銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第48話:一触即発の銀河 796年9月22日~10月中旬 ハイネセンポリス~軍刑務所~官舎~国防委員会庁舎~エルビエアベニュー

 同盟全土が愕然とした。九月二〇日一四時時点での同盟軍は六万六七〇〇隻、これを迎え撃つ帝国軍は二万二〇〇〇隻から二万四〇〇〇隻で、数の上では三倍近い優勢だった。また、同盟軍正規艦隊は一・三倍の帝国軍主力艦隊と互角に戦えると言われる。数においても質においても圧倒していたはずなのに敗北したのだ。信じられないと思うのも無理はない。

 

 そして、状況が明らかになるにつれて、人々は信じられないという思いをさらに募らせた。それほどに敵将ラインハルト・フォン・ローエングラムの用兵は神がかっていた。

 

 惑星レグニツァの大きさを惑星ハイネセンと比較すると、赤道半径は一〇倍以上、質量は数百倍にのぼる。この巨大なガス惑星に接近した宇宙船は、重力場によって重力制御を阻害され、電磁波によって通信装置やレーダーを狂わされてしまう。

 

 第一陣のワーツ中将は老練の将である。索敵能力・通信能力・航法能力が弱体化した中、連絡用シャトルをダース単位で飛ばし、単座式戦闘艇スパルタニアンからなる索敵部隊を数百部隊もばら撒き、慎重に前進した。第二陣のトインビー中将、第三陣のパエッタ大将、第四陣のボロディン中将がその後に続いた。

 

 序盤の同盟軍は巧妙に戦ったといっていい。敵雷撃艇戦隊の一撃離脱攻撃をことごとく退け、敵が敷いた二重の機雷原をあっさり突破し、ほぼ無傷で帝国軍主力と遭遇した。

 

 帝国軍主力は艦と艦の距離を極端に広く開けており、同盟軍よりも味方艦同士の衝突を恐れているかのように見えた。一方、同盟軍は密集隊形を取った。この環境下でも味方艦同士が衝突しないような運用をする自信があったからだ

 

 同盟軍は兵力と火力を集中し、帝国軍主力をこてんぱんに叩きのめした。遠方から数百個の隕石が飛んできた時、同盟軍は勝利を確信したという。隕石攻撃は西暦時代に研究しつくされた戦術。そんな骨董品に頼らざるをえない時点で、敵の策が尽きたと考えたのだ。

 

 しかし、これこそがラインハルトの罠だった。数個の隕石がレグニツァの地表に突入し、大爆発を起こした。両軍は爆風に巻き込まれたが、散開した帝国軍が最小限の混乱に留まったのに対し、密集した同盟軍は大混乱に陥った。同盟軍は運用能力が高いため、このような宙域でも密集陣形で戦えた。それが仇となったのである。

 

 同盟軍の密集陣形、大兵力、通信やレーダーの機能低下が混乱を助長し、六万隻の大軍は動きが取れなくなった。そこに数百個の隕石が降り注いだ。レグニツァの裏側から出現した帝国軍の伏兵三〇〇〇隻がまっしぐらに突っ込んできた。混乱から立ち直った帝国軍主力も襲いかかってくる。

 

 第一陣のワーツ中将、第二陣のトインビー中将が戦死。第三陣のパエッタ大将も戦線崩壊の瀬戸際まで追い込まれた。第四陣のボロディン中将が敵の攻勢を食い止め、第六艦隊D分艦隊副司令官ラップ准将らが残兵をまとめて奮戦し、ぎりぎりで全軍壊滅を免れた。

 

 レグニツァ会戦の戦死者は一三八万八〇〇〇人、行方不明者は六五万三〇〇〇人、未帰還者の合計は二〇四万一〇〇〇人に達する。喪失・大破した艦艇は一万八六〇〇隻であった。将官の戦死者は、第四艦隊司令官ワーツ中将、第六艦隊司令官トインビー中将など二四人にのぼる。

 

 用兵教本によると、大規模艦隊戦の損害は一割前後が普通で、二割を超えたら大敗だそうだ。第四艦隊と第六艦隊は四割、第二艦隊は二割、第一二艦隊は一割、六つの予備役分艦隊は平均で三割前後を失った。全体では二八パーセント。前の世界でラインハルトが指揮したアスターテ会戦・アムリッツァ会戦より低い損害率だが、それでも歴史的な大敗と言っていい。

 

 前例に照らしてみれば、最高評議会が総辞職し、統合作戦本部長・宇宙艦隊司令長官・地上軍総監が揃って辞表を提出するのが筋だろう。しかし、誰一人として辞職しなかった。

 

「風頼みの政権運営などいずれ破綻する。総辞職してけじめをつけた方がいい」

 

