銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第一〇章:エリヤ・フィリップスの決意
第98話:課題だらけの今、見えない未来、失った過去 802年5月上旬 第一辺境総軍司令部~第二艦隊司令部~シャンプール市内


 司令官の朝は早い。早朝の五時三〇分に起床し、ランニングと筋トレで汗を流す。シャワーを浴びてから朝食をとる。七時になると、公用車に乗って司令部へと向かう。

 

 俺は二つの司令部を持っている。一つはシャンプール市ダンガニア区の第一辺境総軍司令部、もう一つはランカイ市の第二艦隊司令部だ。二つの司令部を掛け持ちする者は二人しかいない。チュン・ウー・チェン中将は総軍副参謀長と艦隊参謀長、ハラボフ大佐は総軍司令部副官と艦隊司令部副官を兼務した。

 

 第一辺境総軍司令部に出勤した日は、総軍全体に関わる仕事を処理した。宇宙部隊と地上部隊の統合運用計画を策定し、後方支援体制を整え、予算と人員を確保し、隣接部隊や自治体との関係を調整する。

 

「デスクワークになると本当に生き生きしますな」

 

 総軍情報部長ハンス・ベッカー准将が意地悪な笑いを浮かべた。

 

「戦争の才能はないからね。せめてこっちで頑張らないと」

 

 俺は善良そうな笑顔を作った。一〇〇を超える戦いに参加したことにより、ただの凡将から歴戦の凡将となった。どんなに頑張っても、凡将は凡将なのだ。勝利を収めるには準備段階で頑張る必要がある。

 

 艦隊・地上軍・方面軍の統合訓練も、第一辺境総軍の仕事である。最大の課題は秋の統合演習であった。実施場所はイゼルローン回廊で、イゼルローン総軍との合同演習になる。参加兵力は艦艇四万隻、兵員八〇〇万人に及ぶ。

 

 第二艦隊・第一一艦隊・第六地上軍・第五五独立分艦隊・第五七独立分艦隊は、演習に向けた訓練を進めている。初期段階では同一艦種・同一兵種ごとの訓練を行い、戦隊単位・旅団単位の練度向上を図る。応用段階では複数艦種・複数兵種による連携の強化に努め、訓練規模を拡大し、艦隊単位・地上軍単位の練度向上に繋げていく。複数軍種による統合訓練はその先にある。

 

「第一一艦隊は気合が入ってますねえ」

 

 総軍参謀長ワイドボーン大将が報告書を見て目を細めた。

 

「ホーランド提督は練兵手腕も超一流だよ。芸術的艦隊運動を成し遂げた手腕は今も健在だ」

 

 俺は得意そうに胸を反らした。部下が褒められることは、自分が褒められることよりも嬉しい。ホーランド大将が往年の手腕を発揮してくれたことも嬉しかった。

 

「他の部隊はまだまだ時間が必要です」

「一日でも早く仕上げたいもんだ」

「焦ることはありません。腰を据えて取り組みましょう」

 

 ワイドボーン参謀は拙速を良しとするタイプの用兵家だが、第一辺境総軍については長い目で見ている。客観的に見れば、他の部隊が遅れているとはいえない。第一一艦隊の向上が早すぎるのである。

 

「緊急速報です」

 

 チャイムが指令室に鳴り響き、俺の心臓が激しく飛び跳ねた。一体何が起きたのか?

 

「シャンプールのジャンガラ諸島でマグニチュード九・一の地震が……」

「なんだ、地震か」

 

 俺は胸を撫でおろした。ジャンガラの地震は二週間前から予知されていた。地震による被害が予想される地域にはほとんど人が住んでいない。わずかな住民は疎開を済ませた。津波対策もとっくに完了している。被害はほとんど出ないだろう。

 

 最近、緊急速報恐怖症になった。第一総軍管内で大事件や大災害が起きたら、俺が対処しなければならない。エル・ファシル革命政府との戦いは今も続いている。アポロニア人民党黄旗派や秋風旅団は、何をしでかすかわからない。麻薬組織メールイェンは、ライバルのカメラートに反撃する機会を伺う。宇宙海賊、反戦運動、極右民兵、分離主義者、宗教テロリスト、反移民運動、ゲルマン至上主義運動も油断のならない存在だ。惑星規模や星系規模の災害にも備える必要がある。

 

 管内でテロや大規模災害が発生しても、俺が前線指揮をとることはない。大抵は各星系警備隊や各星域軍のレベルで処理できる。重大な事態に対しては、方面軍が対処する。方面軍単独で対処できない場合は、艦隊・地上軍・独立部隊を増援として送る。総軍司令官の仕事とは、平時には危機管理体制を構築し、有事には増援を迅速かつ的確に送ることだ。

 

