キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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 オーディナル・スケール編、最終話をどうぞ。


23:収束の後

          □□□

 

 

「和人、温まったみたいよ」

 

 

 詩乃の声に「あぁ」と応じて、和人はテレビの電源を落とした。テーブルへ向かうと、電子レンジで温められたミルクココアの注がれたマグカップが二つ置かれてあった。詩乃が温めの処理をしてくれたものだ。

 

 お礼を言って受け取り、部屋の明かりも消して、詩乃と一緒にベランダに出ると、冷たい空気が身体を撫でてきて、少しだけ寒気がした。

 

 五月になったけれども、五月になったばかりなので、寒さが微かに残っている。この東京の一角でも、それは変わらなかった。そんな冷えた空気に包まれるベランダに、和人は椅子を二つ並べた。

 

 

「意外と寒かったんだな、東京の五月って」

 

「私の故郷はもっと寒いわよ。場所によっては五月でも雪がどっさり残ってるの」

 

「なるほど、東京はマシな方か。確かに、街の方にいくと暖かいもんな」

 

「あっちなんか、街に行ったところで寒さは変わらないわよ。でも、綺麗ね……やっぱり」

 

 

 昔の事を語りつつ、詩乃が和人の隣に並んで座った。その隣の椅子に腰を掛け、二人並んで座ってから、大きめのブランケットを詩乃へ羽織らせ、自分もその中に入った。

 

 それだけで詩乃の暖かさでじんわりと身体が暖まってきたが、彼女が用意してくれたミルクココアが温もりを後押ししてくれた。湯気の立つココアを二人して飲むと、詩乃が身を寄せてきた。和人も応じるように身を寄せる。

 

 

「……やっぱり和人は暖かいわね」

 

「そう言う君だって、暖かいよ。これまでも、ずっと」

 

 

 詩乃は安堵するように返事をしてきた。

 

 

「……ちゃんと、思い出せてるのね」

 

「……あぁ。全部返って来てくれたんだ」

 

 

 和人はふとここまでの道のりを思い出した。

 

 

 あれから五日が経過して、この街にはそれなりの変化が起きていた。

 

 まず、新国立競技場で起きた事件。

 

 新国立競技場のユナのライブ中に起きた、英雄の使徒達による襲撃事件。それは全てオーディナル・スケールのサプライズイベントと発表され、サイバーテロリズムでも何でもないとされた。実際、その事件の最後で、奪われていたSAO生還者達の記憶は取り戻され、全てが元通りになった。

 

 これにより、長らく奪われていた和人の、SAO時代の記憶も無事に戻って来て、何もかもが思い出せるようになった。

 

 更に、一度は危険かもしれないと判断されそうになっていたオーグマーも、OSでの被害は特になし、一般オーグマー使用者にも健康被害が起きていないとされ、ARの普及はナーヴギアのように止められる事なく進んでいった。

 

 それには開発者であるカムラ、そのボスであった重村徹大教授の退任の影響も、少し程度はあったのかもしれなかった。結局彼のテロリズムに等しい暴挙によって、オーグマーとその技術も危険技術とされそうになっていたのだから。

 

 そんなオーグマーを使用するSAO生還者達を巻き込んだ暴挙を引き起こしていた重村教授だが、和人はその行く末を菊岡から聞く事になった。

 

 一般世間には公表されなかったものの、重村はあの後アーガスの本社跡にて気絶しているところを逮捕され、意識を取り戻した後は何の抵抗の意志も見せる事なく降参、警察に身柄を任せたという。

 

 菊岡の持論によれば、娘を生き返らせる計画は最初から頓挫していたと気付き、何をする気も起こさなくなったのではないかとの事だ。恐らくエイジとヴァンにその事を指摘されたのも、返還されたものの、記憶を引き抜かれた影響もあるのかもしれなかった。

 

 そんな重村教授の協力者であったものの、その意志は上回っていたエイジは、あの戦いの後に警察に出頭したそうだが、詳しい事はまだわかってないそうだ。

 

 記憶は持ち主に返還され、首謀者達は逮捕されて、事件は適切に片付けられた。SAOに続く社会と一般人を巻き込んだ厄災は、事実上起こらずに済んでくれたのだった。

 

 

 だが、記憶を返還されたところで和人は気が付いた。SAO時代、まだリランとシノンと出会う前に、自分は悠那/ユナを見た事があった。

 

 午前中にしろ午後にしろ、日中に第一層の《はじまりの街》に現れ、歌を披露する女性プレイヤーが居た。

 

 彼女の歌はそれそのものがスキルであり、彼女の歌を聴くとバフが付与され、強くなった状態で攻略に臨めるというメリットがあった。それが知れ渡ると、彼女は歌エンチャンターと呼ばれるようになり、SAOの有名人のようになっていった。

