これからもこの小説では彼女がメインヒロインですので、よろしく!
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ついに《スクワッド・ジャム》の当日を迎える事になった。数日皆と話し合って《エクスカリバー》からの出場者を決め、エントリーを済ませた。
戦う事になったのは、《
このうちのユピテルはピトフーイ達の、プレミアはアルトリウス達の組に合流しており、サチ、マキリ、ティア、シュピーゲルの四人一組となった。合計十七人による四組で《スクワッド・ジャム》へ挑む事が決まったのだった。
本当ならば《エクスカリバー》の全員で挑むのが一番良かったのだが、相手は《死銃》。その銃撃を受ければ現実でも死亡する可能性があるという、とんでもない敵だ。
そんな奴の死の宣告銃撃を受けるかもしれないような戦いに、いくらデスゲームを乗り越えた皆とは言え、巻き込むわけにはいかない。《スクワッド・ジャム》に参加しない皆の中にもやる気の者達はいたが、キリトは最低限の人数で行くべきと告げ、結局参加人数を絞る事になった。
そしてこれら参加者の中のプレミアとティアには「わたし達だけでも大丈夫だからキリト達は参加しないで」と言われてもいたが、ピトフーイ達はそれに反対し、更にそこにクレハとツェリスカも便乗。イツキはどっちでも良さそうな雰囲気で、アルトリウスは何も言わなかった。
シュピーゲルは「医療関係知識のある自分がいれば、《死銃》の殺人の仕組みがわかるかもしれない」と言って協力すると伝えてきた。ほぼ飛び入り参加みたいになっていたが、彼の持つ医療知識は割と本物であるため、本当に《死銃》の殺人のカラクリを暴いてくれるかもしれない。
それにそもそも彼自身は《GGO》で名の知れた強者の一人である。《死銃》に撃たれて死ぬ危険性を持っているが、その前に《死銃》を倒す事もできそうだった。キリトはその腕を信じ、シュピーゲルに来てもらう事にした。
協力者を全員確認したキリトは「こればかりは放っておくわけにはいかない。デスゲームを終わらせた身として、二度目のデスゲーム再来を許さない」と改めてプレミアとティア達に反論。プレミアとティアは心配そうな表情を隠さなかったものの、キリト達の意思を受け入れ、「わたし達が《死銃》の狙いを引き寄せるから」と言ってくれた。やはり彼女達に頼る戦いになるのは間違いなさそうだ。
だが、そんな事はさせないし、誰も死なせない。誰かが死ぬ前に《死銃》を徹底的に叩きのめし、その犯罪の証拠を公に、運営と警察の
辺り一面に広がっているのは荒れ果てた野。かつては緑が生い茂っていたかもしれないその場所は今、地球全土を巻き込んだ戦争という厄災によって、大多数以上の動植物を失い、乾ききった砂と、砂になる事は避けられているものの植物の生えない死んだ土となった不毛の大地だった。
目を凝らせば僅かに生えている草とサボテンによるオアシスのようなところもあるが、ほぼそこにしか緑らしい緑はない。そしてそれに混ざるようにして建物の残骸や廃墟も存在していた。
まさしく死の大地。ここで最強のガンナーチームを決める大会が始まろうとしており、時を同じくして《死銃》という死神がガンナー達の命を奪おうと舌舐めずりをしている。その死神を捕まえるべく、キリト達は降り立っていた。
「……皆とはだいぶ離れてしまったようだな」
キリトの独り言に答える者がいた。
「《スクワッド・ジャム》とか《BoB》はバトル・ロワイアルだから、開始地点は基本的にばらばらになるわ。だから皆の事は探し出さないといけない」
シノンは凛とした声で答えてきている。その声色はいつも彼女から発せられるものと同じように聞こえるが、僅かに異なっているという事にキリトがすぐに気が付いた。
バレないようにしているのは間違いないが、彼女の声の中には緊張が
その事について尋ねようとしたが、シノンは言葉を続けてきた。
「それに、私達があまりにも集団行動をしていると、視聴している人達から
シノンの言い分にキリトは一旦反応を保留した。
この荒野にいるのは自分だけではない。ともに戦うと決めてくれた仲間達も同じように降り立ってくれている。自分達を除いて三組、十三人の仲間達がこの荒野に来ている。
