銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第123話:妥協できない者だけが妥協できる 804年7月下旬~10月12日 惑星シャンプール

 星道二三号線を水のように流れる車列の中に、九台の車があった。三台が一組となり、三車線の道路を三つに分かれて正方形を形作る。デザインも大きさもばらばらだが、偶然並んだわけではない。装甲車並みの頑丈さを誇る特殊車両が、第一辺境総軍司令官を護送している。自家用車のような外見は、テロリストの目をくらますための偽装だ。

 

 安っぽい外見のミニバンが中心に位置する。一列目の座席には運転手ジャン・ユー准尉と次席副官クリストフ・ディッケル大尉、二列目の座席には俺と首席副官ユリエ・ハラボフ大佐、三列目の座席には護衛三名が座る。軍服を着ている者は一人もいない。

 

 右隣のハラボフ大佐が缶コーヒーに口をつけた。よほど缶コーヒーが好きなようで、冷徹極まりない表情がかすかに緩む。

 

「毒見、完了いたしました」

「ありがとう」

 

 俺はハラボフ大佐から缶コーヒーを受け取って飲んだ。ハラボフ大佐の唇が触れた場所に唇が当たる。お互いに異性として意識していない関係とはいえ、少々恥ずかしい。

 

「今朝の朝刊です」

 

 ハラボフ大佐は、『リパブリック・ポスト』『ハイネセン・ジャーナル』『シチズンズ・フレンズ』『デイリー・スター』『ソサエティ・タイムズ』の五紙を差し出した。

 

 相変わらず、ハイネセン茶会事件がトップを独占している。そこまで大騒ぎするほどの事件なのだろうか。話題性があることは認める。現職下院議員が一〇〇〇万ディナールもの大金を騙し取られた。犯人グループは、ジギスムント二世系帝位請求者カナギ大公の八男、元有名ベンチャー企業役員、最高評議会議長経験者の元秘書、異世界からの転生者を自称する占い師という顔ぶれだ。それでも、ありふれたS資金詐欺でしかない。

 

 二番目に大きな記事の方がずっと重要である。同盟の国運に関わる問題だ。展開によっては、後世の教科書に載るかもしれない。

 

 ザーヴィエップ星系は、同盟政府と個別に締結した四つの条約が不平等条約であるとして、改正を求めてきた。これらの条約は、ザーヴィエップを政治的・経済的に拘束している。植民地同然の現状は耐え難いものであった。

 

 同盟政府から見れば、四つの条約は国家戦略を進める上で欠かせないものである。ザーヴィエップの主権を制約することは国益に繋がる。一星系が膨大な天然資源を占有すべきではない。一星系が航路の要衝を占有すべきではない。

 

 両者の対立を抑え込んできたのは対帝国戦争であった。ザーヴィエップは帝国の脅威から身を守るため、多少の不満は我慢した。同盟政府は条約改正運動が帝国に利用されることを恐れ、一定の配慮を示してきた。

 

 戦争によって保たれた均衡は、戦争終結とともに崩れた。帝国はもはや脅威ではない。相手に遠慮する必要はなくなった。

 

「条約改正交渉を要求する。応じなければ同盟を脱退する」

 

 ザーヴィエップの条約改正運動は急速に先鋭化し、同盟脱退を視野に入れるに至った。

 

「交渉には一切応じない。これは同盟の民意である。ザーヴィエップには民意を尊重するよう求める」

 

 トリューニヒト政権は、議会に条約堅持と交渉拒否を求める決議を繰り返し可決させ、民意の名のもとに交渉を拒んだ。

 

 状況は坂を転げ落ちるように悪化していった。「同盟に留まる限り、条約改正は無理」と判断したザーヴィエップは、同盟脱退の是非を問う住民投票を計画した。トリューニヒト政権は住民投票を「国家に対する反逆行為」とみなし、自治権剥奪の手続きに入った。

 

「私は一軍人として民意を尊重する! ザーヴィエップは民意に背いた! すなわち、同盟市民の敵である! 敵を一人残らず殲滅し、市民の心を安んじる! それこそが私に課せられた神聖なる義務である!」

 

 第二方面軍司令官ルスラン・セミョーノフ大将は、ザーヴィエップ星系警備隊に出動を命じるとともに、在留邦人保護の名目で四〇万の兵を送った。この強硬姿勢は右翼と保守派の喝采を浴びる一方、ザーヴィエップの態度を硬化させた。

 

「第二方面軍の行動は明白な侵略行為である。即時中止を求める。さもなくば、自由と独立を確保するために必要な措置をとる」

 

 就任したばかりのザーヴィエップ閣僚評議会議長アメリア・アマドール氏は、抗戦を辞さない構えを示した。

 

「我々はザーヴィエップ独立を必ずしも支持しないが、侵略行為には断固として反対する」

 

