キリト・イン・ビーストテイマー   作:クジュラ・レイ

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ついに話数がアインクラッドの階層を超えちまった今回。


11:異変と層主戦 ―84層主との戦い―

           □□□

 

 

「さぁて、出席を取るぞ君達」

 

 第1層、昼の教会。そこはこのゲームに迷い込んできてしまった子供達を保護する施設となっており、現実世界で言う学校のような役割を果たしていた。この教会では、食事の前になると保母長であるイリスが出席簿のようなものを持って子供達の点呼を取る。

 

 この世界はゲームオーバーが死に直接つながってしまうような世界、子供達が自ら出ていくと前もって保母達に報告をしておかないと、1人いなくなっただけでも大騒ぎになってしまうので、この点呼は生存者を確かめる手段でもあった。

 

「えーと、まずはアネット。その次ミィト、ギン、ケン……」

 

 その中でも、この点呼を取るのは子供達の名と顔を全て覚えているイリスがやっている。イリスは普段院長室で様々な仕事をこなしているだけだが、食事の時と点呼を取る時、子供達と遊ぶ時になると、こうして子供達の前に出てくる。

 

「トト、バル、ヴァイラ、ギロ……」

 

 いざとなった時はしっかりと助けてくれるイリスに、子供達は懐いているため、イリスの点呼の時はどんなにそれまで騒がしくしていても、静粛にするようになっている。おかげで点呼が取りやすくていいと、イリスは思っていた。

 

「リン、ソウマ、アリサ、レン、コータ……」

 

 子供達の返事を聞いて、イリスは月日と無数の四角が書かれている出席簿に生存の証である丸を書き込んでいく。

 

 今まで子供達が食事の時間に遅れた事はなく、出席簿に記されている子供達の名前の欄には、丸だけが付けられていた。もしここに丸が無い場合は、教会中を揺るがせる非常事態なので、イリスはこの出席簿を見る度に安堵を抱いていた。

 

「ロミ、ギル、ナナ、シエル、アオイ、ストレア、ミナ」

 

 最後の名前を口にしたところで、連続していた子供達の声が止まった。……ミナからの返事が返ってこないのだ。

 

 いつもならば元気な返事を返してくるミナの声が無い事にイリスは不思議に思い、出席簿から顔を上げて周囲を見回す。そのまま目を凝らすと、一席だけ人のいない席があった。――そこは、いつもミナが座っている席だった。

 

「ミナ……おいミナ。ミナはどこに行った?」

 

 イリスの様子を察した子供達が周囲を見回し始める。そこに混ざってイリスも周囲をしっかりと見まわすが、やはり深茶色の髪の毛をツインテールにしている身体が少し小さい少女、ミナの姿は確認されない。

 

「イリス先生、ミナちゃんいません――!」

 

 普段ミナの隣に座っている黒短髪の少女、ナナからの声を聞いたイリスは子供達の生存を確認する最終手段であるメッセージウインドウを開いた。

 

 イリスのメッセージ宛先には専属患者であるシノンの他にその夫のキリト、友達であるアスナ等の連絡先があるが、同時にここに収容されている子供達全員の連絡先も登録されている。

 

 そしてそれは、子供達が現在いる場所を確認できるようになっていて、いざとなった時はここを開いて子供達の安否を確認するのだ。

 

「えっと、ミナ、ミナ……」

 

 名前検索モードに変えてミナの名前を打ち込むと、メッセージ宛先の中に皆の名前が出現した。名前が出てくるという事はちゃんとこの世界で生存しているという事なので、イリスはひとまず安心したが、その場所に目を向けたところでその安心を消した。

 

 普段ならば第1層教会、もしくは第1層街中と表示されているミナの居場所の欄には、《追跡・探知不能》という不吉な単語が表示されていた。

 

「ミナが……いない。おい君達、ミナがどこに行ってたか知らないか。特にシエルとナナとアオイ、君達はいつもミナと一緒に居ただろう」

 

 イリスは顔を上げたまま、周りを見回し続けている子供達に声をかけた。イリスの問いかけを受けた子供達は「お前知らないか」「知らない」「どこいっちゃったんだろう」と不安そうな声を出し始めたが、最初に呼びかけた3人のうち『アオイ』という灰色の髪の毛の少女が挙手をした。

