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「おい、この程度なのか。自慢の大型アップデートという話ではなかったのか」
聞いていた最新のアップデートで追加されたコンテンツ、《SBCフリューゲル》なるモノの中に、サトライザーは来ていた。入場するにはアファシスが必要であるみたいな話を協力者から聞いていたが、面倒だったので何も持たずに来た。
入場券を持たないまま《SBCフリューゲル》の入り口に近付いてみたところ、鋼鉄の機械仕掛けのゴーレムがやってきて、襲いかかってきた。それはこれまで相手にしてきた戦機達よりも随分と歯応えのある防御力、その他ステータスを持っているような奴だった。
だからこそサトライザーは心躍らせて戦ったのだが――結果は思い通りのものではなかった。ゴーレムはここまで相手にしてきたボス達よりも少し強い程度しかなく、サトライザーとその《持ち物》からすれば、どうという事のない存在だった。
ドロップ品はそこそこ良かったかもしれないが、サトライザーからすればガラクタも同然。街に持ち帰った後でビジフォン端末から売り出せば、相当な額を付けて他のガンナー達が買う事だろう。餌に群がる蟻のように。
「全く、
サトライザーは溜め息を吐いた。こんなにも歯応えも何もないものに満足しているプレイヤー達など、呆れるしかない存在だ。
どいつもこいつも自分達を満たせるほどの実力など持っていない。だから容易にすり潰す事ができる。そんな連中のデータを取ったところで、誰が喜び、何の足しになるというのだろうか。
サトライザーは改めて呆れ、すぐ右横を見た。
「今のところ
視線の先に巨大な影があった。
ドラゴンだ。旧約聖書では憤怒の化身、もしくは大天使ルシフェルが堕天して悪魔の王となった時の化身、あるいは凶悪な魔女の《使い魔》とも言われる存在が、サトライザーに付いて従っていた。
トカゲよりも人間に近しい体型で、長い尾と翼を生やすその身体は、全て黒銀の鋼鉄と人工筋肉で構成されている。更に身体のあちこちから、街一つを数分足らずで廃墟に変えてしまうほどの火力を吐き出す砲塔を伸ばしてまでいる。
ドラゴンなどというものは、現実世界には存在しない。ファンタジーの世界だけの住民だ。しかし未来の地球では、発達した機械技術によって、ファンタジーの存在さえも実在させられるようになったという事なのだろう。
そんな幻想生物だったはずの黒龍が、機械仕掛けの敵として出てきた際のそれが、今のところ一番サトライザーを楽しませてくれた存在だった。
少しの攻撃で倒される事がないどころか、全身を砕かれるまで戦い続ける程の、闘争に飢えた魂を持つ、圧倒的火力を誇る
自分以外のプレイヤーでは
そんな時間を送り続けていたところ、いつの間にか鋼黒龍の身体の破片がいくつも手に入っていて、再構築が可能になっていた。
ほう、そんな事もできるのか――試しに実行をしてみたところ、鋼黒龍は本当に蘇った。しかもサトライザーの敵ではなく、純粋なる従者として。
なんだ、また敵として蘇るのではないのか――サトライザーは少しがっかりしたが、すぐに気を取り直した。あの龍を稼働させ、意のままに操る事ができるなど、なかなかに楽しいのではないか。
サトライザーは従者となった鋼黒龍に名前を付け、その稼働を認めた。
「……ジブリル。お前の魂はいずれも闘争を求めているのか」
《ジブリル》。ある意味では特別な名前であるその名を冠した従者は、未だ暴れ足りないような表情を見せていた。機械のくせに、口の中から荒々しい獣の吐息が聞こえてくる。
入り口に居たゴーレム、そこら辺にいる機械の兵士達では、まだまだ喰い足りない。もっと壊させろ、もっと喰わせろ。ジブリルはサトライザーにそう訴えかけるような目――金色のカメラアイ――をしていた。
「そんなに闘争を求めるお前の魂の色は何色で、味はどんなものなのだろうな?」
ふと問いを投げかけるが、ジブリルは無反応だった。いや、違う。