 第一辺境総軍は治安維持作戦と対帝国作戦を想定しているので、帝国情勢にも気を配る。総軍独自で情報収集を行う一方で、国防情報本部・中央情報局・国務委員会・同盟警察公安部と情報交換を行う。

 

 四月末に帝国で政変が発生した。摂政リヒテンラーデ公爵と首相ゲルラッハ伯爵が記者会見を開き、引退を表明したのである。先帝の叔父にあたるジギスムント大公が新摂政、最高司令官ラインハルトが新首相となった。九七歳のジギスムント大公は傀儡に過ぎず、ラインハルトが実権を掌握したとみられる。

 

 ブラウンシュヴァイク公爵夫妻は爵位と所領を返上し、夫はキルヒアイス男爵、妻はミューゼル男爵夫人を名乗った。新興男爵家は爵位保有者の末席になる慣例により、キルヒアイス男爵は貴族筆頭から末席に下がった。

 

 ラインハルトはキルヒアイス男爵を帝国軍副最高司令官に任命し、軍務省第一次官・宇宙艦隊首席副司令長官・統帥本部第一次長・無任所尚書を兼任させた。宇宙軍及び地上軍の筆頭元帥の称号も与えた。公爵位と副首相職を失ったものの、軍令と軍政の全分野に関与する権限を与えられたため、実質的な権力は増大した。無任所尚書なので閣議に出席する資格を持っている。名実ともに帝国のナンバーツーとなったのである。

 

 新体制は首相ラインハルト、副最高司令官キルヒアイス元帥、第一副首相ブラッケ侯爵、第二副首相キールマンゼク伯爵の四頭体制となった。キールマンゼク伯爵はリヒテンラーデ公爵の側近中の側近だ。リヒテンラーデ派のラング元帥とワイツ男爵、ブラッケ派のリヒター伯爵、ラインハルト派のシルヴァーベルヒ都市開発局長官が副首相に起用された。

 

 現時点では粛清は起きていないようだ。リヒテンラーデ公爵とゲルラッハ伯爵は子供に家督を譲り、フェザーンへと移り住んだ。リヒテンラーデ派の高官には、官職や爵位が引き上げられた者も少なくない。地位を退いた者には巨額の終身年金と慰労金が下賜された。「病死」や「事故死」は一件も報告されていない。

 

 不可解極まりない政変であった。リヒテンラーデ派に対する粛清の動きはない。リヒテンラーデ公爵は引退したが、リヒテンラーデ家の権力と財力は健在だ。帝国警備隊は解体されたが、ラング元帥は副首相に昇進した。近衛兵や憲兵などもラインハルト派の手に渡ったが、解任された司令官たちは十分な見返りを受け取った。リヒテンラーデ派の勢力はほぼ温存されている。何を目的とした政変なのかは明らかになっていない。

 

 同盟軍は必死になって帝国の情報を集めた。新政権の方向性がわからなければ、対帝国戦略を立てることもできない。

 

「国防情報本部より資料が届きました」

 

 ハラボフ大佐が俺のデスクの上に一冊のファイルを置いた。国防情報本部が作成した帝国情勢に関する分析書だ。

 

「随分薄いなあ」

 

 俺は不満顔でファイルをめくる。目新しい情報がまったくないし、分析にも独自の視点が見られない。

 

 対外諜報力の低下ぶりが薄っぺらなファイルに現れている。クーデター鎮圧後、再建会議に加担したアルバネーゼ系の対外諜報専門家が粛清された。その結果、同盟軍、国務委員会、中央情報局の対外諜報部門は空っぽになった。国外にいた潜入工作員は、帝国やフェザーンに亡命した。

 

 今のところ、対外諜報部門を再建する動きはない。国防委員会情報部が国防情報本部に改組された時、対テロなどの国内諜報部門を中心とする組織になった。中央情報局や国務委員会調査部を掌握した保安警察出身者は、反体制勢力の情報収集に力を入れた。統合作戦本部長ビュコック元帥は対外諜報力の強化を求めたが、相手にされなかった。

 

「先が思いやられるな」

 

 俺は砂糖とクリームでドロドロになったコーヒーを飲みほした。空になったカップに、ハラボフ大佐が新しいコーヒーを注ぐ。コーヒーをいれるのは司令官付き当番兵の仕事だが、第一辺境総軍ではハラボフ大佐が担当している。

 

 背後も安全とは言えない。巨額の公共投資が政権支持率と経済成長率を急上昇させた。トリューニヒト政権は安定したかに見える。だが、ハイネセン学派に言わせると、「真の成長率」は急落しており、ラグナロック戦役末期の帝国よりも危険な状態だそうだ。危機感に駆られたハイネセン主義者による反トリューニヒト運動が先鋭化している。統一正義党と汎銀河左派ブロックは、フェザーンの経済進出に危機感を抱き、独自の反トリューニヒト運動を展開した。先行きは不透明だ。

 

