ほぼほぼアスナサイド。
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山に跨り、海すらも歩いて渡りそうな巨躯を誇る最強最大の敵、マーテル。
その正体が、今安全地帯に避難している我が子のユピテルの姉に当たる存在であるというのが、アスナは全くと言っていいほど信じられなかった。
ユピテルと似たような姿をしていたはずなのに、重度の破損によってこの城のモンスター達を、その命ともいえるAIごと吸収し、最終的に悍ましい姿へと変貌してしまった。
ユピテルと同じ型のMHHPであるとはいえ、ユピテルも重度の破損を起こせばこのような姿になってしまうのだろうかと無意識のうちに考えてしまい、アスナは背中に悪寒を走らせた。
(だけどッ……)
そんな事を考えている暇など一切ない。同じMHHPであるとはいえ、マーテルとユピテルは全く違う存在であり、記憶喪失となった今は、可哀想ではあるものの全くの赤の他人だ。そして今のマーテルは、最終的にこの城を喰い尽くしてしまう恐ろしい魔物。倒さなければならない、プレイヤー達の敵なのだ。
「くそっ、どうなっているんだ。攻撃が急に効かなくなったぞ!」
近くで戦っているディアベルの言葉が聞こえてきて、アスナはマーテルのHPに着目した。最初、攻撃を受けたマーテルのHPはしっかりとその量を減らしていたけれど、今はまるでHPが凍り付いてしまったかのように動かなくなってしまっている。
ここに集まる、この白を突破しようと試み続ける者達、攻略組が絶えず特殊効果を付属させたソードスキルを発動させているというのに、それら全てが無効化されているように、マーテルのHPは減らなくなっている。
きっと分析の早いキリトならば何かを思い付いているかもしれないが、キリトはシノンと共にリランの背中に跨って飛んでおり、こちらの考えを受け取ってくれないし、こっちに指示を下してもくれない。
いや、指示を出してくれないわけではないけれど、如何せん相手が相手だから、どんな指示を下せばいいのかわからなくなっているように見える。
勿論こっちもどのように攻めていけばいいのか、わからなくなっている有様だ。まるで人間ではどうしようもない敵を相手にしているかのような、理不尽そのものと言える構図。
その構図を目にし続けて、慌てた様子のゴドフリーが言う。
「副団長、攻撃が通用していないようですぞ!?」
「大丈夫、攻撃は効いているから、気を付けながら続けて」と言い返してやりたかったが、ゴドフリーの言う通り、本当にマーテルのHPは減少するのをやめてしまっている。
攻撃されても全く動じないその様子は、まるで分厚い壁に覆われた要塞。そしてそこから繰り出されるのは何百万もの軍隊が一斉に砲撃したかのような火力の攻撃。プレイヤーを絶望のどん底に突き落とすためだけに存在しているかのような、不条理そのもの。
しかしその攻撃を防ぐために、異形の裸婦が身体を動かすたびに空を飛ぶ狼竜が攻撃を仕掛けて妨害しており、おかげで攻略組への被害は最小限に抑え込まれているが、その狼竜の攻撃にすらも、異形の裸婦は平然としている。
どんなボスでさえも大きなダメージを受けてしまう狼竜の火力すら通用していないというその光景は、狼竜の力を希望にして戦い続けてきた攻略組の戦士達の戦意を削ぐのに十分すぎた。
「攻撃を……どうしたらいいの!?」
思わず呟いたその時に、聞き慣れた声による咆哮が聞こえてきた。目を向けてみればそこにあったのは、近くの攻略組に混ざって紫色の剣閃を放ち、異形の裸婦の複脚の1つをを切り裂いているユウキの姿。
これまでユウキの剣はどんなボスの身体も切り裂き、致命傷を与えてきた。――それを受けても、マーテルは黒い光を出すだけでダメージを受ける様子を見せない。あのユウキの剣すらも通用しない有様にアスナは戦慄を覚える。
「たああああああああああっ!!」
