目を閉じ、口元を動かした。

 

《他人を守れる力と……他人とのかかわり、そして命だ》

 

「い、のち……?」

 

 リズベットは昨日、穴に落ちた時の事を思い出した。そういえばあの時も、キリトは命に関する事を言っていたような気がする。

 

《あいつはこの世界で孤独に生きようとしているが、同時にこの世界にも命がある事に確信を得たがっているのだ。そして、その数が多ければ多いほど、あいつはこの世界で生きている事を自覚出来て、安心できるのだ》

 

「そうだったんだ……てっきりキリトは自覚しきれてるんじゃないかって思ってたけど……」

 

《意外にそうでもないのだ。そしてお前があいつに触れた事によって、あいつはこの世界にも命がある事の、確証を一つ得た。そうでなければ、穴から飛び出した時に我にフライトを頼もうとはしなかっただろう。

 予想ではあるが、お前に触れた事によって、この世界で死ぬために生きているのではなく、この世界で生きるために生きていると、あいつは思い直す事が出来たのだろう。これは、我とシノンだけではどうにもならなかった事かもしれぬ》

 

 リランは微笑み、ゆっくりと頭を下げた。

 

《礼を言うぞ、リズ。我が主人を支えてくれて、ありがとう》

 

 リランに礼を言われて、リズベットは心の中が暖かくなるのを感じたが、直後に痛みを感じた。

 

「確かにあたしも、キリトに救われた。キリトがあたしに触れてくれたから、暖かさをくれたから、この世界がきれいだって事がわかった。そしてこの世界でも止めてたものが、キリトのくれたものだったって、わかった」

 

 リズベットは片手で顔を覆った。

 

「でもどうしようリラン。あたし……キリトの事好きだよ……キリトの傍にいると暖かいし……キリトの事大好きだよ……だけど、キリトの近くにいるべきなのは……シノン……」

 

 リランは少しだけリズベットから顔を逸らした。

 

《……そうだな。キリトはシノンと共にある事を約束し、彼女を一生守る事を決めた。余程の事があったとしても、キリトはシノンへの思いを揺らがせたりはしないだろう。あいつが心の中で抱いている思い、愛情は、曇りなくて純粋なものだ。だが、同時にそんなキリトには弱点もある》

 

 リズベットは顔から手を離して、リランを見つめた。リランは顔をリズベットの方へ戻す。

 

《あいつは何でもかんでも、一人で抱え込もうとする事がある。きっとこの先も、シノンや我、攻略の事に関して誰にも相談しようとせず、一人で抱え込み、背負い込もうとするだろう。しかしあいつの心はそんな事が出来るくらいに強いわけでもない。きっと、何でもかんでも抱え込み、背負い込み、潰れてしまいそうになるかもしれぬ。そうならないためには、彼を支える存在が不可欠だ》

 

 リランはそっと微笑んだ。

 

《彼はシノンを愛しており、シノンもまた彼を愛しておるから……恋人になるのは無理だ。だがリズの気持ちが本物なのもわかる。だから……せめて、お前には彼を支える存在になってほしい》

 

 リズベットがきょとんとしながら口を動かす。

 

「あたしが……キリトを支える……?」

 

《<使い魔>からの頼みだ。あいつは、思ったよりも脆い奴なのだ。そんなあいつを支えてやる存在は、一人でも多く必要なのだ。頼む、リズベット》

 

 リズベットは胸に手を当てた。確かに、キリトの恋人になるような事は出来ないだろう。だけど、その思いを胸に抱いたまま、キリトを支える人になる事は、出来るかもしれない。

 自分に出来る事と言えば、キリトの武具のメンテナンスや作成を行う事くらいだが、メンテナンスや作成をしてもらうだけでも、心に大きな余裕が出来るのは身を持って知っている。自分の作った武具が、キリトの心を支える――これなら、出来る!

 

「あたし、キリトが好き。だから、キリトを支えるわ」

 

《引き受けてくれるのか》

 

「えぇ、やったろうじゃないの! それに、キリトがシノンを守るための武器は、あたしが作っているものだっていう事、誇りに思えるしね」

 

 リランはふふんと笑った。

 

《やはり、リズは心強い娘だ。我と言い、シノンと言い、アスナと言い、そしてお前と言い、キリトは女性に関する運に恵まれているのかもしれぬな》

 

「それもそれでどうかと思うけど……っていうかあんたって雌だったの」

 

 リランは苦笑いした。

 

《そうだ。よく雄だと間違われるのだがな。そして、リズ。お前の気持ち、すごくわかるぞ》

 

「なにが?」

 

 リランは小さな《声》で言った。

 

《実は我も、キリトの事が好きなのだ》

 

「そうなんだ……って事は……」

 

《あぁ。キリトが好きな者同士、頑張ろうではないか》

 

 リズベットは苦笑いした後に頷き、目を閉じた。リランはキリトの<使い魔>だから……多分リランの好きは恋人的な好きではないだろう。だが、自分は間違いなく恋心をキリトに抱いている。

 この心を武具に打ち込んで、キリトの支えになってやるんだ。キリトがこの城を攻略しきるその時まで、キリトを支える存在でいるんだ――。

 

 そう思って立ち上がり、リズベットは目元をぬぐった。もう涙は出てこなかった。

 




三話に渡るリズベット回、終了。
次回からはみなさんお待ちかねであろう、キリシノ回がしばらく続きます。乞うご期待。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。