 二人の総軍副司令官は、司令官と負担を分かち合う。完璧主義者のパエッタ大将は全体の動きに目を光らせ、間違いを修正した。温厚なヘイズ大将は司令部と現場のパイプ役を担った。

 

 幕僚チームは司令官に助言や助力を与える。処理能力に長けたワイドボーン参謀長が効率的に仕事を処理した。視野の広いチュン・ウー・チェン副参謀長が大局的な視点から分析を行った。アブダラ副参謀長は地上戦の専門家としての意見を述べた。ラオ作戦部長は作戦立案、ベッカー情報部長は情報活動、ウノ広報部長は後方支援、イレーシュ人事部長は人事管理、ファドリン計画部長は長期的な計画、マー通信部長は通信の確保をそれぞれ統括した。

 

 副官は常に司令官の脇に寄り添い、あらゆる仕事をサポートする。首席副官ハラボフ宇宙軍大佐は副官業務に精通している。次席副官ディッケル地上軍大尉は経験が浅いが、一生懸命頑張った。司令官としての仕事に専念できるのは、二人の副官が細かいことを片付けてくれるおかげだ。

 

 司令官はオフィスの外でも仕事をする。会議や式典に出席したり、配下部隊を視察したりするのだ。そういう時は副司令官が代わりに司令部を取り仕切る。副司令官が俺の代理として会議に出たり、視察に出かけたりすることもあった。

 

 多忙な司令官には、打ち合わせに割ける時間は無い。そのため、移動の合間に副官と打ち合わせを行う。

 

「交通違反防止キャンペーンの成果はまずまずだね。でも、パランティアだけは違反者が増えている。どういうことかな」

「パランティアの道路交通法は二か月前に改正されました。第一四条、第一七条、第二一条、第三四条の適用範囲が飛躍的に拡大しています。リューカスよりずっと厳しい内容です」

 

 ハラボフ大佐は俺が欲しい情報を的確に提供してくれた。

 

「君は星系法にも詳しいんだな」

「そうでなければ、お役に立てないと思いまして」

「さすがはハラボフ大佐だ」

 

 俺は感嘆の目でハラボフ大佐を見る。副官の鑑とは彼女のことだろう。

 

「指示をお願いします」

「リューカスより厳しいんだろう? 車のエンジンを掛けただけでも、罰金を取られかねない。対策が必要だね。資料を用意しておいてくれ」

 

 司令官にとっては移動時間も貴重な時間であった。知るべきことは多いのに、勉強に使える時間は少ない。昔は星系法を少し勉強したが、今は司令官としての仕事を学ぶだけで精一杯だ。勤勉な副官の存在はありがたいと感じる。

 

 第二艦隊司令部に出勤した日は、第二艦隊に関わる仕事を処理した。艦隊の運用計画を立て、兵を訓練し、規律を引き締める。第二艦隊幕僚を第一辺境総軍司令部に呼びつけた方が楽なのだが、それでは第二艦隊を軽く見ることになる。

 

 俺は週二日しか司令部にいないので、艦隊副司令官アップルトン中将の役割は極めて大きい。ジェニングス中将を副司令官補に任命し、アップルトン中将の補佐役とした。

 

 俺と同じ立場のヤン元帥は、デッシュ大将を第一三艦隊司令官代理に任命し、隊務を完全に委ねた。二週間に一回しか艦隊司令部に顔を出さないそうだ。合理的なやり方だと思うが、俺は自分で艦隊を運営したいと思った。

 

 第二艦隊幕僚チームのトップは参謀長チュン・ウー・チェン中将、ナンバーツーは副参謀長イブリン・ドールトン少将だ。俺がいない時は参謀長もいないので、副参謀長が幕僚チームを取り仕切ることが多い。兵站出身でリーダーシップのあるドールトン少将は、大任に耐え得る人物だ。パヴロヴィッチ少将を副参謀長補に任命し、ドールトン少将を補佐させた。

 

 余談だが、副参謀長補を選ぶ時にドールトン少将の希望を聞くと、「年下で未婚の美男子」という答えが返ってきた。無視したのは言うまでもない。

 

 艦隊司令官の最も重要な仕事は兵を鍛えることだ。第二艦隊は秋の統合演習で中軸を務める。可能な限り練度を高めなければならない。

 

 第二艦隊は最強の正規艦隊といわれる。旧第二艦隊出身者は、ラグナロックにもクーデターにも参加しなかったため、経験豊富な人材が生き残った。新鋭艦が多く配備されており、艦隊旗艦と分艦隊旗艦はトリグラフ級大型戦艦、巡航艦の半数がレダ級高速巡航艦という充実ぶりだ。それだけに期待も大きい。

 

「仕上がりはどうだ?」

「完成とはほど遠いですな」

 

 アップルトン中将は険しい表情を浮かべた。人参色の赤毛には白髪が混じっている。かつては立派な髭を生やしていたが、バイト先が髭を禁止していたのでそり落とした。そのため、軍人というよりは体育教師のように見える。

