キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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07:支配を解き放つ刃 ―化身態との戦い―

 

 

「メディナ!?」

 

「メディナ様!?」

 

 

 キリトとクィネラの声は重なった。ハァシリアンとクィネラの間に、メディナが立ち塞がっている。

 

 そう、遥か昔から《戦力補充モジュール》が宿っていたために、アドミニストレータによる理不尽な実験の被検体をさせられてきたオルティナノス家の、現代の当主であり、ハァシリアンの曾孫(ひまご)

 

 異形の怪物という真の姿を現した曾祖父(そうそふ)を、彼女は見上げていた。

 

 

《メディナ、良い()だから《器》をこちらに渡しなさい。そうすれば母様(かかさま)が君に大いなる幸福を授けてくれます。人界に居る全ての貴族どころか皇帝をも超える権限が君に与えられ、オルティナノス家は人界で最も力のある貴族、最上級貴族になりますよ。オルティナノス家は真の意味で救世主様と呼ばれるようになるんです。だから《器》を引き渡してこちらへおいでなさい。《欠陥品》呼ばわりされなくなるのは君の悲願だったでしょうに》

 

 

 ハァシリアンは相変わらずメディナを誘っていた。内容はつい先程聞いたばかりのものの繰り返しだ。さっきのメディナはそれを思い切り蹴飛ばすように跳ねたが、まだ説得が通じると思っているらしい。

 

 

《くどいぞメディナ先輩の曾祖父(ひいじい)さん! さっきのメディナ先輩の言った事をもう忘れたのか》

 

 

 そう《声》を飛ばしてメディナの隣に並んだのは、茜色の鎧に全身を隙間なく包んだグリフォンナイト。メディナ・オルティナノスの後輩であり、《傍付き練士》であり、今は正式な婚約者であるグラジオ・ロレンディアが《EGO(イージーオー)》を(まと)った姿だった。

 

 グリフォンという大型の幻獣をモデルにしているグラジオの今の体躯はリランに並ぶほど大きく、ハァシリアンにも迫るくらいの背丈があった。そんな彼がハァシリアンと対峙している構図は、まるで大怪獣に挑む大聖獣のようだった。

 

 

《別に言った事を忘れたわけじゃありませんよ。もう一度説得しようとしているんです。このままでは曾孫が良からぬ方向に進んでしまいそうなのでね。邪魔しないでいただけますか、弱小貴族君》

 

 

 ハァシリアンから聞こえた声にキリトは溜息を吐きたくなった。メディナが良からぬ方向に進もうとしているだって? メディナも人界も良からぬ方向に進ませようとしているのはお前達の方だろうに。

 

 あくまで自身らは絶対に正しいという傲慢な信念だけは曲げないらしい。ここまで来ると性根の最奥部まで傲慢という感情に染まりきっているのではないかという気がしてくる。

 

 つまるところ、メディナを絶対に向かわせてはならない。元よりわかりきっている事ではあるものの、今のハァシリアンの会話のくだりでかなり強くなった。

 

 

「我が曾祖父。ここに来るまで再会できなかったから教えられなかったが、今こそ教えてやる。お前が今弱小貴族と呼んだグラジオ・ロレンディアは、この私、メディナ・オルティナノスの正式な婚約者でな。将来私の夫となる男だ」

 

 

 メディナは剣先をハァシリアンに向け直した。ハァシリアンの表情は紫色の仮面のようになっているために、何の感情を抱いているのか全く持って把握できないが、「はぁ?」と言いたそうな顔を内部でしているのはわかった。

 

 

《婚約者? そんな弱小貴族の少年がですか? 僕の記憶が正しければ、ロレンディア家は僕の血が入っていない。つまり優秀じゃないって事ですよ。そんなゴミに等しい貴族と婚姻しようとしているなんて、気は確かですか》

 

「気は確かかなんて、お前とアドミニストレータにだけは言われたくない台詞だな。グラジオはお前の血が加えられたために腐敗した貴族共と違って、とても清らかな血を持っている。それこそ、お前が上級貴族達に、オルティナノス家にやってきたように、グラジオの血が私の血と混ざれば、お前達が言っている《戦力補充モジュール》とやらはもっと強くなる事だろう」