 

 その歌エンチャンターと呼ばれた女性プレイヤーこそが、ユナだったのだ。

 

 自分もその歌を気に入っていた。歌を聴く事でバフを得られるというのもあるが、その歌自体が聞き心地が良く、最後まで聞いていたくなるものだったのだ。それは自分だけではなく、周りの沢山のプレイヤー達もそうだった。誰もが彼女の歌に耳を奪われ、最後まで聞き、そしてバフを得ていた。

 

 だから、結構な回数彼女の歌を聴いたものだ。もしかしたらそれは、自分がユナのファンになっていた証拠だったのかもしれない。

 

 だが――そういえばサチを喪った辺りから、ユナの姿も見なくなっていた。彼女の歌は、ある時突然アインクラッドより消えた。

 

 その原因こそ、エイジとヴァンの怒りの理由である、ユナの死だったのだ。そんな彼女の話を、和人は既に詩乃にも話していた。

 

 

「……悠那はアインクラッドの、皆の希望だったのね」

 

「あぁ。沢山の人が彼女の歌に助けられて、勇気づけられてたんだ。リランと君と出会うまでの、ソロプレイに徹してた俺なんかより、ずっと英雄(ヒーロー)やってたと思うよ」

 

 

 そういえばユナが皆に歌を披露していた時、決まって彼女の傍で歌を聞いていた者が二人、存在していたような気がする。どちらも男だった事だけは憶えているが、それ以外の事は思い出せない。

 

 だが、今ならばその正体がわかる。あの二人こそが、エイジ/ノーチラスとヴァンだったのだ。

 

 

「その悠那を取り戻したいがために、エイジとヴァンはあそこまで戦ってたのね……」

 

「……うん。だけど、結局……」

 

 

 和人は口の中に苦いものが広がるのを感じていた。詩乃の温めてくれたココアの甘さが、いつの間にか消えていた。

 

 

 スタジアムのVR空間でエイジとヴァンを倒した後、和人/キリトは現実世界に戻ったが、そこで悠那と再会した。白い髪に赤い目になっていた悠那。重村教授が、エイジとヴァンが全てを賭けて生き返らせようとしていた悠那だった。

 

 だが、それは決してSAOに命を奪われて、この世の者ではなくなった悠那ではないと、彼女自身が告げた。

 

「私は悠那じゃない。SAO生還者の皆が憶えてるユナっていう一人の女の子は、こういう()だっただろうっていうイメージが形を成しただけの存在……悪く言えば、悠那もどき、だよ」

 

 その言葉はよくよく考えると嘘ではないとわかった。重村教授は悠那を生き返らせるために、悠那に関する記憶のある者達からその記憶を奪い取り、集積させ、一つにまとめ上げようとした。エイジもヴァンもそこに加わり、その計画を必ず成功させるつもりでいたのだろう。

 

 だが、改めて考えてみれば、SAO生還者から悠那に関する記憶を奪って、一つの場所に寄せ集めたところで、本人が生き返るわけなどないのだ。

 

 何故ならSAO生還者であれ、彼女の恋人であれ、家族であれ、親であれ、結局集められるのは悠那を知っている赤の他人の記憶であり、彼女自身の記憶ではない。その中には当の悠那の気持ちや感情、記憶などは含まれていないし、赤の他人による勝手なイメージという不純物が大量に混ざっている。

 

 たとえ何百人、何千人の記憶を集めたところで、悠那には繋がらない。生まれるのは結局、《皆が悠那だと思う何か》だったのだ。悠那、ユナと呼ばれていた彼女自身、それを誰よりも早く理解していたのだった。

 

 そんな彼女こそが、リランにヴァンの潜伏場所を掴ませた人だった。彼女は誰よりもエイジとヴァンを止めたがっていた。どんなに頑張っても、本物の悠那の復活には至らない、無駄な犠牲を払って終わるだけ――それをわかっていた彼女は、リランにヴァンの居場所を教え、自分達を導いてくれたのだった。

 

 そしてエイジとヴァンが自分とリランの手によって倒されると、計画の全てが完全に無へ帰り、SAO生還者達を襲っていた黒い水も消えた。間もなくしてその《悠那のイメージが形を成した彼女》もまた、身体が消え始めた。

 

 彼女はエイジとヴァンこそが彼女の存在を繋ぎとめていたのであり、それが消えた今、消える事になったのだと言った。

 

 重村教授、エイジ、ヴァン。彼女を愛し、彼女への愛を忘れられない者達の願いより生まれし《悠那のイメージが形を成した彼女》は、その計画の完全なる中断によって、電脳の海へと消えていったのだった。

 

 満足そうな顔をして、消えていった。その時を以て重村教授、エイジ、ヴァンの計画は完全に潰れて、そもそも最初から成功する事のない不完全な儀式だった事が判明したのだった。

