GGO Tmc 裂傷と弾痕   作:Moldapo

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10話 丘の下のオアシス

 

 

 

 

 

 

「ひとつ聞いてもいいか?」

 

「なんでも聞いてくれて構わないよ」

 

「お前は感じないか?」

 

「ん?一体何を?」

 

「恐怖とかそう言った類のものだ」

 

「ああ、感じるよ。当たり前だろ?」

 

「じゃあ、何故逃げ出したりしないんだ?」

 

「こちらからしたら君にそれを聞きたいよ」

 

「...はぐらかそうとするな」

 

「ん~、強いて言うなら、意地...かな」

 

「ふっ、お前の口からそれが出るとはな...」

 

「逆に聞くけど君は何故なんだい?」

 

「おれは...

 

 

 

 

 ~~~

 

 ~~

 

 

 

 

 

 

 昼頃 桐ヶ谷家

 

 

 

 すっかり散らかしてしまったキッチンの後片付けを終えた私は、作りすぎてしまったそれらが乗ったお皿に綺麗にラップをかけ冷蔵庫にしまった。

 

 直葉「大丈夫かな...?いやっ、大丈夫よね!」

 

 それらの中でもひときわ形の良く綺麗に出来たものを選んだはず、きっと大丈夫、と自分に言い聞かせた彼女は、お皿とは違う別の箱、いってしまえば普通の弁当箱を専用の手提げ袋にしまうと携帯を操作した。

 

 直葉「準備出来ました。っと」

 

 ホッとひと息した彼女だったがすぐに振動する端末に、はやっ、と驚くとその内容を確認した。

 

「了解!今近くのコンビニだからすぐ行くな!」

 

 直葉「え~!?はやいはやいっ!」

 

 部屋着のままの彼女はこれから出発しこちらに向かってくると思い、着替えやシャワーなどのそれらの時間を逆算してメッセージを送ったつもりだった。

 

「センパイッ!早いです!もう少し待って」

 

「おう!そうか!すぐいけるからほんとに準備出来たら言ってくれ!」

 

「わかりました。」

 

 今度こそホッとひと息ついた彼女は、携帯を操作しながら自分の部屋に戻ろうと足を進める。

 

 直葉「えっと、お兄ちゃんへ。今日実家に戻るなら冷蔵庫にご飯作ってあるから温めて食べてね、」

 

 ふと二階の自分の部屋の隣り、今は誰も住んでいないその部屋が気になり、そのドアをゆっくりと開けてみる。

 そこにはかつて自分の兄が生活していた名残はカーテンしか残っておらず、本棚やベッド、あのゲーム機すらそこにはなく閑散としていた。かつて隣同士の部屋から一緒に冒険した時の思い出すら、うっすらと残る程度になってしまったことが、内心物悲しく寂しい事であると感じた。

 

 直葉「お兄ちゃん...戻ってこないかな...」

 

 いやいや、と自分を律しつつ部屋に戻ると先ほどたたんだ服とクローゼットに閉まってある服の中から今から着ていく服を選びお風呂場へと持って行こうと振り返った。

 その時、壁に立てかけてある竹刀と当時二人で剣道をしていた時にとった写真が留めてあるコルクボードに目がいき、無意識に思い出がフラッシュバックした。これまでの楽しかった思い出や淡い感情、そして今の状況を振り返ってしまった彼女はゆるく表情では笑いながら呟く。

 

 直葉「...えへっ、また一緒に剣道やりたいな...っ」

 

 そういう彼女は人を待たせていることを思い出し、その淡い思い出に触りながらも早足で一階にあるお風呂場へと向かっていった。

 

 そのさなか、これから会う人物に対して自分はいったいどんな感情を抱いているのだろうと考えたが答えはわからず、綺麗に整理・清掃された真っ白な浴室へと一糸まとわぬ姿で入っていった。

 

 

 

 

 

 

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 直葉「お待たせしました、センパイ」

 

