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「ハンニバル!?」
「そんな気がしてたぜ。あんな事するような奴の根元に、あいつがいないわけがねえ!」
アスナの驚く声の後にクラインの言葉が続いた。今ユイの開いているウインドウからは、確かにハンニバルという単語が、そして彼の者の声が聞こえてきていた。
そのウインドウが映しているのは、たった今まで進行していた《スクワッド・ジャム》の中継映像だ。それは《GGO》の運営が流している中継動画と何も変わりがないが、ここにあるのはリランとユピテルの聴覚とリンクしているために、彼女達の聞いている音も拾ってくるようになっていた。
普段はそういう事を絶対にしないが、今回ばかりは《死銃》というサイバーテロリストを相手にする戦いとなるから、何が起きるかわからないし、その《死銃》が自分達に関係のある存在である可能性も否定できない。念のため、自分達の聴覚情報も繋げるから、お前達で重要だと判断できる音や声が聞こえてきたら、それを皆に聞かせろ――リランとユピテルは妹のユイとストレアにそう進言し、自身らの聴覚情報の共有をして戦場へ向かっていったと、二人は話した。
進言を受けた二人はそのとおりに、《スクワッド・ジャム》で戦いを繰り広げる姉と兄の聴覚情報をモニタリングし続け、「ひとまずは重要なところに差し掛かったら皆さんに共有します」と言って、音を聞き取る姿勢に入っていた。
話を聞いた「全部が重要な音じゃないのか」とバザルト・ジョーが抗議に近しい声を上げていたが、クラインらが「ユイちゃん達は嘘を言わないから信じろ」と言って説得した。アスナはそんな会話を聞きながら、中継映像を見つつ、ちょくちょくユイとストレアの様子を見るようにもしていた。
そんなある時、ユイとストレアはびっくりしたような反応をして、この場にいる仲間全員に音の共有を開始した。聞こえてきた音は、アスナ達全員を十分に驚かせられる内容だった。
「そんな、あの《
「しかも《笑う棺桶》の連中、ハンニバルに完全に従ってるぞ。前から《笑う棺桶》はハンニバルの手下みたいなものだったと聞いていたが、あいつらはその事を一切口にしなかった。だからハンニバルに従っているわけじゃないと思っていたんだが……そうじゃなかったな」
シリカが怖がっているような様子で言い、更にディアベルが険しい表情を見せる。《SAO》を生きていた自分達にとってはこれ以上ないくらいの脅威となっていた《笑う棺桶》。それがハンニバルによって産み出されたものだったという話は知っていたが、《笑う棺桶》の者達がハンニバルを知り、従っているかどうかは不明瞭だった。
今回で結論が出た。ハンニバルに《笑う棺桶》は従っていた。それもかなりの信頼を寄せているくらいに。ある意味では大発見であるが、最悪の事実が露見した瞬間でもあった。
「それだけじゃねえ。ハンニバルは《GGO》の運営と関わりがあっただと。それじゃあこのゲームはハンニバルによって作られて、運営されていたようなものじゃないか」
ディアベル同様険しい表情のエギルの呟きに他の皆が頷いている。ユイとストレアがリランとユピテルを通じて聞いている音情報の中にあったハンニバルからの証言。その中に彼の者が《GGO》運営であるプレイヤーと関わりがあったという話があった。つまりそれは全てではなくとも、ハンニバルの思惑がこの《GGO》には反映されていたという事だ。
思えば確かに、《GGO》の仕様やイベントにはこれまでのゲームからは考えられないような独特な部分があった。リエーブルによるSBCグロッケン侵攻やエネミーアファシス、その前身である
そしてそのイベントの中心にいたリエーブルも、《GGO》の開発であるザスカーの何者かがイリスの