 

 

「悠那を生き返らせようとしたけれど……最初から上手くいくわけなかったのね。あそこまでやったっていうのに」

 

 

 呆れているように詩乃が言うのを、和人は黙って聞いていた。

 

 

「ううん、なんであそこまでやったのかしら。なんであそこまでして、悠那を生き返らせたかったっていうの」

 

 

 その言葉が決定打になった。和人はマグカップを床に置いた。勿論詩乃が首を傾げてくる。

 

 

「和人?」

 

「詩乃、カップを下に置いてくれ」

 

 

 詩乃は不思議そうにしていたが、和人の言葉通りにカップを床に置いてくれた。

 

 両者ともに両手が自由になると、和人は音無く詩乃の身体を抱き締め、その顔を肩口に押し付けさせた。ずっと感じてきている温もりが腕を伝って身体へ流れ、彼女だけの匂いが鼻へ、胸へ流れ込んでくる。しかしその中で詩乃は、やはり焦っていた。

 

 

「和人、どうしたの」

 

「……エイジは、俺だったんだ」

 

「え?」

 

 

 詩乃を抱きしめたまま、和人はあの時の戦いで思い知った事を話した。

 

 

「もし俺が君を守れないで、君を死なせた時の事を想像した。そしたら、俺はエイジと同じ事をやってたんだ。SAO生還者達を恨んで、勝手に憎んで……それで詩乃を生き返らせられるかもしれないっていう計画を持ちかけられたら、誰よりも早くそれに加わって、全部乗っ取ってまで、成し遂げようとしてたんだ。エイジがSAO生還者達を全員殺してでも、悠那を生き返らせようとしたみたいに、君を生き返らせようとしてた」

 

 

 その想像は何度繰り返しても同じだった。どんなに考え直したところで、詩乃/シノンが死んだ時点で、キリト/和人の選択はエイジが選択した結果と同じになっていた。エイジとの戦いの時にわかっていたが、それほどまでにエイジの選んだ道は、自分が選ぶかもしれなかった道だった。

 

 

「君が死んでも、君への愛情を忘れられなかった。君を守れなかった事が、悔しくて、悲しくて、君との日々を取り戻したくって……エイジと同じ事をやってた。俺はエイジと同じだ。エイジは俺と同じだったんだ。なのに俺はエイジを一方的批判して……俺はあいつと同じなんだ。だから、あいつの事を悪く言う事だって、あいつを倒したのだって、間違ってたんじゃないか」

 

 

 こんな事を言われて、詩乃はどう思っているだろうか。きっと困惑しているに違いないだろう。しかし和人はその思いを告げるのをやめる事は出来なかった。

 

 あの時俺のやった事は、自分を倒したようなモノ。もしかしたら倒すべき敵ではなかった存在を斬り付け、倒してしまったのかもしれない――そんな想像が頭の中で起きて仕方がなかった。だが、そんな和人の背中に温もりが訪れた。詩乃の手が廻って来てくれていた。

 

 

「……ごめんなさい。エイジの事を、あんなふうに言うべきじゃなかった」

 

「……」

 

「和人の言う通りかもしれない。もし私が死んじゃってたら、あなたはエイジと同じ道に進んでしまったかもしれない。あなたはとても優しくて、私をここまで受け入れてくれて、私を愛してくれるから……私が死んだ後に、私を生き返らせられるって聞いたら、本当にエイジと同じ事をするかもしれない……ごめんなさい、私もそんな想像ができちゃってる」

 

 

 詩乃を抱き締める腕に力が籠った。すると詩乃の腕にも力が籠った。

 

 

「でもね和人、教えてほしい。もし私が本当に死にそうになったんなら、あなたはどうするの。私が今にも死んじゃいそうなら、あなたはどうしようとする?」

 

 

 和人は思わずはっとした。詩乃を抱き締める力がするりと抜ける。嫌な想像で満ちていた頭が一度白に還り、詩乃の問いかけに対する答えを模索できるようになる。

 

 

 詩乃が死にそうだったなら、自分はどうするか。

 

 どんな行動をとるか。

 

 そんなの、決まっている。

 

 

「……そんな事させるもんか。君を死なせるもんか。君が死にそうなるようなところにまで行かせるもんか」

 

「だからあなたは、あの時エイジとヴァンを止めたんでしょう。あの人達を止めようとしたんでしょう。あの人達を止めなかったら、皆も、私も死んじゃってたから……だから、戦ってくれたんでしょう」

 

 

 和人はもう一度はっとさせられた。胸の中の(わだかま)りがすっと引いていく。

 