 辺境の二四星系が第二方面軍を非難する共同声明を発した。受け入れない場合は同盟脱退もあり得るという。

 

「ザーヴィエップが臣従するならば、フェザーンやエル・ファシルと同等の自治権を与えよう」

 

 救国軍事会議議長ラインハルト・フォン・ローエングラムは、ここぞとばかりに揺さぶりをかけてきた。朝貢義務も参勤義務もない。帝国暦を使用し、季節ごとの挨拶状と慶弔状のみを送ればいい。同盟に留まるよりはるかに好条件だ。ザーヴィエップのみならず、不平等条約に悩まされる星系すべてにとって甘美に響くだろう。

 

 サジタリウス副王府とエル・ファシル革命政府は、「ザーヴィエップを支援する」と称し、一大攻勢に打って出た。独立には武力の裏付けが必要である。彼らの武力が同盟軍を上回ることを示せば、辺境星系は雪崩を打つように独立するに違いない。

 

「ちょっと待て!」

 

 辺境大戦勃発を恐れた俺は進軍停止を命じた。だが、第二方面軍はのらりくらりとかわし、進軍を続けた。

 

「第一辺境総軍司令官の職権に基づき、第二方面軍司令官の指揮権を停止する」

 

 辞表を出す覚悟で強権発動に踏み切った。だが、ウォルター・アイランズ国防委員長がセミョーノフの指揮権を回復させたため、失敗に終わった。

 

「第二方面軍は正式な命令を受けていないのに動いた。明白な反乱である」

 

 セミョーノフが上層部の黙認を受けていることを逆手に取り、「公認ではないのだから反乱」の論理で動くことにした。革命政府軍迎撃に向かった第一一艦隊を転進させ、第二方面軍の進路を塞いだ。俺自身は後背に布陣し、「一光秒でも前進したら反乱とみなす」と恫喝した。

 

「撤収しろ! 今すぐにだ!」

 

 通信画面の中のアイランズ委員長は大声で喚き散らした。

 

「正式な命令ではないので応じられません」

「私の言うことを聞けないというのか!?」

「手続きに基いた命令であれば、謹んで従いましょう」

「私は国防委員長だぞ!」

「命令をお願いします」

 

 俺はあえて融通の利かない態度をとった。専制国家の皇帝なら喚くだけで命令できる。だが、同盟は専制国家ではないし、アイランズ委員長は皇帝ではない。

 

「とにかく撤収するのだ!」

「なぜ撤収しなければならないのです?」

「国防委員長が撤収しろと言っている! それで十分だろうが!?」

「反乱軍が目の前にいます。それでも、撤収すべき理由があるのですか?」

「反乱ではない!」

「第二方面軍は進軍停止命令を三度も無視しました。正当な手続きに基づく命令を三度も無視したのです。これでも反乱ではないのでしょうか?」

「…………!」

 

 アイランズ国防委員長の禿げ頭が真っ赤に染まる。まるでゆでダコだ。

 

「反乱でないとおっしゃるのであれば、根拠を示してください。第二方面軍は正式な命令を受けているのですか?」

「命令はしていない」

「第二方面軍は命令もなしに動いています。小官が進軍停止を命じましたので、司令官の裁量による行動とは認められません。つまり反乱です」

「違う!」

「国防委員会は第二方面軍の反乱を容認した。そう受け取ってよろしいのですね?」

「違うと言っているだろうが!」

「では、誰が第二方面軍に命令を下したのです? あなたですか? それとも、トリューニヒト議長ですか? 小官は命令しておりません」

「…………」

「お答えいただけますか?」

 

 俺は畳みかけるように問いかけた。相手が答えられないことなどわかっている。答えた瞬間、アイランズ委員長はこの事態の全責任を負うことになる。

 

「貴官は責任を取れるのか!? 同盟軍が相撃つのだ! 軍法会議ものだぞ!」

 

 アイランズ委員長は話を逸らそうとした。

 

「やむを得ません。軍法会議にかけられるのであれば、喜んで出廷しましょう」

 

 俺は爽やかそうな微笑みを作りつつ、相手の濁った瞳を見据えた。声にならない声で「俺の首だけじゃすまないぞ? わかってんのか?」と語りかける。

 

「…………」

 

 アイランズ委員長は目を逸らした。三秒ももたなかった。変な取り巻きにそそのかされただけなのだろう。トリューニヒト議長の指示ならば、何が何でも突っ張ったはずだ。

 

 正規ルートがまったくあてにならないので、裏から手を回した。オリベイラ博士の仲介でしかるべき筋に話を付けた。第二方面軍内部の派兵反対派を煽った。憲兵隊を動かし、ハイネセンの自称ヤン派や辺境大戦論者を牽制させた。

 