そのハンニバルによる混沌は続いている。たった今、《GGO》運営から「ゲームに大きな問題が発生しているため、《スクワッド・ジャム》を中止します。問題解決のため、今から一時間後に緊急メンテナンスを開始します。プレイヤーの皆様は一時間後に強制ログアウトとなります」という発表があった。なのにキリト達、ハンニバル達は平然と戦い続けており、戦いをやめる気配がない。
運営によって中断されているはずの《スクワッド・ジャム》は継続しており、強制終了もしないでいる。運営でさえも、この《スクワッド・ジャム》に手を出す事ができない状態になっているのだろう。それはこの《スクワッド・ジャム》が、《GGO》自体が運営の手を離れ、ハンニバルに掴まれている状態になっているという事を意味していた。何もかもがあのハンニバルの思うがままになっている。
「今もまさにその状態よ。だって運営から中止の連絡来てるのに、《スクワッド・ジャム》が中止になってない。キリト達がまだ戦わされてるわ」
「リエーブルの時と同じですよ。運営じゃどうにもならなくなってるんです。おにいちゃん達、そんなのに巻き込まれてるなんて……!」
リズベットが述べた後にリーファが心配そうに言う。どちらも目線はキリト達の戦闘の様子を中継しているウインドウの方に向けられていた。恐らくこの場にいる全員が同じ気持ちでいるだろう。キリト達が心配でならないし、助けに行ってやりたい。
《スクワッド・ジャム》は途中参加不可の大会であるが、それは運営に制御されて守られていた場合であり、今はそうではない。運営による制御の影響を受けないが、同時に守られもしない。何が起きたとしても不思議ではないという事だ。相手がハンニバルとその手下達ならば尚更、悲劇や惨劇が起きたとしてもおかしくはない。
そんな厄災であるハンニバルとその手下からキリト達を守り、ともに討ち倒したい。誰もがそうしたくて仕方がないというのがアスナにはわかった。ここにいるほぼ全員が、これまで再三ハンニバルとその影響を受けた者達に苦しめられてきているのだから。
「もう駄目だ! ボクは行く! キリト達のところに行って一緒に戦うッ!!」
「ユウキ!?」
そう言ったのがユウキだった。急な大声で近くにいるカイムを驚かせた彼女は、ユイとストレアの操作によって表示されているウインドウ目掛けて走り出した。次の瞬間に、狙いをウインドウの中心部に定めて思い切りジャンプする。
まさかそのままキリト達のいる戦場へ飛んでいこうというのか。普通に考えればそんな事はできないが、絶剣と呼ばれるだけの速度を出せるユウキならば、あるいはウインドウに飛び込むだけでそこに飛んでいけるのではないか――アスナは一瞬だけそんな期待を寄せた。
しかし現実はそうなってはくれなかった。戦場までワープするかに思われたユウキはウインドウをただすり抜け、大きな音を立てて床に着地した。やはり駄目だった。もしかしたらいけるのではないかと期待したが、そんな事をこのゲームは許してくれなかった。皆が思わず唖然とする中、カイムがユウキに近寄る。
「ユウキ、何やってるの。そんな事したってキリトのところになんて行けないよ」
ユウキはがっと顔を上げてカイムに詰め寄った。そのまま噛み付いてしまいそうなくらいの様子になっていた。
「わかってるよそんな事! でも、キリト達をこのまま見てるなんてできないよ! このままにしたらきっと、キリト達はすごくひどい目に遭わされて、殺される。ハンニバルにキリト達は殺されちゃうよ! カイムはそれでいいわけ!?」
カイムは即座に首を横に振った。目の前のユウキ同様に大きな声を出して応じる。
「そんなわけないだろ! ぼくだってキリト達の事、キリトの事を助けたいよ。だけど、今更どうすればいい。どうすればぼく達はキリト達のところにいけるんだ。あんな運営さえも手を出せないところに、どうやったらいけるっていうんだ。そんなのわかるわけないじゃないか!」
「わからないならわからないなりに考えてよ! いつも作戦出してる時みたいに考えて思い付いてよ!!」
「考えても思い付かないんだってば!!」
いつの間にかユウキとカイムは喧嘩を始めていた。
