俺はリランを連れて、聖竜連合やその他のプレイヤー達とレイドを組み、50層のボス部屋へと向かっていた。圏内から圏外へ出たところで、リランは元のドラゴンの姿に戻り、周りのプレイヤー達は腰を抜かすように驚いた。
ディアベルも同じように驚いたが、その圧倒的な強さを持っているようなリランの見た目に、こんなに強そうなやつが仲間になってくれたのかと歓喜した。リランはそもそも、そこら辺のモンスターならば火炎ブレスで一撃で木端微塵にするから、強いんだけど。
そういえば、リランの名前は《Rerun_The_SwordDragon》と言って、まるでボスモンスターのような名前になっている。見た目も周りのドラゴン達とはかけ離れているから、クォーターポイントのボスモンスターに似てない事もない。まさか、クォーターポイント級のモンスターなのか、リランは。そして俺は、クォーターポイントのボスモンスターを《使い魔》にしたようなものなのだろうか。
《ビーストテイマー》は本当に謎が多い。いや、俺が知る限りでは、アインクラッドで最も謎なシステムだ。正直言えばこのリランだって喋ったり、俺の心を見透かしているような事を言ったり、話をちゃんと聞いてくれたり、それこそまるで人間のようだ。
そんなリランがどすどすと音を立てて歩くさまを見ていると、俺に目を合わせて、《声》を送ってきた。
《どうしたキリト。ボス戦とやらが不安なのか》
「あぁいや、そういうわけじゃないんだ。ただ、今回はお前を連れての初のボス戦だし、ボスもとんでもなく強いかもしれないんだ。だからお前を危険に晒すような事になるかもって」
リランは俺に顔を近付けて、口角を上げた。
《不安になるなキリト。我の強さをお前だって見ただろう。あれだけの力ならばそうそうやられまい。この層の攻略とやらもすんなりといけるはずだ。だが、心配してくれるのは素直に嬉しいぞ》
「確かにお前は強いけれど……もしボスがそれ以上に強かったらって思ってしまうんだよ」
リランの顔から笑みが消えて、真顔に変わる。
《さては、我の力を
「そりゃわかるよ。お前は強い。だけどお前が死んでしまうんじゃないかって、不安になるんだよ」
リランは横顔を俺に近付けた。
《キリト。お前は、いや、我らは立ち止まってはならぬ。この鉄の城を終わらせるために進むしかないのだ。進むには戦うしかあるまい。その戦いでもし、我が死ぬのが怖いならば……》
リランはこつん、と俺の顔に頬を擦り付けた。リランの毛で顔が暖かくなる。
《我をその剣で守れ。さすれば、我はこの爪と牙、そして炎でお前を守ろう。これなら、どうだ》
そう言われても、胸の中から不安が消える事はなかった。ぐもぐもと立ち込めて、消えない。そんな俺からリランは顔を離して、目を合わせた。
《お前は今まで一人で戦い続けた。そのせいで、自分の力と仲間の力を信じる事が出来ないでいるな》
「俺が一人で戦っていたから……?」
《そうだ。お前はずっと一人だった。感覚的には、お前はまだ一人でいるのだろう。だが勘違いするなキリト。お前にはもう我と仲間がいる。それにあのディアベルという男だって、お前の仲間だぞ。お前はもう一人ではない……いや、一人だと思い込んでいただけだったのだ》
リランは俺に顔を見せた。そこは、柔らかい微笑みが浮かんでいる。
《心配するなキリト。我は強い。過信してもらっては困るが、信じてもらえるくらいの力を持っている事だけは確かであると自負できる。それに、お前の周りにいるのはこの鋼鉄の城の修羅場を何度も潜り抜けてきた猛者達だ。そんなに不安にならなくても大丈夫だ、何とかなる》
思わずリランの名前を呼ぶ。
確かに俺は、今までずっとソロプレイヤーとして戦っていたし、ずっと一人だった。いや、ギルドに入って一人じゃなくなった時もあったけれど、その時は上手く馴染む事が出来なかった。ひょっとしたらだけど、それは、俺一人で戦っているつもりになっていたからなのかもしれない。