 セミョーノフが黙っているはずもなく、四方八方から矢玉が飛んできた。右翼や保守派の大物が撤収要請をひっきりなしに入れてくる。エリート幕僚が辺境大戦論を理路整然と説いた。歴戦の勇士が真心から辺境大戦支持を訴えた。血気盛んな青年将校が押しかけてきて、「撤収せねば殺す」と言わんばかりの勢いでまくしたてた。

 

 俺はあらゆる圧力をはねつけ、トリューニヒト議長から「第一辺境総軍に任せる」とのお墨付きを引き出した。辺境大戦も同盟軍相撃もぎりぎりで防がれたのである。

 

 これらの経緯は新聞には載っていない。表に出た事実は、第二方面軍の派兵と撤収、第一辺境総軍の転進と撤収のみである。同盟軍相撃の危機も、俺が第一一艦隊を転進させる際に用意した「独立派過激分子とエル・ファシル革命政府軍の合流阻止」という名目でごまかされた。

 

 セミョーノフの暴走は収まったものの、根本的な問題は何一つ解決されていない。黙認を与えた連中が弁護したらしく、セミョーノフの命令違反は不問に処された。アイランズ国防委員長の軽挙に対するお咎めはなかった。辺境大戦論者の分厚く広い人脈は健在である。

 

 ザーヴィエップ情勢は依然として予断を許さない状況にある。条約改正派の闘士アメリア・アマドールを首班とする現地政府は、同盟政府が譲歩しない限り、住民投票を実施するつもりだ。トリューニヒト政権は譲歩する意思などひとかけらもなく、自治権剥奪の手続きを進めている。脱退派民兵と残留派民兵の小競り合いは、いつ全面衝突に発展してもおかしくない。

 

 人間は自分が見たいものしか見ない。他人の考えを知りたければ、彼が愛読する新聞を読めばいい。そこに彼の考えが記されている。五大紙を読めば、世間一般の考えをおおむね網羅できる。

 

「奴隷として生きるか、自由人として死ぬか。ザーヴィエップ星民は自由を選んだ。我々は彼らの選択を全面的に支持する」

 

 条約改正派寄りの論調をとる『ソサエティ・タイムズ』は、諸手を挙げてザーヴィエップ独立を支持した。

 

「独立などできやしない。ザーヴィエップは金が欲しいだけだ。相手にする必要などない。断固たる姿勢を見せろ。そうすれば、震えあがって許しを乞うてくる」

 

 トリューニヒト政権の広報紙と化している『シチズンズ・フレンズ』は、政府内部の見解を自社の意見として伝えた。

 

「これはチャンスだ! 愚か者の末路を全銀河に見せつけろ! 七〇〇万を皆殺しにしろ! 血文字をもって書き記すのだ! 愚か者どもの断末魔を!」

 

 辺境大戦を熱望する『デイリー・スター』は、血が流れるのが嬉しくてたまらないと言わんばかりに狂喜乱舞した。

 

「何もわかっていない」

 

 俺はため息をついた。加盟国脱退という事実を軽く見すぎではないか。ザーヴィエップ人を物乞い扱いする姿勢こそが、反同盟感情を煽ったのではないか。人が死ぬのがそんなに嬉しいのか。見通しが甘すぎる。甘党の俺ですら胸焼けしてしまう。

 

「なぜ妥協できないのか? 歩み寄りの余地はないのか? 必要なのは流血ではない。話し合いで解決すべきだ」

 

 保守的な『リパブリック・ポスト』とリベラルな『ハイネセン・ジャーナル』は、大手らしい穏健な見解を示した。

 

 もっともらしい主張だが、俺に言わせれば落第である。妥協できるものならここまでこじれたりしない。同盟政府もザーヴィエップも譲れないラインで争っている。「心臓を差し出せ」と言われて差し出す人間がいるだろうか? 当事者にとってはそのレベルの話なのだ。

 

 結局、他人事でしかないのだろう。脱退騒ぎは何度となく起きた。しかし、実際に脱退する者はいなかった。だから、無事に終わると無邪気に信じている。

 

 専門家面でしゃしゃり出てくる辺境大戦論者や辺境独立論者にしても、自分に都合のいいことしか考えていない。「辺境を武力制圧して直轄化する」というが、あのリン・パオですら反同盟武装勢力を根絶できなかった。「辺境を独立させて、経済的な繋がりを保てばいい」というが、独立した辺境が恨み重なる同盟と付き合うとは限らない。

 

「だから、自分がやらなければならない」

 

 誰にも聞こえないような小声で呟いた。崩れつつある同盟を一つにまとめる。市民一三二億人を一致団結させる。同盟の総力を挙げて、ラインハルト・フォン・ローエングラムを迎え撃つ。自分にしかできないことだ。能力の問題ではなく意欲の問題である。

 