 レベロ財政委員長とホワン人的資源委員長が評議会総辞職を求めたが、他の閣僚に拒否された。辞職論は民間でもさっぱり盛り上がらなかった。

 

 第一に市民がそれを望んでいない。政権支持率は八五パーセントから六六パーセントまで急落したが、それでも六割以上がボナール政権を支持している。

 

「今は全市民が団結すべき時だ。いたずらに事を荒立てるべきではない」

「ボナールやトリューニヒトがいなくなったら、誰がテロと戦うのだ? もっと強い指導者がいるのか?」

 

 こういった声が責任論を封じ込めた。レグニツァでは大敗したが、国内の対テロ作戦は大きな成果をあげつつある。エル・ファシル革命政府軍の脅威は消えていない。大多数の市民にとって、敗戦責任より対テロ作戦の方がずっと重要なのだ。

 

 政局安定への期待も大きかった。七年前に国民平和会議(NPC)と進歩党の連立政権が発足して以来、九人が最高評議会議長となったが、一年以上務めたのはボナール議長を含めて二人しかいない。そして、一年半以上務めたのはボナール議長ただ一人。対テロ強硬路線はリーダーシップの表れと評価された。従来の短命政権と一線を画するように思われたのである。

 

 第二に政界の実力者がそれを望んでいない。連立政権の七年間で、一度でも支持率が五〇パーセントを超えたのはボナール議長だけだった。NPCと進歩党の全派閥が合意できる人物でもある。シャンプール・ショック以降、最大野党の統一正義党が協力姿勢に転じた。近年稀に見る安定状況と言っていい。来年三月の下院選挙までこの安定を保ちたいとの思惑がはたらいた。

 

 第三に軍部の実力者がそれを望んでいない。レグニツァの敗戦によって、トリューニヒト派の勢力は大きく後退した。統合作戦本部長シトレ元帥、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥、地上軍総監ペイン大将が一度に辞任した場合、シトレ派とロボス派の勢力も後退するだろう。そうなると、過激派が最大勢力になる。空いた要職の一つが過激派の手に渡る恐れもあった。反共和主義者が軍部を掌握するなど、悪夢以外の何物でもない。

 

 市民、政界、軍部がそれぞれの思惑で責任追及を控えた結果、イゼルローン遠征軍が敗戦責任を一身に背負うこととなった。

 

 敗戦から二日後の九月二三日、総司令官パエッタ大将はすべてのポストを解任された。そして、遠征軍の指揮権を第一二艦隊司令官ボロディン中将に、第二艦隊の指揮権を第二艦隊副司令官ホセイニ少将に引き渡すよう命じられた。敗将が帰還途中に指揮権を剥奪されることは、帝国では珍しくもないが、同盟では異例中の異例である。いや、異様といった方がいいかもしれない。

 

 パエッタ大将の指揮権剥奪と同時に、総参謀長アーメド中将、副参謀長リー少将、作戦主任参謀メルカデル少将ら遠征軍幕僚も全員解任された。これもまた異例であった。

 

 首脳陣に厳しい処分が下される一方で、同盟軍を完全敗北から救ったボロディン中将、ラップ准将、アッテンボロー代将らは徹底的に持ち上げられた。トリューニヒト国防委員長は、彼らの奮戦を「ダゴンや第二次ティアマトに匹敵する英雄的な戦い」と呼び、新しい英雄を褒め称えた。

 

 マスコミはレグニツァの英雄にあらんばかりの賛辞を浴びせ、パエッタ大将、ワーツ中将、トインビー中将らの無能を厳しく糾弾した。英雄と無能という大衆受けする構図を作り、「計画段階では完璧だった。前線の将兵は英雄的に戦った。一部の無能が足を引っ張らなければ勝てた」というシナリオを演じることで視聴率を稼いだ。

 

 レグニツァの敗戦は「レグニツァの悲劇」と言い換えられ、英雄劇としての側面が強調されるようになった。

 

「レグニツァの悲劇とは何か。それは敗戦を敗戦と認識しないことだ」

 

 リベラル派の歴史学者ダリル・シンクレア教授は、敗戦を美化しようとする動きを批判し、現実を見据えるように訴えた。

 

 シンクレア教授の発言は信じ難いほどの反発を買った。右派マスコミは特集を組んで執拗に叩いた。ネットには罵倒の言葉が飛び交い、シンクレア教授の著書を焼き捨てる動画が次々とアップされた。勤務先のハイネセン記念大学、コラムを連載している『ハイネセン・ジャーナル』紙、著書の出版元などにも抗議メールが殺到した。

 

 身の危険を感じたシンクレア教授は、友人のレベロ財政委員長を頼って身を隠そうとしたが、その途中で極右民兵組織「憂国騎士団」の襲撃を受けた。全治三週間の重傷だという。

 