 新「おおー桐ヶ谷!待った待った!待ちくたびれた!」

 

 にこやかに冗談を飛ばす彼からは嫌味の感情などは一切感じられず、むしろ待たされて嬉しかったとも感じられる雰囲気が出ていた。

 

 直葉「すいませんね!準備が遅くてっ!」

 

 新「まぁまぁ、気にするなっ。女の子を待たすよりは全然いいからな!」

 

 直葉「無意識に急かされましたけどっ。...じゃあ、失礼します」

 

 そう言って彼の車の助手席に乗り込んだ私は鞄の中に入れたお弁当が傾かないように注意しながら鞄を置いた。

 

 新「いやー、急に誘っちゃってごめんな~」

 

 直葉「いえ、特に予定もなかったですし。行きたいところってどこなんですか?」

 

 新「あーいやっ、えっとな、飯でもどうかな...って」

 

 直葉「なるほど...。」

 

 直葉(まずい!ピンチだッ!)

 

 言わずもがな、今この足元の鞄の中には彼の言う「飯」になりうる、というか「飯」そのものが入っている。このまま会話が続けば、いずれどこかのファミレスやらラーメン屋などに行くことになってしまうだろう。

 その事態だけは絶対に避けなければならない。

 

 直葉「あ~!センパイ!実は私!もう食べちゃったんですよー!」

 

 新「なに~!?おまえ...俺をおいて自分だけ満腹感を味わっているのか...」

 

 直葉「言ってくれたら、食べなかったんですけどー、ごめんなさいー!」

 

 新「くっ!お前だけは信じてたのにっ、くそぅ、こんなのあんまりだよ」

 

 直葉(...いまだ!)

 

 直葉「センパイ!実はわた...」

 

 新「大丈夫だ!桐ヶ谷!」

 

 直葉「し...えっ?」

 

 新「こんな事もあろうかと俺はいつも行くコンビニでこんなものをゲットしていた!!」

 

 そういう彼は二枚のサービス券のようなものをこちらに突き出してドヤ顔した。

 

 直葉「それは...?」

 

 新「フライドチキン!フライドポテト!はたまた店のすべてのフライ商品と交換できる「揚げ物無料券」だ!!」

 

 直葉「...。」

 

 新「しかもッ!期限は今日まで...。これは神がくれた選外一隅のチャンスだとは思わんかねっ!」

 

 直葉(う、うっとうしい...)

 

 あくまで安全運転を心がけスマートな運転をする彼だが、あまりのドヤ顔感に私は若干イラッとした。

 

 直葉「もうっ!センパイはそんなのばっか食べてるからってこの前言ったじゃないですかぁ!」

 

 新「だって結構うまいんだぜ」

 

 直葉「駄目ですダメです。全く、ネジ一本の騒ぎじゃないですよこれは、」

 

 新「でも桐ヶ谷。おまえもあそこのポテト食べたことあるだろ?」

 

 直葉「うっ...っ」

 

 大学近くの個人経営のコンビニにはチェーン店とは違い、意外としっかりとしたアラカルトが陳列されており、ポテトとチキンはその中でも人気商品。あの大学に通うものならば一度は食べたことがあり、なおかつもう一度食べたくなる味と口々に漏らすいうのはあまりに有名な話、と言うより常識的な話にまで上り詰めていた。

 

 直葉(途中で味見したとはいえ、やっぱりお腹へってるし...)

 

 こちらの雰囲気を察したのか彼が切り出す。

 

 新「どうだ?桐ヶ谷?一枚譲ってやってもいいんだぞ...」

 

 直葉「ううっ...」

 

 新「これでもう俺の食についての文句は言えないはずだなっ!」

 

 直葉「...くっ...!」

 

 新「はーっはっは!」

 

 勝ち誇ったような彼に向かい私は感極まって言った。

 

 直葉「いいですよっ!!センパイはチキンでもポテトでも食べててください!」

 

 直葉「私は作ってきたお弁当食べますからっ!!!」

 

 新「えっ?」

 

 直葉「...あっ。」

 