 

「イリス先生、ミナちゃんならサーシャ先生と街に買い物に出かけてます」

 

「なんだって? 買い物なら君達も一緒になるはずだろう」

 

「いいえ、ミナちゃんはみんなが服とかを買った時にちょっと具合が悪くて、1人だけ買えなかったんです。だからサーシャ先生は改めて、ミナちゃんと買い物に出かけたんです」

 

「そういう事か。そういえば他の先生達はいるのに、サーシャはいないね……」

 

 イリスはメッセージウインドウに顔を戻して、サーシャの名前を検索にかけた。メッセージ管理システムは全く時間をかけずに、サーシャの名前と現在地を弾き出した。

 

 ミナと同じで、生存そのものは確認できたが、サーシャの現在地もまた《追跡・探知不能》という不吉な言葉を表していた。

 

「街にいるならば、こんな事にはならないよな……」

 

 第1層のフィールドに出るのは危険すぎだからやめておくように、他の層も街以外のところに行ってはいけないと指示を出していたし、サーシャにもそうさせていた。――この指示をちゃんと守っているならば、現在地がこんな不吉な言葉になるわけがない。

 

 そもそも、基本的に現在地が《追跡・探知不能》になる場所なんてクエスト時のみいけるようなイベントエリアくらいしかない。そして、そんな場所にサーシャとミナが行くわけがないし、フィールドに行かなければならないクエストだってやらないはずだ。

 

「拙いぞ……2人とも、もしかしたら何かしらの事件に巻き込まれたのかもしれない」

 

 イリスは比較的冷静に言ったが、子供達の耳にそれが届くや否、子供達は一斉に驚き、慌て始めてしまい、とても食事どころではなくなってしまった。

 

 もはや落ち着けと言っても聞かなくなってしまった子供達。その間を抜けて、教会の用心棒であるが、はっきり言って子供達の1人であるストレアがイリスのところへやってきた。

 

「イリス、サーシャとミナがいないって本当なの」

 

「おぉストレアか。2人の名前は確認できるが、現在地が特定できないんだ。街中にも、フィールドにも、現在地特定不可になるような場所なんて早々ない」

 

「えぇっ。2人ともどこに行っちゃったの!?」

 

「わからないんだ。システムの不安定化によって街中に通信妨害(ジャミング)エリアみたいなものが生まれてしまったのか……とにかく、一度街に出て探してみよう」

 

 イリスは戸惑っている子供達の方に向き直り、まるで血盟騎士団のキリトが支持を出している時のような雰囲気で、言った。

 

「悪いけれど君達。先生とストレアはこれからサーシャ先生とミナを探しに行って来る。2人の目的はこの街の中にだけあるはずだから、きっとこの街の中にいる。君達は先に昼食を――」

 

 そう言いかけたその時、子供達のうちの1人である茶髪の少年、ケンが立ち上がって挙手をした。

 

「先生、おれ達も行きます! 仲間がいなくなったのに、暢気に昼飯なんて食えません!」

 

「ぼ、ぼくも行きます!」

 

「わたしも、行きます!」

 

 仲間がいなくなっている事を深刻に感じているのか、子供達は次々と立ち上がっていき、ついには食堂に集まるすべての子供達が立ち上がって、「共に行く」と言い張り始めた。

 

 その光景は、「子供達なんて互い同士の事をあまり深刻には考えてないだろう」というイリスの考えを打ち砕き、その心を揺するには十分なものであり、それを目の当たりにしたイリスは呆然として子供達を眺めた。

 

「き、君達……」

 

 子供達は昼食なんかそっちのけていいから、いなくなってしまった保母と仲間を探したいという思いを含んだ、暖かくて鋭い光を目の中に煌めかせて訴えている。――普段言う事を聞いてくれる子供達であるが、今の子供達にはどんなに駄目と言っても無駄であると、イリスは子供達のその目を見て悟った。

 

「イリス……」

 

 ストレアに声をかけられたイリスは、俯きながらフッと笑い、やがて顔を上げた。

 