他のところに目を配れば、親友のリズベットも、今はよい友人のシリカも、リーファもフィリアも特殊効果を自らに付与しつつ、片手棍、短剣、片手剣によるソードスキルの総攻撃を仕掛け続けているのが確認できた。だが、それら全てが、マーテルが何体ものボスの身体から作り上げた分厚い黒皮に防がれてしまっているのも同時に確認できた。
「うぉりゃああああああっ!!!」
同じようにボス攻略の際に力を貸してくれるクラインやエギル、ディアベル達にも顔を向けるが、やはりどの者も特殊効果をいくつも付与してソードスキルをぶつけており、それら全てをマーテルに無効化されている有様だった。
まるで毒も持たない蟻が、攻撃し続ければいつか倒せるというありえない考えに取り憑かれて、分厚くて硬い皮膚を持つ象の足に噛み付いているかのような光景。それが今の攻略組と異形の裸婦の関係だった。
「駄目なの……わたし達じゃ駄目なの……!?」
先程皆に混ざって、ボスに大きな傷を負わせる突き攻撃を放ってみたものの、まるで武器が吸い込まれるような感覚だけが帰って来て、敵を突いたという手応えは皆無だった。自分の攻撃でさえも通す事が出来なかったのだ。
そのうち、仲間の騎士達から悲鳴のような声が聞こえ始めた。
「だ、駄目だ! 俺達で何とかできる相手じゃ、無かったんだ!」
「に、逃げろぉ!!」
攻撃を完全に無効化されていると言う事実に気付いたのだろう、ここに集まる騎士達の中のかなりの数が、悲鳴を上げて顔を真っ青にしながら、異形の裸婦から逃げ始めた。
こんなに恐ろしい敵を放っておくわけにはいかないのに、勝てないと信じ込んで逃げだす――情けないが、アスナも同じ気持ちで、今すぐここから逃げて、第1層のユピテルの元へ行きたいと思っていた。
「み、みんなっ!!」
逃げ行く者達に目を向けた次の瞬間に、アスナの耳に大きな声が届いてきた。
「副団長!!」
まだ聞き慣れていない男性の声色。それが耳を伝わり、頭の中に届いたその時には、アスナは突き飛ばされて地面へ倒れ込んでいた。直後、大きな何かが落ちてきたような轟音が鳴り響き、分厚い土煙が吹き付けてて、何も見えなくなってしまった。
何が起きたのかわからないまま倒れ込んでいると、やがて土煙が晴れてきて、周りの状況が見えてきたが――そこで顔を上げたところで、アスナは唖然としてしまった。
先程自分が立っていたところにはマーテルの巨大な足が鎮座しており、周りに沢山の仲間達が倒れていて、どの者のHPも赤色に突入していた。恐らくマーテルが足を上げて、自分の事を踏みつけようとしたのだろう。
あのままあそこに立っていたら、文字通り踏み潰されて死んでいたところだった事にアスナは戦慄したが、同時にどうやって助かったのかわからなかった。
「みんな、一体何が……」
「大丈夫でしたか、副団長」
もう一度聞こえてきた声に驚き、アスナは周囲を見回したが、すぐ隣に目が言ったところで驚いた。そこにいたのは他の者達と同じように地面にうつ伏せになって倒れ、HPを赤色にしてしまっている金髪の男性――入団希望者で血盟騎士団にやって来た人だったが、そのままこの戦闘に参加する事になったアルベリヒだった。
「あ、アルベリヒさん! もしかして貴方が……!?」
「えぇ……美しい人に傷を付けられるのは、男性としては許し難い事でしたからね……それにしてもひどいものだ。最高級の装備すらも、この化け物は容易く通り抜けてくる……」
ぼろぼろの顔になりながら、強気に微笑むアルベリヒ。その言葉を聞いて、あの時突き飛ばしたのはアルベリヒで、自分が受けるはずだったダメージを肩代わりしてくれた事にアスナは気付き、泣きそうになった。
「アルベリヒさん……」
「しかし、どうやら僕は戦闘続行不能のようです……こんな事になるなんて思ってもみませんでしたから、回復道具を持ってきてないんです……こんな戦いが起こされるなら、もっとしっかり準備をしておけば……」