 そのコンビニの駐車場に到着すると同時に、静寂がコンパクトカーの狭い空間に対して密度濃く流れる。

 

 直葉(し、しまった...っ)

 

 新「桐ヶ谷...?」

 

 新「まさか...作ってきたのか...その、お弁当を...」

 

 顔が熱くなるのを感じた私は片手で顔を隠しながらもう片方の手を思いっきり横に振った。

 

 直葉「いやいやいやっ、あのっ!今日偶然!じゃなくてぇ!だって新くんがっ!あのそのっ!」

 

 自分でもパニックになっているのがわかったが、どうしていいかわからずよくわからないことを言っていた。

 そうしていると横に振っていた手をがっと掴まれて私は飛び上がりそうになった。

 

 新「直葉ちゃんっ!」

 

 直葉「はいっ!...」

 

 こちらを見ている彼の目に吸い込まれそうな感覚に陥りながら言葉を待った。

 

 新「...」

 

 新「...ょう...くしょ...」

 

 直葉「?」

 

 新「...ちくしょう!おれ今すげぇうれしい!うれしいぜ!!」

 

 直葉「えっ?」

 

 新「やっと前の呼び方に戻ってくれたな!直葉ちゃん!」

 

 直葉「えっとあの、」

 

 新「ずっと避けられてるって思ってたんだっ...!話し方も変わっちゃうしな」

 

 新「なんかしちゃったかなってさっ!」

 

 直葉「...センパイ?」

 

 新「そのセンパイってのはもう無しだ!これからは最初の呼び方にしてくれ!敬語もなしだ!」

 

 直葉「えっと、いいですけど...」

 

 新「俺も直葉ちゃんに戻すから、ってか、直葉ちゃんの前でだけ桐ヶ谷って言ってただけだけど!」

 

 新「とりあえず決定な!」

 

 直葉「はい...」

 

 新「だから敬語!」

 

 直葉「...うん、...わかった」

 

 新「よし!」

 

 なんだかんだでうまくいったような感じの雰囲気が漂っているが私は肝心なお弁当をまだ渡していなかった。

 

 直葉「それで...新くん...」

 

 新「ん?どうした?」

 

 

 

 直葉「前言ってた、とびきり美味しいか...は、わからないけど...バランス考えたの作ってきたのっ。よかったら食べて...?」

 

 

 

 鞄からお弁当を取り出して彼の目を見て渡す。

 

 

 新「直葉ちゃん...ありがちょ、っ!」

 

 

 直葉「...」

 

 

 新「...」

 

 

 直葉「...ぷっ!」

 

 直葉「あはははっ!!このタイミングでキメ顔して噛む人っているのっ!??」

 

 新「ちょ!うるせぇ!!いいだろ!別に!!」

 

 直葉「はははっ!やっぱり新くんってバカだわ!」

 

 新「あーもうっ!知らねぇよ!」

 

 恥ずかしくて赤面したいかにも不機嫌そうな彼に対して私は自分の腹筋のコントロールを失ったが、なにぶん心地よい雰囲気を感じることの出来たこのお弁当の件に対して、やってよかったと思わざるをえない私がそこにはいた。

 

 新「...まぁ、でもほんとありがとなっ!ちゃんと食べるよ...。」

 

 直葉「うん!どういたしまして!」

 

 どこの誰が見てもいい雰囲気の二人はまるで付き合いたてのカップルのような優しいオーラに包まれていた。

 

 とそこに携帯電話の電子音が水を指すように鳴り響いた。

 

 新「ああ、ごめん直葉ちゃん...ちょっと電話だ。話してきてもいいかな?」

 

 直葉「いいよ、あたしここで待ってるね」

 

 新「ごめんなっ、すぐ戻るわっ、」

 

 そう言って車の外にでて何やら話をしている彼の姿を見ながら私は物思いにふけた。

 

 直葉(ふふ、あんなに喜んでくれるなんて...作ってよかったっ...)

 

 にこやかに笑うその彼女の顔は芽生え出した新たな気持ちの種のように柔らかく繊細だった。

 そこに何やら申し訳無さそうな顔をした彼が戻ってきた。

 