そして今この時を迎えるまで、リランやディアベル達が一緒に居るのに、その感覚が薄かった。
《お前はもう一人ではないのだ。そして皆、お前の力を信じている。ディアベルも、その仲間達も、そして我も》
「俺の力を信じてる……?」
《そうだ。皆、お前の力を信じているし、期待している。次のボス戦は、その期待に応える戦いだ。お前は一度過ちを犯して、それを無事に乗り越えた。その点からも、お前は他のプレイヤー達よりも強いはずだ》
俺は、強い……か。確かに俺は、リランという力を得たし、レベルも他の連中と比べて高い部類に入る。様々なモンスターの行動パターンを知っているし、武器スキル熟練度も高いし、剣技も使いまくったおかげで威力が倍増している。
《だから心配するな。立ち止まりそうになったら、我が背中を押してやる。進み続けろ、キリト。そして、過信はするなと言うが、周りの者達、我、そしてお前自身の力を信じるのだ。さすればお前はどんな困難の壁すらも乗り越えるであろう》
リランの穏やかな微笑みを見ながら、その《声》を聴いていると、どんどん心の中の不安が消え去り、落ち着きと静寂、そして今までほとんど抱く事のなかった自身が湧いてくるのを感じた。
そうだ、俺にはもうリランがいるし、ディアベルも、そのギルドの仲間達もいる。彼らは皆、このアインクラッドの修羅場を何度も潜り抜けてきた優秀なプレイヤー、猛者達だ。何でこんな単純な事に気付けなかったんだろう。
「俺はもう、一人じゃないんだな……」
《ようやく気付いたか》
「あぁ。気付く事が出来たみたいだ。ありがとう、リラン。またお前に助けられたな」
リランはフッと笑い、また俺に頬を擦り付けた。
《全く、世話のかかる主人だよお前は》
「はは、悪かったよ、使い魔に世話を焼かれる《ビーストテイマー》で」
その時、リランが何かを思い付いたような顔になって、俺と目を合わせた。
《そういえばキリト。お前は朝になったら元気になっていたが、我が眠った後に何かあったのか》
「あぁ。元気になれる出来事があったよ。だけど、それを話すのは、俺が話したくなったらでいいかな」
リランは目を一瞬見開いて、すぐに微笑んだ。
《構わぬよ。お前が話したくなったその時に、話すがいい。だが、お前が元気になったのが、我は素直に嬉しいぞ》
俺はリランから身体を離すと、少し進んで先頭まで行き、周囲に気を配りつつ、ギルドの仲間を率いながら歩いているディアベルの隣に並んだ。
「ディアベル」
「なんだ?」
「俺とリランでお前達を守る。絶対に、誰一人死なせやしない。だけど、俺達だけじゃ難しいかもしれないから、お前とそのギルドの力、信じさせてくれ」
ディアベルは一瞬目を見開いたけれど、すぐに強気な笑みを顔に浮かべる。
「あぁいいともさ。これでも俺達はレベリングを積んで、物理的も精神的にも強くなっている。次のボス戦で、強くなった俺達の力を披露してやるよ。それになんだろうな」
「なにが」
「今日は何だか調子がいいんだよ。クォーターポイントに行くかもしれないのに、全然怖くないし、相手がどんなに強くても、上手く戦えそうな気がするんだ。これまでないくらいに、自信があるんだよ、今回。これはみんなも同じみたいでさ」
ディアベルが俺の顔に目を向ける。
「きっと、お前がいてくれるおかげだ。ここまでソロで潜り抜けてきたとんでもない猛者であるお前がいてくれているから、みんなも俺も安心して戦えそうなんだ。だから俺達の力を頼ってくれると同時に、お前の力も頼らせてくれ。キリト、少し早いが、お前に言っておくよ」
ディアベルが顔をこちらに向けて拳を握った。
「勝とうぜ!」
俺はそれに答えるように、ディアベルの拳に自分の拳をぶつけた。
「決まってる!」
俺がもう一人じゃない。そう気付いたおかげなのか、俺の足はいつもよりも軽くなり、第50層へ続く道、迷宮区をすらすらと進んだ。
◇◇◇
俺達は迷宮区の最深部、ボス部屋の前に辿り着いた。扉を背にしてディアベルが立ち、その後方に俺とリラン、聖竜連合の皆、その他のプレイヤー達が武器を構えて並んでいる。
