GGO Tmc 裂傷と弾痕   作:Moldapo

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投稿が遅れて申し訳ない!
がんばりやす!


8話 台本無き酒場

 

 シノン「...あんたは...っ!」

 

 先ほど発表されたことを含め、現在の状況がほとんど頭では理解しきれていない彼女は、思考や熟慮といったものを全て置き去りにして、今、目の前に現れた男に対して素の反応をすることしか出来なかった。

 

 リズ「ゴリ!!来てたの!?」

 

 ゴリ「ああ、可愛らしい鳩たちが豆鉄砲を食らってる間にな...」

 

 そう言いながら怪しく笑う彼に対して私は一目散に掴みかかった。

 

 シノン「あんたッ!...まさか知ってたの!?」

 

 リズ「ちょ、ちょっと、シノン!」

 

 ゴリ「おいおい、やめてくれよ。俺はまだハンバーグにはなりたかねぇぜ」

 

 シノン「...ふざけないでッ!」

 

 掴んだ彼の襟元に力を加え続け威嚇しているのにも関わらず、まったく動じる様子を見せない男はある方向を指差した。

 

 ゴリ「...おい、まだ終わってねぇみたいだぜ」

 

 この場にいる全員の視線が壁に掛けられた液晶モニターに集中する。

 

「なお!本大会の参加受付はッ!本日0時までとさせて頂きます!」

 

 シノン「!!」

 

「混雑が予想されますが、この決定も予選人数の縮小の為として皆さん悪しからず。とのことですっ!」

 

 それではっ、と放送は終了した。

 

 シリカ「そんな...」

 

 シノン「...どうなってるのよ」

 

 腕に目一杯の力を入れているはずなのになぜか力が入っていない様な感覚を味わった私に対し、抵抗する様子もなく男は掴まれたまま答える。

 

 ゴリ「...知ってたかって言われると今発表されたんだ、当然知るはずもない...」

 

 ゴリ「だが...こうなる気はしてたぜ...っ」

 

 リズ「はぁ?あんたそれ、どう言うことよ?」

 

 ゴリ「なに、おまえも情報屋の端くれなら耳にしてるだろう」

 

 ゴリ「最近、結構名の知れたプレイヤー達のメイン武器が別の銃に変わったって事が多かったじゃねぇか」

 

 リズ「そんなこと知ってるのあんたくらいよ、」

 

 そういう彼女だったが、私のことを少し気にかけている様子だった。

 

 シノン「それで...メイン武器が奪われたのは今回の大会の為だった、って言いたいの?」

 

 ゴリ「ご名答だ」

 

 シノン「でもなんでそんなこと言い切れるのよっ!」

 

 大きな声を出した私に対し、ニヤリと笑った彼はほとんど力をかけずに私の手をスッとほどくと、まるでブロードウェイの悪役の様に店の中を歩き始めた。

 

 

 ゴリ「よく考えてもみろ。いくら集めるといえど、あれほどの手練れたちを相手にそう何度も勝てると思うか?」

 

 私はふとあの酒場でのPDWの跳弾を思い出した。

 

 シノン「...なにが言いたいのよ?」

 

 リズ「待って、シノン...確かに...敵を倒した時のドロップはランダムのはずだから、一回倒しただけでメイン武器だけ都合よくってのはおかしいわね...」

 

 ゴリ「となると、狙ってやったんだとしたらこれはただのプレイヤーの仕業じゃねぇってことだ」

 

 シノン「じゃあ...大会の賞品にもなってるってことは...」

 

 ゴリ「そうだ。つまり運営が動いた、もしくは少なくとも関与したと考えるのが妥当じゃないか?」

 

 だから予想は出来ていた、と男は続ける。

 

 ゴリ「まぁ、特定のプレイヤーがなんかしらで手に入れた武器を運営が買い取ったとも考えられるが...」

 

 シリカ「特定のプレイヤー?って強い人、とかですか?」

 

 リズ「単にそこそこの強さのプレイヤーが多人数で挑んだってことも考えられるんじゃない?」

 

 ショーケースに後ろ肘をついた彼は鼻で笑う。

 

 ゴリ「アンチョビ共がいくら群れたってジョーズに敵うはずもねぇ」

 

 ゴリ「しかもその強ぇサメたちはまるでパスタの具みたいなそいつ等を鬱陶しく思って群れない奴ばっかときた」

 