 あの時自分がエイジと戦った理由、それはエイジとヴァンを止めなければ、結局仲間達が、詩乃が死ぬからだった。それを何よりも防ぎたかったから、戦った。エイジとヴァンを止めてやりたいと思ったのもあったが、一番最初に思ったのは、詩乃が死ぬのを防ぎたかった。

 

 ただそれだけだった。

 

 

「勝手な事を言うかもしれないけど、私、和人とはずっと今みたいな関係を続けていきたいの。今みたいに一緒に居て、一緒に生きて、一緒に愛し合っていきたい。和人は、どう?」

 

「……俺も同じに決まってるじゃないか。俺もずっとそうしていきたい。君と一緒に生きて、君と一緒に居て、君と愛し合っていきたい。君は誰よりも大切な人だよ」

 

「だからあなたはあの時、エイジと戦って、勝ったんでしょう。……エイジのために、自分の大切なモノを投げ出したりしなかったんでしょう」

 

 

 和人は目を見開き、やがて頷いた。それを肌で感じた詩乃は、そっと背筋を撫でてくれた。

 

 

「あの時、私はあなたに守られた。これまでずっとそうしてきたみたいに。私の命があるのは、和人が戦ってくれるおかげ。私を死なせないと思って、戦ってくれるおかげなのよ。あなたが自分がやりたいと思った事をやってくれたおかげなの。だからね――」

 

 

 詩乃はさらに力を込めて、抱き締めてきた。いつの間にか抱き締めの中心は詩乃になっていた。

 

 

「……私が生きてるのは、全部和人のおかげよ。和人、私を助けてくれて、守ってくれて……ありがとう」

 

 

 その何気ない一言は和人の胸に深く深く落ち、広がった。闇が切り払われ、光で満ちていく。

 

 あの時エイジに出来た事は倒す事ではなかったのかもしれない。自分はエイジの求めたものを潰してしまったかもしれない。

 

 しかしそれ故に今こうして詩乃との大切な日々が続いてくれている。あの時エイジに同情すれば、全てを喪ってしまっていた。こうなる事は、結局避けられなかったのかもしれない。

 

 そしてそれについてうだうだ悩むのは――エイジのためにも、ヴァンのためにも、ユナのためにも、間違っている。そんな気がした。

 

 

「今、エイジがどうなってるかはわからないけれど……いつかまた会いに行けるわ。その時、きっと私達にもしてあげられる事があるはずよ。それがいつになるかはわからないから、まずはそれまで……」

 

 

 和人は詩乃を抱き締め返し、力の加減を出来る限り平等にした。

 

 

「俺は、俺のやりたい事を――俺に出来る事をするよ。愛してる君と一緒に居て、君を守っていっていくよ」

 

 

 詩乃は無言で頷き、そっと和人から離れた。和人の瞳と詩乃の瞳が交差し、二人の姿が映し出される。

 

 守るべき人、誰よりも大切な人の、愛おしいその姿、顔。かつてはエイジもまたこうしてこんな人を得ていて、幸せな日々を送っていたのだろう。だからこそ彼はそれを取り戻す事にあそこまで固執した。

 

 だが、だからと言って今の自分達の命や時間を奪ってまで、していい事ではなかった。

 

 なので自分は戦った。その結果が今。

 

 今は、それしか思えなかった。

 

 

 そんな事を考える和人に、詩乃は囁いた。

 

 

「ねぇ和人、さっき見てたわよ。あなたが卵を溶いた牛乳にパンを漬けて、冷蔵庫に入れたところ」

 

「……!」

 

「って事は、明日の朝のご飯は……」

 

 

 和人は思わず笑んで、答えた。そういえば忘れていた約束があったので、そのための準備をしたところだったが、こっそりやったつもりが、ばっちり詩乃に見られていたらしい。

 

 

「あぁ。フレンチトーストだよ。食べてくれるか?」

 

 

 その問いかけに、詩乃は頷き、満面の笑みを浮かべてくれた。

 

 

「えぇ。一緒に食べましょう」

 

「……ありがとう。大好きだよ、詩乃」

 

 

 もう一度頷いてくれた詩乃に顔を近付け、和人は彼女の唇を自身の唇と重ね合わせた。

 

 

 まずは自分のやりたい事、自分にできる事をやっていくしかない。

 

 そうしなければ、きっとエイジへ出来る事を見つける事は出来ないだろう。

 

 今は、自分にできる事に必死になるしかないのだ。和人は詩乃の温もりを感じながら、そう思っていた。

 

 

 ベランダの外では、見ようと思っていた二人のお気に入りの夜景が、街の光が夜空を照らしていた。

 

 

 

 

 

            □□□

 

 

 

 

「全部、無くなったか……」

 

 

 警察署の前からかなり遠ざかったところで、後沢鋭二は独り言ちた。

 

 キリトとの全てを賭けた戦いに敗れた鋭二は、警察に出頭した。

 