互いに信じ合い、親愛を向け合っている二人の中には、本当の兄妹が抱く愛情が生まれているというのをアスナは前から知っていた。そんな関係なので、時に二人は
「二人とも、ちょっと――」
「繋がりました! マスター達のところに行けます!!」
アスナの声と同時に発された声があった。発生源はアルトリウスのアファシスであり、戦場に向かった主を見ているしかないでいたレイアだった。彼女は今、ようやく探していたものを見つけ出したかのような達成感を抱きつつも、次の行動を取ろうとしているような表情を顔に浮かべていた。隣にはツェリスカのアファシスであるデイジーの姿もあり、彼女もまたレイアと同じような顔をしている。
「レイちゃん、どうしたの」
フィリアが尋ねると、レイアはデイジーと共に顔をこちらへ向けてきた。
「今、デイジーと力を合わせて、何とかマスター達のところに皆さんを転送させられないか、方法を探していたのです」
「ハンニバルの手によるものなのかはわかりません。しかし今、《GGO》運営による手出しが無効化されているおかげで、わたし達でも戦場への任意の転送などができるようになっているようです。前例がないので混乱気味になってはいますが……」
「それで、転送地点をキリトの許にいるリランにしてみようとしたところ、上手くいったのです。リランを一時的に転送地点として、皆さんを飛ばす事ができるようになりました」
皆の方から驚く声が上がった。まさかレイアとデイジーにそのような事ができるとはだれも予想できていなかったからであろう。実際アスナもその一人だった。
リランとユイ、もしくはユピテルとストレアなど、《電脳生命体》同士であれば、たがいを転送地点にするなどという芸当もできるかもしれないが、レイアとデイジーもできるとは思えなかった。彼女達の言うように今、《GGO》運営による手が止まっているのが原因なのだろうか。その疑問を口にしたのは天才美少女博士でもあるセブンだった。
「レイちゃん、そんな事できるの? 今レイちゃん達が言った事ができるのは、てっきりイリス先生の子供達くらいだって思ってたんだけど……そんな隠し機能があったなんて」
その問いかけにレイアがびっくりしたような反応を見せる。
「えっ、ええっと、隠し機能というか、ええっと……」
「あぁ~……やっぱり種明かしします。わたしのおかげですよ、皆さん」
レイアのしどろもどろの直後に出入口のドアが開き、聞き覚えこそあるものの最近は聞いた事のなかった声がしてきた。皆揃って向き直ったところ、そこにいたのは肌に貼り付く水色のスーツを身に纏い、銀色の髪を特殊なツインテールの形にしている、瞳にキラキラマークのある、浅黒い肌をした特徴的な容姿の少女。
リエーブルだった。
「リエーブルちゃん!?」
アスナの呼びかけにリエーブルは「はーい」と応じた。一時は虚無に呑み込まれかけていたかのような彼女には、ある程度の生気と言えるものが戻って来ているようだった。かつては相手を見下しつつ敵意をむき出しにしているような雰囲気も漂わせていたが、それもなくなっている。まるで本来あるべき姿に戻っているかのようだった。そんな彼女の登場に驚く皆のうち、いち早く応じたのはレイアだった。
「あれっ、リエーブル、どうしてここに出てきたんですか?」
続けてデイジーもリエーブルに声掛けする。疑問を胸にしているような顔をしていた。
「あなたは隠れているというお話ではありませんでしたか。わたし達は少なくともあなたにそう言われていたからこそ、ここまであなたの話題を出さないでいたのですが……」
え、リエーブルは隠れている予定だった? そしてレイアとデイジーはリエーブルから話を受けて、従っていた? アスナは頭の中に次々と疑問符を浮かび上がらせていた。当然皆もそんな感じになっている。するとリエーブルは部屋に集まる皆を見回し、溜息を吐いた。
