銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第61話:凪の時 798年6月~8月 ヴァナヘイム~ハルダート星系~惑星バルトバッフェル

 同盟市民が「帝国反体制派」と聞いて思い浮かべるのは、投石や火炎瓶で戦う群衆か、爆弾テロに長けたテロリストであろう。現在、帝国全土で蜂起している反体制武装勢力に対しても、同じようなイメージを持たれがちだ。

 

 しかし、実際には過去の反体制派とまったく違う存在であった。帝国軍の元将校や元特殊部隊隊員が指揮をとり、最新鋭の戦闘車両、航空機、対空ミサイルを有する。その戦闘力は帝国地上軍正規部隊に引けをとらない。宇宙軍艦を持つ組織まである。旧カストロプ派や旧皇太子派のような政争の敗者、取り潰された貴族の旧臣、待遇に不満を持つ軍人、失業中の退役軍人が中心にいた。

 

 帝国軍の宇宙戦力は著しく低下した。一月から五月までの間に、常備戦力の四割と予備役戦力の三割が失われたと言われる。将校や下士官の大量離脱も大きな痛手だ。反体制派に多数のワープポイントを奪われたことにより、戦略的機動が困難となった。予備役戦力を動員して頭数は揃えたものの、一隻あたりの戦力指数は同盟軍の半分まで落ち込んだ。それでも、まとまった宇宙戦力を持たない反体制派相手には十分に通用する。

 

 反体制派支援作戦「エガリテ作戦」においては、同盟軍が宇宙戦、反体制派が地上戦を分担することとなった。同盟軍地上部隊と陸戦隊は、反体制派への兵站支援と航空支援を行う。

 

 ヴァナヘイムのブラウンシュヴァイク派は、各惑星の地上部隊を増強する一方で、宇宙戦力を後方に下げて長期戦に持ち込もうとした。同盟軍にヴァナヘイム全域を制圧できる戦力はない。いずれ息切れするものと考えたのである。

 

 しかし、この方面を担当する第一統合軍集団司令官ウランフ中将は、進軍を急がなかった。分艦隊規模から機動部隊規模の別働隊をいくつも作り、敵の後方へと侵入させる。宙域の確保にはこだわらない。兵站基地や補給船団を叩き、反体制派に補給物資を投下し、小部隊が現れたら迎え撃ち、大部隊を見つけたら退く。合計しても一万隻に満たない別働隊が、ヴァナヘイムのアースガルズ側宙域の実質的な使用権を手に入れた。

 

 敵の補給線を破壊し、味方の補給線を確保するような任務では、何よりも機動力が物を言う。そして、機動力といえばホーランド少将の代名詞だ。今やホーランド分艦隊と呼ばれるようになったD分艦隊は、エガリテ作戦でも大いに暴れ回った。

 

 第三六機動部隊はホーランド分艦隊の中核部隊として活躍した。進む時は先頭に立って突撃し、退く時は迫り来る敵に向かって突撃し、戦果をあげないことはなかった。

 

 本隊から離れて単独行動を取る場合もある。第三六機動部隊には機動力を生かした一撃離脱が期待された。敵中奥深くまで侵入し、一撃を加えた後に退却する。こうした作戦を繰り返すことで敵の動揺を誘う。

 

 出撃命令を受けたらすぐに幕僚を集めて会議を開く。最初にチュン・ウー・チェン参謀長が大まかな状況を説明する。その次に各部長が担当領域についての説明を行う。ラオ作戦部長は部隊の作戦能力、ベッカー情報部長は敵戦力及び作戦想定宙域、サンバーグ後方部長は部隊の補給状況、ニコルスキー人事部長は隊員の戦意や健康、マー通信部長は部隊の通信能力といった具合だ。

 

 俺は幕僚から提示された情報を元に作戦方針を決める。細かい方針を出す指揮官と大まかな方針を出す指揮官がいるが、俺は細かい方だ。チュン・ウー・チェン参謀長とイレーシュ副参謀長は、俺の方針に基づいて幕僚たちに作業を割り振る。幕僚たちは必要な兵力や物資を計算し、情報分析を行い、戦力運用について考える。それぞれの作業をチュン・ウー・チェン参謀長とイレーシュ副参謀長が整理して、作戦案を練り上げていく。

 