 目を軽くつぶり、前の世界に思いを馳せた。ラインハルトがフェザーン回廊を突破した時、同盟市民は団結できなかった。左翼は自由のために戦おうとせず、右翼の無為無策を詰るだけだった。右翼は国家のために戦おうとせず、左翼の傍観的態度を罵るだけだった。誰も彼も他人の責任を追及することにのみ熱心で、帝国軍がやってくると逃げ出した。

 

 当時の政府は、加盟国に「無防備宣言」を発する許可を認めた。人道的な措置に見えるかもしれないが、実際は現状追認に過ぎない。加盟国に抗戦を命じたところで、無視されることはわかっている。だから、「寛大にも降伏を認めた」という形式を取り繕った。

 

 はっきり言うと、前の世界のラグナロック戦役は、同盟と帝国の戦いではなかった。戦争をやっていたのは宇宙艦隊のみで、その他の連中は傍観していた。ウォルター・アイランズ率いる同盟政府も、宇宙艦隊のサポート役でしかなかった。戦後生まれは、ラインハルトがヤン・ウェンリー撃滅にこだわったことを批判する。だが、戦中を生きた人間なら誰だって正しいと思うだろう。ラグナロックは同盟の戦争ではなく、同盟軍宇宙艦隊の戦争だった。

 

 ラインハルトをバーミリオンで討ったとしても、それは同盟の勝利ではなく、宇宙艦隊の勝利でしかない。ヨブ・トリューニヒトが降伏したことで、同盟はある意味救われた。国家として致命的な事実に向き合わずに済んだ。

 

 俺も同盟を見放した市民の一人である。当時は何の罪悪感もなかった。見放されても仕方がない国だと思っていた。今はそうではない。理想とは程遠いが、それでも守るに値する国だと思う。

 

「フィリップス提督……?」

 

 心細げな声が耳に入ったので、目を開けた。若い女性の顔が視界を独占していた。鼻と鼻がくっつきそうな至近距離である。

 

「ああ、ハラボフ大佐か。どうした?」

「お加減がよろしくないように見受けました」

「何でもない。大丈夫だ」

「あまり無理はなさらないでください」

「気を付けるよ」

「本当に気を付けてくださいね」

 

 ハラボフ大佐は顔をさらに寄せた。彼女の細い鼻と俺の低い鼻が一瞬触れる。

 

「わ、わかった……」

 

 俺は気圧されるように答えた。ただでさえ怖い顔が至近距離にある。本気で怒っているのか、首筋から耳まで真っ赤に染まっている。

 

 二年前に倒れて以来、俺はしばしば体調を崩すようになった。今年に入ってからは、二か月に一回のペースで寝込んでいる。それでも仕事を減らそうとしない。傍から見れば懲りないように見えるのだろう。

 

 右隣ではハラボフ大佐が突っ伏している。両膝を抱え、靴を脱いだ足をシートに乗せるという姿勢だ。まっすぐな赤毛からのぞく耳はマグマのように赤い。内心ではどれほどの怒りが渦巻いているのだろうか。想像すらしたくなかった。

 

 

 

 体調を崩しているのは俺だけではない。健康管理の徹底ぶりから「病院総軍」と呼ばれてきた第一辺境総軍だが、最近は別の意味で病院総軍になりつつあった。原因は言うまでもない。過労である。

 

 司令部に到着した俺は、副司令官ミリセント・ヘイズ大将が倒れたとの知らせを受け取った。命に別状はないものの、一週間ほど入院が必要だという。

 

 副司令官が一人減ったため、四人分の仕事を三人でこなすことになった。単純計算すれば仕事量が一・三三倍に増える。参事官は文官なので、できる仕事の幅は広くない。俺とパエッタ大将の負担が大きくなった。タンクベッド睡眠をとる時間すら確保できない。食事は車や飛行機の中でとった。官舎に帰るなど夢のまた夢だ。マフィンが四倍に増えた。

 

 こんな無茶が長続きするはずもなく、俺はヘイズ大将が復帰した日に倒れた。「一週間の休養が必要」と診断されたが、どうしても外せない仕事がある。二日間だけ休むことになった。

 

 復帰当日、ザーヴィエップ星系のアメリア・アマドール閣僚評議会議長との会談に臨んだ。駐留軍問題に関する話し合いである。ザーヴィエップは兵力削減を望んでいる。同盟軍は現状維持を口にしているが、増やしたいというのが本音だった。

 

 同盟とザーヴィエップが結んだ個別条約の一つに、「同盟・ザーヴィエップ防衛協定協定」というものがある。この条約を踏まえるならば、ザーヴィエップと話し合う必要などない。同盟政府の「国防上必要」という判断のみで十分だ。しかし、ザーヴィエップ人は、防衛協力協定を不平等条約だとみなしている。この時期に防衛協力協定を押し通すのはまずい。

 