アスナはアイテムストレージから青い結晶を取出して、アルベリヒに差し出す。
「わかりました。アルベリヒさん、わたしの転移結晶を差し上げますので、それでこの層から脱出してください。そしてしっかりと回復と準備をしてきて、もう一度戻ってきてくださいませんか」
「いいんですか……確かに僕は回復すれば戦闘可能ですが……貴重な転移結晶を……」
「わたしを今守ってくれたのは貴方です、これくらいどうって事ないですよ。だから、何とか回復してきてください」
アルベリヒはどこか驚いたような顔をした後に、小さく「わかりました」と呟き、アスナから転移結晶を受け取り、75層の名前を口にした後に青い光に包まれて、戦いから撤退していった。
続けてアスナは周囲を回復させる効果を持つ戦闘スキル、《ヒーリングサークル》を展開し、辺りに緑色の暖かい光が昇る陣を出現させ、その中に入り込んでいた者達はそのHPを緑色のまで回復させて立ち上がるが、もはやこんなものも気休めでしかない事を、アスナは熟知していた。
(あいつの攻撃力は……)
体力が緑色で全快であったとしても、一撃加えられるだけで赤色に行くか、もしくは即死してしまうくらいのもの。たとえいつものように回復スキルを使ったとしても、もう一度攻撃を受ければすぐに瀕死にされてしまう。どう考えてもジリ貧だ。
「どうすれば、どうすればいいの……!」
立ち上がった者達が再度攻撃を仕掛けるけれど、攻撃への抗体を作り出してそれを全身に張り巡らせているマーテルには効果はない。
マーテルにダメージを与えるには、マーテルの身体を守っている抗体を破壊してしまうしかないが、どうすればそんな事が出来るかなど、わかりはしない。
アスナは一瞬、マーテルを作り出した本人であるイリスを思い出したが、すぐさまイリスもあてにならないと思った。何故ならば、もはやイリスでさえも、マーテルがどのような存在になっているか理解できておらず、対抗策など全くなし状態になっているからだ。
開発者でさえもお手上げの状態……もはやマーテルをどうすればいいのかなど、自分達では到底理解しえない。
「どうやれば、どうすれば……」
もはや自分達ではどうする事も出来ない存在である、マーテル。そのマーテルは今も尚、邪魔者を排除しようと容赦のない攻撃を仕掛け続けている。巨体が動かされるたびに地震のような揺れと衝撃波が起こり、山が崩れて草木が巻き込まれ、土砂崩れが起こる。
実際今戦っているこの山岳地帯もマーテルが動き回ったおかげで、もはや原型をとどめない有様と化している。まるで破壊と創造でこの国を作ったとされる
「きゃああああああッ!!!」
今度は聞き慣れた声色の悲鳴が聞こえてきて、アスナはその方に顔を向けたが、そこで瞠目して顔を蒼褪めさせる事になった。
そこにあったのは、座り込んでいるシリカの姿であったが、その周りが真っ黒に染まっていた。シリカの上部にはマーテルの巨大な足があり、それが影を落としつつ……ゆっくりとシリカに降って来ていた。
「し、シリカちゃん!!!」
呼びかけるが、シリカは怯えきって、ピナを抱えたまま動く事が出来ない。いや、動いたとしてもマーテルの足が先にシリカを踏み潰してしまう。
今から駆け付けたとしても、間に合いそうにないし、シリカを助けたとしてもその人がマーテルに踏み潰される。それがわかっていても尚、アスナの足は勝手に動き出し、シリカの元へと急いでいた。
「シリカちゃん、逃げてッ!!」
何とか位置をずらそうと試みるが、シリカはもう動く事が出来ない。目測でシリカとの距離は30m前後だとわかったが、アスナからすればその距離はひどく遠く感じられた。
まるで自分だけ時間がゆっくりになってしまっているかのように足が進むのが遅く、降り来るマーテルの足が速く落ちてくるように見える。