――そんな事はどうでもいいから、もっと壊させろ、もっと戦わさせろ。ジブリルは伝えてきている。サトライザーは直感でそう思った。
こいつはどこまでも本能に純粋であり、野生の獣にも似ている。そのくせ、自身の主を認識するだけではなく、息を合わせて戦う事ができるなど、まるで本当に魂を宿しているかのようだ。無論、そんな事はないはずだが、それを抜きにしても面白い従者だ。
サトライザーは口角が上がるのを感じた。
「……そうだな。ジブリル、ディナータイムはまだまだこれからだ。私もお前も、思う存分喰らおうじゃないか」
サトライザーに呼応するようにして、ジブリルは上半身をもたげ、咆吼を放った。禍々しい黒龍の声が、鋼鉄の船の中に木霊していった。中にいる奴らはどんな反応をしただろうか。確認も兼ねて、サトライザーは進もうとした。
だが、次の瞬間に足を止めて振り返った。遥か後方――《SBCフリューゲル》の入口の方から音と気配がした。複数の人間の気配。
早速プレイヤー達がこの船目指してやってきたようだが、その中に感じ心地の良いものが混ざっている事に気が付いた。
「この気配は……」
忘れもしない。妖精の世界にて出会った、一際強い少女。本物の妖精のように飛び回り、圧倒的な速度で剣撃を叩き込まんとしてきて、喉元に喰らい付いて来ようとする剣の舞姫。彼女は自分の手に入れた領の元領主よりも遥かに強いと思える程の力を持っていた。
その
そういえば仮想世界に来て初めて心が躍ったのは、あの少女との舞踏の時だったかもしれない。あの少女こそが、仮想世界にも心の踊るものがあると教えてくれた。
だから可能であればその少女と、違う世界でも踊りたい。そう思っていたが、彼女は見たところ、剣と魔法のファンタジー世界にしか興味を示さないような好みの持ち主だった。そしてそんなファンタジー世界を、サトライザーはあまり好んでいない。
なのであの少女と交える時はないと思っていたが――その少女が、ここへやってきているというのは、意外だった。
だが、それがわかってよかった。サトライザーはもう一度口角を上げる。
「そうか、君も来ているのか。嬉しい限りだ。……ならばまた、私に喰らい付きに来るといい。
――
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《SBCフリューゲル》への入口を守るゲートキーパーは、奇妙な姿の戦機だった。
上半身は人間のそれを大きくしたようなもので、ギラギラとした光沢を持つ装甲に包まれている。その手には鋼鉄のロッドと思わしき武器が握られており、時折そこからレーザーブレードが飛び出して来るようになっていた。強力な武器ではあるが、そこはあまり問題ではない。
本当に問題と思えるのは下半身だ。ゲートキーパーの下半身は、身体を中心に放射状に四本の脚が生えている、所謂四つ脚型だった。しかもそれは脚と見せかけてバーニアであり、機体は常に浮かんでいる。
バーニアで浮かんでいるおかげで足場に気を取られず戦う事ができるようで、上半身の武器と合わせて予想できない動きを繰り出してくる。とても画期的な要素の詰まった多脚戦機だった。
その姿を見続けているキリトは、愚痴を言うように零した。
「なんつーか、ユニークな奴が出てきたもんだな」
答えたのはイツキだった。
「こんな奴、これまでのフィールドには出てこなかったよ。《SBCフリューゲル》産の戦機は、全く新しいタイプのものなんだろうね」
イツキの《SVD》による射撃と合わせて、そのビークルオートマタである八咫烏型戦機《
イツキの神武もそうだし、キリトのビークルオートマタであるリランが該当する《機鋼狼リンドガルム》もまた、あのゲートキーパーとは違う姿をしている。いや、ゲートキーパーの方が、これまでと全く雰囲気の異なる外観と性能をしているのだろう。
《SBCフリューゲル》には、SBCグロッケンを中心とした各地フィールドとは、全く異なるものが眠っているという情報を聞かされていたが、それにはエネミーも含まれていたようだ。