 

 

 確かに、アドミニストレータとハァシリアンの話では、オルティナノス家に宿る《戦力補充モジュール》は代を重ねる毎に稼働率が少しずつ上がっていき、途中でハァシリアンの血が混ぜられたところで一気に稼働率が上昇。

 

 そしてメディナの代で百パーセントに到達したという話だった。もしこれが百で止まらないような仕組みになっているのであれば、メディナとグラジオの間に生まれるであろう子供は、稼働率が百一◯パーセントや百二◯パーセントに到達した《戦力補充モジュール》を持っている可能性がある。

 

 そんなもの、アドミニストレータやハァシリアンにとっては喉から手が出るほど欲しいものであろう。メディナ以上に機械人間の素材を次から次へと呼び込めるのだから。

 

 

《……そうですねぇ。その可能性は高そうだ。君の子供はきっと人界にとって掛け替えのない宝となる》

 

 

 意外にもハァシリアンは冷静な声を出していた。すぐさまアドミニストレータも反応を示す。

 

 

「……メディナちゃん以上の稼働率のモジュールを持った子供か。なるほど、それは……いいわねぇ……」

 

 

 アドミニストレータは明らかに興味深そうな顔をしている。恐らくも何も、本気でメディナの子供というものを欲しているようだ。

 

 メディナ自身にもまだ興味が残っているようだが、明らかに彼女を上回る興味を示しているように見える。メディナを超える《戦力補充モジュール》を持っているかもしれないと聞かされた途端に、だ。

 

 そこでキリトは気が付かされた。こいつらはどこまでも支配のための道具を欲しがっている。

 

 メディナだけに飽き足らず、その先の子供までも欲しがり、支配に利用する気満々だ。

 

 この戦いが始まる直前、こいつらは引き入れたメディナを《ベクタの迷子》召喚装置に改造するつもりだろうと思っていたが、きっとそうではなくなった。今のアドミニストレータの狙いは――。

 

 

「条件を追加しましょう。メディナ・オルティナノスちゃん、そこのグラジオ・ロレンディア君と一緒にこちらへいらっしゃい。オルティナノス家は欠陥品っていうのを取り消すし、あなた達二人の家を私の権限で最上級貴族にしてあげるわ。そして、いくらでも好きなだけ一緒に居られるよう、愛し合えるよう整えられた環境も与えてあげる。

 貴女の言う、貴女達の間に産まれた子供もこれ以上ないくらいの幸せな日々を過ごせるし、その子はきっと人界にとって貴女以上の救世主となるわ」

 

 

 アドミニストレータはハァシリアン同様にもう一度誘いをかけてきた。つい先程それをメディナが「聞き入れられない」と言って蹴ったばかりだというのに、まだ誘い込めるつもりでいるらしい。

 

 条件を提示して断られても、もう一度条件を少し変えれば容易に相手を丸め込む事ができる――そんな単純な思考でもしているのだろうか。この辺はどこか――リランと時々ユピテルの言う――下等な機械のようだ。

 

 なんだかクィネラどころかアリス、ユージオ、メディナ達とも違って、人間らしくない。クィネラから切り離された影響が彼の女の知らないところで出ているのか、それとも元々――。

 

 

《聞いてましたかグラジオ君。母様のところに来れば、君の大好きな先輩とずっといつまでも一緒に居られますし、君の家もまた人界で最上級の貴族の一つとなる。最上級貴族へ至るのは、この人界にいる全ての貴族達の悲願です。

 それは君の家だって変わらないはず。最上級貴族となり、これまで散々君や君の大好きな先輩を罵倒してきた上級貴族達をひれ伏させて、その下げられた頭を踏み付けて大笑いしてやれるんですよ。そして君達は最高の子供を作る事もできるわけだ。こんな条件、呑まない方がイカれていると思いますねぇ》

 

 

 ハァシリアンは三回目の誘いをかけてきていた。メディナとグラジオは最上級貴族となり、ずっと一緒に居る事ができて、愛し合う事ができて、子供も産む事ができ、尚且つその子供も人界の役に立つ事が約束されている。