 大抵の場合、複数の作戦案が提示される。その中から司令官が適切なものを選ぶのだ。今回、第三六機動部隊の幕僚チームは三つの作戦案を作った。A案は戦果は大きいがリスクも大きく、B案は低いリスクでそこそこの戦果が得ることができ、C案は安全策だという。

 

「B案で行こう」

 

 俺はB案を採用した。A案は俺の能力では危険すぎる。部隊の保全を優先するならC案だろう。しかし、今はそれほど不利な状況ではない。上層部の期待を優先してもいいと考えた。

 

 作戦案が決定した後、俺は指揮官会議を開いた。こちらはテレビ会議だ。副司令官、配下の戦隊司令四名、直属の群司令五名、臨時配属された巡航艦戦隊司令一名と陸戦遠征師団長一名が分割されたテレビ画面に現れる。今回の作戦について説明し、指揮官たちの意見を聞く。異論が出ることもなく会議は終わった。

 

 このようなプロセスを経て、今回の作戦は決定された。方針を示し決断するのが指揮官の役目、計画を作り選択肢を示すのが幕僚の役目だ。『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』や『獅子戦争記』では、司令官が一人で作戦を決めるように書かれているが、あれは描写上の都合だろう。

 

 六月一二日、ゴッサウ星系急襲作戦「アイアシェッケ」が始まった。俺が単独で指揮をとる作戦としては、三度目になる。

 

 第三六機動部隊は戦力を二分した。ポターニン副司令官が率いる駆逐艦や母艦や支援艦など四四〇隻は、星系外縁部の哨戒基地群を叩く。俺は戦艦や巡航艦など三二〇隻を統率し、五〇〇〇光秒(一五億キロメートル)をノンストップで突っ切る。敵の目が哨戒基地群に向いてる間に、推力の大きい艦だけで星系首星に迫り、安全地帯など存在しないと知らしめるのだ。

 

「モースブルクから敵が現れました! およそ八〇〇隻!」

 

 オペレーターの声が司令室にこだまする。スクリーンに多数の光点が映ったが、並び方はバラバラだ。大慌てで飛んできたように見える。

 

「迎撃の準備が整ってないようですね」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長が食べかけのクロワッサンをポケットに押し込む。

 

「予想以上の慌てぶりだ。完璧な奇襲になった」

「一気に畳み掛けましょう」

「そうだな」

 

 俺は頷くと、席から立ち上がって背筋を伸ばす。

 

「全艦突撃!」

 

 号令とともに三二〇隻が突っ込んだ。敵の砲火はまったく当たらない。前方に現れた敵艦はすべて爆発光とともに砕け散る。ホーランド少将から学んだ芸術的艦隊運動の賜物だ。

 

「突破成功だ! このまま一一時方向に進んで離脱……」

 

 離脱命令を出そうとした時、副官コレット大尉が割り込んできた。

 

「司令官閣下、敵から通信が入ってきました。降伏するそうです」

「降伏?」

「はい。ゴッサウ星系警備隊が降伏を申し入れてきました」

「何かの間違いだろう。相手は四〇万の大軍だぞ」

 

 俺は苦笑いした。ゴッサウ星系警備隊は星域軍並みの大軍だ。宇宙部隊と地上部隊を合わせた人数は、どんなに少なく見積もっても四〇万を下らない。この程度で降伏するものか。

 

 しかし、間違っていたのは俺の方だった。本当に敵が降伏してきたのである。聞いたところによると、敵旗艦の乗員が「ミョルニル(雷神トールの鎚)が降ってきた!」とパニックを起こし、司令官に銃を突き付けて降伏を迫ったらしい。他の艦が戦意をなくしたこともあり、あっさり全軍が降伏してしまった。

 

「なんだそりゃ……」

 

 まったくもってわけがわからない。誰もが呆然としていた。あまりに唐突過ぎて喜ぶ気すら起きなかったのである。

 

 第三六機動部隊が四〇万人を降伏させたとの報は、あっという間に本国へと伝わった。マスコミは「赤毛の驍将」という恥ずかしい異名を連呼する。

 

「第一一艦隊にはこの私がいる! そして、D分艦隊には赤毛の驍将がいるのだ!」

 

 俺がマスコミに取り上げられるたびに、ホーランド少将はこんなコメントを寄せた。恥ずかしくて顔と髪の毛が同じ色になりそうだ。

 