 襲撃犯は犯行から二時間後に自首した。警察は「逃亡の恐れがない」として身柄を拘束せず、在宅のままで取り調べを進める方針だ。市民は公正な判断だと歓迎し、襲撃犯の無罪放免を求める署名活動、裁判費用を集めるための募金活動なども始まった。批判する者はリベラル派と反戦派の一部に留まる。

 

 なんとも嫌な事件だ。いったい秩序や規律はどこへ行ったのか。まるで前の世界のようではないか。

 

 トリューニヒト国防委員長が憂国騎士団を使い、都合の悪い言論を封殺していると言う噂もあった。前の世界で読んだ『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』でも、同じような話が紹介されていた。

 

 確かに憂国騎士団はトリューニヒト委員長寄りだ。しかし、あれほど魅力的な政治家なら誰だって支持したくなるだろう。あちら側が一方的に支持しているだけなのではないか。噂はしょせん噂に過ぎない。

 

「そう信じたいんだね」

 

 スクリーンの向こう側から、ダーシャ・ブレツェリ大佐が痛いところを突いてくる。彼女が手に持っているのは、『憂国騎士団の真実――共和国の黒い霧』という本。警察と憂国騎士団の関係を追跡したノンフィクションである。

 

 確かに警察は憂国騎士団に甘い。統一正義党や正義の盾には容赦ないのに、憂国騎士団は野放し同然。そして、トリューニヒト委員長は元警察官僚。疑いたくなるのもわからないでもない。しかし……。

 

「疑う理由も無いしね。証拠が出た時に考える」

 

 俺はごまかすように笑った。

 

「証拠が出たらどうする?」

「悪いことは早くやめて欲しいと祈る」

「そこで見放さないのがエリヤらしいね」

「そりゃそうさ。正しいかどうかと好きかどうかは別だ。見放すとしたら、好きでいられなくなるようなことをあの人がやらかした時だよ」

「例えば?」

「そうだなあ……」

 

 つけっぱなしのテレビに目を向けると、たてがみのようなもみあげ髭を生やした老人が映っていた。サイオキシンマフィアの創設者Aことアルバネーゼ退役大将である。

 

「サイオキシンの売買に関わってるとか」

 

 あえてありえない仮定をした。トリューニヒト委員長を嫌いになるなんて、想像できなかったからだ。

 

「思いつかないんだね」

「良くわかったな」

「答えが適当すぎるもん」

「酷い目に遭わされたら嫌いになるだろうけどな。あの人はそんなことしないだろう」

 

 俺はきっぱりと言った。正直言うと、トリューニヒト委員長の能力はあまり信用してない。今時珍しい真面目な政治家だし、人と金を集めるのはうまいが、詰めの甘いところがある。先日の慰霊祭にしても、一流政治家なら顔色一つ変えずに対応できただろう。しかし、その甘さも人の良さゆえではないかと思えてくる。そういうわけで人柄は信用していた。

 

「トリューニヒト委員長は気流に乗る凧よ。実力もないのに風に吹かれて高く舞い上がってるだけの人。あの軽さは政治家としてまずいね」

 

 ダーシャはどこかで聞いたような例えをした。

 

「軽いからどこにでも流されるって意味か?」

「そういうこと。本質的には悪人じゃないかもね。でも、風の吹く方向次第でおかしなことをやらかすタイプだと思う」

「今がそうなのかもしれないな」

 

 パトリオット・シンドロームという暴風が、トリューニヒト委員長、そして自由惑星同盟を変な方向に飛ばしている。そんなイメージが頭の中に浮かんだ。

 

 前の世界でアスターテ会戦が起きた後もこんな感じだったのだろうか? 二個艦隊が壊滅したにも関わらず、サンフォード最高評議会議長、トリューニヒト国防委員長、統合作戦本部長シトレ元帥、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥は辞任しなかった。そして、主戦論がさらに盛り上がり、憂国騎士団が暴れまわった。ぐだぐだぶりは前も今もあまり変わらないようだ。

 

 

 

 対テロ作戦「すべての暴力を根絶するための作戦」は、順調に成果を上げた。八月から一〇月までの間に拘束されたテロ関係者は三〇万人、凍結されたテロ組織及びテロ支援者の資産は一八〇〇億ディナールにのぼる。反体制武装勢力の聖域と化していた山岳地帯、密林地帯、無人惑星、小惑星などはことごとく制圧された。

 

 戦いのたびに英雄が生まれる。いや、作られるといった方が適切だろうか。二〇万の私兵を擁するサイオキシン密売組織を制圧したパリー地上軍准将、エル・ファシル革命政府軍のアスターテ侵攻を防いだシャンドイビン宇宙軍代将、惑星アルマアタの科学的社会主義ゲリラ討伐で活躍したギーチン地上軍中佐ら十数名が、対テロの英雄としてメディアを賑わせた。