「わかったよ。ここにいる全員で、サーシャ先生とミナを探しに行こう!」

 

 子供達は一斉に「おー!」と言って手を突き上げた。

 その様子は、ボスを攻略しようとしている攻略組の者達と全くと言っていいほど差が無かった。

 

 

 

 

           ◇◇◇

 

 

 アインクラッド84層 ボス部屋

 

 俺達は《噴火の亀竜》との戦いを続けていたが、戦況は芳しいとは言い難かった。

 最初はリズベットの攻撃によって打撃属性が効く事がわかり、打撃属性武器を持つ者達で特殊な陣形を組んで戦ったのだが、やはりその属性を持っている者達だけで効果的なダメージを与えるのは困難だったのだ。

 

 それだけじゃない。HPが削られていく毎に生命の危機を感じているのか、《噴火の亀竜》の攻撃もより熾烈なものとなり、かなりの頻度で溶岩が地面から突き上げてきたりするようになった。

 

 しかもその溶岩攻撃に俺達の中で《噴火の亀竜》に比較的大きなダメージを与えていたメイサー達が巻き込まれた事により、俺達の《噴火の亀竜》への攻撃は滞ってしまった。

 

 その中で唯一のマスターメイサーであるリズベットは、俺とアスナ辺りで守り続けているため大きなダメージを受けたりしていなかったが、やはりリズベット1人に攻撃を仕掛けさせても、まるで溶岩に包み込まれても平然としている宝石の原石のような頑丈さを誇る《噴火の亀竜》に大きなダメージを与える事が出来なかった。

 

「くそっ、周りのメイサー達はどうなった」

 

 リズベットが周囲を見回しながら呟くように言う。

 

「周りの連中はあいつの溶岩攻撃に巻き込まれて、とても攻撃できる状態じゃないわ。あのまま攻撃を仕掛けるような事があったら、それこそあのボスの思う壺よ」

 

「でも、このままじゃダメージを与えられないぞ」

 

「あんたのところ、リランはどうしたのよ。リランの力があれば、あんなの蹴散らせるんじゃないの!?」

 

 実は75層の前のボス戦の時に気付いたのだが、リランの持つ人竜一体ゲージは、俺が攻撃した回数ではなく、俺がそのボスに与えたダメージによって増減が変化するようになっているらしい。

 

 つまり、相手に大きなダメージを多く与える事によって、人竜一体発動を速める事ができ、逆に手数多く攻撃したとしても防御されたりしてダメージを減らされたりすると、人竜一体発動が遅れたりするのだ。

 

 あいつはあまり動かないから、数多くの攻撃を撃ち込む事が出来る。しかし、その分防御力が非常に高い数値に設定されているから、大きなダメージを与える事が出来ず、多く撃ち込んだとしても人竜一体ゲージの増えは遅い。

 

「駄目なんだ。俺の人竜一体は与えたダメージに依存しているものらしくてさ。あいつが硬すぎるおかげで、全然ゲージが溜まってくれないんだ。せめて弱点を見抜いてそこに攻撃を仕掛ければ、リランを元に戻せるんだけど……」

 

 さっきから攻撃を仕掛けても、弱点らしい弱点に当たったような気配はないし、他の皆からそういう報告も来ていない。

 

 いつものセオリーというべきなのか、少し遠くにいるシノンが弓をあいつの目に射掛けた事もあったけれど、あいつは眼球さえも尋常じゃないくらいに硬く出来ているらしく、それさえも通さなかった。今現在わかっている事は、あのボスが全身異様なまでに硬い事だけだ。

 

「でも、弱点は見つかってないわよね。どうすんのよ!」

 

「……!」

 

 歯を食いしばって頭をフル回転させるが、やはり何も思い付いてこない。いつもならば、あいつがどういうふうに動き、どういう部分が弱点になっているのかわかりそうなのに、この戦いではそれが全然ない。いつものように、作戦を思い付く事が出来ないのだ。

 

「くそっ、駄目だ、どうすれば……!」

 

 小言を漏らしたその時に、《噴火の亀竜》は突然身体に力を入れるような仕草をして、俺達を不思議に思わせたその直後、腹の甲殻が若干開いたのが見えた。

 

