不死鳥の紅い髪飾り   作:何某

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不死鳥の紅い髪飾り
7日目


 太陽はまた昇る。変わることなく、また昇る。

 夜明けの空は突き刺さるように渇いた頬を照らし出す。

 

 

       ●

 

 

 花畑の中央、髪をひとつ縛りにした少女が佇んでいた。

 両手につい土を払いながら、四苦八苦しつつもどうにかここまで持ってきたそれを見る。 

 眼下にある私が立てた石にはなにもない。

 まっさらで、何かが刻まれているわけじゃない。

 けれど、いくつかの石によって支えられるようにして地面に突き刺さった巨石はなかなか重かった。

 そして最後に摘んできた花を供える。

 全部、一人でやった。

 

 

「………」

 

 

 荷物を置いて石の前に屈みこむ。大半は戦いのあとで荒らされてしまい、以前の美しい景色など見る影もない。しかし、所々に残った花を眺め、それが一面に咲き誇った景色は今でも思い起こすことができた。元々囲まれたここはとても静かで、人が眠るにはいい場所だ。きっと花が元通りになればさらに相応しい場所になるなと思った。

 

 

「…眠るなんて言ったらあいつは怒るかな?」

 

 

 少し先に行ってるだけだとか言いそうだ。

 そんな言葉すら足元に埋まる抜け殻は答えられないけれど。

 

 

「さて。もうそろそろ行かないと」

 

 

 膝を叩きながら立ち上がる。

 元々行く宛てのない旅だ。急ぐ理由は特にない。

 だが今日という日は悲しいことに今しかない。私が立ち止まっても時間が止まるわけじゃない。

 それに、こんなところでいつまでもグズグズしていては後で何を言われるか。

 荷物を持って、広場を出る。

 サワサワと葉のかすれる音が妙によく聞こえた。

 

 

       ●

 

 

 ちょうど花畑を出て森に入る直前。私の髪を結ぶ布が緩んでいたのかするりと解けてしまった。

 風に吹かれて運ばれた布は私の一歩後ろのあたりに落ちる。

 それは飛倉が死ぬ間際まで離さなかったものだった。

 

(これもいつか変えなくちゃね…)

 

 傍から見たらおかしな模様だ。飛倉の血によって彩られたこの布の模様は不気味とすら言われるかもしれない。しかもすでに乾ききった血が布自体をかなり痛めており、かなりボロボロになっていた。このままいつまでも使い続けるのはどう考えても難しいだろう。

 でも、今はこれが良いのだ。もう二度と逃げないようにしたかった。

 振り返って地面のそれを拾い上げながらそんなことを考えて、もう一度結び直して顔を上げた時。

 そこには私を見送るように揺れる無数の花たちと。

 花に囲まれた飛倉の墓石があった。

 

 

「・・・またね。」

 

 

 次にここに来るのはいつになるだろうか。

 少なくとも花が元通りになったその後にでありたいな、と思った。




 
一応本編はこれにて終了です。
1月以上間が空いてしまい申し訳ございませんでした&ここまで読んでくださった方々ありがとうございました。
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