「お時間です」

 

 ハラボフ大佐が電子音声のように無機質な声で告げた。

 

「わかった」

 

 俺は右手首に華奢な金色の腕時計を巻き、ゆったりした足取りで応接室に向かった。歩調の乱れは心の乱れにつながる。一世一代の大芝居を打とうというのだ。いささかの失敗も許されない。

 

「アマドール議長はスカーフを着けているか?」

 

 歩きながら顔も視線も動かさず、ハラボフ大佐に質問する。

 

「着けています」

「色は?」

「水色です」

「ありがとう」

 

 俺は表情も歩調も崩さなかったが、内心ではスキップしたい気分だった。水色のスカーフは「ザーヴィエップは和解案に同意である」というメッセージだ。

 

 アマドール議長が俺と同じ気分であろうことは疑いない。右手首の腕時計には、「同盟政府及び同盟軍は和解案に同意である」とのメッセージが込められている。

 

 第一辺境総軍はザーヴィエップ星系政府と駐留協定を結んだ。駐留期限を五年と区切り、延長する際は星系政府の合意が必要となる。兵力を増やしたり減らしたりする際は、星系政府の許可を得なければならない。隊員の治外法権を放棄し、基地の外で犯した犯罪については現地の官憲に委ねる。基地を抱える自治体への交付金は、星系政府ではなく第一辺境総軍が負担するものとする。

 

 協定と同時に、駐留軍の削減、基地の一部返還、ザーヴィエップで犯罪を犯した隊員全員の引き渡しなどで合意した。

 

「四本の鎖の一つが断ち切られた! 同盟・ザーヴィエップ防衛協力協定はもはや存在しない!」

 

 ザーヴィエップ星系政府は高らかに勝利を宣言した。だが、これは詭弁に過ぎない。同盟・ザーヴィエップ防衛協力協定は未だ健在である。それでも、要求が達成されたとして、住民投票を取りやめた。

 

「同盟・ザーヴィエップ防衛協力協定は有効である。駐留協定は第一辺境総軍が結んだ協定であって、同盟軍全体に適用されるものではない」

 

 ウォルター・アイランズ国防委員長は、同盟政府が妥協したわけではないと述べた。だが、これも詭弁に過ぎない。第一辺境総軍とは、第一辺境総軍区内で活動する部隊すべてを指す。中央直属の部隊であっても、ザーヴィエップに派遣された時点で第一辺境総軍の指揮下に入り、駐留協定の適用対象となる。

 

「ザーヴィエップの同盟残留を歓迎する」

 

 ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長は駐留協定に触れず、結果のみを受け入れた。残留したのだから制裁を加える必要はない。自治権剥奪の手続きを中止した。

 

「現地部隊との協定とはいえ、辺境が同盟当局に要求を丸呑みさせた。不正が正義を踏みにじる時代は終わった。すべての市民は平等である。すべての星系は平等である。この当たり前の主張が通る時代がやってきた」

 

 反戦・反独裁市民連合(AACF)のグリゼル・ヒルトン上院議員は、駐留協定を辺境の勝利だとみなした。リベラル勢力と辺境ナショナリズム運動は、深いつながりを持っている。自己責任原則を重んじるハイネセン主義者は、財政支援や公共投資には消極的であるが、権利問題には積極的に取り組んできた。ザーヴィエップの勝利は、リベラルの勝利であった。

 

「誠に残念である」

 

 エル・ファシル革命政府のヘルムート・リンケ主席は、遺憾の意を表した。ザーヴィエップ危機は分離主義勢力にとって好機だった。それだけに失望は大きい。

 

「平和の使者エリヤ・フィリップス」

 

 マスコミは俺に新しい異名を与えた。敵を倒した者だけが英雄ではない。自由戦士勲章受章者の半数は、戦友や民間人を救った功績によって受章した。犠牲を減らした者もまた英雄であり、称賛に値する。美辞麗句の雨が「平和の使者」の頭上に降り注いだ。

 

「調子がいいなあ」

 

 俺は苦笑いしながら報道を眺めた。両派の対立を煽ったのは彼らではないか。和解を妨げてきた連中が和解の立役者を絶賛する。掌返しもここまでくると笑うしかない。

 

「腹が立たないのですか?」

 

 次席副官クリストフ・ディッケル大尉は、明らかに腹を立てていた。彼は二三年しか生きていない。世の中の汚さを許容するには短すぎる年月である。

 

「今さら腹も立たないさ。英雄稼業を一六年もやってきた。マスコミの掌返しには慣れている」

「さすがはフィリップス提督です」

「違う違う」

 

 俺は若い副官の目の輝きをかき消すように両手を振った。

 

「最初から期待していないだけだ」

 

 怒りを抑えたのではなく、怒る必要すら感じていないのだ。俺は前の世界で八〇年、この世界で一六年生きた。世の中の汚さを許容するには十分な年月である。

 