「えっ」

 

 突然開いた《噴火の亀竜》の甲殻に驚いて、思わず注視してしまったそのすぐ後に、《噴火の亀竜》の身体は突然白色のガスのようなものに包み込まれて、俺達から隠れてしまった。

 

「な、なんだあれ」

 

 《噴火の亀竜》から比較的遠い場所にいたクラインが呟く。今、《噴火の亀竜》は腹の辺りの甲殻を開いて、ガスを思い切り噴射して、身体を包み込んだように見えた。

 

 しかし、そのガスは《噴火の亀竜》を守る事もなければ、吸収されたりする事なく、霧払いされたように消えてしまい、《噴火の亀竜》は再びその姿を俺達に見せつけた。

 

「今のは……なんだ」

 

 思わず呟いた直後、俺の近くにいたアルベリヒが突然声をかけてきた。

 

「団長、気になった事があるんですが」

 

「なんだよ」

 

「あのモンスターって、排熱しなくて大丈夫なんでしょうか」

 

「排熱?」

 

「はい。あいつは見ての通り、灼熱の地に住まう生き物という設定のモンスターですけれど、どんな生物であろうと本来は熱には弱いです。

 あいつは火山地帯に住まうモンスターですから、溶岩を飲んだりして膨大な熱をその身体に溜め込んでいると思うのですが、あんなふうに全身を隙間のない硬い甲殻に包んでしまったら、そういう時の熱が逃げなくなって身体の中に溜まってしまい、どうにもならなくなります。ですから、あれが本当の生き物をイメージしているものならば、何らかの排熱手段を持っているはずなんです」

 

 確かにあの《噴火の亀竜》は、火山地帯に住んでいるから、溶岩や火山性高熱ガスなどを飲み込んで膨大な熱をその身に抱えているが、俺達人間やリランと違って全身を隙間なく甲殻に包み込んでいるので、体内の熱を何もしないまま逃がす事は出来ないと思われる。

 

 しかし、そんな事をして体内に熱を籠らせたままにしてしまうと、運動をしたり、呼吸をしたりする度に身体の中に熱が溜まっていって体を蝕み、最終的には熱が原因で身体が自壊、自滅してしまう。

 

 この世界はゲームの世界ではあるものの、モンスターの生態などはかなり現実的な生物をイメージして作られているから、()()()()()()()()()()()を持っている生物は存在していないのだ。その規則に則れば、あの《噴火の亀竜》さえも現実的な部分を持っている、欠陥のない生物のはず。

 

「あっ!」

 

 その時、俺は思い付いた。

 《噴火の亀竜》は今、腹の甲殻を開いて白色のガスのようなものを噴射した。あれこそが、《噴火の亀竜》の排熱行為なのだ。しっかりと閉じた甲殻の、唯一可動する部分である腹の甲殻を開いて熱の逃げ場を作り、リフレッシュを行う。

 

 そしてその時は、甲殻のない部分が露出してしまうはずだ。何故なら排熱口さえも堅い甲殻に包み込んでしまったら、排熱口の意味をなさなくなる。

 

 熱を逃がすためには、その部分を薄くせざるを得ない――そこに攻撃を加えれば。

 

「それだッ!!」

 

「ど、どうしたんですか団長!?」

 

「アルベリヒお前だよ、お前のそれであいつの弱点がわかった!」

 

「えっ、どこなのキリト君!」

 

 俺は思い付いた部分である、《噴火の亀竜》の方を指差した。

 

「あいつの腹だよ! あいつの腹は、他の甲殻と比べて弱く出来てて、尚且つ開閉できるように出来てる。多分だけど、あいつの破壊可能部位はあそこ……あそこを破壊すれば……!」

 

 言いかけたところで、他の皆は俺の言いたかった事に気付いたらしく、《噴火の亀竜》に顔を向けた。その内の1人であるアスナが細剣を構え直しつつ言う。

 

「破壊すれば、開いたら閉めなきゃいけない部分が、開きっぱなしになる……そしてそこは、他の部位と比べて圧倒的に柔らかい!」

 