 ゴリ「だいたいシノンの武器を奪っていった奴は1人だったんだろう?」

 

 こちらをみてニヤつく彼から目をそらした。

 

 シリカ「でもっ...そんなことして運営さんにはメリットとかあるんでしょうか?」

 

 再度鼻で笑う男の姿がそこにはあった。

 

 ゴリ「ありまくりだぜ...お嬢ちゃん」

 

 ゴリ「なんてったって運営側からしたら話題になるってことは大歓迎だ」

 

 ゴリ「出来たてほやほやの新しいシステムで大会をやろうってならなおさらな。」

 

 ゴリ「もちろん金もそうだが、奴らはそれよりも人、と言うより人の目を集めている」

 

 少なくともそれは成功したみたいだ、と続ける彼の言っている真意がわからなかったが、私は率直な疑問をぶつけた。

 

 

 シノン「...じゃあ、私のヘカートを奪っていったあいつも...もしかしたら運営の人間かもってこと?」

 

 ゴリ「奴がか?」

 

 シノン「ええ」

 

 ゴリ「...そいつは俺の口からは言えねぇな」

 

 シノン「...はっ!?...このっ!」

 

 私は言うことを聞かない腕にもう一度掴みかかれるか確かめるために精一杯力を込めた。

 

 ゴリ「おいおい、ちょっと待ってくれよ」

 

 こちらの怒りの感情が彼の言葉という壁にぶつかり床に落ちたが、男は構わず続ける。

 

 ゴリ「ここに俺たちが今日集まった理由はそいつの居場所の話だろ...」

 

 ゴリ「そいつが何者なのかって情報は俺は話せない...と言うより知らないかもしれないだろ?」

 

 シノン「...っ」

 

 食った様に白々しくこちらに話しかける彼に苛立ちの視線を向け続ける。

 

 ゴリ「フンっ...フードバレンチのミートパイを食った時みたいな顔しても無駄だ、俺は話せない」

 

 両手を上げる動作をしている目の前の男に、自分のペースを乱されていることに気がついた私は今日の目的を思い出し話を切り替える。

 

 シノン「あなたのっ!そのどーでもいいジョークはもういいわ!じゃあ、聞くけどその男は今どこにいるの!?」

 

 ゴリ「それなんだが」

 

 ゴリ「...悪いがそれも話せない」

 

 シノン・リズ「はぁ!?」

 

 ゴリ「正確には話せなくなった...というほうが正しいな」

 

 シノン「あんたっ!いい加減に...っ!」

 

 ゴリ「シノン、話を最後まできくことを覚えろ」

 

 手のひらをこちらへ突き出し、再び掴みかかろうとしていた私を制した彼はやれやれ、といった表情を見せる。

 

 ゴリ「なんで話せなくなったかと言うとな...」

 

 ゴリ「...実はそいつから直々に依頼があったんだ」

 

 シノン「なっ...!」

 

 ゴリ「俺の情報は全て俺が買い取るから他言するな、とな」

 

 男の言葉に周りの空気が戦慄する。

 

 リズ「じゃあ、シノンへはなんの情報も教えられないってこと!?」

 

 シリカ「そんなのあんまりですっ!」

 

 シノン「...そんなのって...」

 

 今日という日にすべての期待を込めていただけに、その事実は私にとってかなりダメージの大きな事実だった。

 

 ゴリ「だから、話を最後まできけよ」

 

 こちらの反応をよそにそういうとショーケースから離れ、真剣な面持ちでこちらへゆっくり向かってくる。

 

 ゴリ「シノン、俺はお前を気にいった、これはゆるがねぇ事実だ」

 

 ゴリ「だが、奴ともまったく縁が無いってわけじゃねぇ」

 

 ゴリ「なんせ依頼料もすぐに用意するって話だ」

 

 シノン「...」

 

 男は不意にニヤリと笑い、続けた。

 

 ゴリ「それでだ...」

 

 ゴリ「実はこれからその金をそいつのとこに取りに行くってことになってるんだ...」

 

 シノン「...っ!」

 

 突拍子もなく彼から出た言葉に、あきらめかけた例の男に一気に近づけそうな感覚を感じた私は固唾を飲んで男の話を聞いた。

 

 ゴリ「簡単な話だ...そこに偶然、何も知らず俺の後をつけていたって事にすればいい...」

 