 

 レグニツァで敗れた遠征軍はまだハイネセンに戻っていないが、第六艦隊を全滅から救ったラップ准将、艦隊司令官の中で唯一善戦したボロディン中将、戦艦五〇隻で敵軍六〇〇隻を二時間足止めしたアッテンボロー代将らの人気は凄まじい。

 

 対テロ作戦を指揮するトリューニヒト国防委員長とクリップス法秩序委員長は、同盟政府を象徴する存在となった。統一正義党のラロシュ代表は、苛烈なテロリスト批判によって支持を伸ばしている。

 

 英雄が急増したおかげで、エル・ファシル危機の英雄が呼ばれる機会は少なくなった。ヤン少将の広報担当チームは九月末に解散した。俺の広報チームも一〇月中旬には解散するらしい。

 

 俺は空き時間を親しい人と会うために使った。エル・ファシルに赴任してからはこまめに通信を交わしていたが、会えるものなら直接会いたい。

 

 話題になったのはやはり最近の世相だった。俺の周囲は右寄りの人か、そうでなければ政治に関心のない人ばかりだったが、パトリオット・シンドロームには否定的だった。

 

「一時的なブームだと思うけどさあ。さっさと終わって欲しいね」

 

 イレーシュ・マーリア中佐は細い眉を困ったように寄せる。あのラインハルトに匹敵する美貌と貫禄の持ち主だが、中身はごく普通であり、とげとげしい空気を好まなかった。

 

「トリューニヒト委員長のなさることだ。間違いはないと信じているがね。それでもやりにくいもんはやりにくい」

 

 トリューニヒト委員長の忠臣ナイジェル・ベイ大佐も参っていた。彼は俺と同じで、トリューニヒト委員長の政策ではなく人格を支持しているため、割り切った考えができない。

 

「こうして見ると、私の祖国もこの国も大して変わりませんなあ」

 

 三年前に帝国から亡命してきたハンス・ベッカー少佐がしみじみと語る。情報将校として大衆操作に関わった経験を持つ彼にとっては、見慣れた光景だそうだ。

 

「軍人がちやほやされるのは嬉しい。私も軍人だからな。しかし、どいつもこいつも浮かれすぎてていかんな。我が軍で正気なのは、シトレ元帥、グリーンヒル大将、シャフラン大将ぐらいじゃないか」

 

 第一一艦隊副司令官ルグランジュ少将は、角張った顔を不快そうにしかめた。前の世界でクーデターに与した人だが、この世界ではまだ穏健派である。

 

 パトリオット・シンドロームに違和感を感じているのは、俺やダーシャだけではなかった。空気に逆らえる者は少ないが、歓迎している者もそれほど多くはないらしい。表立って反対すれば叩かれる。だから、空気が変わるまでやり過ごすつもりなのだ。

 

 それなりに順応している人もいた。大きな波を怖がるタイプでなく、何も考えずに乗ろうとするタイプである。

 

「よう、久しぶり」

 

 国防委員会対テロ対策室副室長マルコム・ワイドボーン准将は、国旗柄のセーター、国旗柄のニット帽、国旗柄のスニーカー、国旗柄の刺繍が入ったデニム、国旗柄のソックス、国旗柄のスニーカーを着用していた。

 

「お、お久しぶりです」

 

 俺は唖然とした。

 

「ブレツェリは相変わらず怖いか?」

「いつも通りです」

「そうか、怖いのか。逃げたくなったらいつでも言ってくれ。俺の妹を紹介してやるから」

「結構です」

 

 全力で首を横に振る。こんな残念な義兄はいらない。

 

「俺が言うのも何だが、妹はかわいいぞ?」

「そういう問題じゃありません」

「しょうがねえな」

 

 ワイドボーン准将は国旗柄の煙草を懐から取り出し、国旗柄のライターを使って火をつける。ここまで来ると冗談じゃないかとすら思える。

 

 彼の乗っかりぶりは身なりだけでなかった。左遷先からハイネセンに呼び戻され、対テロ作戦の作戦立案担当者に起用となった。久しぶりの大仕事に張り切っている。

 

 波を怖がらないが乗っかることもなく、どんな時でも言いたいことをガンガン言う。そんなタイプはヤン・ウェンリーの周囲にはありふれているが、俺の周囲ではダーシャ・ブレツェリ、そして拘置中のエーベルト・クリスチアン中佐ぐらいのものだ。

 

 折を見てクリスチアン中佐と面会し、最近の世相についてどう思うかを聞いてみた。

 

「まったくもってけしからん! 秩序も規律もない。ただの馬鹿騒ぎではないか。こんなものを愛国とは言わんぞ!」

 

 さすがはクリスチアン中佐。パトリオット・シンドロームをばっさり切り捨てた。

 