 新「直葉ちゃん...ごめん、延期になったはずの予定が実は今日やることになっちゃって...」

 

 いかなきゃいけない、と続ける彼に対して私は朗らかにいった。

 

 直葉「別にいいよ、私も実はお弁当渡したかっただけだしっ」

 

 新「ごめんな、ってか家まで送るよ!」

 

 直葉「いいよいいよっ、ここからなら定期で帰れるし。遅れちゃったら大変だよっ」

 

 そう言って私は名残惜しさもほどほどにドアを開けるとそのまま車を降りた。

 

 新「サンキューな!あっ、お弁当食べたら絶対感想言うわ!」

 

 直葉「それじゃあ、待ってるね!まずいなんて言ったら許さないからっ!」

 

 新「大丈夫だ!直葉ちゃんが作ったものなら、何でもうまいはずだよ、あと鞄忘れてるよ!」

 

 直葉「あぁっ、ごめんごめんっ!」

 

 新「それじゃあ行くね!」

 

 そう言うと手を振りながら彼はコンビニを後にした。

 

 直葉「さてっと、帰ろっか!」

 

 そう言った彼女だったが、鞄の異変に気がつく。

 

 直葉「あれ?」

 

 そこには鞄の隙間に挟まれた一枚のサービス券がちょんと顔を出していた。

 彼女はニコッと笑いながらそれを掴むとコンビニの中に陽気に入っていったのだった。

 

 

 

 

 

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 夜 大学近くのコンビニ

 

 詩乃「なにやってるのよ...」

 

 時計をしきりに気にかける私は現在、うちの在学生がよく利用するコンビニの前にいた。ここにいる理由はいろいろあるが一番の理由としては桐ケ谷和人、キリトというアバターネームの男に会うためである。

 

 詩乃(大学から彼のアパートに行くならここを通るはずなのに...)

 

 例の男との勝負の約束をしてから私が現実の世界に戻って真っ先にしたことといえば、大学の電子工学科に所属する同級生への連絡だった。しかし、無駄に研究熱心な彼は大学が休みの休日であっても自身の研究は欠かさないほどいわゆる研究バカだった。

 しかし、こと、問題が起こった時において彼ほど頼りになる人はいない。あえて説明を省くが、今までも大きなことから些細な事まで彼自身の力で多くの人の問題を解決してきたのである。

 

 詩乃(...早くしないと...時間が)

 

 今回の大会に関しても、そんな彼の協力が必要だと私は直感的に感じ、彼の協力を仰ごうと彼に会う約束を取り付けたのだが、約束の時間を過ぎても一向に現れないという事と、タイムリミットがあるという事も相まって焦りを隠し切れない。

 

 詩乃(今は21:00。まだ大丈夫だけど...。)

 

 彼を交渉できたとしてもそこから移動やらなんやら、その他うんぬんをするため少なく見積もっても2時間ほどは掛かりそうな予測はたてられている。故に、わたしはかなりの焦りを表面に出しているのであった。

 

 詩乃(別の人に...いえ、彼でなくては駄目)

 

 詩乃(参加するだけなら誰でもいいけど、私は優勝しなくてはいけないっ!)

 

 詩乃(だからこそっ、ただでさえ時間がないのにこうして待ってるんだから...!)

 

 焦りや緊張で鼓動が早くなるのを感じた私は、これではいけない、と思い冷静になるため今日のことを振り返った。

 

 

 

 

 

 ゴリ「その可愛い子ちゃんは強いのかい?」

 

 シノン「ええ、少なくとも私は勝った事ないわ」

 

 ゴリ「そいつは驚きだ...」

 

 シノン「でも彼はおそらくこのゲームに長い間INしていない...」

 

 ゴリ「それなら...いや、言う方が野暮だな」

 

 シノン「ええ、彼でなくてはいけないの。」

 

 優勝するとなれば...という彼女は拳を握った。男はその姿に、大会に本気で優勝するつもりだという気迫をみた。

 