「つまりそこなら、普通の攻撃でも通す事が出来るって事ですね!」

 

 アルベリヒの言葉に、俺は頷いて剣を構え直す。

 

「そうだ! 多分あそこなら、俺達の剣による攻撃も通るはず!あそこをみんなで集中攻撃するぞ!」

 

 その言葉を受けて皆が突撃を開始しようとしたその時に、俺の近くにいるリランが《声》を飛ばしてきた。

 

《ならぬぞ! あいつは熱が溜まるとあそこから排熱を行うが、同時に凄まじい熱蒸気が噴き出している。あいつの懐に入り込めば、間違いなくあいつの排熱に巻き込まれるぞ!》

 

 リランの言う通り、あいつの身体から放出されるガスの正体は、周りの空気中に含まれる水分が一瞬で蒸発する事によって発生した水蒸気だ。勿論それはあいつの放った熱風が含まれており、あの中に入れば確実にダメージを追う事になるだろう。

 

 生物として逃れる事の出来ない生理現象であると同時に攻撃である排熱。しかし、そこに弱点があるならば、飛び込んで攻撃をするしかない。たとえリスクが大きくても、だ。

 

「みんな、ひとまずは回復して体力全快状態にしろ! 回復が終わったら防御体勢になってあいつの出方を伺え! あいつが完全に動きを止めるのを待つんだ! それまで絶対にあいつに近付くな、攻撃に巻き込まれるぞ!」

 

 俺が指示を下すと、攻略組の皆は《噴火の亀竜》から離れて、残っていた回復アイテムを取出して使用し、HPを右端に辿り着かせた。回復しきった皆が防御の姿勢を取ると、《噴火の亀竜》は突如として身構え、顔を地面の中に突っ込んで動かなくなり、何かを飲み込んでいるような音を立て始めた。

 

 《噴火の亀竜》の顔の周りの地面が紅い溶岩に変わっている事から、《噴火の亀竜》は溶岩を飲んでいる事を俺は理解したが、次に何をしてくるかわからないため、そのまま動く事が出来なかった。

 

 しばらくすると、《噴火の亀竜》は顔を地面から引き抜き、力むような姿勢を取って、背中にある小さな火山を思わせる赤い岩山から火の粉の混ざった黒煙を立ち上らせた。

 

「何か来るぞ!」

 

 まるで活火山の噴火の寸前を思わせる光景を俺達に見せつけるや否、《噴火の亀竜》は咆哮。その直後に《噴火の亀竜》の背中の火口から火山弾が無数に発射され、ボス部屋の天井付近のところまで飛んで行ったところで急降下、地表を襲う流星群の如く、俺達のいる場所目掛けて降り注ぎ始めた。

 

「火山弾が来る! 全員散らばって回避! 直撃と爆風に注意しろ!!」

 

 最初の1発が落ちた時に、ディアベルが声を張り上げて周りの者達に指示をしたが、それはここに集まる攻略組全員の耳に届き、一同は降り注ぐ火山弾を避けるように動き出した。

 

 その刹那に、火山弾は次々と地面に着弾して爆発。轟音と衝撃を無数に散らして地面を蹂躙する。これほどまでの火山弾攻撃、多くの者達が巻き込まれただろうと思って周りを見ながら動き続けたが、意外にも皆上手く避ける事が出来ており、1人も火山弾によってダメージを受ける事が無かった。

 

 明らかにダメージを受けてしまいそうな攻撃だというのに、誰も被弾せずに動き続ける事が出来ている――それだけでも攻略組の成長具合がわかり、俺は感動しそうになった。しかし今はとてもそれどころではないため、すぐにそれを飲み込んで《噴火の亀竜》に顔を向ける。

 

 無数の火山弾が雨のように降り注ぐ中、《噴火の亀竜》は溶岩を飲み込んだ事によって発生した熱を感じているかのように先程と同じ姿勢を取り――腹の甲殻を開いて排熱を開始した。

 

「今だ!!」

 




ボス戦の最中、別なところでしっかり起こる異変。

そして、例えゲームの中であっても生物としてちゃんとしているのがこの世界のモンスター。

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