 リズ「ちょっとっあんた、それはルール違反じゃない!情報屋とし...っ」

 

 ゴリ「なんか間違っているか?」

 

 リズ「...っ」

 

 ゴリ「奴からの要件は奴自身の情報を漏らすなって事だけだ。俺が客の元へ集金にいくって情報はなんら関係ねぇ」

 

 芯の入った声で話す彼の雰囲気は、いつかの酒場でのそれを彷彿とさせる。

 

 リズ「あーっもうっ!勝手にしなさいよっ!」

 

 ぷいっとそっぽを向いた彼女はどこか不機嫌そうな面持ちだった。

 

 ゴリ「大丈夫だ、心配するな。情報屋としての誇りを忘れたわけじゃない」

 

 ゴリ「お前の友人に協力してぇだけさ」

 

 そう言うと後ろを向きうつむいている桃色髪の頭をぽんっと叩く。

 

 リズ「...なら...いいけど」

 

 少し赤らめた顔を隠す彼女をよく見ずに男はドアに向かってズカズカ歩き出す。

 

 

 ゴリ「と言うわけだシノンッ!」

 

 ゴリ「...悪いなぁ!そういうわけで俺は奴の情報を話せねぇ、お前の役に立てなくてスマねぇな〜、」

 

 ゴリ「おっと!これから店の集金に行かなきゃならねぇんだった、悪いが俺は先に行くぜ、」

 

 男はそう大袈裟に言うと背を向けて手を振りながら店を出ていく。その大きな背中に向かって私は顔をあげ、ニヤリと笑いながら呟いた。

 

 シノン「...ブレーメンの子ども劇団ですら、もう少しマシな演技するわよ...っ!」

 

 恥ずかしさを少しだけ含んだ表情の彼女は、その頼りになる岩の様な背中とともによく知った友人の店を後にした。

 

 

 

 

 

 

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 ゴリ「少し気になることがある」

 

 目的地のわからない道すがら、細い路地を進む中で少し前を歩く男は、見えはしないがおそらく神妙な面持ちで私に聞いた。

 

 シノン「なに?」

 

 ゴリ「正直、あの発表に対してもっと動揺しているかと思ったんだが意外と冷静だったな」

 

 シノン「...あれが冷静に見えた?」

 

 ゴリ「ふっ、言葉を間違えたな、立ち直りが早かったなってことだ」

 

 軽く流した私は言われて気がついたが確かに思えば、はじめはかなり動揺したけど男の話を聞いているうちにヘカートに近づけるという確信からか私は逆に冷静になったのかもしれない。

 

 シノン「そうね。驚き疲れたってのもあるけど、何より私はやるべきことをやらなくてはいけないの」

 

 ゴリ「意地でも取り返すってことか...」

 

 無言で答えた私に男はその背中で聞いた。

 

 ゴリ「なぜあの銃に...そこまでの思い入れがあるんだ?」

 

 シノン「それは...」

 

 そんなの決まってる、手に入れた時から私はヘカートとともに戦うと決めた。自分の弱さと戦うと...。そして今まで数えきれないほどの戦闘をする中で一緒に戦い、それに答えてくれた。

 勝負の話だけじゃない。

 私の心の弱さをあの銃は強くしてくれた。いわば信頼できる相棒のようなものだった。所詮ゲームと言われても私にとってはそれはとても重要なことだった。

 

 そう言おうと思ったが、私は口を開く途中でやめた。

 

 シノン「わざわざ聞かなくても分かるんじゃない?情報屋さん?」

 

 ゴリ「けっ、変わらねぇな...」

 

 何度見たかわからない彼の不敵に笑うその顔はいつ見ても手の内が見えない。

 

 ゴリ「わからんでもねぇが、情報ってのは信憑性が大事なのさ。本人の口から聞いた情報だけが真実、他の予想や憶測はただのデコイさ」

 

 シノン「覚えておくわ」

 

 ゴリ「たまにはその口から聞きてぇもんだ」

 

 立てた親指でこちらの方を指さす彼に形式的な笑顔を向けると、男の雰囲気がキリッとしたものに切り替わるのを感じた。

 

 ゴリ「さぁて、おしゃべりは終わりだ、もうすぐ到着だ」

 