「愛国心はことさらにアピールするものではない。行動で示すものだ。普段は上を敬い、友を大事にし、下を可愛がり、軽率な行動を控え、与えられた職分を全うする。いざという時は祖国のために体を張る。それで十分だろうが」

 

 クリスチアン中佐は自分なりの愛国論を勢い良く語る。内容は八年前からまったく変わっていない。そのぶれなさがこんな時には頼もしく感じられる。

 

 あっという間に面会時間が過ぎていく。話したいことはいくらでもあるのに、時間は限られている。それがもどかしくてたまらない。

 

「査問会のことだがな。新しい証人が認められたぞ」

「本当ですか?」

「査問委員長が犬から人間に変わってな」

 

 犬とは職分を無視してヤン少将に肩入れしたウィズダム少将のことだ。クリスチアン中佐はこの種の人物を激しく嫌う。

 

「それは良かったです。これで俺も全力で弁護できます」

「済まんが、貴官には次回から外れてもらいたい」

 

 予想もしなかった恩師の言葉。俺はうろたえた。

 

「どういうことです!?」

「貴官は弁が立たんだろう」

「自覚はあります。ですが、全力で頑張ります」

「そうもいかなくなったのだ」

 

 クリスチアン中佐は事情を説明してくれた。ヤン少将側は証人を入れ替えるのだそうだ。名前を聞いたところ、四人とも宇宙軍屈指の良識派として有名な人物だった。

 

「マリネスク、バイユ、ギュネイ、サンテーヴ。こいつらに議論で太刀打ちできるか?」

「できません。三〇秒以内に言い負かされます」

「だから、小官も弁の立つ奴を証人に立てる。正義が弁舌に負けてはたまらん」

 

 クリスチアン中佐が新しい証人としてあげたのは、エル・ファシル防衛部隊のアブダラ代将、クリスチアン中佐の戦友であり治安戦のプロでもあるヨーステン大佐とパゼンコ少佐、そして第八強襲空挺連隊。

 

「第八強襲空挺連隊から証人が来るんですか?」

 

 俺は目を見開いた。第八強襲空挺連隊がこの件で証人を出すとは思わなかったからだ。

 

「親しい者がいてな。二つ返事で来てくれた」

「凄いですね」

 

 特殊部隊の隊員は治安戦に投入されることから、恨みを買いやすい。そのため、よほど有名な者以外は名前が公開されない決まりだ。隊員が公式の場で証言する際は部隊名で出席し、証人席を衝立で覆い、ボイスチェンジャーを使うなど細心の注意を払う。それゆえに滅多に出てこない。親しいという理由だけで来るなんてよほどのことだ。

 

「奴は本物の軍人だ。保身なんてつまらんことは考えん」

「弁は立つんですよね?」

「口も頭も良く回る。法律にも強い」

「そんな人がいるとは……。俺の出る幕じゃなさそうです」

 

 俺は肩をがっくりと落とした。自分よりクリスチアン中佐に可愛がられた人間はいないと思う。それなのにいざという時は助けになれない。それが残念でたまらなかった。

 

「人には向き不向きがある。貴官は議論には向いていないが、人を動かすのには向いている。奴はその反対だ。今は奴の力が必要な時。貴官の力が必要になったら、その時は遠慮なく頼らせてもらう。だから気を落とすな」

「ありがとうございます。必要な時は真っ先に声を掛けてください」

 

 俺は机に手をついて頭を下げた。それと同時に面会時間が終わり、拘置所を後にする。門から出る直前、恩師が早く自由になれるよう祈った。前の世界で習った十字教式の祈り、地球教式の祈りを捧げ、どちらかの神が聞き届けてくれることに期待した。

 

 

 

 レグニツァの悲劇以降、帝国は挑発行動を繰り返すようになった。三日に一度は帝国軍の小部隊がイゼルローン回廊から越境攻撃を仕掛けた。一週間に一度は「新兵器の実験」との名目で、イゼルローン回廊から同盟領に向けて恒星間ミサイルを打ち込んだ。一〇日に一度は帝国情報機関が同盟国内でテロを起こした。

 

 このような行動が行われるたびに、帝国国営通信社が全銀河向けの放送で「偉大なる戦果」を誇り、同盟市民の怒りをかき立てる。

 

 緊張が高まる中、帝国軍宇宙艦隊総司令部のフレーゲル少将がフェザーン・ゾーラタテレビの番組に出演した。

 

「全宇宙に君臨する唯一絶対の支配者、神聖不可侵なる全能者であらせられる皇帝陛下は、最終的にして決定的な決断を下された。常勝不敗の精鋭三〇万隻をもって、愚かで汚らわしい反乱軍に徹底的かつ無慈悲な懲罰を加える。イゼルローン回廊の彼方はことごとく火の海になるのだ!」

 