 

「リーダーシップの問題だね」

「その通りです」

「うちの士官はみんな真面目だ。でも、真面目なだけなんだ。規則を順守する。仕事を円滑に処理する。自分の意見は言わない。下士官ならそれだけでいいけど、士官としては物足りないね」

 

 俺はため息をつくと、高級指揮官たちの顔を思い浮かべた。A分艦隊司令官ケンボイ中将、B分艦隊司令官モンターニョ中将、C分艦隊司令官デュドネイ中将、D分艦隊司令官バルトハウザー中将、陸戦隊司令官コクラン中将……。主体性があるといえるのはコクラン中将だけだった。

 

 士官には意見を述べる責任、十分な説明を求める責任、より良い手段を提示する責任がある。自分の意見を述べない士官、疑問があっても説明を求めない士官、問題点を改善しようとしない士官は、役割を果たしているとは言えないだろう。真面目でなければ士官は務まらないが、真面目なだけでは士官は務まらない。

 

「ドーソン提督とパエッタ提督の影響ですな。二人とも手の上げ方や足の出し方まで指示するような方です」

「トップが優秀すぎると下が育たないんだ」

「部下を育てるのもトップの仕事です。ドーソン提督とパエッタ提督は、前線指揮官としても参謀としても優秀ですが、トップとしては今一つですな」

 

 アップルトン中将ははっきりと物を言うタイプだ。ロボス門下の提督は、シトレ門下と違う意味で自己主張が強い。

 

 第二艦隊の気風を形成したのが、先代司令官のドーソン提督、先々代司令官のパエッタ提督の二人であることは明らかだった。彼らは部下に意見より服従を求めた。その結果、真面目だが主体性に欠ける士官が集まった。

 

 主体性と経験の二択を迫られた俺は、経験をとることにした。高級指揮官五名のうち、第二艦隊の生え抜きから三名を選び、俺の腹心から二名を選んだ。自己主張が少ないバルトハウザー中将と使命感が強いコクラン中将なら、生え抜きとうまくやれるだろう。五名の上に立つ副司令官には、市民軍出身だが俺の色が薄いアップルトン中将を据えた。

 

「当面は生え抜き中心でやっていく。今の同盟軍では貴重な即戦力だからね。時間をかけて変えていこう」

「国防委員会の方針に反してますな」

 

 アップルトン中将が苦笑いを浮かべる。新しい人事基準では忠誠心と協調性を重視しており、主体性のない人が高く評価されるのだ。

 

「俺は方針通りにやってるんだ。国家のために諫言する軍人、国家のためにアイディアを出す軍人を作ってるんだからね」

「物は言いようですな」

「言葉は便利だよ」

 

 俺はにやりと笑い、マフィンを二個食べた。言葉の使い方にかけては自信がある。官僚的な言葉をドーソン上級大将から学んだ。感情的な言葉をトリューニヒト議長から学んだ。良い師匠に学べば、凡人だってそれなりのことはできる。

 

「ロボス閣下も同じことをおっしゃっていました」

 

 アップルトン提督も笑いながらマフィンを二個食べた。良い人なのだが、俺とロボス元帥の共通点を探したがるところが玉に瑕だ。

 

「若い連中はどうだい?」

 

 俺は話題を変えた。自分なりの評価はあるが、他人の評価も聞いておきたい。

 

「センスも意欲もありますが、経験が伴っていません」

「一人前になるまでにどれぐらいかかると思う?」

「四年か五年といったところでしょうな」

「容赦ないな」

「最大限に甘く見積もったつもりですがね。本音を言うなら、八年は必要です。機動部隊司令官には、一年以上戦隊を指揮した者が一人もいない。戦隊司令官には、一年以上群を指揮した者が一人もいない。一段階下の経験すら持ち合わせていないのです」

 

 アップルトン中将の言葉は少々辛口であったが、俺の考えとほぼ一致していた。若手指揮官の経験不足は明白である。

 

 司令官直轄部隊には将来性のある若手を集めた。第三六機動部隊司令官コレット少将は俺の元副官で、「フィリップスの一番弟子」と呼ばれる。第九一機動部隊司令官ガイヤール少将は、第二艦隊生え抜きの星だ。エリヤ・フィリップス戦隊司令官カプラン准将ら六名の戦隊司令官も、気鋭の若手提督であった。彼らの育成も大きな課題となっている。

 

 第一辺境総軍も第二艦隊も一七時に課業が終了するが、司令官の仕事は終わらない。毎日のように残業をする。夜の会議に出席したり、部外者と会食したりすることもある。

 

 早く帰ることができた日は、部下と一緒に夕食をとった。第一辺境総軍や第二艦隊ほどの大部隊になると、幕僚以外の部下と直接顔を合わせる機会は少ない。だからこそ、意識してコミュニケーションをとるように努めた。