その者達とすでに言い合っているが、自分達は《スクワッド・ジャム》に参加しているので、敵対関係となってはいる。しかしそれはあくまでシステム上の話であって、中身は味方同士のままだ。そして互いを倒し合う事になっているものの、共通の敵が大会内にいれば協力し合って討つ事ができる。
この《共通の敵を協力し合って倒す事は可能》というのが今回の作戦の
《死銃》のチームは敵対し合っているはずのチームが手を合わせて襲ってくるという状況に混乱して上手く動けず、やられる一方となる――というのがピトフーイから提示された今回の詳細な作戦であった。
しかしそれはシノンの言ったとおり、《スクワッド・ジャム》という公式の大会を利用した作戦となるため、他のプレイヤーに迷惑が掛かりかねないものとなっている。大会が上手く運ばなくなり、大規模な番狂わせのような出来事になるのは間違いないし、何より自分達が全く戦わず、《死銃》のチームを集中攻撃しているという光景が繰り広げられれば、運営もプレイヤー達もその動きを疑問視するだろうし、怪しむのは違いない。
下手すれば運営から何かしらの干渉が入ってくるかもしれないというのも否定できないだろう。だがしかし、そうであっても、《死銃》という凶悪なテロリストを捕まえるにはもうそれくらいの事をするしかなくなっているというのが現実だ。相手はプレイヤーを殺す能力を持っているのかもしれないのだから。今後《GGO》でプレイヤーが《死銃》に命を奪われるというデスゲームの再来を防げるのであれば致し方あるまい。
キリトはそう思い、皆にもそう伝えてきていた。ここにいる全員はそれを承諾し、《スクワッド・ジャム》で《死銃》を倒すと決めてきた。運営も他のチームも、プレイヤー達の文句など知った事か。私達の手で《死銃》を討ってやるんだよ――それがテンションマックスのピトフーイの宣言だった。
彼女の立てた作戦を何度も頭の中で繰り返していたキリトは首を横に振った。
「そういうわけにはいかない。《死銃》がどれだけの力を持っているのかわからないし、そもそも《スクワッド・ジャム》に出てきてるって事は、俺達と同じようにチームを組んでるって事だ。どんな手を使って殺そうとしてくるかわからないんだぞ」
「……」
シノンは何も言わない。気に食わないという顔をしている。
シノンはこの作戦に乗り気ではないようだ。危険であろうが何であろうが、《死銃》を自分の手で討つという事に
それはここに来るまでの彼女の様子、前日の作戦会議後の会話でわかっている事だった。彼女は自分の力だけで《死銃》を討とうと決めてしまっている。キリトはそれを掴めたときからずっと説得してきたが、効き目はなかった。
《シノン、間違っても一人で戦おうとするでないぞ。《死銃》は皆で倒すと決めたのだ。《死銃》を倒したいという気持ちがあるのであれば、我らと一緒に戦え。これまでと同じように》
頭の中に《声》が響く。初老の女性の《声》。それはキリトのビークルオートマタとなっているリランからのものだった。
本来は《BoB》や《スクワッド・ジャム》では集中攻撃を受けやすい、対ビークルオートマタ弾薬が全プレイヤーに支給されるという事もあってビークルオートマタを使うのは割に合わないのだが、今回キリトはそれを無視してリランを連れてきた。
今回相手にする事になるのは《死銃》というサイバーテロリスト。どんな手を隠し持っているかわからないような敵だ。そんなものを相手にする事になるのだから、わざわざビークルオートマタという大火力を保留してくる意味はない。
それに向こうもビークルオートマタを持っていないという保証もない。出会って早々ビークルオートマタに搭乗していて、その馬鹿げた火力でこっちを
だからこそキリトはリランの武装カスタマイズもしっかり行ってきた。《GAU-8 アヴェンジャー》に《荷電粒子ガトリング砲》をリランの両肩上部に一つずつ、《ヘルファイアミサイルポッド》を後ろ脚上部に二つ。そして飛行ユニット変形機構が封印される代わりに超々大火力の一撃を放つ事のできる《ウルティメイト・プラズマカノン》なる兵器を腹部に搭載してきた。
この《ウルティメイト・プラズマカノン》についてはまだ使った事がないので、どれくらいの威力があるのかは未知数だ。だが、スペック説明の部分で既にあらゆる