 一二八年前にコルネリアス帝が率いた同盟領遠征軍は一三万隻。全盛期の銀河連邦が動かした最大兵力は二〇万隻。それらを凌ぐ大軍が同盟に攻め込むとフレーゲル少将は言う。

 

 ゾーラタテレビによると、フレーゲル少将は内務尚書フレーゲル侯爵の次男で、分家のラウシャ=フレーゲル男爵家を継いでいるという。母方の伯父は枢密院議長ブラウンシュヴァイク公爵である。宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥が腹心と頼むエリート作戦参謀であり、レグニツァの勝者ローエングラム元帥とは兄弟同然の仲で、帝国軍の最高機密に関わっているらしい。そういったことから信用できるのだそうだ。

 

 笑ってしまうほどでたらめな報道だった。血筋については間違っていないが、その他は前の世界の知識と照らし合わせると間違いだらけだ。フレーゲル少将は軍事のプロではないし、成り上がり者のローエングラム元帥を嫌っていたはず。三〇万隻発言の内実も怪しいものだ。

 

 別の情報筋によると、遠征軍人事は内定済みらしい。総司令官はエルウィン・ヨーゼフ帝、総司令官代理・大本営幕僚総監は宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥、総参謀長は宇宙艦隊総参謀長グライフス上級大将。兵站総監は統帥本部第二次長クラーゼン上級大将が務める。ローエングラム元帥が前衛部隊司令官、メルカッツ上級大将が中衛部隊司令官、グライスヴァルト上級大将が後衛部隊司令官となり、それぞれ一〇万隻を統率するとのことだ。

 

 ローエングラム元帥がレグニツァの功績で宇宙艦隊司令長官・大本営幕僚総監に就任し、遠征軍の総指揮をとると言う報道もある。

 

 同盟市民は仰天した。パトリオット・シンドロームは一種のブームにすぎない。本気で命を捧げる覚悟を固めた者は少なかったのだ。

 

「帝国に財源がない? 一〇〇兆ディナールの皇室財産がありますよ。我が国の年間軍事予算に匹敵する額です。すべてつぎ込めば三〇万隻どころか、五〇万隻だって動かせる。いざとなったら三〇〇兆ディナールの貴族財産に課税すればよろしい。あの国は独裁国家です。その気になれば、全国民から財産を没収することだってできる」

 

 政治評論家ドゥメックは皇室財産と貴族財産を根拠として、三〇万隻という数字が現実的なものだと主張する。

 

 トリューニヒト国防委員長は徹底抗戦を宣言。宇宙艦隊九個艦隊と地上軍八個軍をバーラト星系に集結させ、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥を総司令官、地上軍総監ペイン大将を副司令官とした。帝国軍が動員を開始すると同時にバーラトを出発し、全力で回廊出口を塞ぐ構えだ。

 

 銀河の緊張は頂点に達した。だが、決戦は起きないと見る者もいる。

 

「帝国の財政難は深刻だ。食糧不足も酷い。三〇万隻どころか三万隻を動かす余裕もないはずだ。最近の強硬姿勢は国内向けのアピールに過ぎん」

 

 統合作戦本部長シトレ元帥は、帝国政府の強硬姿勢が同盟でなく帝国国内へのアピールだと指摘した。

 

「帝国軍は外征型でなく内戦型の軍隊。兵站組織はおそろしく貧弱です。三〇万隻を一度に動かす能力などありません。国家というのは、余裕がない時ほど大きなことを言いたがる。古今東西に共通する法則です」

 

 ヤン少将は兵站面から三〇万隻侵攻を否定する。もっとも、後半だけを切り取れば、今の同盟を批判しているように見えたかもしれない。

 

「帝国政府は同盟産穀物の輸入再開を望んでいる。近日中に和平を申し出てくるだろう。例の報道はでたらめだ。フレーゲル少将は軍事のプロではない。帝国産穀物の利権を持つブラウンシュヴァイク公爵、我が国と帝国を共倒れさせようとするフェザーンが仕掛けた謀略だ」

 

 誰も予想しなかった見解を述べたのは、国家安全保障顧問アルバネーゼ退役大将である。国防委員会情報部、中央情報局、フェザーン高等弁務官事務所という三大情報機関のトップを歴任した唯一の人物。現在も帝国中枢に情報提供者を抱えると言われる。そんな人物の発言は玄人筋に波紋を引き起こした。

 

 決戦か和平か? 全銀河が帝国の動向を見守る中、俺の広報チームは解散した。一〇月一五日のことだ。

 

「年末までの休暇ですか?」

「君はよく働いてくれたからな。しばらくはゆっくり休んでもらいたい」

 

 トリューニヒト委員長は暖かい笑みを浮かべる。

 