 実を言うと、今の俺は「ホーランド二八将」の一員ということになっている。ホーランド少将は士官候補生時代に、「英雄たるもの、名将を集めないといかん」と思いたち、同級生三人を「ホーランド三将」とした。今年の二月に俺を勝手に加えて二八将になった。ホーランド少将の同期であるイレーシュ副参謀長によると、勝手に加えられた人は俺以外に八人いるらしい。

 

「ホント、あいつは勝手だよ」

 

 イレーシュ副参謀長は整った眉を寄せる。

 

「承諾した人が一九人もいる方が驚きです」

「六人は自分から入れて欲しいと言った奴だよ。『武勲から言えば自分が入るのは当然だ』ってねじ込んだ奴もいたね」

「世の中は本当に広いです」

 

 俺はびっくりした。彼らは恥ずかしくないのだろうか? ホーランド二八将に入ったら、「旧世紀を終わらせる男」とか「水瓶座のカリスマ」とか呼ばれるのに。

 

 ホーランド少将が良い上官なのは認める。凡庸な俺が武勲をあげられたのも、トリューニヒト派なのに予算をもらえるのも、ホーランド分艦隊に属したおかげだ。それでも、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

 ダーシャもホーランド少将に頭を痛めている。ホーランド少将は異常にアグレッシブだ。成功率三〇パーセントだが戦果の大きい案と、成功率九〇パーセントでそこそこの戦果を得られる案を提示されたら、迷うことなく前者を選ぶ。上位司令部に積極攻勢を持ちかけるのは定例行事だ。幕僚はそんな司令官に心酔しきっているため、積極案ばかり出してくる。話を聞いてるだけで胃が痛くなりそうだ。

 

 もっとも、ダーシャ本人は、ホーランド分艦隊司令部唯一の常識人というポジションを気に入ってるように見える。俺やワイドボーン准将と親しいことからわかるように、単純馬鹿が好きなのだろう。

 

 ホーランド分艦隊以外の部隊も頑張っている。第一三艦隊のB分艦隊司令官ジャスパー少将、第五艦隊の第七七機動部隊司令官リサルディ准将は、ホーランド少将に匹敵する活躍を見せた。

 

 そして、忘れてはならないのが第一三艦隊司令官ヤン中将だ。前線には出ていないものの、別働隊を使って制宙権を握る戦略を立てた。スペース・レギュレーション概念を彼ほど巧みに用いた者はいない。一世紀半にわたって主流を占めた殲滅戦理論は、完全に過去のものとなった。

 

 第二統合軍集団は二方向からリッテンハイム派を攻撃した。ロヴェール中将率いる二個艦隊と一個地上軍がレンテンベルク要塞を取り囲み、ルフェーブル中将率いる一個艦隊と一個地上軍がミズガルズからアルフヘイムへと進入する。帝国軍主要三派の中で、リッテンハイム派は最も多くの正規軍部隊を持っている。二方向から攻めることで戦力を分散させる狙いがあった。

 

 リッテンハイム公爵はレンテンベルク要塞にメルカッツ上級大将と一万隻を残すと、エッデルラーク上級大将とともにアルフヘイムに戻り、ルフェーブル中将を迎え撃った。

 

 現在はレンテンベルク要塞方面が膠着状態、アルフヘイム方面が六対四で同盟軍有利だ。敵より戦力が少ないメルカッツ上級大将が五分、敵より戦力が多いリッテンハイム公爵が苦戦しているのは、両者の軍事能力の違いだろう。

 

 第三統合軍集団司令官ホーウッド中将は、得意とする機動戦でヨトゥンヘイムの帝国側惑星を次々と攻め落とす。しかし、進軍が早すぎたために二週間で攻勢限界に達する。反体制派に補給物資を与えた後、戦線を整理するために後退した。

 

 

 

 

 

 同盟軍はどの方面でも優位に戦っている。それでも、これまでのように「戦うたびに勝ち、戦わなくても勝つ」といった感じではない。

 

 唯一にして最大の違いは、敵部隊の降伏や無断撤退が激減したことだ。決して敵が強くなったわけではない。練度や装備は三月時点よりも悪くなったし、兵士の士気は相変わらず低い。だが、将校が必死で戦うようになった。最近降伏した部隊のほとんどは、ロッサウ星系警備隊のように兵士主導の降伏だった。

 