「みんな、俺から言える事はただ一つ。勝とうぜ! そして生きて現実へ帰るぞ!」
ディアベルの言葉に「おぉっ!」とみんなで声を上げ、腕を突き上げた。それを確認したディアベルは振り返り、ボスの待ち構える部屋の扉に手を当てた。プレイヤーの接触を感知した重い石扉は大きな音と振動を起こしながら横へ開き、ボス部屋を露出させた。
「全軍、突撃! 目標はヘカトンケイル!!」
ディアベルを筆頭に俺達討伐隊はボス部屋の中へと駆けこんだ。が、すぐさまその足を止めてしまった。入って早々、本当に仏像のような青銅色で、身体のところどころに光を放つ模様を浮かばせ、肩、背中から巨大な腕を生やした、全長10メートルはあるだろう巨像が、俺達の目の前に立ち塞がった。
いきなり出迎えてきた巨像に俺達は思わず慄き、それぞれの武器を構えた。巨像の頭の上にカーソルが出現し、その左上に四本の《HPバー》、その上に赤い文字でヘカトンケイルという名前が表示される。
索敵スキルがクォーターポイントボスの存在を示す、ただならない反応を示している。間違いない、こいつはこれまで戦ってきたどのボスよりも……強いやつだ。
「怯えるな! 陣形を組んで、出方を伺え!」
ディアベルが指示を飛ばし、指示を受けた者達は一斉に広がって巨像を取り囲む。恐らく、あの腕による攻撃が、あいつの主な行動パターンであり、最大の武器なのだろう。それにかなり重そうな見た目をしているから、攻撃力と防御力、共に桁違いだ。……あの重そうな巨腕に押し潰されようものならば、ひとたまりもない。
そう思った直後に、巨像がようやく動き出し、六本の腕を力いっぱい伸ばした後に、振り下ろした。どぉんという重々しい轟音が鳴り響き、近くにいたプレイヤー達が大きく吹っ飛ばされる。驚いて目を向けてみれば、攻撃を受けたプレイヤーの《HPバー》が緑から黄色、そして赤に変色してしまうほどの量へ凄まじい速度で減少しているのが見えた。
――一撃で、瀕死状態だと!?
「まさか、あんなに強いのかよ……!」
やはり、圧倒的な戦闘能力を持つボスが立ち塞がるクォーターポイント。ここはそれであり、あのボスは最強だ。一度にあんなダメージを与えてくるあの巨像を俺達プレイヤーの力で倒すのは骨が折れるどころか、下手すれば即死する危険な戦いであるのは間違いないが、立ち止まるわけにはいかない。上手い事作戦を立てて、何とかするしかない! 絶望している暇など、俺達にはないんだから。
それに、俺達――いや、俺には昨日手に入れた大きな力がある。リランという、大きな力が。いきなり頼る事になって少し不甲斐無いが、初めてあの力を皆に見せてやった時には、皆が大いに喜んで希望を抱いてくれた。この絶望しかなさそうな戦いにも切り札があるという事を、教えてやらなければ。
「リラン、いくぞ! 俺とお前の力であのボスを……」
そう思ってリランを見つめた瞬間に、俺は言葉を失った。つい先程までそこにあった狼のドラゴン、《The_SwordDragon》の姿はそこになく、代わりにそれがデフォルメされたような小動物の姿があった。
圏内にいる時の姿に、リランがなってしまっている。
「り、リラン!?」
《な、何なのだ、これは!》
「ど、どうしたんだよそれ! 何でお前縮んでるんだ!?」
リランが焦った様子を見せる。
《わ、我にもわからぬ。この部屋に入ってあの巨像との戦いが始まった瞬間にこうなったのだ。何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?》
リランも何が起きているのかわからないらしい。
それは俺もだ。リランの力をあの巨像にぶつけるつもりでいたのに、リランが縮んでしまっていては話にならない。リランがあんなじゃ火を吐く事も出来ないだろうし、近付いたら巨像の腕に潰されてしまうのが関の山だ。いきなり、あると思っていた切り札を失っていた!