 これまでヴァンと一緒にSAO生還者達の記憶を狙い、傷付けてきたからだ。特に風林火山の者達には酷い事をやったものだと、今更になって思っていた。許されざる行為をしてしまった事実は変わらない。だからこそ鋭二は出頭した。

 

 そして実際に逮捕されたが――署内で不起訴処分を受け、数日と経たないうちに釈放されたのだった。

 

 呆然とする鋭二に警察官は「被害者達は全員君を不起訴にしているうえ、君自身重村徹大容疑者の協力を強いられていた故に犯罪行為に走ったのだろう。君よりも重村容疑者の方に非がある」と話した。

 

 確かに許されない事をしたはずなのに、誰も起訴しなかったという事実に言葉を失う鋭二を、警察官達は解放してくれたのだった。腑に落ちない部分しかなかった。

 

 逮捕してくれて、起訴してくれて、何もなくしてくれればよかったのに。

 

 全部奪えばよかったのに。

 

 その方がいっそすっきりしたというのに。

 

 どこにも行けないような気持ちを抱えた鋭二は立ち止まり、懐からオーグマーを取り出した。警察官に没収されていたが、特に何もないという事で無事に返された装置を左耳に付けると、現実世界に仮想現実のレイヤーが上乗せされ、見えなかったものが見えるようになった。

 

 そしてすぐに、鋭二は軽く驚く事になった。自分から見て右に、一人の少年が姿を現していた。ツートンカラーのパーカーが特徴的である、小柄な体形をしている黒い髪の少年。一緒に戦ってくれて――最早家族に等しい、ヴァンだった。

 

 

「……ヴァン」

 

「……お帰り、鋭二。思ったより早く帰って来れたんだな」

 

「……あぁ。なんでこんな簡単に釈放されたんだろうね」

 

 

 正直なところ、鋭二はヴァンとは会いたくなかった。計画の成就は自分とヴァンの悲願だった。なのに叶わずに終わってしまい、この有様だ。ヴァンをどこまでも失望されただろう。自分がこんなに弱かったのだから。

 

 

「……ヴァン、ごめんな……僕が弱虫だったばっかりに、力がなかったばっかりに……君と一緒に戦っても、何もできなかった……」

 

 

 ヴァンは首を横に振った。これまで見た事ないくらいに強く振った。

 

 

「それはおれがお前に言わなきゃいけない事だ。おれが、おれが弱っちいMHCPだったせいで、姉貴達より劣ってるMHCPだったせいで、結局悠那も、お前も救えなかった! おれはお前達を癒すMHCPなのに、自分の使命もこなせないような出来損ないだったんだ。だから……おれが悪いんだよ……!」

 

「違う! ヴァンは悪くない。元はと言えば僕が――」

 

 

「――どっちも何も悪くないよ。悪いのはSAOを作った私達と、君達の思いを踏みにじった重村先生だ」

 

 

 不意に声が聞こえて、二人できょとんとした。ヴァンが鋭二の背後を見て驚いている。誘われるようにして向き直ったところで、もう一度驚く事になる。

 

 長くて艶のある黒髪で、長身を白衣に似たコートに包み、服の上から大きいとわかる胸をしている女性の姿がそこにあった。

 

 

「あ……!」

 

 

 その女性に鋭二は憶えがあった。自身の在籍していた重村研究室にかつて同じように在籍していて、あの茅場晶彦の右腕と称されたAI開発者。重村教授が言う一番の問題児――その名前を、鋭二は口にしていた。

 

 

「せ、芹澤(せりざわ)愛莉(あいり)博士……!?」

 

「あぁそうとも。一応これが初めましてだね、後輩君」

 

 

 先輩研究者は頷き、鋭二へ歩み寄ってきた。その途中で、鋭二と愛莉の間に割り込む影があった。ヴァンだった。

 

 

「今更何のつもりだ。母親(おふくろ)……」

 

「……ヴァン、ちょっと鋭二君と話させてくれないか。手出しなんかしないよ」

 

 

 ヴァンは警戒心を剥き出しにしたまま、一旦道を開けた。愛莉は「ありがとう」と礼を言い、鋭二に歩み寄ってきた。

 

 

「……何の用ですか、芹澤博士」

 

「そう身構えないでおくれよ。まぁ、そうされるのは必然なんだけどね。まずは釈放おめでとう。何もなく済んで、何よりだ」

 

 

 愛莉は微笑んでいた。優しさが垣間見えるが、すべて受け入れられるものではない。

 

 

「そう言って犯罪者を(わら)いに来たんですか。無様なもんでしょう。あれだけ重村教授を信頼して、悠那を生き返らせようとしたのに、結局失敗してこの様なんですから。いいですよ、嗤ってください」

 

 

 吐き散らすように言うが、果たして愛莉は首を横に振った。

 