 

 並みの貴族ならばきっと三秒も経たないうちに聞き入れて飛び付く事だろう。果たしてメディナとグラジオはどうするのか。その答えが出された瞬間が比較的容易に頭の中に浮かび上がった。

 

 そして次の瞬間、それは現実となった。メディナとグラジオは呼吸を合わせ、

 

 

 

「「聞き入れられるかぁッ!!!」」

 

 

 

 と叫び、ハァシリアンに《EGO》による一閃を浴びせた。

 

 油断し切っていたハァシリアンはそれを諸に受け、二人によって付けられた傷口からどす黒い血を噴き出させながら大きく後退し、床に膝をついた。

 

 二人の答えは、相変わらずの拒否。キリトの信じた通りのものだった。

 

 

「メディナ、グラジオ……!」

 

 

 思わず安堵の声をキリトが出した直後、メディナがハァシリアンに伝えた。

 

 

「……正直なところ言うのは恥ずかしいが、お前達は言われなきゃわからないみたいだから言ってやる。私はこれからグラジオと婚姻し、いずれは父と母が、ハァシリアンとミリアムがかつてそうしたように、子供を産みたいと思っている。

 そして産まれてきたその子に与えてやりたいのは、お前達が用意した環境でも役目でも、最高の権力でも権威でもなく、お前達という最悪の厄災と恐怖が消え去り、平穏が取り戻された世界だ。そんな世界で、望むように自由に生きていってほしいと、今から思っている」

 

 

 メディナが語ったのは、これまで聞いた事のない理想図だった。

 

 それはきっとメディナの中にずっと存在していたのだろう。しかしアドミニストレータとハァシリアンを根源とする、邪悪な思想と意思で心も身体も満たした貴族達に迫害され続けた事によって、彼女の奥深くに追いやられ、眠り続けるしかなくなっていた。

 

 それが今、アドミニストレータとハァシリアンを討ち滅ぼす直前まで来たところで、ようやく目を覚まし、彼女の中から出てきたのだ。彼女にも年頃の女の子らしい――にしては少々大人びている――未来図がちゃんとあったのだ。キリトにはそう思えた。

 

 そしてそれを間近で聞かされた(つがい)のグラジオはと言うと――何やら細い《声》を出していた。

 

 

《メディナ先輩……えっと……》

 

 

 グラジオからは明らかな動揺が見えた。メディナの詳細な未来図を聞かされたために、大分嬉しさと恥ずかしさが混ざった気持ちになっているらしい。

 

 自身もしかと含まれた未来図を、好きな人の口から直接聞かされたのだから仕方がない反応ではある。

 

 そんなグラジオの足元にいるメディナは構わずに続けた。

 

 

「アドミニストレータ、ハァシリアン。お前達の作ろうとしている機械人間だらけの地獄の世界も、それを作る手伝いをさせられる役目も、お前達も全部、産まれてくる子の邪魔なんだ。だから、お前達を今日ここで完全に滅却する。今受けたのはその一発目だと思え」

 

 

 メディナはそこまで言ったところで、ようやくグラジオに向き直った。

 

 

「グラジオ、お前はどうだ。今しがた私と息を合わせてくれたが、お前はどう思っているからこそ、そうしてくれたんだ?」

 

 

 グラジオは「えっ」と言って驚いた。好きな人の未来予想図語りを聞かされて、しどろもどろしていたところに急に声をかけられたのだから、これまた当然の反応だった。

 

 しかし意外にもそれは長続きしなかった。数秒後に、グラジオは両手剣を構え直し、前方へ向き直った。

 

 

《おれも……おれもメディナ先輩と同じ気持ちです。おれもメディナ先輩と婚姻して、父上と母上がそうしたように子供を作って、二人で力を合わせて育てていきたい。それでその子にはアドミニストレータもハァシリアンもいない世界で、伸び伸び生きていってもらいたいです。アドミニストレータとハァシリアンに捕まって《ベクタの迷子》呼び出し装置に改造されるなんて、絶対に許せません。産まれてくる子供は、アドミニストレータの支配のために存在してるんじゃない!》

 

 