リランのバッテリーを全て消費したうえで放たれるものであるため、使った後はリランがバッテリー切れになって動けなくなるというデメリットもあるが、そのためにキリトはわざわざ予備バッテリーを購入して持ってきている。これによって多額の《WC》が消し飛ぶ羽目になったが、そんな事はどうだっていい。《死銃》がいなくなった後でまた稼げばいいだけだ。
これらの重火器を使い、《死銃》を討ち倒す。そしてシノンを守り切る。それがまだ誰にも伝えていないキリトだけの作戦の内容だった。だが、そのシノンが今、やたら前に出ようとしていると判断できる状況だから笑えない。
「……必ず殺す……お前を……」
リランの《声》を無視したシノンは前に出て呟いた。その呟きの内容にキリトは思わず目を見開く。
いつものシノンならば、こんな方法を取る事など考えないし、一つの敵にここまで執着する事もない。
自分は後方からの長距離攻撃に徹し、前方はキリト達に任せるという連携プレーを取ってくれるのが彼女だったが、今、彼女は《死銃》を討つためにほぼ単独行動をするつもりでさえいるのだろう。
だからこそ、この《スクワッド・ジャム》には不安しかないとキリトは言えた。
《キリト》
もう一度頭の中にリランの《声》が届いてきた。反応して振り返った後にシノンの方にも向き直ったが、彼女は荒野の向こうを見つめたまま動かずにいた。リランの《声》は届いていないらしい。チャンネルが自分に絞られているのだ。
「なんだ、リラン」
キリトはリランに近付き、小声で答えた。間もなく返答が頭に届けられてくる。
《シノンの精神状態だが……感情の波がかなり不安定化していて、良くない状態だ。心理パラメーターの動きも乱れかかっている》
だろうな――キリトはそう思った。先程から見ていてわかる通り、シノンは《死銃》を討つ事に対して非情に強い執着心を見せつけている。そしてそのための戦法も
明らかに普段のシノンが持っているような冷静さは欠いているし、《死銃》討伐に焦ってしまっているのがわかる。リランの報告にあった感情の波、心理パラメーターの動きの不安定化は、その焦りから来ているものなのであろう。
「やっぱり原因は《死銃》か」
《間違いないだろう。シノンは《死銃》を倒すという目的のために周囲が見えなくなっている。我の事も、お前の事もほとんど見えていないに等しいだろう》
「……」
《今のシノンにとって《死銃》を倒すという目的は、我とお前でいう使命のようなものになっているのだろう。だが、そんな事はない。あいつが《死銃》を討たなければならないという使命を抱く必要などないし、誰もあいつに《死銃》を討てと強制していない。《死銃》は我ら全員で討つのだ。あいつ一人が討たねばならないわけではないぞ》
「あぁ、その通りだ」
シノンに《死銃》を討てと強要した者はいない。彼女が焦る必要は何もないのだ。なのにそう決めつけてしまっているのがシノンである。そんなものを抱いてしまっている彼女が内心どれだけ苦しんでいるかは、もう言われなくてもわかる。いつまでもシノンをこんな状態にしておくわけにはいかない。
こちらも焦ってはならないが、なるべく早い段階で《死銃》討伐を成さなければ。シノンのためにも、今後命を狙われるかもしれないプレイヤー達を出さないためにも、こんなものを抱えている《GGO》という環境のためにも。《死銃》討伐はあらゆる者の利害と一致するようだ。キリトは改めてその事に気が付いていた。
その直後にキリトはとある事を思い付き、リランに小声で尋ねる。
「リラン、シノンの状態が本当に悪くなった時は、いつもみたいに頼めるか」
《できない事もない。だが戦闘中に咄嗟にやれというのは無理だ。どこかに身を隠し、我がこの《リンドガルム》から降りる必要がある》
「やっぱりその身体のまま力を使う事は無理か」
《無理だ。だからキリト、もし《死銃》との戦いの最中にシノンの状態が悪くなった時はお前が抱えて我に乗り、逃げる必要もあるかもしれぬ。だから――》
その時は自分が全てだ。リランに皆まで言われないでもわかった。いざとなった時にシノンを守らなければならないのは、守れるのは結局自分だけなのだ。それはいつもとあまり変わりないが、今回はその深刻度が違うだろう。いつも以上に気を引き締めて当たらなければならない。キリトは自分に言い聞かせていた。
「あぁ、絶対にシノンに手を出させない」
《そうだ。我も精一杯やる。これまでと同じように、我の力を最大限に使え――》