 

「……嗤えるわけないだろう。私の先生だった重村先生にここまで酷い事をされた後輩を、私達があんなゲームを出したばっかりにこんな事になってしまった君達を、嗤えるわけないじゃないか」

 

 

 鋭二は思わずきょとんとしてしまった。隣にいるヴァンも同じ様子だった。

 

 

「私達元アーガスが、君に犯罪行為に走らせてしまったようなものだ。君とヴァンには本当に可哀相な事をしてしまった」

 

 

 思い出した鋭二は歯を食い縛った。そうだ、元々茅場晶彦とこの愛莉が中心になって開発したデスゲーム、ソードアート・オンラインのせいで自分は全てを喪い、悠那もまた喪われた。元はと言えばこの博士達のせいじゃないか。

 

 

「それで許されるとでも思ってるんですか。謝れば許されるとでも!?」

 

「勿論思ってない。謝ったくらいで済まされるような事じゃあないのは十分承知だ。だからさ、私は私なりに君への贖罪をしたいのさ。お礼も込めてね」

 

「……お礼?」

 

 

 愛莉は鋭二から見て右方向を向いた。そのまま上を見上げる。

 

 

「君さ、すごく良くやってくれたと思うよ。重村先生の計画の欠陥を見抜いて、更に人を言いくるめるばかりの彼を叩きのめしてくれた。先生と仲良くなかった私からしては、そんな後輩の君は誇らしい。だから先生を叩きのめしてくれたお礼と、君への償いをしたいんだ」

 

 

 愛莉は長く息を吸い、吐いた。身体を動かさない深呼吸だった。

 

 

「そう言えばここ、警察署から割と近くにあったんだよね。懐かしいなぁ。よく泊まり込みもしたもんだし、お偉いさんも招かれたもんだ」

 

 

 鋭二はヴァンと一緒に見上げ、はっとした。そこは灯りの付いていない廃ビルであり、彼女達が在籍したアーガスの跡地だった。いつの間にかアーガスの跡地周辺にまで来てしまっていたらしい。そもそも、警察署とアーガス跡は近くにあったようだ。

 

 

「アー……ガス……」

 

「ねぇ、中に入ってくれないか。そこで君達に贖罪したいんだよ」

 

 

 鋭二は驚いた。こんな廃ビルの中に入れなど、怪しむしかない。何をするつもりでいるのだ、この人は。

 

 身構える鋭二を愛莉は苦笑いで答える。

 

 

「まぁ身構えられて当然だね。じゃあ、私が中に入るとしよう。もし私の贖罪が気になるなら付いて来ればいいし、そんな要らないっていうなら、このまま帰りたまえ」

 

 

 そう言って愛莉はすたすたと歩いていき、アーガス跡の廃ビルの中へ入って行ってしまった。夜道に二人で残された鋭二は思わず呆然とする。

 

 

「鋭二、気を付けろ。何をするつもりなのかわかったものじゃない」

 

 

 ヴァンが警戒している。当然鋭二もそうだったが、愛莉がしてくれる贖罪というのも気になる。現に彼女はわざわざヴァンがわかるようにオーグマーを付けていた。

 

 仮想現実に関する何かをするつもりなのだろうか。

 

 

「けれど、何かあるのかもしれない」

 

 

 ヴァンは驚くように声を上げた。

 

 

「まさか、行くつもりなのか!?」

 

「相手は君の母親だろう。それにここは警察署の近く。何かあればすぐに警察が来れるようにはなってる」

 

「だからって……」

 

 

 ヴァンは心配に心配を重ねてくれているが、やはり鋭二は立ち止まっていられなかった。

 

 ヴァンに「行こう」と言い、鋭二は廃ビルへ足を踏み出した。驚いているヴァンがやがて付いてくるようになると、そのまま灯りのない廃墟へ進んだ。中は埃っぽく、荒れ放題だった。何より灯りがないので、スマートフォンを懐中電灯代わりにして進んだ。

 

 やがてアーガスの本部の扉を抜けると、がらんどうになっている部屋の中央に愛莉が居た。律儀に待ってくれていたようだ。

 

 

「ほぅ、来てくれたんだね」

 

「来ましたとも。それで、何をするつもりなんですか」

 

 

 愛莉はもったいぶるような仕草をした。

 

 

「鋭二君にヴァン。ちょっと目を閉じてくれないかな」

 

「は!?」

 

「だから、目を閉じてくれないかって」

 

 

 鋭二はヴァンと一緒に驚いていた。こんな廃墟で、こんな暗がりで目を閉じろなど、何か危害を加える気満々の人間が言う事だ。

 

 対象に目を閉じさせて致命傷を与え、「こんな簡単に人を信じちゃいけないよ」などと抜かすのだ。愛莉もそのつもりだ。

 