「ど、どうすりゃいいんだよ!? お前、何かわからないのかよ!?」
《わからぬ! 我も何故こうなったのか、主人のお前なら何かわかるのではないか!?》
「わかんねえよ!」
そう言ったその時に、俺達の耳にディアベルの声が届いた。
「どうしたんだキリト! 何を大喜利みたいなことをしてるんだ!?」
多分ディアベルもリランを使った戦いを考えていたはず。そして今、リランの力が使えなくなったという事はその作戦が総崩れした事を意味する。まずい、ディアベルにこの事を伝えなければ!
「ディアベル、リランが縮んだ! 圏外に出た時の姿から、圏内にいる時の姿に戻ってしまってるんだ!!」
「な、なんだって!?」
「だからすまない、リランを使った作戦は使えない!」
ディアベルは俺と縮んだリランを一目見て驚き、咄嗟に巨像へ目を戻した。巨像は暴れ狂い、立ち向かってくるプレイヤー達を自慢の六本腕で払い除けている。攻撃を受けたプレイヤー達は瞬く間に瀕死状態と言えるまで《HPバー》の残量を減らして、地面に倒れ込む。
ポーション系統のアイテムを使っているのか、《HPバー》が自動で回復していっているが、その速度は明らかに遅い。あれでは回復しきるまで長時間逃げ回る必要があるし、回復しきったところで巨像の攻撃を受ければ元のレッドゾーン送りだ。
更に回復を待ちきれずに焦って攻撃を仕掛ければ反撃にあって、巨像の超高火力の前に《HPバー》を消し飛ばされ、殺されるのがオチだ。これでは、圧倒的不利な消耗戦を強いられて、壊滅させられる。何か、作戦を立てなければ。
「どうするべきだ……どうするべきだ!?」
巨像まで近付いて観察しようにも、図体がかなりでかいから攻撃範囲も広い。更に攻撃力も高いから、下手に近付けば即死の危険が伴う。近付いて観察すらも出来ないなんて、本当にどうすればいいんだ。これじゃあ、みんながやられる。
思っていたその時に、戦場に響き渡る声があった。
「ヘカトンケイルの攻撃は重い。だがあいつ自身は鈍重な上に、攻撃は単純でパリングで防ぐ事が可能だ。更にあいつの腕は破壊可能部位、攻撃を仕掛けて潰す事が出来れば、あの圧倒的な破壊力を持つ攻撃を封印できる!」
驚いて、俺とリランで声の方向に目を向ける。
「ここは
ディアベルの流れるような指示だった。第1層から優秀な指示を見せていたディアベルが、リランを使わない作戦を咄嗟に立てて実行している。
しかも内容を聞く限りでは、あの巨像の動きを素早く見極め、その特性や特徴を解析し、それを理解したうえで練られた作戦だ。作戦通りに巨像の腕に目を向けてみれば、《HPバー》と《Left_arm01》といった名前と番号が出ている――あれは、破壊可能部位だという証拠だ。
ボスには必ずと言っていいほど、破壊可能部位というものが存在しており、それを破壊する事によって長時間、攻撃や動きを封じる事が出来る。あの巨像の強力な攻撃もその類で、あの腕を破壊されればできなくなる行為なのだろう。
まさかあんなに敵の動きや特性を素早く見極める事が出来るなんて、流石は聖竜連合のリーダーと言うべきなのか。
そう思っていた束の間、負傷者が後退すると同時に後衛が前に出て、巨像の迫り来た腕にパリングを仕掛けた。それは六本の腕全てに一斉に起こり、巨像は大きくバランスを崩してその場に跪いた。そこへ後衛のそのまた後衛がスイッチし、巨像の腕にそれぞれの武器が持ちうるソードスキルを発動させ、炸裂させた。
腕を斬られた巨像は悲鳴を上げ、腕の《HPバー》は大きく減少する。……かと思えば下がっていた後衛部隊が攻撃した部隊とスイッチして、更にソードスキルを腕にお見舞い。二度に渡るソードスキルの炸裂を受けて、忌まわしい巨腕はポリゴンの欠片となって爆散する。攻撃と防御を兼ね揃えた武器を失って、巨像は文字通り丸裸になる。