《SBCフリューゲル》は、これまでのGGOの常識が通じないところなのかもしれない。何せ《SBCフリューゲル》という船の存在が公式で発表されてから、SBCグロッケンにも、周辺のフィールドにも居なかった高性能AI搭載型アンドロイド《アファシス》が現れたりもしたのだから。
「でもなんだろう。あの中にこういうのが沢山居るって思うと、すごくわくわくしてくる!」
「同感! だからやる気になるってものよ!」
しかし、誰も未知のフィールドである《SBCフリューゲル》の入口を守る番人に臆しては居なかった。その証拠に、アルトリウスとクレハが情熱を燃やしている様子で、ゲートキーパーに向けてどんどん射撃していた。
彼らの放つ弾丸を、ゲートキーパーはバーニアを吹かしてサイドブーストする事で回避する。防御力もそれなりに高いようだが、速度の方もかなり出せるようになっているのは戦っているうちにわかっていた。
そのブーストを終えたゲートキーパーに接敵するのは、ユウキとカイムのコンビ。どちらも自分と同じように、左手にハンドガン、右手に光剣を持った《ガン&ソード》をしていた。
「速く移動したって、ボクが追い付くんだからッ!」
ユウキがそう言った時には、彼女は既にゲートキーパーのすぐ近くに辿り着いていた。
流石にどこまでもAGIを優先しているレンには劣るが、それでも他プレイヤーを大きく上回る速度を実現していた。
そんなユウキに反応したゲートキーパーは、持っているロッドの先端部にレーザーブレードを生やし、鎌状にして横薙ぎを仕掛けた。迫り来るレーザーの鎌を、ユウキはきりもみ回転しながらのジャンプ――事実上ダイブ――をして回避してみせた。
かなりギリギリの回避だったようで、激しくばたつく紫色の長髪の先端部がレーザー鎌に当たり、ジッという物が焼けるような音が出ていたが、彼女は構わずにゲートキーパーの背後に飛び込み、一瞬のうちに反転してゲートキーパーの左後ろ脚を斬り裂いた。
「まだまだ行くよッ!」
続けてカイムがゲートキーパーに近付いていく。その速度はユウキには敵っていない。カイムのステータスはAGIをそこまで重視したものではないからだ。しかし代わりに
それを証明するかのように、カイムは左手に持った《ベレッタM1951》でゲートキーパーのロッドの先端部を撃った。あまり意味がないように見えたが、最後の一発が撃ち込まれるや否や、ゲートキーパーのロッドから出ているレーザーが消えた。壊れたわけではないようだが、衝撃を受けた事によって一時的な機能不全に陥ったらしい。
そこも狙い目だったのか――キリトが感心するのと同時に、カイムはゲートキーパーの右足に一閃を浴びせた。しかしゲートキーパーのHPは中々減らない。あのギラギラとした光沢のある装甲は、これまで見てきた戦機達の身体を守っていたものよりも上位のものなのかもしれない。
(だとすれば……)
あれらが巣食っていると思われる《SBCフリューゲル》の中には、リランの武装や装甲を強化するための素材が眠っているのではないだろうか。今よりもリランを強くする方法が、あの中にあるのではないだろうか。
これまでの世界で、リランの進化する様子を見てきたキリトは、そう思わないでいる事はできなかった。《SBCフリューゲル》の中にはこれまでとは全く違う武器や素材、コンテンツが眠っていて、リランを進化させられる可能性もある。
――改めて思い直すと、キリトは胸の内が高鳴るのを感じた。何としてでもあの中に入り、探索を、攻略をしたい。そのためにはゲートキーパーを迅速に倒さなくてはならない。
キリトはぐっと手元の光剣を握り直した。
「攻撃が効いてる……これなら倒せるぞ!」
「なら、このまま倒しちゃいましょうよ!」
シノンの掛け声に合わせ、その手に持たれた《ヘカートⅡ》が超大型ライフル弾を発射する。猛烈な発砲音とほぼ同時に放たれた弾丸は空を裂いて進み、ゲートキーパーの右足を貫いた。