その足がもうすぐシリカの身体を、生命を踏み潰す。もう間に合わない事は明確でも、アスナはその足を止めない。
「シリカちゃん……ッ!!」
アスナの声が響いた瞬間、突然シリカの元に青い閃光のようなものが瞬き、シリカの身体が黒い影の中から飛び出した。何事かと目を見開いた直後に、青い閃光はその正体を明かした。
――聖竜連合のリーダーであり、ここまで攻略組を支えてきたディアベルだった。
「ディアベルさん!?」
シリカはピナを抱えたまま影の中から出る事が出来たが、それを肩代わりしたようにディアベルがその陰の中にいる。
確かにシリカは助かったけれど、あのままではディアベルが踏み潰される。キリトの、自分達の仲間の大切な仲間が殺される瞬間が、聖竜連合、攻略組の重鎮が失われる瞬間に変わっただけで、危機回避にはなっていない。
「ディアベルさんッ!!」
アスナの叫びが届く前に、ディアベルは歯を食い縛り、剣を構えて真上から迫り来るマーテルの足を見上げた。
「うぉあああああああッ!!!」
そして咆哮しながら、ディアベルは構えた剣を突き上げた。まるで象の足の裏に細い針を刺すような行為――その足が地面に辿り着けば、針も、針を刺そうとした者も押し潰されてしまう。ディアベルの最期の抵抗は空しく、マーテルの足に潰されるのだ。
その瞬間が容易に想像出来て、アスナは目を強く瞑った。
次の瞬間、聞こえてくるのはディアベルが潰される音。肉と骨が潰れて滅茶苦茶になる、吐き気のする音が耳に飛び込んでくる――と思った瞬間、飛び込んできたのは女性の声と獣のそれと混ざり合ったような声色の悲鳴だった。マーテルが初めて攻撃を受けた際に発した声に似ていなくもない。
何が起きてしまったのかと思って目を向ければ、そこにあるのは潰されるはずだったディアベルが剣を突き上げている姿と、まるで強い痛みを覚えて驚いたように足を上げてしまっているマーテルの姿だった。
てっきりアスナは夢を見ているのではないかと一瞬思ったが、すぐにディアベルが動き出した事で我に返り、アスナは痺れたような足を動かして、そこへ向かった。
「ディ、ディアベルさん、何を?」
ディアベルは頭が痺れている表情で、アスナに答える。
「わ、わからない。俺も剣であいつの足の裏を突いたら助かって……」
次の瞬間、大きな轟音と衝撃波が襲生きて、辺りの山が一気に崩れて、分厚い土煙が吹き荒れた。何事かと思いながらアスナとディアベル、その他周囲にいる者達が顔を庇い、やがて土煙が薄くなったところで目を向けると、マーテルが地面に倒れ伏しているのが見えた。
いくら攻撃しても倒れなかった生きた要塞が、今更になって倒れたという事実に、攻略組全員が理解できないような有様になる中、アスナは小さく口を動かした。
「ひ、跪いた……!?」
一体何が起きてそんな事になったのか。まさかディアベルの一撃がそれほどまでに効くものだったのかと思って、マーテルの足に着目したその時に、アスナは気付いた。
――倒れ伏しているマーテルの足の裏と胴体に、赤い光で構成されている複雑な模様が浮かび上がっている。しかもそれは、まるで心臓が脈打つように赤く点滅しているのだ。
「これは……まさか」
マーテルはこれまで様々なボスを取り込んで、この姿へと成長したが、そもそもボスには必ずと言っていいほど他と比べて脆い部分、すなわち弱点があった。マーテルはボスを取り込んで強くなり続けたが、同時にボスの弱点も取り込み、それがいくつにも重なっている部位を作ってしまっていたのだ。
そして全身に攻撃への抗体を広めていても、この部分には抗体を廻らせる事は出来ないようになっている――ディアベルの剣が効いたのはそれが理由だ。
周囲を見回してみれば、倒れ伏すマーテルの足の裏全てに弱点が出現している。今この場に集まる攻略組全員で力をぶつける事が出来れば、マーテルに甚大なダメージを与える事が出来るかもしれない。思い付いたアスナは腹の底から力を込めて、声を上げた。