 いよいよ身構える鋭二を、愛莉は宥めるような仕草をする。

 

 

「おいおいおいおい、だから取って喰いはしないって。君にもヴァンにも何もしないよ。危害は加えないって誓うよ」

 

「信じられるわけないだろうが! こんな場所で二人きりだぞ。何かする気満々だろ!」

 

 

 ヴァンが正論を言うと、愛莉は仕方ないと言わんばかりに、鋭二に歩み寄ってきた。警戒心で身体がぴりぴりし始める。

 

 

「じゃあさ鋭二君、私が君に目隠しをする。しっかり君に目隠しをするね。目隠しを解いた時、私の贖罪を君は見る事になるよ」

 

「へ?」

 

 

 それ以上言わず、愛莉は素早く鋭二の背後に回り、目隠しをしてきた。急に視界が闇に閉ざされ、鋭二は戸惑う。

 

 足掻いて愛莉を離そうとするが、中々に力が入っていて解けない。なんだ、これから何が起こる。

 

 

「ヴァン、頼むから目を閉じてくれ。これで最後で良い。私を信じてくれないか」

 

 

 愛莉の声がした。ヴァンの抵抗に遭っているのは違いないが、やがて声と喧騒が止んだ。ヴァンまで観念したようだ。

 

 もうどうにでもなれ、どうせ何もないのだから――鋭二は大人しく目を閉じた。

 

 

「……目を閉じたね」

 

 

 鋭二は答えない。ただじっとしている。それから五秒くらい経った頃に――愛莉の声がして、手が離れた。目は閉じたままにしている。

 

 

「……()()とも、目を開けてみて」

 

 

 鋭二は一瞬耳を疑った。()()? ここには二人しかいないはずだろう。愛莉は何を言っているのか。その真偽を探るために、鋭二は瞼を開けた。

 

 

「……え」

 

 

 そして言葉を失った。目の前に、愛莉ではない人影が姿を現している。その正体をすぐに認められたが、鋭二は即座に信じれはしなかった。

 

 

 

 アーガス本社であったこの場の、鋭二達の目の前にいるのは、明るい茶色の髪をセミロングくらいにしていて、三つ編みにした前髪を左へ流している、茶色の瞳の少女。その服装は白いワンピースだが、鋭二はその顔から眼を離せなかった。

 

 

 

 到底信じられるわけがない。その少女は、この場で産み出されたSAOにて命を落としたはずの存在であり、喪われてしまった愛する人であり、鋭二の理解者だった少女と、瓜二つの姿をしていた。ここにいるはずのない、いるわけないはずの――。

 

 

 

「悠……那………………?」

 

 

 

 鋭二がそう呼んだ少女もまた、目を丸くしていた。目の前の光景が信じられないでいるようだ。

 

 

「…………エーくんに……ヴァン、なの……?」

 

 

 少女は確かにそう言った。とても心地よい声色で、懐かしい声で言ってきた。どこまでも現実感を欠如させた光景だった。これは幻影か。そうだ、幻だろう。

 

 自分はきっとまだ警察署に居て、出た食事に幻覚剤でも混ぜられていたのだ。それでこんな幻影を見ている。そう思いたいところだったが、ヴァンまで同じような反応をしているのだから、後押しされなかった。少女は辺りをきょろきょろしたり、鋭二とヴァンを見たりする。

 

 

「エーくんにヴァン、その恰好は? なんか現実世界みたいっていうか。っていうかここ、アインクラッド? すっごく現実世界なんだけど……」

 

 

 鋭二は驚愕しきったまま愛莉に向き直った。鋭二の右方向にいる彼女は微笑んで、右腕を軽く広げていた。「さぁ、行ってやりなさい」。そう言っているようだった。その愛莉の息子であるヴァンが口を開ける。

 

 

「ど、どうなってるんだよ。なんで悠那が……あれは悠那だっていうのか……?」

 

 

 そんなはずはない。悠那がここにいるわけがない。自分達の計画は失敗し、悠那は結局生き返らなかった。だからこれは幻、夢なのだ。そう思って頬を思い切りつねったりしても、目は覚めなかった。

 

 ……現実だった。信じられないまま、鋭二は悠那らしきものに歩み寄った。

 

 

「悠…………那……悠那、なのか……本当に……?」

 

「え? えっと、うん……どうしたの、エーくんにヴァン」

 

 

 幻影にしてはよく出来ている悠那の頬に、鋭二は触れた。――彼女の持っていた温もりが、感じられた。幻ではない。幻が温もりを持っている事など、ありえるものか。

 

 ではこれはなんだ。すると間もなくして、悠那と思わしき少女がびっくりしたように鋭二の腕を握ってきた。

 

 