 

 部下との食事のほとんどは外食である。そっちの方が部下にとって楽だからだ。食事代はすべて俺が払う。

 

 俺と第二二艦隊司令官シューマッハ大将は、シャンプールの人気カフェレストラン「エンド・オブ・ザ・ワールド」に入った。

 

「ケーキ、一番上から八番目まで。あと、オニオンスープ一皿、ボイルドソーセージ一〇本、ピラフ二皿」

 

 俺が注文すると、シューマッハ大将は驚いたような表情を浮かべた。

 

「小官の分まで注文なさったのですか?」

「自分の分だけだよ。君も好きなものを注文するといい」

「そうですか……」

 

 シューマッハ大将はたじろぐ色を見せた。帝国人男性はスイーツを女性や子供の食べ物だと思っている。同盟暮らしが長くても偏見を捨てきれないのだろう。

 

 注文の品が来ると、俺は口をつけた。まずはラズベリーケーキ。うまい。あっという間に全部平らげた。その次はモンブラン。うまい。さすがはシャンプールで一番うまい店だ。オニオンスープをすする。甘さの余韻が残る舌にしょっぱい味が染みわたる。あっという間に食べ終えた。

 

「ケーキ、九番目から一六番目まで。あと、ピザ三枚、ボイルドソーセージ一〇本、ポタージュ一皿」

「ケーキ、一七番目から二四番目まで。あと、トースト三個、ポテトグラタン二皿、オニオンスープ一皿」

 

 注文しては食べ、注文しては食べる。どのメニューもうまい。同じクオリティの物をハイネセンで食べようとしたら、二割増しの値段になるであろう。地方には地方の良さがある。

 

「…………」

 

 シューマッハ大将は俺の顔を不思議そうに見た。

 

「どうした?」

「いや、どうしてそんなに甘い物を食べられるのかと……」

「俺はケーキと一緒に必ず温かいものを頼んでいる。それがコツなんだ」

「…………」

「スイーツばかり食べていると、舌が甘さに慣れるよね? そうなると、スイーツの味が分からなくなる。だから、時折しょっぱい物や脂っこい物を食べて、舌の感覚を取り戻さないといけない」

「そうなのですか……?」

「舌に甘さを残さないことが大事なんだ」

 

 俺はベイクドチーズケーキを食べながら答えた。何も考えずに食べているわけではない。食事にも戦略戦術が必要なのだ。

 

「それにしても、フィリップス提督は本当に甘い物がお好きなのですな」

「これも大事な仕事なんだ」

「仕事ですか……?」

「スイーツというのは一種の嗜好品でね。スイーツが凝っているかどうかは、社会の経済的・精神的余裕を示すバロメーターになる。客層も社会を分析する上で参考になるね。スイーツを楽しむ余裕がある階層は、最も有力な消費層だ」

「なるほど」

 

 シューマッハ大将は感心するような顔をした。こんなに感心されては罪悪感を覚える。すべて後付けなのだから。

 

 部下の方から家に来てほしいと頼まれることもある。手料理を作るのが好きな人、俺を家に呼びたい人など理由は様々だった。

 

「よくお越しくださいました」

 

 コレット少将が床に正座し、膝の前に手を置き、すべての指を床につけてお辞儀をする。着ている服は一分の隙もない正装だ。

 

 テーブルの上には、マカロニ・アンド・チーズ、ジャンバラヤ、ローストチキン、シーザーサラダなどパラス料理がずらりと並んでいる。テーブルとイスはぴかぴかに磨いてある。食器はすべて高級品だった。

 

「ありがとう」

 

 俺は頑張って笑顔を作った。気合が入っているのは良いことだが、限度というものがある。ここまでくると怖い。右隣に座っているイレーシュ少将も少し困り顔だ。

 

 料理の味付けは完全に俺好みであった。どうすれば、ここまで他人の舌に合わせることができるのだろうか? 恐ろしいほどの調査能力である。

 

 家に帰ったら、ダーシャの写真に「ただいま」と声をかける。彼女がこの世にいなくなった後も挨拶は欠かさない。

 

 着替えた後に勉強の時間が始まる。士官になってからは勉強漬けの日々だった。俺は士官学校を出ていないので、基礎的な素養が欠けている。軍事学は日々進歩しており、せっかく学んだ知識もすぐに陳腐化してしまう。政治や経済の知識も必要だ。

 

 仕事を家に持ち帰ることもあった。第一辺境総軍や第二艦隊の公式サイトにかかわる仕事は、家にいる時に行う。

 

 部下に聞きたいことや伝えたいことがある時は通信を入れた。すぐ出る人もなかなか出ない人もいる。ハラボフ大佐は相変わらず画像をオフにしていた。コレット少将は風呂やトイレにも防水式の携帯端末を持ち込んでおり、俺がいつ通信を入れても五秒以内に出てくる。