 受けるべきでない称賛を当たり前のように受ける自分も、きれいとは言い難い。平和の使者と呼ぶべき人物は他にいる。条約改正派が交渉を諦めていないことを知ったのも、俺が妥協を求めていることを条約改正派に伝えたのも、アマドール議長の側近に接触できたのも、警察幹部や情報機関幹部に接触できたのも、フェザーン自治領主府に接触できたのも、第一辺境総軍の単独協定という落としどころを見つけたのも、その人物のおかげであった。

 

「ありがとうございます。先生のおかげです」

 

 俺が超光速通信で礼を述べると、エンリケ・マルチノ・ボルジェス・デ・アランテス・エ・オリベイラ博士は渋い顔をした。

 

「感謝は不要と言ったのだがね」

「先生は祖国を救ってくださいました。感謝しないわけにはいきません」

「私はアドバイスを与えたにすぎん。祖国を救ったのは君たちだ」

「先生のアドバイスこそが祖国を救ったのです」

「君たちは決断して実行した。採用されないアドバイスには何の価値もない。決断した者こそ称賛に値する」

「先生のご労苦に報いないわけにはいきません」

「自由惑星同盟が救われた。これに勝る報酬はない」

 

 オリベイラ博士はそう言って微笑んだ。称賛も見返りも求めず、国家が救われたことのみを喜びとする。小物だと思ったのは誤りだった。真の国士とは彼のことだった。

 

「かしこまりました。何があっても、先生の名前は出しません」

「君の言葉を信じよう。ただ、世の中には万が一と言うこともある。何も起きないとは思うが、念のために警護を手配してもらいたい」

「憲兵一個小隊を付けておりますが。不足でしょうか?」

「不足とは言わんがね。用心するに越したことはない」

「了解いたしました。憲兵隊に働きかけて、さらに一個小隊を派遣させましょう」

 

 俺は快く引き受けた。憲兵閥の重鎮という立場を利用すれば、警護を増やすなど朝飯前である。

 

「よろしく頼むよ。アドバイスしただけで命を狙われては、たまったものではないのでね」

 

 いかにも心外だと言いたげなオリベイラ博士の表情が、俺の感動を打ち砕いた。国士だと思ったのは誤りだった。真の小物とは彼のことだった。

 

 前の世界のジョアン・レベロ最高評議会議長は、ヤン・ウェンリー抹殺に失敗すると、提案者のオリベイラ博士を詰問した。だが、返ってきた答えは、「提案を採用しろと強制した覚えはない。決めたのはあなただ」というものだった。

 

 このエピソードを知った時、オリベイラ博士を小物だと思った。成功すれば称賛を求め、失敗すれば責任逃れをする。小物とはそういう生き物である。

 

 しかし、本物の小物は称賛すら恐れる。世の中には一〇〇パーセント称賛されるものなどない。誰かの正義は誰かの不正義、誰かの利益は誰かの不利益、誰かの満足は誰かの不満である。誰かが称賛するものは、誰かが批判するものでもある。称賛を浴びることは、自分に責任があると示すに等しい。だからこそ、かつての俺は称賛されるのを嫌がった。

 

 オリベイラ博士は俺とアマドール議長に称賛される権利を譲った。自分が負うべき責任を擦り付けたのである

 

 筋を重んじる人間は駐留協定を厳しく批判した。現地部隊が加盟国政府と独自に協定を結んだ。加盟国政府は中央政府と結んだ協定が消滅したと主張する。中央政府は現地部隊が勝手にやったことで、自分たちには関係ないと言い張る。グレーゾーンというのもおこがましい。

 

「第一辺境総軍の行為はシビリアンコントロールに反する。二重外交ではないか」

 

 ジョアン・レベロ議員は、シビリアンコントロール違反だと指摘した。加盟国との交渉は政府の専管事項である。防衛協力協定を是正することは正しい。だが、それは同盟政府がやるべきことである。第一辺境総軍は加盟国と独自に協定を結び、公式な協定を形骸化させた。こんなことがまかり通ったら、同盟政府の信用は地に堕ちる。

 

「ザーヴィエップの危機は去った。だが、それをはるかにしのぐ危機が迫っている。エリヤ・フィリップスという危機だ」

 

 ジャーナリストのパトリック・アッテンボロー氏は、俺の台頭に警鐘を鳴らした。内戦が防がれたのは結構なことである。だが、加盟国と個人的に条約を結んでしまう軍人が現れた。民主主義の危機ではないか。

 

「見せかけの譲歩に騙されるな。調印したのは第一辺境総軍であって、同盟政府ではない。命令一つで覆せる程度のものに過ぎん」

 