 シノン「...今日はありがとう。あなたのおかげであいつと接触できたの、本当に感謝するわ」

 

 その気迫をうちに秘め、ゆるやかな表情を見せた彼女に男は彼女の意志の強さを感じた。

 

 ゴリ「いいって...気にするな...。俺にできるのはこのくらいだ」

 

 ゴリ「まだあいつの多くは謎のままだが、今はシノン...お前が優勝できることを心から願うぜっ!」

 

 シノン「ありがとう...。それじゃあ、私は彼に連絡してくるわね」

 

 そう言って私はきびすを返した。

 

 ゴリ「シノン。」

 

 シノン「なに?...わっ、ちょっとっ!」

 

 振り返った私に彼はあるものを投げ渡した。

 

 ゴリ「助けてくれた礼...ってわけじゃねえんだが、まぁ持ってけや...」

 

 それは、特殊な形をしたグレネードのようなものだった。

 

 ゴリ「これでも俺の本職はそっちなんでね、お守りだと思って装備しておけ」

 

 シノン「...ええ、ありがとう...いただくわね」

 

 何から何まで豆な男ね、と感じた私は、目の前の男はやはり信頼に足るものと再確認し、その体躯のいい体に敬意の眼差しを送る。

 

 ゴリ「それと...もうひとつ、気になることがある」

 

 シノン「ええ、聞くわ」

 

 ゴリ「あくまでこれはまだ噂の段階だが...」

 

 そういう彼の夕焼けを背にした心妙な面持ちが妙な迫力を演出していた。

 

 ゴリ「どうも怪しげな兵器の目撃情報がチラホラと挙がってきている」

 

 シノン「...それって」

 

 どことなく記憶の片隅にあったその事について思い出しながら聞き返す私に男は背を向けて歩き出す。

 

 ゴリ「そうだ...お前たちも見たことがあるかもしれねぇがそいつは戦車だそうだ...」

 

 ゴリ「知っての通り、このゲームにそんなもの存在しねぇ...」

 

 ゴリ「...気をつけてくれ...」

 

 そういうと彼は夕焼けの路地へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 ゴリとの会話を思い出し冷静さを取り戻した私だったが、やはり焦る気持ちは拭えない。ならない携帯を握りしめながらも今後のことを模索した。

 

 詩乃(...ヘカートの奪還。それには私達は大会で優勝しなければいけない。でももっと言えばエントリーしなければそれすら夢のまた夢...)

 

 詩乃「!!」

 

 突如、持っていた端末が震えた。予告なく振動する携帯の画面を覗くと、そこには桐ヶ谷和人からの着信の画面が表示されていた。有無も言わずに私はその着信を取ると真っ先に問いただした。

 

 和人「もしもし、悪いなシノ...」

 

 詩乃「ちょっとっ!あんた今どこにいるのよ!?」

 

 和人「ど、どうしたんだよっ、大きな声出して、」

 

 詩乃「いいから答えなさいよ!今どこにいるの?」

 

 和人「い、今はアパートだよ、シノンが会って話したいって言うから部屋を片付けてたんだ」

 

 詩乃「なっ!?いつの間に帰ったの!?」

 

 和人「一緒に研究してた教授が歩くの大変だろうし、って車で送ってくれたんだ」

 

 詩乃「...っ!今から行くから待ってなさい!」

 

 和人「ちょっとシノッ」

 

 途中で電話を切った私は、一目散に夜の街をかけ出した。

 

今いるこの世界は現実世界。あのネオンの光る街とは違い、閑静な住宅街が広がるこの街を、か弱く体力のないスナイパーが全力で走り去るその姿は、すこし滑稽であると思われるかもしれない。しかし、事情を知る者達にとってはそれは儚い可能性にかけた、一筋の希望を掴むためのラストランなのだと感じさせ、固唾を飲んで見守るしかないのであった。

 

 

 

 

 

 

 




続きます

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