 グラジオから発せられる声、その言葉の一つ一つに、明確で強い意志が宿っていた。彼もまたメディナと同じ志を胸に抱いてここに居て、彼女の隣に並び立っている。

 

 これまでは色々あってわからなかったが、きっとこの婚約者同士の二人は、似た者同士であったのであろう。表面上や性格は全く異なっているように見えるが、抱く感情や思いはとても似通っている。

 

 それこそ自分と詩乃のように。

 

 

《ぐぅ……君達ねぇ……!》

 

 

 そんな二人のうちメディナの曽祖父であるハァシリアンがよろよろとしながら起き上がった。メディナとグラジオの一撃がかなり強く入り、深くまで響いたようだ。

 

 仮面の口からどす黒い血が流れ出ている辺り、《天命》もあまり残っていないだろう。整合騎士達、自分達によって、既に追い込まれているのだ。あと少しで鎮圧しきれるかもしれない。

 

 

《許さないぞ、メディナ……君はこれまで積み重ねられてきたオルティナノスの最高傑作……母様に捧げる最大級の贈り物なんだぞ……それが、こんな……こんな所業をぉ……!》

 

 

 ハァシリアンは怒りの声を漏らしながら、両手に持つ武器に炎と冷気を再度纏わせた。そればかりか、後方の手で持っている大砲にも雷エネルギーが纏わりつく。

 

 整合騎士達と仲間達を吹き飛ばした属性付与をもう一度使い、勝負を付けるつもりでいるのだろうか。しかしその視線が捉えているのはメディナとグラジオの二人だけで、自分達は眼中にないように感じられる。

 

 完全に狙いをメディナとグラジオに定めたのだろう。敵視を向けられたメディナはというと、その力強い光で満たされた瞳で曽祖父である怪物を見上げた。

 

 

「……母様、母様、母様か。お前はずっと自由ではなかったんだな、ハァシリアン」

 

《なんだ……と……?》

 

「お前はいつ如何なる時もその母様のために身も心も捧げなくてはいけなくて、ずっと見えない首輪や足枷を付けられて、支配されてきた。そうして今、恐ろしい怪物の姿に変わっても尚、母様のためにと動かされている。母様に尽くす事が自分の全てだと思い込んでいるんだ」

 

 

 ハァシリアンを見つめるメディナの瞳には、深い哀れみの光の姿もあった。自身と全く似た境遇、同じ苦痛に苛まれている者を見つめているようだった。

 

 

「私と同じだ。私もかつては、オルティナノス家に着せられた汚名を雪ぐためならば、何もかもを犠牲にして、身も心も捧げていこうとしていた。それが私の使命だと、私の全てだと思い込んでいた。それ以外に何もないと信じ込んでいたんだ。お前がそのろくでもない母様に尽くす事を全てだと信じ込んでいるみたいに」

 

《母様がろくでもないだと? ふざけた事を言うな! 母様は素晴らしい方だ。人界で最も素晴らしい方なのだ。侮辱する事は死罪に値するぞ!》

 

 

 ふとキリトは出会った当初と、西帝国で戦う事になった時のメディナを思い出した。

 

 あの頃のメディナは今の彼女自身の言っている通り、「オルティナノス家の汚名を雪ぐ」という目標に非常に盲目的で、周りにきつく当たるのは勿論――それも腐敗貴族達の迫害のせいなのだが――、その目標のためならば如何なる被害や犠牲が出ようが一切構わないといった考え方の元で行動していた。

 

 その様子は確かに、汚名を雪ぐという目標を使命と思い込み、見えない首輪と手枷足枷に縛られ、支配されていたようだった。

 

 「オルティナノス家の汚名を雪ぐ」という使命が「アドミニストレータという母様のため」に置き換わっているだけで、あの頃のメディナとハァシリアンは同じだ。

 

 彼もまた母様に尽くし、母様の望む物を手に入れ、捧げる事が全てであると信じ込み、それ以外に何も無い、自由などないと思い込んでいる。母様に尽くすという事に支配されてしまっているのだ。

 

 いや、きっとメディナよりもハァシリアンの方が悲惨な支配のされ方をしているだろう。

 