リランの《声》が最後付近に差し掛かったところで、背後から大きな発砲音が聞こえた。少し驚きながら咄嗟に振り返ってみたところ、シノンが《ヘカートⅡ》を構えて、銃口から煙を出していた。間もなくして自分達の近くに弾丸が数発飛んでくる。
――狙われている。早速敵のチームに発見されてしまったようだ。攻撃してきたという事、リランが何も検知していないという事は、ピトフーイ達でもアルトリウス達でもサチ達でもない、完全な敵対チームであるという事だ。
「敵チーム発見!」
「Go、Go、Go!!」
キリトが光剣と拳銃を構えてすぐ、聞いた事のない男達の声がした。発生源に向き直ると、アサルトライフルを構えた四人がこちらに走ってきているのが確認できた。
全員がコンバットヘルメットに
いや、違う。軍隊の真似をしているだけ割には指示の出し方、号令、統率の取れ方が非常に本格的であるというのがわかる雰囲気が出ている。まるで陸上自衛隊やアメリカ陸軍、もしくはその他の国の軍に所属する兵士達そのものだ。
そう言えばミリオタのシュピーゲルによると、この《GGO》には現役軍人が訓練の一環として参加している場合もあるらしく、その中には陸上自衛隊や海上自衛隊の隊員達も含まれているという。可能性こそ低めではあるものの、フィールド探索中やクエスト遂行中、《スクワッド・ジャム》でも出会うかもしれないという話を聞いていた。
「そんな連中に出くわしたところで勝ち目はあるのか」。キリトはその時そう尋ねた。それに対してシュピーゲルは「軍にいる人達は号令の出し方や雰囲気を見ればわかるから、それを見て判断して逃げて」とアドバイスしてきた。その時聞いた軍人達の雰囲気と、向かってきている敵チームの雰囲気はとても似ている気がしてならない。
あれらは軍人だろうか。だとすれば最悪だ。よりによって《スクワッド・ジャム》で、戦闘のプロ達と出くわしてしまうなんて。これも《スクワッド・ジャム》に参加しているプレイヤーの名前は確認できず、簡易チーム名しかわからないという仕様の
「ビークルオートマタ確認!」
「各自、対ビークルオートマタ弾を装填! 重火器に気を付けろ!」
「了解!」
軍人と思わしきチームの者達から的確な報告とそれへの応対が聞こえてくる。間もなくスムーズな動きでアサルトライフルの
対ビークルオートマタ弾は《スクワッド・ジャム》や《BoB》などの大会で配布される、ビークルオートマタの装甲を無視して、高いダメージを与える事のできる特殊弾薬である。
リランはその火力に目が行きがちだが、装甲も分厚い方に入っているので、ちょっとやさっとの被弾程度ではダメージをあまり受けないのだが、対ビークルオートマタ弾を喰らった時にはあっさりと《HPバー》の中身を削られてしまう。それを的確な射撃で連続で喰らおうものならば
あいつらもそれを狙っているのだろう。持っていないプレイヤーからすれば、ビークルオートマタ程
「奴ら、リランが狙いか」
《
敵部隊から弾丸が飛んでくるなり、リランは咄嗟に脚のバーニアを吹かす事で高速サイドスラストをして弾丸の射線から外れた。弾丸はキリトをも狙って飛んで来ていたが、キリトは光剣を振り回して弾く事で防御と回避をいっぺんにやった。
まさかそんな防ぎ方をされるとは思っていなかったのだろう、敵部隊の方から驚きと焦りの声と反応が確認できた。自衛隊なのかアメリカ陸軍なのか、それとも他の国の軍隊の人間なのか知らないが、こんなやり方で弾丸を防御されたりする光景を実際の戦場や訓練環境で見る事はないため、驚くしかなかったようだ。もしこんな事ができる人間が本物の戦場にいれば、それは化け物と呼ぶほかない。
しかしそんな化け物を見ても敵部隊は
実に厄介な敵を目の前にしてしまっているが、こちらも怯むわけにはいかない。誰よりも強くそう思っていたであろうシノンが、いつの間にやら敵部隊の死角に入り込み、《ヘカートⅡ》による射撃をお見舞いしていた。大口径ライフル弾の突進を受けた部隊員の一人は遥か後方にすっ飛んでいき、地面を転がった時点で《DEAD》と書かれたウインドウを頭上に表示させる。早速一人撃沈させる事ができた。
続けてリランが《荷電粒子ガトリング砲》を起動させて、超高速の光弾を、これまた驚異的な速度で連射した。超連射ができるという特性上弾道がぶれやすいという特徴のために光弾は――
更にその部隊員の周囲の地面がばらけた光弾の着弾によって爆発し、