 脱退派急先鋒のサンス・トーレス氏は、協定の有効性に疑問を呈した。同盟政府は正式な合意すら平気で無視する連中だ。軍司令官の名前で結ばれた協定を守るとは思えない。

 

 内戦が回避されたこと自体を喜ばない者も存在する。すべての人が人命重視という前提を共有しているわけではない。

 

「フィリップス提督は悪しき前例を作った。辺境諸国に同盟脱退の脅しが有効だと教えた。条約改悪を求める動きはさらに加速する。同盟軍は兵士一人動かすたびに、辺境から文句を言われることになる。まともな軍事行動は望めない。譲歩すべきではなかった。ザーヴィエップを焦土と化してでも、覚悟を示すべきだった」

 

 元地上軍総監アデル・ロヴェール退役元帥は、俺を厳しく批判した。辺境は戦場なのだ。地元民の顔色を伺う余裕などない。だからこそ、先人は辺境から文句を言う権利を奪った。主権侵害だというが、同盟軍の傘に守ってもらうのだから、当然の代償である。そんな道理もわからぬ輩を相手にするのは筋違いだ。一度曲げた筋は決して戻せない。

 

「軍人が犠牲を恐れるとは何事か!? ザーヴィエップに譲歩する必要などない! 血などいくらでも流せばいい! どれほど犠牲を払おうとも、無法な要求に屈してはならぬ!」

 

 統一正義党のマルタン・ラロシュ代表は、大いに憤慨した。強者と弱者が平等であろうはずがない。強者が優遇されるのが公平というものだ。ザーヴィエップ人は、弱者の分際で強者との平等を要求した。万死に値する。

 

「こんな協定など無効だ! フィリップスを反逆罪で逮捕せよ!」

 

 評論家ジョージ・ビルジン氏は怒りを爆発させた。防衛協力協定は疑問の余地なく正しい。なぜなら、リベラルが見直しを求めているからだ。一歩でも譲歩すれば、敵は際限なく増長する。話し合う余地などない。黙るまで殴れ。黙らないなら殺せ。譲歩など論外である。

 

「フィリップスは義務教育を受けていないのか。長征船団は二四万人を失ったが、一六万人が生き残った。ザーヴィエップ星民七〇〇万人を皆殺しにしたって、サジタリウス腕には一三二億五八〇〇万人が残る。何の不都合もない。小学生でもわかる計算だぞ」

 

 新しい船出のグエン・キム・ホア二世参謀長は、流血を回避する姿勢そのものを冷笑した。「右でも左でもなく中立」と称する中立派の特徴は、デモクラシーやヒューマニズムといった建前を否定することにある。ザーヴィエップ問題自体はどうでもいい。

 

 俺が絶対的に正しいと信じ、大多数が称賛するものでも、これだけ多くの批判を浴びる。何をやっても批判はつきまとう。

 

「勝って称賛を浴びるのが当然なら、負けて批判を浴びるのも当然」

 

 ウィレム・ホーランド提督はそう語った。批判を恐れぬことを勇気というならば、称賛すら避けることは臆病というべきであろう。

 

「気に食わないね」

 

 器の小さい俺は、オリベイラ博士の臆病さを許容できなかった。国を動かしたいが責任を取りたくない。そんな話が通るものか。

 

 気に食わなくても、縁を切ろうとは思わない。右翼にも左翼にもフェザーンにも顔が利く。どんな情報でも入手できる。イデオロギーに囚われず、依頼者が求める策を提示できる。見返りを与える必要はない。責任逃れはしても、能動的に裏切る可能性は低い。味方にしてもデメリットは一つもなく、メリットは無数にある。

 

「そりゃ切れないよな」

 

 苦笑まじりに俺は納得した。歴代政権は俺と同じ判断を下したのだろう。罷免したレベロ政権にしても、議長本人はОファイルに名を連ねている。

 

 オリベイラ博士に恩はあっても恨みはない。内戦を阻止できた。巨大な功績を譲ってもらった。最高評議会と国防委員会に大きな貸しを作れた。ザーヴィエップのみならず、辺境全域の好感を獲得できた。その代償が憲兵二個小隊で済むなら安いものだ。

 

「全然安くないでしょ」

 

 人事部長イレーシュ・マーリア少将がため息をついた。その視線は机の上に積まれた紙束に向けられている。

 

 極右組織一〇九団体が殺人予告を送り付けてきた。田舎者に譲歩したことが許せない。リベラルを喜ばせたことが許せない。同盟に盾突く輩の権利を奪う機会を捨てたことが許せない。同盟に盾突く輩を皆殺しにする機会を捨てたことが許せない。強者と弱者を平等に扱ったことが許せない。何から何まで許せない。

 

「問題ないですよ。殺人予告なんていつものことです」

 

 俺は一枚の紙をひらひらさせた。極右民兵組織「正義の盾」の機関誌の第一面である。俺への死刑宣告が大書されていた。

 