「すげぇ……ディアベルの奴、ここ最近でもっと技術を上げている……!」
その時に、俺は自分の《HPバー》に見覚えのないものを見つけた。
ゲージだ。《HPバー》でも、ソードスキルを発動させるためのエネルギーを可視化させている《SPバー》でもない、第3番目のゲージ。色は青色で、今のところは10分の2ほど溜まっている。SAOを始めた時にはこのようなものがあるとは聞いてもないし、今までなかったのに、今になってこんなものが現れている。これは、なんなんだ。
「今だキリト! 丸裸になった巨像を叩く!」
いきなりディアベルの指示が届いてきて、我に返る。そうだ、今はボス戦だ。こんな事を考えている場合じゃない。ゲージの事は後で考えよう。
剣を構えてリランから離れ、地面を蹴り出してディアベルと並んで走り出す。
武器を失った巨像が出来そうな事と言えば、あの巨体を生かした踏みつけくらいだろう。踏まれればかなりのダメージを負わされそうだが、踏み付けなど攻撃の内に入らない。そしてあの巨像だって、胴体を斬られればただじゃすまないはず!
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
高らかな咆哮を上げて俺とディアベルは突撃する。そして予測通り、迫り来た俺達を踏み潰さんばかりに巨像はその足を上げて、俺達目掛けて踏み込んだ。巨像の大きな足が真上に来て降りてくるのを見計らって俺達は咄嗟に横方へ走り出し、巨像の足を回避。
巨像の足は俺達がつい先程までいた場所を轟音と地震のような振動を立てたが、思い切り地面を踏み込んだせいで、その動きが止まる。その隙を突いて、俺は左方向から、ディアベルは右方向から、巨像の脇腹目掛けてソードスキルを発動させる。
「だああッ!!」
突属性片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》が俺とディアベルから放たれ、光を纏う剣が巨像の脇腹に三回音を立てて食い込む。ごぉぉという巨像の悲鳴と共に、今まで減る気配を見せていなかった巨像の《HPバー》が大幅にその量を減らす。脇腹が弱点か、こいつは!
「後衛部隊、俺達とスイッチだ! こいつの脇腹を叩け!」
咄嗟に声を出してバックステップすると、下がっていた者達が一気に突撃してきて俺達と代わるように巨像の脇腹を陣取り、一斉にソードスキルを発動させた。集まって無数と言えるほどの数の斬撃と突撃、打撃を一気に受けて、巨像の《HPバー》の1本目が消し飛び、2本目も10分の5付近まで減少し、黄色に変色する。やはり弱点を突いたから、効いた!
「これなら……いける!」
そう呟いた直後に、俺は気付いた。先程から気になっていたゲージが、いつの間にかその量を大幅に増やし、もう時期満タンになろうとしていた。先程よりも増えているという事は、今の行動の中にゲージを増やす要因があったという事だけど、俺がやったのは攻撃とソードスキルの発動だ。まさかこのゲージは攻撃またはソードスキルの発動で増えるものなのか?
《気を付けろ、キリト! 巨像の攻撃が来るぞ!》
リランの《声》に我に返ったところで、俺は我に返って、巨像の方へ顔を向けた。いつの間にか巨像の腕が復活し、巨像はまるで4足歩行のような姿勢になって、顔を俺達に向けている……が、その口は大きく開いていて、微弱ながら光っている。
これは、クォーターポイントボス特有の、第二形態だ!
そしてあの開いている口はまさか、と思った瞬間に巨像の口の中は大きく光り出す。
「みんな、離れろ!!」
嫌な予感を感じて皆に声をかけた瞬間に、巨像は光を放った。
強い光に呑み込まれて、俺は思わず目を覆った。
リラン、縮んで戦えない。謎のゲージの正体とは。