「帝国との決戦が迫ってるでしょう」

「だからこそだ。決戦直前に人事を入れ替えるのはまずい。それに君は高級指揮官としての基礎に欠ける。今から着任したとしても、戦力になる前に決戦が終わっているだろう」

「おっしゃる通りです」

 

 一言も言い返せなかった。決戦前に人事を動かしたら部隊が弱体化する。俺は幕僚教育を受けていないため、大部隊を指揮できるようになるには時間がかかる。すべて正論だ。

 

「ポストの調整も難しくてね。ポストを与えるには、前任者を転出させて席を空けるか、新しいポストを作る必要がある。ところが我が軍の将官定数は極端に少ない。英雄にふさわしいポストを用意するには時間がかかるのだ」

「しかし、決戦までぶらぶらするのは気が引けます」

「三〇万隻ははったりだ。運用能力を最大限に見積もっても、せいぜい一〇万隻だろう。回廊出口で阻止できるはずだ。突破されたとしたら、君にはハイネセンポリスの防衛司令官に就任してもらう。象徴的な意味合いが強いポストだがね」

「戦意高揚のシンボルになれと」

「不本意なのは分かる。君は根っからの軍人だからな」

「戦うのが好きなわけではありません。しかし、何もせずにいると落ち着かないんです」

「とにかく、今はできることをやってくれ。早すぎる抜擢は失敗のもと。せっかくの人材を失いたくはない」

 

 トリューニヒト委員長の微笑みが少し寂しげになる。

 

「レグニツァですか?」

「パエッタ君たちには悪いことをした。いきなり抜擢するのでなく、段階を踏んで登用するべきだった。表では言えんがね」

 

 やはりトリューニヒト委員長はレグニツァの敗北を悔いていた。彼の人事の特徴は、良く言えば忠誠心重視で、悪く言えば自分好みの人物ばかり重用する。能力重視なら「無能だから失敗した」と切り捨てられるかもしれない。だが、好みの人物ばかりなので未練が残る。

 

「委員長閣下のお気持ちは良くわかりました。謹んで休ませていただきます」

「ポストが早く決まったら、その分だけ休暇が短くなるかも知れん。いつでも動けるように準備しておきなさい」

「かしこまりました」

 

 トリューニヒト委員長の言葉に甘えて、休みをもらった。二年前に入院して以来の長期休暇である。

 

 俺は思い切り羽を伸ばした。日頃は仕事のせいで生活が不規則になりがちだ。休みの間ぐらいは規則正しく過ごしたい。朝五時三〇分に起床し、トレーニングと勉強に打ち込み、朝食、昼食、夕食をすべて決まった時間にとり、二三時に眠るという夢のような暮らしを送った。

 

 公務はない。次の任務もわからない。そうなると、昔のことを考える時間が増える。パトリオット・シンドロームと前の人生を比べてみた。

 

 エル・ファシルから逃げた俺が捕虜交換で戻ったのは、実時間で五九年前のことだ。記憶ははっきり残っていない。『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』にも、当時の世情は詳しく書かれてなかった。それでも、今のような騒ぎになっていたのは何となく覚えてる。そういえば、当時もトリューニヒト委員長が人気者だった。

 

 当時の同盟市民がなぜエル・ファシルの逃亡者を迫害したのか? それは今のように愛国心ブームに乗っただけではないか? そして、迫害した人々の多くは怒っていたわけではなく、波に乗っただけの人、保身のためにやった人がほとんどだったのではないか? そんな風に思えてきた。

 

 ダーシャと一緒に風呂に入った時、自分の思いつきを話してみた。もちろん、前の世界のことではなく、リオ・コロラド事件でバッシングされた第五六一三任務隊に仮託して話す。

 

「君はどう思う?」

「エリヤの言うとおりだよ。関係のない事件に本気で怒れる人なんて、滅多にいないもん。怒ってもいないのに叩いてるってことは、アピールとか便乗とか保身とかでしょ」

「やっぱりそうだよな」

「流れに逆らうのって難しいから。私だって流れに乗らなかったせいで、酷い目に遭ったことがあるし」

「カプチェランカの件だな」

「そうそう、あれはきつかった」

「一〇万人からバッシング食らったんだろ。仲間はたったの二人。俺だったら二四時間ももたないな」

 

 軽く目をつぶり、過去に思いを馳せる。帰郷した当初は俺を擁護してくれた人もいないわけではなかったが、次第に減っていった。最後まで擁護してくれた姉のニコールは、駅の階段から転落して重傷を負って以来、口をつぐんだ。彼らは裏切ったのではない。強くなかっただけだ。

 

 家族や昔馴染みに対するわだかまりが急に薄れていった。ダーシャと二人の仲間、クリスチアン中佐の証人みたいに強い人なんて滅多にいない。家族の中で一番気が強かった姉ですら、最後まで擁護できなかった。父や母は世間体を気にするタイプ。妹は俺以上の小心者。弱さは悪ではない。