「そうする予定だったのですが、あなた達だけの功績にするっていうのは何か違うと思ったんですよね。わたしのやっている事だってわからないと、贖罪にならないと思いまして。……最初からそうするべきだった、なんで最初にそういうふうに判断できなかったのかと今更思うのは、やっぱりわたしがアファシスじゃないからなんですかねぇ」
リエーブルは途中から呆れたような様子で言っていた。自身の最初に取るべき行動を変えるべきだったと思っているようだ。だが、そう言われてもアスナにはリエーブル達の事情が全く掴めなかった。それを察してくれたのか、リエーブルは話し始めた。
「わたしはアファシスじゃありませんでした。だから、本来あのような行動をとるべきではなかったんです。なのにわたしはあんな事を仕出かしてしまった。それによって多くの人々に迷惑をかけ、その日常を脅かしもした。なので、罪滅ぼしをしないといけないと思ったんですよ。償いになりそうな事をしようと思って、色々考えてたところだったんです。そしたら、あれですよ」
リエーブルは戦場を映し出すウインドウを指差した。相変わらずキリト達が激しい戦闘を《死銃》の者達と繰り広げている。よく見ればキリトとシノンを乗せているリランの相手は黒い
「プレイヤーを実際に殺す力を持った集団が現れて、現に結構な数の人が殺されている。そしてそいつらにあなたがたは挑むっていう話が出てきたじゃないですか。これに協力する以外に、わたしは取るべき行動を思い付かなかったんです」
アスナは思わず首を傾げた。リエーブルはその話を誰から聞いたのだろうか。その疑問に即座に答えてきたのがレイアだった。
「わたしがリエーブルに教えました。マスター達が《死銃》と戦おうとしてる事を、今日の作戦の事を、許された範囲でお話したんです」
「そういう事です。それで、あなたがたが作戦を開始した辺りから、この部屋の外で話を盗み聞きしつつ、わたしにできそうな事を色々シミュレートしてました。わたしはこれでも《GGO》で実装されて、一定の管理権限みたいなものも付与されていたわけですから、干渉できる事も結構あったりするんです。特定のものを転送地点にして、プレイヤー達を転送したりとかね。それであなたがたを助けたいと思ったわけですが……その事を面と向かって言うのはちょっと恥ずかしかったというか。だから隠れさせていただいていたわけですよ」
リエーブルは自身の胸に手を当てる。中にある何かを感じ取ろうとしているようだ。
「そして今、わたしはあるものを感じ取れています。
アスナはその言葉ではっとした。そうだ、リエーブルはこの場にいないイリスの娘の一人であり、他の子供達と同種の存在。つまりそれは、彼女が――。
「皆さん、銃火器の準備はよろしいですか。この信号の発生地点であるリランさんとユピテルさん――わたしの姉と兄のところに皆さんを転送しますよ、今すぐにね!」
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《死銃》との戦いは続いていた。かつて《笑う棺桶》を名乗り、その幹部を務めていた《赤目のザザ》――現在はステルベンと名乗っているそいつが、今のキリトの相手になっていた。そして今、ステルベンには頼れる相棒となっている《使い魔》も付随しており、その背中が彼の者の居場所のうちの一つとなっていた。
「カメレオン型なんてのもいたんだな、このゲーム。もしかして機械で再現できるものならなんでもありなのか」
「でしょうね。最近確認された奴だと、大きなコブラ型戦機、アフリカゾウ型戦機、サイ型戦機、ティラノサウルス型戦機とかいるそうよ」
キリトの呟きに、位置関係上背後にいるシノンが答えた。この《GGO》で実に沢山の戦機を相手にしてきたものだが、今相手にしている戦機はこれまで見た事のない種類だった。
全体的な風貌はカメレオンだ。しかしその身体は黒い人工筋肉と黒緑の装甲で構成されていて、ぎょろりとした赤い光を放つ目、背中の右側の大型狙撃砲、左側の機関銃が搭載されている容姿が、自然のものでは決してない事を教えている。これまで相手にしてきた戦機達と同じである、大自然由来のものを機械技術で再現した