 彼はまだ何もわからない赤ん坊の頃に、アドミニストレータという悪霊に誘拐され、常にアドミニストレータの役に立つ事だけを考え、その通りに行動するだけの便利な道具にされてしまった。

 

 自由に人間らしく生きる事など一切許される事がないまま、地獄だと思う事さえできなくさせられ、地獄の日々を送らされてきた。それがメディナの曽祖父であるハァシリアンだった。

 

 《EGO(イージーオー)化身態(けしんたい)》となったハァシリアンの姿は、ハァシリアンが生きさせられた地獄そのものが形となったものなのかもしれない。無論アドミニストレータによってそんなふうに思う事はできなくさせられて。

 

 

「はっきり言うぞハァシリアン。お前の生きているこの境遇は地獄そのものだ。お前はアドミニストレータに支配されるという牢獄に囚われているんだ。だから、お前の曾孫として……今からお前をその牢獄から開放してやる」

 

 

 そう言ってメディナが《EGO》を構えると、全体に浮かび上がる紋様が一際強く光り輝いた。そんな曾孫の姿を見た曽祖父はというと、

 

 

《むかつく……むかつく、むかつくむかつくむかつく!! むかつくぞメディナぁぁぁぁぁ!!》

 

 

 曾孫が時折口にする言葉を連呼して、思い切り武器を振り下ろした。火炎を纏う巨剣が最初に床を叩き、すぐさま冷気を纏う球体鎚が続くと、床から炎の柱と氷の柱の群れが交互に突き出てメディナへと向かって来る。

 

 

「メディナ!」

 

 

 メディナを助けるべく、キリトはリランを走らせようとしたが、次の瞬間にメディナは宙を舞っていた。

 

 それは炎と氷の柱に突き上げられたのではなく、咄嗟(とっさ)にグラジオの(うなじ)の辺りに飛び乗り、そのまま彼に空中へ飛び上がってもらったためだった。

 

 茜色の鋼鉄のグリフォンナイトの姿で飛行するグラジオの真下を、炎と氷の柱の群れが通り抜けていき、やがて壁に激突して爆発を起こした。

 

 それを背にしてグラジオは急降下し、ハァシリアンの元へと向かう。

 

 

小癪(こしゃく)なああああああああッ!!》

 

 

 ハァシリアンは絶叫し、後方の腕で持っている大砲を構えた。雷撃を纏うビーム砲より細く赤い照準レーザーが照射され、グラジオの額付近に狙いを付ける。間もなく砲撃が放たれようとしたその刹那。

 

 

《させるかッ!》

 

 

 グラジオが両手剣を槍投げの要領で両手剣を投げ付けた。まるでシノンやデュソルバートの放つ矢のように真っ直ぐ飛翔する両手剣は、今まさにビームを放とうとしていた大砲の砲口に吸い込まれるように突き刺さった。

 

 次の瞬間、大砲は青白い光を噴出させた後に大爆発を起こし、ハァシリアンの身体に電撃が(ほとばし)った。大砲の纏っていたエネルギーが暴発し、そのままハァシリアンを襲ったということらしい。

 

 ハァシリアンは獣のような悲鳴を上げて身体のあちこちからどす黒い血を噴出させ、その場に崩れ落ちた。息も絶え絶えになっている。

 

 やはり自分達に《EGO》で攻撃され続けたのが効いていたのだ。天命は残り少し。

 

 

「だああぁッ!!」

 

 

 崩れたハァシリアン目掛けて、メディナがグラジオから飛び出した。流星のように一直線にハァシリアンの元へと向かっていき、《EGO》を構える。

 

 

「終わりだ、ハァシリアン! お前をアドミニストレータの支配から解放するッ!!」

 

 

 その叫びと共にメディナはハァシリアンのすぐ前方に着地した。その時、ハァシリアンは紫色の虚無顔の仮面のある頭部の最上部から最下部までを両断されていた。

 

 

《メディ……ナ…………かか…………さ……ま…………》

 

 

 次の瞬間、ハァシリアンは極限まで細くなった声を漏らし、その場に倒れた。間もなくして、全ての身体機能が停止し――その身体から黒い炎が燃え上がった。

 

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