そこはカイムの攻撃が当てられたところだったが、更にシノンの大型ライフル弾が後続すると、装甲が弾けるようにして剥がれた。光沢のある鋼に守られていたエンジン部が剥き出しになった。
どうやらあの装甲にも耐久値が設定されていて、攻撃を続ければ脱落らせられるようになっているようだ。そして装甲の下にあったエンジン部は、明らかに防御力が低そうな見た目をしている。つまりそれは――キリトが言い出すよりも前に、リランが《声》を飛ばしてきた。
《なるほどな。装甲が剥がされたところは弱点部位となるという事か》
「そうとわかれば、やる事は単純です! 全部剥がしてやるのです!」
リランに呼応したレイアが声を上げる。あの装甲がどこまで剥がせるのかはわからないが、剥がした部位が弱点になるという事は、剥がせば剥がすほど弱点を増やす事ができるという事に繋がる。
ならば剥がせるだけ剥がして、防御力を事実上のゼロにして一気に決着をつける。レイアの言う通り、やる事は単純だ。
再確認したキリトはイツキに声掛けをしてみた。
「イツキ、お前の神武って乗れないのか」
「勿論乗れるさ。それで神武の武器を僕が使う事もできる。それはキリト君の方も同じだろう」
「そのとおりだ。だから、あいつの装甲を剥がせるだけの火力が出せるってわけ!」
「なるほどね。神武とリラン君による同時射撃か。面白そうだね」
イツキがやる気になったのを認めると、キリトはジャンプしてリランの背中の操縦席に
同刻、高度を落としてくれた神武の背中にイツキが飛び乗ったのを確認する。イツキの言うように、ビークルオートマタとなった八咫烏型戦機の背中にも、プレイヤーが搭乗できる操縦席が設けられていたようだ。
相棒である白き鋼の八咫烏の背中に乗り、操縦しているイツキの姿は、初めて見たが、どこか幻想的な雰囲気を感じさせるものだった。八咫烏というのが神に近しい存在で、尚且つ神の色ともされる白色をしているためだろうか。
いずれにしても、白き鋼の八咫烏を操るイツキの姿は、日本神話に登場する
……まぁ、実際の神武天皇は八咫烏に導いてもらっただけで、その背中に乗らせてもらったわけではないらしいので、あの光景は違うものなのだろうが。
「さてと、思いきりぶちかまさせてもらおうかな。皆、そいつから離れてくれ」
イツキが言うと、神武が咆吼した。射線から離れろという意思表示のようだ。それを聞いた皆が神武とイツキの射線から離脱すると、神武は飛び上がった。
間もなくして神武の脚の機銃、背中――イツキより後ろにある部位――のミサイルポッド、胸部のランチャーポッドが火を噴いた。
機銃からは弾丸、ミサイルポッドからは空対空ミサイル、ランチャーポッドからはナパーム弾が次々射出され、続々とゲートキーパーに浴びせられた。更に神武の開かれた口内の奥から火炎弾がマシンガンのように発射され、ゲートキーパーとその周辺は火の海になった。
結構距離を取っているはずなのだが、その熱がこちらにまで届けられて来るものだから、キリトは思わず顔をしかめた。このまま浴びていたら汗が出てきそうだ。
自分達より前にいた仲間達――ユウキとカイムは「あちちちち!」と言いながら、慌てて後退してくる。ゲートキーパーを包み込む炎と熱は過剰なくらいのものになっているのは間違いない。
その光景を目にしたキリトは思わず口を半開きにして苦笑いした。
「うわぁ……すげぇ炎属性極振り」
《まさに焼き鳥ならぬ、焼く鳥だな。まぁ炎の扱いなら我の方が勝っておるがな》
そもそも八咫烏は天照大神が遣わした存在であり、太陽の化身とも言われている神獣だ。そのため、ファンタジー世界に登場してくる場合には炎属性を得意としている事も多いのだが、どうやらあの神武の該当する八咫烏型戦機も、同じように炎を中心とした重火器の運用に特化しているらしい。
八咫烏型戦機を相手にしたのは、この前の大会でイツキ達と初めて出会った時だけで、それ以外の攻略や探索の中で八咫烏型戦機と交戦した事はなかった。