 

 勉強や仕事がひと段落したら風呂に入る。シャンプールは水が豊富な惑星なので、風呂を使うことができる。一日で最も落ち着く時間だ。

 

 風呂を出たら念入りにストレッチを行う。このやり方でストレッチをしたら背が伸びると、『二五歳を過ぎても背は伸びる』という本に書いてあった。

 

 仕事がある日は二三時に寝ることにしている。宇宙軍の消灯時間は二三時だ。官舎暮らしの士官には消灯時間など関係ないが、自分も一兵士に過ぎないという感覚は忘れたくない。

 

 一時間睡眠で八時間分の睡眠効果を得られるタンク・ベッドも持っているが、時間がない時しか使わない。精神的疲労が取れないので、頭がぼんやりしてしまう。司令官は常に頭をクリアに保つべきだ。

 

 ダーシャの写真に「おやすみ」と言った後、ベッドに入って一日が終わる。今日も銀河は平和だった。明日も平和であってほしい。

 

 

 

 司令官の休日の朝は早い。早朝の五時三〇分に起床し、ランニングと筋トレで汗を流す。シャワーを浴びてから朝食をとる。

 

 休日も予定がびっしり詰まっている。勉強・トレーニング・人付き合い・行事などをこなしていく。軍服を着ていない時も司令官は忙しい。

 

 部下と一緒に遊びに行くこともあった。一番多いのはカラオケやボーリングや食べ歩きだ。ベースボールやフライングボールを観戦したり、バーベキューをやったり、日帰りで温泉に行ったりすることもある。楽しみながら部下との関係を深めていくのだ。一石ニ鳥といえよう。

 

 チーム・フィリップスは、同盟軍で最もパーティーが多いチームの一つである。体育会系ほどパーティーが好きな人種はいない。俺自身は酒を飲まないが、パーティーの空気は気に入っている。

 

 良識派はチーム・フィリップスのパーティーが強制参加だと批判するが、そんな事実はない。顔を出さない幕僚もいるし、幕僚ではないのに毎回来る人もいる。本人が来ないのに家族だけが来ることも珍しくない。シャンプールに出張した人が顔を出すこともある。チーム・フィリップスの門扉は常に開けっ放しだ。もっとも、個人主義者には窮屈かもしれない。

 

 五月上旬、退役軍人が経営するレストランを貸し切りにして、パエッタ大将の誕生パーティーを開いた。今回は家族連れOKなので、配偶者や子供を連れてくる人もいる。

 

 主賓のパエッタ大将はむすっとしているが、腹を立てているわけではない。この人はいつもこういう表情だ。酒を飲むペースを見れば、いい気分であることは推察できる。素直な若者が多いチーム・フィリップスは、彼のような説教好きには天国なのだ。

 

 俺はいろんなテーブルを回り、いろんな人と話す。司令官自らが声をかけることで、部下は「フィリップス提督は自分を見てくれる」と感じるだろう。チーム内の派閥に対する配慮もある。

 

 コレット少将とハラボフ大佐の二人は、俺からくっついて離れない。俺を暗殺者からガードするためだそうだ。ルチエ・ハッセルが俺を殺そうとした時、コレット少将が助けてくれた。アンドリューは俺を殺そうとした時、ハラボフ大佐が助けてくれた。彼女らは上官のために命をかけてくれる部下だ。

 

「でもなあ……」

 

 誰にも聞こえないような小声で呟き、コレット少将とハラボフ大佐をちらりと見る。コレット少将は、上半身が丈の短いチューブトップ、下半身がぴっちりしたデニムのホットパンツという服装だ。ハラボフ大佐は背中と胸元が大きく開いたタンクトップを着ている。素早く動きたいのはわかるが、肌を出しすぎだ。

 

 ここでやめてくれといえないのが、俺の弱いところである。ハラボフ大佐とは話しにくい。コレット少将に困っていると伝えたら、「フィリップス提督にご迷惑をかけた」と嘆き、地の底まで落ち込むので、強いことが言えなかった。

 

 困ったことはあったものの、楽しいパーティーだった。チュン・ウー・チェンがレオポルド・シューマッハに潰れたパンを食べさせたり、ジェフリー・パエッタがサンジャイ・ラオに「早く結婚しなさい」と説教したりする光景は、めったに見れるものじゃない。前の世界の戦記を読んだ人は俺を羨むだろう。

 

 パーティーが終わり、家族がいる人、遠くに住んでいる人などが帰っていく。残った人が別の店に移動して二次会を開き、それが終わった後は三次会を開いた。タンクベッドがあるので、睡眠時間を気にせずに遊ぶことができる。

 

 三次会が終わった時には空が白くなっていた。早朝のひんやりした空気が心地良い。部下たちと別れ、コンビニで買ったマフィンを食べながら駅に向かう。

 