 ゴリ「俺たちがこれから行く店の名前は、[Ete Fuetes(エテ フェテス)]。洒落(しゃれ)た酒場だが、ある筋では有名な店だ」

 

 シノン「もうこの際、店の事はどうでもいいわ」

 

 そういう彼から距離をとり歩き始めた私は、ヘカートを奪った例のサングラスの男がいるであろうその店に、いよいよ踏み込むという事もあって体に緊張が走るのを感じた。しかし再三取り返すことを決意したこともあって、むしろ体は軽かった。

 ゲームとはいえ「大切なものを取り返す」という気持ちで動くこの体は、まさしく私の体なのだと再認識し、男と対峙するその時に備えた。

 

 路地を抜けた先、広い通りに面した不気味に建て並んでいる建物群の前に彼は立っていた。そしておもむろにその一つである赤色のドアが印象的な古びた洋風の建物の中に入っていった。

 

 シノン(...いよいよね...)

 

 私はいつもの様に深く深呼吸をすると、その吐き切っていない息とともに舞う土埃に埋もれた、まるで血痕のような色のドアに向かって確かな決意とともに歩き出した。

 この時の私は、まさか自分が尾行(つけ)られていることなど全く気がついていなかった。

 

 

 

 

 

 

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 数時間前...

 

 

 先輩との買い物を終えた私はバスを使い自宅に戻る途中、「今日暇か?」というメッセージがこれまたよく知ったセンパイから送られて来ていることに気がついた。

 

 直葉(ホントにいつも急なんだから...この人、)

 

 少し呆れ気味に早々と「どうしたんですか?急に?」と持っていた携帯に入力し、送信ボタンを押した。

 

「いやぁ~、実は入ってた予定が少し延期されちゃってさ~」

 

「で、暇になったから付き合えと?」

 

「いやいやっ、特にやることないし直葉ちゃんなにしてるのかな?って」

 

「それほとんど同じコトあたし言いましたよね!?」

 

「えっ!?そうだった?気が付かなかった!」

 

「センパイってやっぱバカなんですね...」

 

「はぁ?そんなことねぇよ!で、どうよ?」

 

「まぁ、私もこのあとは特に予定は無いですけど」

 

「ああ、そうなの?ちょっと行きたいとこあってさ」

 

「別にいいですよ。あ、でもお昼過ぎ位でもいいですか?」

 

「おk!じゃあ、昼すぎにな」

 

「わかりました。」

 

「迎えに行くから準備できたら連絡して。それじゃ」

 

 メールのやり取りをしているとすでに自宅の最寄りの停留所に到着しており、それもドアが閉まり始めそうなのに気がつく。

 

 直葉「わわっ!ちょ、ちょっとっ!降りま~すっ!あたし降りますっ!」

 

 慌てて鞄とエコバッグを持って急いでバスから降りた私は、恥ずかしさのすべてを乗っていたバスに置いていきたかったが、同じくこの停留所で降りた人の嘲笑がトゲトゲしく刺さり、そそくさとこの場を退散した。

 

 直葉「っホントあのセンパイはっ!」

 

 携帯で「あほ~!」と送信し、自宅へと向かう。「もう準備出来たの?笑」と返信がきたが、私はその返信を見なかったことにした。

 

 自宅に到着するとそこはいつも通りひと気がなく、どうやら私だけしかいないようだった。

 

 リビングにエコバックなどをおき、二階の自分の部屋に戻って上着や鞄をいつもの場所に戻していく。そして綺麗に折りたたまれた部屋着に着替えるため、着ていた服をゆるやかに脱いでいく。

 その時、ふかふかのベッドの横の棚にあるアミュスフィアが一瞬視界に入ったが、詩乃さんは大丈夫、となんとなく感じ、視線を別のところにずらした。そして目的のために素早く着替えを終えた。

 

 一階に降りてきた部屋着の彼女は、キッチンにおいてあるエプロンを手に取りそれを身につけると、おもむろにエコバックの中身を台のうえに並べた。

 

 直葉(さてと、ちょっと早いかもだけど作っちゃいますか!)

 

 調理道具を準備する彼女はとても楽しそうで、なにより、可愛さがにじみ出ていたが、それを見ることができない世の男性たちは、今夜もひとり缶ビール片手に枕を濡らすしかないのであった。

 

 

 

 

 




続きます。

あれ?直葉って意外と可愛いかもね
しかし自分はシノン一択っす!
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