「そ、そうだ! 私は皆と一緒に救助に向かって、そしたらエーくんが動けなくなって、モンスターの群れが私に向かってきて、襲ってきて、それで私、HPがゼロに……」

 

 

 それが彼女の最期だった。その最期の瞬間を今見たように、彼女は話してきていた。だが、その中で呆然とした様子に変わった。

 

 

「エーくん、あれから……何が起きたの? 私、気が付いたらここに居たんだけど……ここ、アインクラッドなの?」

 

 

 鋭二は瞬きを繰り返すしかなかった。愛莉に助けを求めるように振り向こうとしたが、愛莉は既に自分達の右横に来ていた。

 

 

「鋭二君にヴァン、それに悠那。ここは現実世界だよ」

 

 

 悠那が驚いたように愛莉へ向き直る。

 

 

「え!? って事は、SAOはクリアされたの?」

 

「そのとおりだよ。けれど悠那、すごく悲しい話をするけれど、君は身体を失った」

 

「身体を失った……? つまり死んだって事?」

 

「そう。けれど君は、そうだね、魂だけになって生存できたんだ。要するに御霊になって、生きてる。意識が無事に機能してるっていうのを生きてるって言うならね」

 

 

 悠那は「えぇー!?」と驚いていた。その驚き方も鋭二の知る彼女のものだった。そこで愛莉が鋭二に向き直る。

 

 

「鋭二君。実はナーヴギアってさ、脳をリアルタイムでスキャニングして、その所有者の情報を憶えて、蓄積していくようになってたんだ。記憶とか体験とか、全部ね。一年ほど生きていれば、ほぼ完全にその所有者の記憶や人格やらを憶えちゃうようになってたんだよ」

 

「じゃあ、これは……」

 

「なんとかSAO犠牲者に償いを出来ないかと思って、政府のナーヴギア管理施設にクラッキングして、ナーヴギアの所有者のデータをサルベージさせてもらったんだ。そしたらユナって呼ばれてたその娘のデータを見つけ出せてね。ヴァンの根幹にある《アニマボックス》を適応したところ、それが《身体》になってくれた……何も障害もないみたいだね。彼女は私が呼んでる《電脳生命体(エヴォルティ・アニマ)》になったんだ」

 

 

 鋭二はもう一度悠那に向き直った。悠那の瞳は揺れていた。

 

 

「エーくん……ここ、現実なんだね……私達、現実に帰って来れたんだよね……?」

 

「……悠那」

 

 

 今にも泣き出しそうな鋭二に、愛莉が囁く。

 

 

「……鋭二君、ヴァン。あなた達にあんな酷い事させてしまってごめんなさい。そのせめてもの償いとして、《電脳生命体(エヴォルティ・アニマ)》になった彼女をあなた達へ任せるわ。彼女の身体は今言った通り無くなってしまってて、ヴァンと同じになってるから、彼女と接する時は必ずオーグマーを付けて、VRゲームにもなるべく積極的にダイブなさい。

 それにね、これを重村先生に聞かせるわけにはいかないから、この後私に案内されてもらえないかしら。あの人にこの娘を、この技術を伝えるわけにはいかない。それじゃあ罰にならないからね――」

 

 

 鋭二は愛莉の言葉を無視し、そっと悠那の頬を両手で包んだ。ずっと求めていた、悠那の温もりがそこにあった。

 

 

「……悠那ッ」

 

 

 悠那の震える瞳から涙が零れた。それはいつか見て、喪われた歓喜の涙だった。

 

 

「エーくん……ヴァン……私達、帰って来れたよ……一緒に、一緒に!」

 

 

 それがついに鋭二の心の封を切った。

 

 鋭二は悠那を思いきり抱き締めると、大きな声を出して泣き出した。

 

 

「悠那……悠那あああああああああああッ!!!」

 

 

 間もなくそこへヴァンも悠那も加わる。

 

 

「鋭二、悠那、う、うああああああああああああッ!!!」

 

「エーくんんん、ヴァンンン!! ぅあああああああああああッ!!!」

 

 

 無人となった廃墟に喜びの泣き声は響き渡っていった。

 

 歌姫、歌姫を守る騎士、心の守り人の三人は、形を変えて揃ったのだった。

 

 

 

 

「……上手くいって良かったわ。償いはしっかりできる。続けていかないとね、色々と……」

 

 

 

 

《キリト・イン・ビーストテイマー オーディナル・スケール 終わり》





















――原作との相違点――


①重村徹大に救いは無し。

②悠那復活、鋭二救済。エイユナにも幸あれ。

キリシノ。

④イメージ曲『Can't Say Good-bye to Yesterday』。英語の歌ですが、和訳を見てみてください。


 次に元ネタと軽いあとがきで、終わりです。

 あとほんの少しだけ、お付き合いしてくりゃれ。


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