 

「悪いことをしたな」

「何が?」

「いや、何でもない」

 

 次に妹からメールが来たら返信しようと思った。これまではメールが来るたびに削除し、アドレスを受信拒否リストに突っ込んできた。受信拒否リストには広告メールのアドレスが数百も並んでいるため、どれが妹のアドレスなのかはわからない。新しいアドレスを取得してメールを送ってくるのに期待するしかなかった。

 

 一〇月下旬、ハイネセンポリスのファッション街「エルビエ・アベニュー」へと出掛けた。こんな俺も今や将官だ。いつまでも野暮ったい私服を着てるわけにはいかない。

 

 俺は長袖Tシャツの上に、オレンジの半袖パーカーを羽織っている。このふわふわしたパーカーは、憲兵隊副官だったユリエ・ハラボフ大尉から変装用としてもらったものだ。俺の私服の中でこれが一番マシなのだとダーシャは言う。

 

 左隣のダーシャは胸元が開いたニットに、スキニーとか言うぴっちりしたパンツを履き、キャスケットとか言うもこっとした帽子をかぶっている。彼女にしては相当大胆な格好だが、おしゃれな人が多いこの街では地味な格好の方が目立つ。

 

 ダーシャに言われるがままに、一本二〇〇ディナールを越えるパンツだの、一着一〇〇ディナールを超えるシャツだのを何着も買い込んだ。

 

「二二〇〇ディナール……、二二〇〇ディナール……」

 

 少尉の月給に等しい大金を服に注ぎ込んだという事実に呆然となり、カウンターの前で立ちつくした。ダーシャに引きずられるように店を出る。

 

「もしかしてエリヤか?」

 

 後ろから俺を呼ぶ声がした。振り向くと同年代くらいの男が立っている。俺より一センチ高い程度の低身長には好感を持てるが、まったく見覚えがない。

 

「どなたでしょうか?」

「エリヤだよな? エリヤ・フィリップス」

「そうですが」

「いや、なんで敬語なんだ……?」

 

 男は人の良さそうな顔に困惑の色を浮かべる。しかし、俺も困っていた。背筋の伸び方からすると軍人だろうが、まったく記憶にないのだ。

 

「フィリップス君の同級生とか?」

 

 ダーシャが助け船を出す。

 

「ええ、そうなんですよ。中学の一年度と三年度で同じクラスだったリヒャルト・ハシェクと言います」

 

 その名前を聞いた途端、俺はすべてを理解した。忘れているのも無理は無い。前の世界と通算すれば、六八年も顔を合わせていない人物だからだ。

 

「リヒャルトか!」

「そうだよ、なんで忘れるんだ? ひどいな」

「ああ、悪い。また会えるとは思っていなかった」

「大袈裟だな」

「いや、本気だ」

 

 熱いものがこみ上げてくる。リヒャルト・ハシェクは故郷での数少ない友人の一人だった。専科学校を卒業して軍人となったが、七九六年の帝国領侵攻で戦死した。早死したがゆえに俺を迫害していない。前の世界では珍しく良い思い出のみが残る。

 

「本当にどうしたんだ? アルマちゃんは覚えててくれたのに」

「アルマだって!?」

 

 唐突に出てきた妹の名前に驚いた。

 

「ああ、ついさっき、そこで会ったぞ。あっちから声をかけてきてくれた。エリヤは全然変わってないけど、アルマちゃんは……」

「アルマがいるのか!?」

「え、知らなかったのか?」

「どこにいるんだ!? あっちの方か!?」

「あ、ああ、そうだけど……」

 

 俺の剣幕にハシェクはたじろぎ気味だ。

 

「どうしたの?」

 

 ダーシャが心配そうに俺の顔を見る。

 

「ちょっとここで待ってろ!」

 

 俺は反射的に駆け出した。妹を探そう。そして、八年間無視し続けたことを謝ろう。

 

 人混みの中に飛び込み、妹の姿を探し求めた。湖の街の通行人はみんなおしゃれでスタイルが良い。背が高くて肥満した妹は目立つはずだ。

 

 何かにぶつかったことに気づき、顔を上げた。おそろしく背の高い女性が驚いたような表情で俺を見下ろす。少女のようにも少年のようにも見える童顔、緩くウェーブした亜麻色のショートカット、運動選手のようにすらりとした体つき。歩く国旗、いやワイドボーン准将の妹だ。

 

「すいません!」

 

 軽く頭を下げて走りだす。用があるのはかわいい他人の妹ではなく、デブで赤毛で不格好な自分の妹だ。この機会を逃したら、次はいつコンタクトをとれるか分からない。

 

 夕暮れ時のエルビエ・アベビューを必死に走り回る。どれほど探してもアルマの姿は見付からなかった。


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