「全員、赤い光の部分に攻撃!!! そこが、マーテルの弱点よ!!!」
アスナの声は壊滅状態になった山脈地帯全域に木霊し、地上にいる者達、そして空を駆ける狼竜とその背中にいるキリトとシノンといったこの場に集まる全ての者達の耳に届き、指示を受けた者達は覚悟を決めたように倒れ伏す《異形の裸婦》の身体へ突撃し、心臓のように脈打つ光を放つ模様に攻撃を開始した。
この場に集まった戦士達。それら全員が持つ武器が《異形の裸婦》の心臓部に食い込むと、《異形の裸婦》は吐血するように悲鳴を上げて、血のように赤い光を散らさせ、攻撃が効いているという手応えを戦士達へ返却する。《異形の裸婦》に踏み潰されてほぼ平原地帯へと変ってしまった山岳地帯が、戦士達の咆哮と《異形の裸婦》の悲鳴に包み込まれる。
いくら並みを超える大きさを持っていたとしてもボスである事に変わりはない――ボスは倒さなければならない――戦士達は容赦なく《異形の裸婦》の心臓部に剣技を放ち続けて、返り血のような赤い光を浴び続ける。
これまでどうやっても減る事のなかった《異形の裸婦》の生命力は目に見えて減り始め、1本目、2本目、3本目が瞬く間に脱落する。しかも弱点を攻撃され続けているせいで、《異形の裸婦》は身体を動かす事が出来ず、一方的に身体を、複数の心臓を突かれ続けるだけだった。
攻撃が来るのは足の裏だけではない。《異形の裸婦》の背中には足の裏よりもさらに大きな弱点が露出しており、空を駆ける狼竜と射手の少女が爆炎と矢で集中攻撃を仕掛けると、《異形の裸婦》の生命の残量は更に大きく減った。それを狼竜の背中から見ていた狼竜の主――キリトは2人へ声をかける。
「リランにシノン、少し攻撃をやめてくれ! 飛び込んで攻撃してくる!!」
「駄目よ! あいつの背中に乗るなんて……あいつが動き出したらどうするつもりなの!?」
「その時は俺のところに素早く飛んで、俺を回収してくれ!」
そう言って、キリトは狼竜の背中を蹴り上げて空へ飛び立ち、そのまま急速落下。かつての血盟騎士団の長より受け継ぎ、自分用に作り直した長剣《インセインルーラー》を左手に、親友のマスタースミスの作り上げた最高傑作《ダークリパルサー》を右手に持ち、《異形の裸婦》の背中の模様に接近しきったところで、剣を赤く光らせた。
「はああああああああああッ!!!」
キリトは咆哮しながら、まるで鉄砲水ように高速で連続する突きを、《異形の裸婦》の背中へと撃ち込んだ。超高速で敵を突きまくり、まるで蜂の巣のようにしてしまうその名は、《クリムゾン・スプラッシュ》。
剣が食い込む毎に血のような赤い光が飛び散り、両手の剣と《異形の裸婦》の傷口から出る赤い光でキリトの身体は一瞬で真っ赤に染め上げられる。
「だああああああああッ!!!」
まるで返り血を浴びたかのような姿になっても尚、キリトは攻撃をやめず、次のソードスキルを発動させ、若干の回転斬りを混ぜつつ、光を纏う両手の剣を、舞うように振るい始める。白緑の強い光を発生させつつ、敵を超短時間で15回斬り刻む、《シャイン・サーキュラー》。
その最後の一撃が炸裂しようとした瞬間に、《異形の裸婦》の太い脚が水色のシルエットとなり、大量のポリゴン片となって爆散。手足を失った胴体が脆く地面へ崩れた。
この城を攻略する戦士達の攻撃を弱点に受け続けた事により、
次の瞬間、街を踏み壊し無数の生命を喰らい続けて、最終的にはこの城そのものを喰い尽くしてしまう《異形の裸婦》は耳を
「終わった……のか」
それまで戦いを続けていた戦士達が身構えるのをやめたのは、《異形の裸婦》が完全に倒れた数分後だった。
2話に渡る戦闘回、これにて終了。
次回マーテルの目的が明らかに。
Q.ヒーリングサークルって何ぞ。原作にあったっけ?
A.ホロウフラグメントに出て来た回復術。周りの仲間を迅速に回復させられるので、ボス攻略に使える。