そしてその能力は何と言っても――。
「お前達が、俺を捉える事は、困難だ。そうだろう?」
背中中央部のステルベンがそう言うと、一瞬にしてカメレオン型戦機が風景に溶けてなくなった。
あのカメレオン型戦機を初めて発見した時、あれは何もないところから突然現れてきて、混乱するプレイヤーを狩る瞬間を見せつけてきたうえ、その後の戦闘の際も突然姿を消しては現れるを繰り返していた。それは瞬間移動ではなく、超高性能光学迷彩によるものだ。
現実におけるカメレオンには、自身の体色を大きく変化させ、周囲の色に――可能な限り――溶け込み、天敵や獲物の目を
あぁいうカメレオンをモチーフにしたエネミーがゲームや映像作品に登場してくると、大抵こういうステルス能力を持っているのがある種のお約束みたいなものだが、この《GGO》でもそれは変わらないらしい。
そんなよくあるお約束の能力を持ったカメレオン型の戦機が、よりによってあのステルベン/ザザのビークルオートマタ、
それに、腹が立つ事に、《死銃》という死神となっているステルベンにカメレオンの組み合わせというのは、かなり合っている。アフリカの先住民族であるズールー族の神話では、カメレオンは
『「お前達人間は永遠に生きる事ができる」という言葉を人々に告げよ』
という神の命令をすぐに
『「お前達には必ず死が来る。逃れる事は絶対にできない」という言葉を人々に告げよ』
という命令を先に敢行してしまい、結果人々に死が訪れるようになってしまったとされた。これによりカメレオンは《人間から不死を遠ざけ、死を与えるもの》とされるようになったという。
ステルベンはヘカテーの力を使ってはいるものの、結果的に多くのプレイヤー達を死に追いやっている張本人だ。恐らく本人も死神のような気分になっているのだろう。そんなステルベンが背後に冥界の女神《ヘカテー》の名を冠するモノを載せ、《死を与えるもの》であるカメレオンに
アレは死、死神、死の運命、冥府への
キリトは苦笑いしたい気分だったが、どこからともなく銃弾がリランを目掛けて飛んで来る現状でそんな余裕はなかった。そのうちの三発が自分達のすぐ近くを襲った。
それはリランの左肩に装備されている《荷電粒子ガトリング砲》に突き刺さる。未来の兵器製造技術で作られた銃身から火花が散ってスパークが起き、ブォオンという妙な音まで出た。入ってはいけないところに衝撃が入ったような音だった。
今はそんな余裕はないが、リランのステータスを確認すれば《荷電粒子ガトリング砲》の耐久値が減っているのが見える事だろう。増してや今の弾丸はビークルオートマタ専用の機関銃のそれであり、プレイヤーが普通は出す事のできない火力を出せる代物。がっつり削られているに違いない。
《荷電粒子ガトリング砲》は弾薬費もそうだけれど、修理費だって恐ろしく高いんだぞ。そんなに攻撃してくるんじゃない――普段ならばそんな軽口の一つくらい言えたかもしれないが、今はそうではなかった。何故ならば相手のうちの一人であるヘカテーは《もう一人のシノン》であり、この場で確実に倒さなければならない敵である。
シノンとしても、自分としてもその存在を許す事のできない、シノンの姿と記憶を持って好き勝手やっている
キリトは改めて
キリトは咄嗟にリランに声を掛けようとした。リランのレーダーの出力を上げれば、
「リラン、レーダーを――」
《ッ!? キリト、シノン、お前達のすぐ後ろだ!》
リランの《声》が頭に響き、キリトは思わず「え?」と言った。直後、金属音を混ぜた轟音がしたかと思えば、リランの身体が後部を中心にして上下に強く揺れた。速度が一気に落ちて停止する。まるで巨大な何かに
「あぐッ」
悲鳴が聞こえたその次の瞬間に、キリトの目は黒い影を捉えた。カメレオン型戦機だ。鋼鉄のカメレオンが上半身全部を使ってリランの後ろ脚を捕まえていた。そしてその背中に乗るステルベンから長い鉄の棒のようなものが伸び、その先端がシノンの胸元を貫いていた。
「シノンッ!!!」