あの時から既に思っていた事だが――八咫烏型戦機と戦う時は、炎と熱に特化した装備を組まなければならないだろう。あいつが敵として出てくるのはどこだろうか。だとすればそこには近付きたくないものだ。
キリトが胸中で思ったところ、ゲートキーパーを包み込む熱と炎が鎮火した。その瞬間まで焼かれ続けていたゲートキーパーはというと、ほぼ全身の装甲が落ちてしまって、弱点であるエンジン部が
あの装甲は熱に弱いものだったのだろうか。いや、そうでなかったとしても、あれだけの高熱攻撃をぶつけられれば、なんでも崩壊するというものだ。高熱を浴びせられた鋼鉄は変形し、最終的に液状になるのだから。
いずれにしてもこれでゲートキーパーの守りは崩せた。残りのやるべき事は単純だ。キリトはリランの操縦桿をしっかり握り締めて、座席に腰を落とす。
「リラン、今だ!」
《しっかり掴まっておれ! あと音が鳴るからそこにも気を付けろ!》
リランからの注意事項の後、彼女はぎゅんとバーニアを吹かしてゲートキーパーに接敵した。その途中でガトリング砲《アヴェンジャー》を連射してゲートキーパーにいくつもの銃創を空け、更にミサイルポッドから《ヘルファイアミサイル》を射出して上空へ飛ばした。
リランは勢いを殺さず、そのままゲートキーパーへ近付いていき、キリトは操縦桿から手を離して座席の上に膝を置く。近付くリランへ向けて、ゲートキーパーはレーザーブレードを展開したロッドで横薙ぎ払いを仕掛けてきた。
「来た!」
予想通りの動きだった。それはリランも同じだったのだろう、すぐさま急ブレーキをかける事で、迫り来るビームの刃をリランは寸でのところで回避した。そして急停止した事により、キリトの身体に思いきり遠心力が掛かった。合わせてキリトはリランからジャンプする。
タイミングがばっちりだったようだ。キリトは普通のジャンプでは出せない跳躍力で宙を舞い、ゲートキーパーへ一気に飛び込む。
「扉を開けろッ!!」
ゲートキーパーへの要望も乗せて、キリトは勢いと速度のまま光剣を振るった。青緑色の光の刃は、剥き出しになったゲートキーパーの機関部を斬り裂き――そのままゲートキーパーの上半身と下半身の結合部を断ち切った。
それから一秒もしないうちに、打ち上げられていたリランのミサイル郡がゲートキーパーへ着弾。連続で大爆発を起こったのを、キリトは後方から感じ取った。光剣にしてもミサイルにしても、確かな手応えがあった。間違いなくゲートキーパーの撃破に成功した。
これで《SBCフリューゲル》への道は開かれたはずだ。
「……ん?」
それがわかると同時に、キリトは気が付いた。自身の勢いが衰えない。リランの背中から射出された際の速度のまま飛んでいる。今の一瞬でゲートキーパーは倒せたけれども、そういえばその背後には何があっただろうか。
「あ」
キリトは前方に顔を向けて絶句した。ゲートキーパーを一戦した先にあったのは、壁。いや、閉じられたままの扉だった。このゲームの扉は番人を倒したらすぐに開くのではなく、専用のイベントで開くようになっていた。
そして今はそのイベントが開始する前だから、扉は壁と変わらない。
「わ、わ、わあああ」
声を上げたのと同時に、キリトは閉じられた扉に顔面から突っ込んだ。
顔が思いっきり硬いものにぶつかった衝撃がキリトの全身を撫で廻した。
――原作との相違点――
・ゲートキーパーが違う。原作ではただの巨人タイプ。
・サトライザーがビークルオートマタ持ち。
・サトライザーがユウキに注目している。逆境を生き延びた強くて清らかな魂ゆえに。
――今回登場武器解説――
・ベレッタM1951
実在するハンドガン。イタリアのベレッタ社というところが開発したもので、ブリガーディアとも呼ばれる。
9x19mmパラベラム弾を使用する事でそれなりの威力があり、スライド上部が切り取られているのが特徴。これのおかげでバレルが露出し、排莢不良で銃身内がジャムるのを防げる構造。
本銃を基にした《M1951R》という亜種は、マシンピストルとして銃弾を連射可能。