「おい!」

 

 叫び声とともに、後頭部に空き缶らしき物がぶつかる感触がした。ぶつかった物が地面に落ちて、カーンと軽い音を立てる。

 

 何事かと驚いて後ろを向くと、三〇代くらいの背が高い男性が近寄ってきた。顔はアルコールで真っ赤、上着もズボンもぐしゃぐしゃに乱れている。どう見ても立派な泥酔者である。

 

「お前、チビだな!」

 

 酔っ払いが俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「そうですが……」

「俺はなあ、チビと赤毛と童顔が大っ嫌いなんだよ!」

「す、すいません……」

 

 俺は反射的に謝った。今は髪を茶色に染めているので赤毛ではない。だが、チビと童顔は事実である。

 

「エリヤの奴がチビで赤毛で童顔なんだよ! あいつのせいで! くっそー!」

 

 酔っ払いは俺のファーストネームを大声で叫んだ。

 

「エリヤ……?」

 

 俺は目を丸くした。初対面の人間にファーストネームを呼ばれたことに驚いた。マスコミやファンからは「フィリップス提督」と呼ばれる。妹と区別する場合もファーストネームで呼ばれることはなく、「お兄ちゃん」と呼ばれるのが一般的だ。

 

「エリヤのせいだ! エリヤが全部悪いんだ! ちくしょう!」

 

 酔っ払いは俺のファーストネームを連呼し続けた。理由はわからないが、俺を嫌っていることだけは間違いない。

 

「人違いじゃないでしょうか……?」

「うるせえチビ!」

「すいません……」

「謝って済むと思ってんのか!?」

「いえ、そういうわけでは……」

 

 罵詈雑言を浴びながら事情を聞きだせないものかと考えていると、見慣れた人影が目に入った。一人は背が高くて胸が大きくて、髪を人参色に染めた色っぽい女性。一人は細身で髪を茶色に染めたクールな女性。別れたはずのコレット少将とハラボフ大佐が駆けつけてきたのだ。

 

 俺はコレット少将に目で「来るな」と伝えた。コレット少将はぴたりと止まり、長い腕をすっと伸ばしてハラボフ大佐を止める。

 

 別の方向から男性二人が駆け寄ってきた。一人は水色のポロシャツを着た白髪の老人、一人は青いチェックシャツを着た黒髪の壮年男性。どちらも馴染みのない顔である。

 

「マーティン! 何やってるんだ!?」

 

 二人の男性は酔っ払いをはがいじめにすると、俺から引き離そうとした。

 

「学生さんに絡むんじゃない!」

「うるせえ! 俺は赤毛のチビが大嫌いなんだ!」

「この子は茶髪だぞ!」

「赤いじゃねえか!」

「よく見ろ! 茶髪だろうが!」

「チビといえばエリヤだ!」

「この世にチビが何人いると思ってるんだ!」

 

 怒鳴り合いが続いたが、コレット少将とハラボフ大佐が男性に加勢したため、酔っ払いは俺から引きはがされた。黒髪の男性が酔っ払いを引っ張って行き、白髪の老人がこの場に残る。

 

「ご迷惑をお掛けしました。申し訳ありません」

「お気になさらないでください」

「何かありましたら、こちらまでご連絡ください」

 

 白髪の老人が名刺を差し出した。彼の名前はエドワード・ファラー、退役軍人支援団体の職員だそうだ。

 

「我々は彼の保証人を務めております。怪我をなさっていたら、当方が治療費を全額負担いたします。服が破れていたら、当方が全額弁償いたします」

「マーティンさんは退役軍人なんですね」

「はい。仕事を見付けたばかりでして。普段は真面目な男なんです」

 

 ファラー氏はマーティンが真面目だと強調する。大事にはしてほしくないのだろう。

 

「彼が口にしていたエリヤというのは、エリヤ・フィリップス提督のことですか?」

 

 俺が一番知りたかったことを聞くと、ファラー氏は困ったような顔で首を振った。

 

「違います」

「本当に違うんですか?」

「ええ、マーティンとフィリップス提督は関係ないです」

 

 ファラー氏は否定しようとしたが、結局は真実を話すことになった。事情を説明しないと、俺が納得しないと思ったようだ。

 

「マーティンはフィリップス提督の友人でした」

 

 マーティン・ミッチェルはリンチ少将の元部下で、エリヤ・フィリップスとは同僚であり友人でもあった。のっぽのマーティン、ちびのエリヤ、丸顔のジュディス・ヒルの三名は、食事時間には同じテーブルで飯を食い、自由時間には雑談し、休日には一緒に遊びに行く仲だったという。

 

「あのフィリップス提督のお友達だったんですか……」

 

 俺は他人事のように言った。エル・ファシル警備部隊や矯正区にいた時の記憶は、ほとんど残っていない。ただ、人生をやり直した時に背の高い青年と出会ったこと、ファーストネームで呼ばれたことは覚えている。あの青年がマーティンだったのだろうか。