「それ、この机の上に直接置いてあったんでしょ」

「ナイフが刺さっていました。炭素クリスタル製の逸品です」

「アピールしてるんだよ。『いつでもお前を殺せる』って」

 

 イレーシュ人事部長はすらりとした長身をすくめた。自分が死刑宣告を受けたかのようだ。

 

「大丈夫でしょう。いざという時は彼らが守ってくれます」

 

 俺は二人の副官に微笑みかけた。次席副官ディッケル大尉の目が純粋な輝きに満たされた。首席副官ハラボフ大佐は顔を赤くして両手で口を押さえた。

 

 統一正義党は市民軍参加者全員に党員バッジ提出を命じた。応じない場合は永久除名処分にするという。

 

 ルドルフ主義者と辺境大戦論者はほぼイコールといっていい。辺境の反同盟勢力を挑発して内戦を起こし、武力によって吹き飛ばす。介入してきた帝国軍を引きずり込んで包囲殲滅する。その夢を叶えるため、統一正義党、正義の盾、嘆きの会はあちこちに騒乱の種をばらまいてきた。それを邪魔してきたエリヤ・フィリップスは、憎んでも憎み足りない怨敵だ。取り込もうと手を差し伸べたが、ことごとく振り払われた。

 

 主戦派という一点のみで友好関係を保ってきたものの、戦争が終わってしまったら怨恨だけが残る。国内政策は完全に正反対だ。AACFの方がまだ折り合う余地がある。ザーヴィエップの件がなかったとしても、決裂は時間の問題だった。

 

 むろん、ルドルフ主義者でない辺境大戦論者も多数存在する。ダゴン会戦以前は辺境大戦論が対辺境戦略の主流を占めた。その遺伝子は右翼と保守派に広く根付いている。辺境を地盤とする大衆党も、都市選出議員の多くが辺境大戦論者である。国防委員の半数近くが辺境大戦を支持するという有様だ。

 

 自称ヤン派は何の信念もない連中なので、ルドルフ主義者や辺境大戦論者と握手を交わした。反フィリップスなら何でもいいのだ。

 

 自称ヤン派・ルドルフ主義者・辺境大戦論者連合は、本物のヤン派にも共闘を申し入れた。反辺境大戦の姿勢が明確な俺より、何もしないヤン元帥の方が与しやすい。ヤン元帥の取り巻きに食い込みたいという思惑もある。コントロールできない神輿には意味がない。

 

 ひねくれもの集団がこんな話を受け入れるはずもなく、本物のヤン派は、自称ヤン派・ルドルフ主義者・辺境大戦論者連合と抗争状態に入った。

 

「融和政策を成功させるには、喧嘩を徹底的に避けるのではなく、融和に反対する奴を殴って黙らせることだ」

「争いを終わらせるというのはそういうことだ。政治を知らない者は、妥協を誰も傷つけないやり方だと思い込んでるがね。実際は敵も味方も全員傷つけないと実現しないものだよ」

 

 トリューニヒト議長から聞かされた言葉が頭の中をよぎった。まったくもって正しい。妥協とは修羅の道だ。ジョアン・レベロと比べれば、統一正義党もAACFも穏健極まりない。穏健ゆえに支持されたとすら思える。

 

「何が何でも同盟の枠組みを死守してみせる」

 

 俺は拳を固く握りしめた。統一と秩序を維持するためなら何だって譲る。敵に利益を与えても構わない。味方に損害を与えても構わない。一〇〇年先に禍根を残しても構わない。命を狙われても構わない。後世からどれほど酷評されようとも構わない。どんな犠牲を払ってでも妥協する。

 

 分裂した国家が統一された国家に勝てるはずがないのだ。ラインハルトと戦うならば、同盟軍でもなくヤン・ウェンリーでもなく、同盟という国家をぶつけるべきである。

 

 一〇月一二日、俺は首星ハイネセンに向かって出発した。旗艦ゲティスバーグの周囲を取り巻くのは、シェリル・コレット少将率いる第三六機動部隊である。数百隻も護衛を引き連れるのは万が一を防ぐためだった。

 

 二人の要人が俺と一緒にハイネセンに向かう。優しさと暖かさのみで作られていそうな老人は、ロンドリーナ自治領ラグラン出身のヴァリオ・パルムグレン、法名をシャルル二四世という。抜け目ない金融マンといった風貌の若い男性は、地球自治領ドウトンボリ出身のエマニュエル・ド=ヴィリエ大主教である。地球教のトップとナンバーツーは、クーデター鎮圧記念式典に来賓として出席する。

 

 一人の小物と二人の大物を乗せた船団はまっしぐらに進む。虚空に瞬く星々は何も言わずに見送る。遮るものは何もない。時間と距離のみが横たわっている。


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