チャンスが来た。キリトは足に力を込めてジャンプし、敵部隊に接近。着地と同刻に足を更に力を入れて加速、疾走し、敵部隊を包む砂塵の中へ飛び込んだ。敵部隊員もそうなっているのだろう、あらゆるものが砂色に染まって見えなくなったが、その中で敵部隊員の気配を感じ取る事はできた。
それを頼りにして走ると、敵部隊員のすぐ目の前にまで出れた。人数は二人。どちらも急に現れたキリトに驚いていた。しかし流石は兵士というべきか、即座に反撃に転じてきた。一人はアサルトライフルの銃口による突き攻撃、もう一人は懐に忍ばせていたであろうコンバットナイフを取り出したうえでの斬りかかり攻撃を仕掛けてくる。
「はあッ!!」
だが、その攻撃が成功するよりも前にキリトは一人を一閃し、もう一人に拳銃による銃撃を浴びせていた。一人は光剣に胴体から横一文字に真っ二つにされ、もう一人は頭部に弾丸を受けて即座に倒れた。
この一連の攻撃により、四人一組であったのであろう軍人部隊は全滅した。
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「おー! 来てる来てる! やっぱり来てるよー!」
「な? 俺の言った通りだろ。あいつらは来る。なんて言ったって正義の味方だからな」
「……正確には正義の味方気取り……」
ミケルセンはもう一度「ふふん」と鼻で笑った。その言葉が飛んできたのはミケルセンの右隣だったが、一旦そこに振り向かず、ミケルセンは続けようとした。だが、ミケルセンをほぼ
「その、通りだ。あいつらは、殺人者だ。俺達と、何も変わらない、殺人者だ。あいつらのせいで、仲間が、全員死んだ。あいつらは、正義の味方じゃない。偽善者だ。ミケルセンの言う、悪しき愚か者達だ」
「そう言うなって。確かに正義の味方を気取っているような連中だが、俺にとっても必要な奴らなんだ」
「それは、知っている。気に食わないが、俺達の目標を、達成するための、鍵……」
「そうだよ。だから間違ってもあいつらを一人も殺すんじゃないぞ。あいつら以外のプレイヤーだったらどれだけ殺そうとも構わないが」
「……殺す奴らはもう決めてる……」
もう一度右隣から声がする。少し幼いように感じられる少女の声だった。そこに振り返ったのは左隣の骸骨仮面の青年だった。
「これまで通り、俺が指示を出して、お前が殺す。それで、いいな。準備、できてるな」
「……ええ……準備はできてる……いつでも良い……」
「頼もしい、な。お前の力を、今回も、貸してくれ」
骸骨仮面の青年に少女の声は「任せて……」と答えた。間もなくして黒髑髏の青年がミケルセンの前に躍り出てくる。
「ミケルセン、もう行っていいよね!? 俺、もう戦いたくて仕方ないよ!」
ミケルセンは黒髑髏仮面の青年の向こうに広がる大地を見た。かつての人間達の愚行の極みによって滅びてしまった世界であり、現実世界が向かえるかもしれない可能性の一つの光景。
現実世界をこのようにしてはならない。そのために、愚行を働く人間達は残らず殺し尽くすのだ。現実世界を清めるのは我々だ――周りにいる彼らに、ミケルセンは自らが尊ぶ思想を教えてきた。それこそが使命であると伝えてきた。今回もまたその一環であり、重要なイベントだ。
「よし……出発するとしようか。俺達の欲する鍵を手に入れるんだ。行くぞ《ステルベン》、《ギフト》、《ヘカテー》」
ミケルセンが言うと、黒髑髏の青年《ギフト》が大喜びし、骸骨仮面の青年《ステルベン》が戦場方面へ振り返り、それまでミケルセンの右隣で座っていた、小さな身体をゴシック調の黒いコートで包み、
「……
直後にヘカテーがそう言ったのを、ミケルセンは聞き逃さなかった。
――登場用語解説――
・
砂漠や荒地での戦闘を想定し、保護色となる色で構成された迷彩服。その色合いがチョコチップクッキーに似ているので、チョコチップパターンと呼ばれる。
・対ビークルオートマタ弾
その名の通りビークルオートマタに大きなダメージを与える事のできる弾丸。
ビークルオートマタは分厚い装甲を纏っている事もあり、その時はアサルトライフルなどで使える弾薬程度では全くダメージを与えられないが、これがあればその仕様を無視して大ダメージを与える事ができる。大会にて配布され、これによってビークルオートマタの所有者と非所有者の溝を埋めるという仕組み。
これで撃たれると三十発程度でリランも沈む。