 

「本当に仲が良かったそうですよ。リンチ少将の事件が起きるまでは」

 

 七八八年八月一五日、仲良し三人組の運命は分かれた。リンチ少将に従ったマーティンとジュディスは、帝国軍の捕虜となった。エル・ファシルに残ったエリヤは英雄となった。

 

 マーティンらエル・ファシル警備部隊隊員は、惑星バルスの矯正区に放り込まれた。劣悪な環境と過酷な労働が心身を痛めつけた。後からやってきた者がリンチ一派の所業を広めたため、他の収容者から白い目で見られた。病気、栄養失調、事故、他の収容者からの虐待により、多くの仲間が死んでいった。親友のジュディスは六年目に病気で死んだが、マーティンは生き延びた。

 

 エル・ファシル事件から一四年が過ぎ、マーティンは再び祖国の土を踏んだ。そこで目にしたのは、上級大将に出世した旧友エリヤの姿だった。

 

 マーティンは納得できなかった。自分とエリヤに差があるとは思えない。リンチ少将の部下の中で、エリヤと最後に話したのは自分だった。エリヤは出航作業中に訳の分からないことを言って走り出した。自分は作業を続けた。たった一つの選択が運命を分けたと感じた。

 

「自分がフィリップス提督と同格だと思っているんですね。勘違いもいいところです」

 

 コレット少将が形の良い眉をしかめる。

 

「マーティンはそう思っているんです」

「フィリップス提督と同格の人なんて、銀河のどこにもいません」

「彼の主観ですから」

 

 ファラー氏はコレット少将をなだめた。

 

「一四年前までは本当に同格だったんだ。今も同格だと思うのは自然なことだよ。彼はフィリップス提督の活躍を見ていないからね」

 

 俺がたしなめると、コレット少将の顔に納得の色が浮かんだ。理屈で納得させたわけではない。感情で納得させたのだ。

 

「学生さんのおっしゃるとおりです。同格意識を捨てるのは難しいんですよ」

 

 ファラー氏はため息をついて、話を再開させる。

 

「マーティンは裁判にかけられそうになりましたが、フィリップス提督のおかげで無罪になりました。名誉昇進で上等兵になり、勲章とボーナスをもらいました。このことが彼のプライドをさらに傷つけたんです」

「きついですね……」

 

 俺は心の底から同情した。その同情はマーティンをさらに傷つけるだろう。それでも、同情せずにはいられない。

 

「この話は誰にも言わないでください。マーティンは仕事を見付けたばかりです。トラブルは避けたいのです」

「わかりました」

 

 俺たちが承諾すると、ファラー氏は安堵の表情を浮かべて立ち去った。こうして早朝の奇怪なトラブルは決着した。

 

 マーティンが俺を憎む理由は理解できる。彼にとって、俺は「ありえたかもしれない可能性」なのだ。彼は俺の凡庸さを知っているが、俺の活躍を知らない。それゆえに「一つの選択が運命を分けた」と感じるのではないか。

 

 マーティンは完全に正しい。前の世界の俺は出航作業を続けたせいで逃亡者になったが、この世界の俺は出航作業を投げ出して英雄になった。英雄と逃亡者の差は紙一重に過ぎない。俺と同じことをすれば、誰だって英雄になれる。マーティンが俺と同じことをしても、俺と同じ地位を得るかどうかはわからない。それでも、英雄としてちやほやされることは確実だろう。

 

 俺が前の人生でヤン・ウェンリーを憎まなかったのは、立場の違いによる。当時の彼は中尉で、一等兵の俺から見れば雲の上の人である。また、彼はリンチ少将の命令で仕方なく地上に残った。俺にとってのヤン・ウェンリーは、「ありえたかもしれない可能性」ではなかった。

 

 隣を歩く二人の女性のことを考えた。二人とも「英雄エリヤ・フィリップス」の被害者だ。俺が英雄になったおかげで、シェリル・コレットの父であるアーサー・リンチの醜態が際立つ結果となった。俺が英雄になったおかげで、俺と仲が悪いユリエ・ハラボフは無能のレッテルを張られた。「英雄エリヤ・フィリップス」の存在が二人の可能性を奪った。

 

 光あるところに影がある。一人の英雄の影には、一〇〇人の英雄になり損ねた凡人がいる。一人の英雄の影には、一〇〇人の可能性を失った凡人がいる。遠い昔の友人がそのことを教えてくれた。




マーティンのエピソードは旧版から暖め続けていました。本来はクーデター後に入れるつもりでしたが、機を逸してしまいました。これを入れるためにも最初から書き直す必要がありました。エル・ファシルの逃亡者の本題を描くには欠かせないエピソードでした。裁判よりむしろこちらが書きたかった。やっと書けました。

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