なんと言うかごめんなさい。
そしてさらに言うのなら短くて申し訳ごさいません。
様々な物を捨ててきた。
己を捨て、時間を捨て、人を捨て、命を捨て、捨ててようやく私を手に入れた。
そして私は私を嫌悪した。
手に入れた夢はどうしようも無いほど単純な作業でしかなかった。
ただの掃除屋。言葉に現すならこれにつきる。
正義の味方に憧れた俺は、気が付けばただ殺しつくす掃除屋の私へと成り代わっていたのだから皮肉以外の何物でもないだろう。
抑止の守護者。私が世界と契約し、成り果てた存在。所謂英雄と呼ばれる者達と同じ存在になることで世界の時間軸から外れ、座と呼ばれる場所へ存在を移した
。
それからは世界の危機に対して、その危機を殲滅する奴隷。それが今の私、英雄エミヤだ。
とは言え私自身が何かするわけではない。私の分体が派遣され、終了後は私と分体が一つになることで、分体が経験した記憶を記録する。そう記録に変わってしまう。
それは知っているだけであり、感情など含まれないただの知識。素人の書いた小説にも劣る知識の羅列。
そこに興味や好奇心など生まれない。所詮はただの知識なのだから。
まぁ記録に救われた事もあるので、完全に蔑ろには出来ないのだが。
「で?貴様はこんな事を聞いて何がしたいのだ?」
「特に興味はないな。ただ俺の完成形をアンタに見た。だからアンタを知りたくなっただけだ」
「興味はないと言いつつ、私を知りたい……か。随分と矛盾しているな」
「言葉遊びをしたい訳じゃないんだよ。アンタの考えや、生い立ちに興味が無いだけで、英雄エミヤと言う戦闘者に興味があるんだよ」
そんな私だが、最近興味の対象が出来た。言わずもなが目の前の私である。しかし私と言うのも語弊がある。正確に言うと、異世界の私である。
本来″座″には座を構築する存在 以外は来れない。たとえ同じく座を有する英雄であろうと、だ。
それなのにも関わらず、異世界の私はここにいる。そして私と言葉を交わす。それがどんな異常なのか。はたまた奇跡なのかは分からない。ただ興味をひくのは十分すぎるのは確かであった。
「くっ。人に話させておいて興味が無いとは随分と酷い話だ」
「勝手に話しておいて良く言う。まぁ良い。単刀直入に言う。俺を鍛えろ」
「ふむ、鍛えろ……か。そこに私のメリットが見当たらないのたが?」
「正義の味方になりたかったんだろ?なら四の五の言わずに力を貸せ。それに俺を鍛えると言うことはお前を鍛えるのと同義だろ?自分を鍛えるのにメリットを求めるなよ」
「ここで正義の味方を出すか。なら私は正義の味方として悪魔である貴様を討つ必要があるのではないかね?さらに言うのなら私と貴様は魂の原形が同じなだけで世界軸も時間軸も含めて別の存在だ。私と貴様は同じではない」
意味の無い言葉を交わす。答など初めから決まっているし、この際私達が同じ存在だと言うのもどうでも良い事だ。
ただ私も元は人間であり感情も存在する。故に久しく閉ざされていたこの口も饒舌になってしまうのも仕方ないだろう。
「だから言っているだろう。言葉遊びをしたい訳じゃないんだよ。良いから答えろ。どうなんだ?」
「ふむ、せっかちな者は嫌われるぞ?まぁ良い。答えろと言うのならイエスだ。なにぶんこんな世界に囚われている身だ。暇をもて余しているのでな。貴様を八つ裂きにする大義名分を得たと思えば悪い話ではあるまい
私がイエスと答えたの対して目の前の私は存分に表情を歪めた。それを見た私は愉悦で笑い声が漏れる。その私を見て奴は
「……随分と良い性格をしているな。俺とは大違いだ」
「それはお褒めにあずかり恐悦至極。なに、貴様の様な無礼な小僧でも私のような人格者になれる可能性も万に一つくらいはあるだろう。精進したまえ」
「性格が悪いっていってんだよ!!」
「良いから来い。鍛えて欲しいのだろう?あいにくと人に物事を教えた事は無いに等しいのでな。ただ己を鍛えるのは割りと得意だ。何せ己をいじめぬけば良いのだから」
「て、テメェーーーー!!」
「ふん、一端に怒れる気概はあるのだな。なればこそ来い!泣き言などきかんぞ!」
「上等だ!」
それから始まるのはある意味自傷行為にも等しい戦闘。適度に力を抜かなくてはならないのが煩わしくもあるが、暇潰しと思えば悪くはない。
それに私自身、奴に興味はある。悠久を過ごす身だ。たまにはこんなことがあっても良いだろう。