GGO Tmc 裂傷と弾痕   作:Moldapo

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プロローグ

 

 

 

 

「......っ‼︎」

 

 唐突な爆発音とともに唖然として振り向いた彼女の視界には、先程まで自分がいたであろうボックスハウスが跡形もなく吹き飛び、瓦礫の山と化している光景が広がっていた。

 

「おい!!やったのか!?」

 

 砂漠の岩場から怒号をあげる声の主はその大きな操縦桿(そうじゅうかん)を握る細身の男に今にも殴りかからんとまくし立てた。

 埃っぽい閉鎖空間の中でスコープ探知器の表示上のプレイヤーを確認するや否や妬ましくそれを見つめながら落胆している素振りだ。

 

「大丈夫か!?」

 

 デザート柄の迷彩に身をつつみ古めかしい黒の汚れたマントを羽織った精悍な顔立ちの男が、焦りの表情を悟られまいと勢いよく手を伸ばした。

 

 男「今は逃げねぇとやべぇぞ!!!」

 

 手を掴み立ち上がった彼女にかなりの剣幕で放ったその言葉とほぼ同時に2回目の大きな破裂音と風を切るような音が聞こえこちらに近づいてくる。

 

 女「...わかってるわよ!...でも、あんなのって」

 

 男「あーもうっ!いいから早くっ!」

 

 掴んだ手をそのまま引っ張り、強引に彼女の足を動かし走り出した彼の行動は普段の彼からは感じ取れない真剣さを感じとることができたがすぐ近くの爆発音でそのような心情はかき消された。

 

 女「...っ!ねぇ、どこまで逃げるつもり?」

 

 男「そりゃ奴らの射程外だぁ!!」

 

 そういって男は右腰についたホルスターから銃身が黒と銀色のツートンカラー、フォアグリップに見慣れない刻印が刻まれた「S&W PC356」をサムセフティを解除しながら引き抜くと同時に、後ろに転がった数本のドラム缶へ向け3回引き金を引いた。

 銃口から発射されるのは9mmパラベラム弾より強力な高速弾である「.356 S&W」。

 もともと競技用としても流用されていた銃でもあるため「IPSC(国際実用射撃連盟)」の規格でもある.45 APC弾のメジャークラスに適合させるために0.365インチの口径にしたことからこの名称となる。

 しかしこの弾薬はサイズ的には9mmパラベラム弾と同様でありながら、.357マグナム弾並みの威力が引き出すことができると言われている。現実ではIPSCが9mm口径弾の使用を禁止したため、弾薬を製造するメーカーがなくなりこの銃も姿を消している。

 その弾がドラム缶へ吸い込まれるように直撃し、爆炎を上げる。

 

 

 

 

「見失いました!」

 

 細身の男がそう告げると

 

「貴様はなにをやっておるっ!!」

 

 細身の男に向かって激しく怒鳴りかける軍服の男は自らの目で激しく燃え上がるドラム缶と煙しか映っていない画面を見て悪態つく。

 

「ふんっ!まぁいい。次の狩場にいくぞ!」

 

 ブンッという音とともにその機械の塊は少しずつ動きだしキャタピラの音を振動として轟かせながら砂嵐の中に向かっていく。その戦車を崩れかけた廃墟の傍らでナイフを磨いているマントを深くかぶったプレイヤーが不敵な笑みを浮かべながら見送っていた。

 

 

 

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 男「戦ってみたかったなぁ、あのナイフ使い」

 

 女「はぁ...あなた状況わかってるの?」

 

 男が運転する4輪バギーの後ろに乗りながら少し怒った顔を見せる。

 

 男「だってさ詩乃ちゃん!この世界だとナイフ使いなんて珍しいんだぜ!」

 

 女「ちょっと、この世界ではシノンだって言ってるでしょ!」

 

 男「ごめんごめんっ!癖なんだよな!」

 

 調子よく言葉を返す男に若干の苛立ちめいたものを感じた彼女は不敵に笑いながら言う。

 

 シノン「あなたみたいに本名そのまま使ってる人はいいでしょうけど、橋川くん?」

 

 少し皮肉った表現で彼の名前を呼ぶと、唐突な発言に男は驚いてこちらを見た。

 

 男「名字はやめてくれ〜!(あらた)だから!あ・ら・た!」

 

 シノン「...あなたといると疲れるわ」

 

 新「まぁまぁ、そう言わないでよ!しかしあのナイフの奴、絶対強かったな」

 

おそらく彼は先ほどまで戦闘していた5人体制のスコードロンの一人を指しているのだろう。

 

 シノン「あの敵4人の後ろにいたフードの?」

 

 新「そうそう!シノンが撃った弾よけた奴」

 

 シノン「...あんた殺されたいの?」

 

 新「ちょ!落ち着いてっ!と、とにかく動きは完全AGI特化タイプっぽかっただろ!」

 

 シノン「でもナイフどころか武器使ってなかったわよ」

 

 新「こういうのは同じナイフ使いなら分かるの」

 

 そういって腰の後ろにクロスしてつけられているナイフ用のホルスターから先になるに連れ湾曲した独特な形の刀身が特徴的な2本のマチェットを見せる様にこちらに向けた。

 

 新「シノンだって強いスナイパーとか見ただけでわかるだろ?」

 

 シノン「...それはそうね」

 

 新「それと一緒。あーもう少しで戦えたのに、」

 

 シノン「...まさかあんなことが起こるなんて...」

 

 

 

 

 砂漠の中のかつて小さな街であったであろう廃墟群の大通りで新と例のナイフ使いが対峙した時、そのスコードロンの他の4人はすでに私が撃ち抜いていた。

 新が最後の敵となるそのナイフ使いと戦いがっていたのは薄々気がついていたし手を出すのは良くないかと思って手を出さないでいた。

 しかし...

 

 しばらく対峙していたと思ったら2人ともいきなり逆方向に走っていくのが見えた。とっさにナイフの方に照準を合わせ撃ち込んだがあっさりよけられて見失ってしまう。全力でこちらに向かってくる新に違和感を覚えながら私はその姿を岩場に設置された壊れたボックスハウスの中からPGM へカートⅡのスコープ越しに見ていた。もちろん倍率をあげて...

 

 

 

 

 

 シノン「そしたらいきなり右の方から大きな音がしてとっさにボックスハウス飛び出したら、いきなり吹き飛んだってわけ」

 

 新「ありゃ俺のアングルからみたらシノン吹っ飛んだと思うぜ!」

 

 シノン「はいはい、...このゲームに戦車なんて出てこなかったはずだけど...新型のMOBってわけじゃなさそうだし...」

 

 新「まぁまぁ、少なくともなんかありそっ

 

 シノン「MOBじゃないとしてもなにかしらの情報が情報屋にあがってるはずだし...」

 

 新「...せ、せっかくの初パーティだったけどとんだ目にあっちまったな!」

 

 シノン「...もしかしたらチート行為?だとしてもあまり...」

 

 新「あの...」

 

 

 

 そうこうしていると、ピピッという音がシノンの端末から聞こえてきた。

 

 

 シノン「あっごめん、リーファから呼び出し」

 

 新「リーファちゃん!?」

 

 シノン「うざい、あんたも来る?」

 

 新「いくいく!!...ってうざいってど「はいはい、」

 

 

 簡単に、そして端的に話を流した彼女は熱くなってる横の男に向かってため息を尽きつつ、呼び出された町の酒場へと早く向かうため「飛ばして」と言おうと思ったが、既にバギーのスピードは上がっていたため、ゆるい微笑みを浮かべて砂漠をかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から本編です。
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