 敵の将校が粘り強くなったのは階級的な要因が大きい。帝国軍将校は支配階級の出身者だ。平民出身であってもそれは同じだ。貴族並みに良い教育を受けた者でないと、士官学校や予備士官教育課程の平民枠には合格できない。オーディン陥落後、解放区民主化支援機構(LDSO)は支配階級を徹底的に叩いた。その結果、将校は降伏したら何もかも失うことを理解したのである。

 

 同盟と帝国の戦争はエガリテ作戦を契機に、国家同士の戦争から被支配階級と支配階級の闘争へと様相を変えていった。

 

 

 

 六月末、第一統合軍集団はアースガルズとの境界から八〇〇光年離れた地点で止まった。当面の間は背後の安全確保に専念する。

 

 第三六機動部隊は第一五二地上軍団、第一一九陸戦遠征師団、第九六山岳師団、第二九九独立航空団、第七〇七独立巡航艦戦隊とともに「ハルダート星系警備管区」に配属された。俺が管区司令官、第一五二地上軍団司令官ラフマディア准将が管区副司令官を兼任する。管轄区域は有人惑星二個を持つハルダート星系、有人惑星一個を持つアルテングラン星系のほか、無人の一四星系だ。平均的な星系警備管区を二つ合わせたほどの大きさだ。

 

 ハルダート星系警備隊は、ハルダート星系第三惑星バルトバッフェルのオスブルク市に司令部を置いた。オスブルクは先日まで皇帝領バルトバッフェルの星都だった街だ。

 

 俺は宇宙部隊を率いて帝国軍と戦った。味方補給路を敵から守ることもあれば、敵の補給路を叩くこともある。戦隊規模から群規模の小競り合いが一か月にわたって続いた。

 

 この戦いで第三六独立駆逐群司令ビューフォート代将が意外な才能を見せた。小惑星帯に隠れて敵を待ち伏せたり、警戒網をかいくぐって敵補給船団を奇襲したり、小部隊で大部隊を引き付けるといったゲリラ的な戦法で戦果をあげたのだ。エル・ファシルから俺の直属で戦ってきた人だが、単独で戦った方が本領を発揮できるのかもしれない。

 

 対照的なのが第三六独立戦艦群司令マリノ代将だ。勇敢で戦術に長けてるのに、単独で戦った時は今一つだった。本隊で攻撃の要を任せるのが良さそうだ。前の世界でヤン・ウェンリーはそのようにした。

 

 七月は今年で最も穏やかな月だった。どの方面も膠着状態だ。同盟軍には前進できるだけの兵力がなかったし、帝国軍には反撃できるだけの戦力がなかった。

 

 前線が膠着している間、後方では政治家たちが忙しく動き回る。政治闘争は武力闘争より流血は少ないものの、熾烈さにおいては勝るとも劣らない。

 

 エルウィン=ヨーゼフ帝は今年で五度目の大赦令を発した。これまで恩赦から除外されてきた元皇太子派や旧カストロプ派も対象となった。帝国宰相リヒテンラーデ公爵はかねてより「支配階級の団結」を口にしてきた。政争の敗者を復権させることで、支配階級を結集する狙いがあると見られる。

 

 この大赦令に帝国軍総司令官リッテンハイム公爵が激しく反発した。旧カストロプ派の権益の大半は、リッテンハイム派の手に渡った。復権されては困る立場だ。

 

 七月中旬、エルウィン=ヨーゼフ側の帝国国営通信社は、リッテンハイム公爵を「枢密院議長」の肩書きで紹介した。同じ頃、ローエングラム元帥が「国内艦隊司令長官」、リンダーホーフ元帥が「辺境艦隊司令長官」、ラムスドルフ元帥が「統帥本部総長」の肩書きで報じられた。リッテンハイム公爵は総司令官を解任されたとの見方が強い。

 

 一方、ブラウンシュヴァイク派は「劣悪遺伝子排除法」を改正した。マクシミリアン=ヨーゼフ二世が付け加えた「晴眼帝条項」による特例措置が完全に廃止され、ルドルフ時代並みの厳しい水準に変わる。帝国摂政ブラウンシュヴァイク公爵が推進したと言われる。

 

 帝国が分裂し、同盟が帝国領に攻め込んだことにより、国際交易が大きく停滞した。フェザーン経済が被った打撃は計り知れない。シンクタンクの試算によると、帝国領の戦乱はフェザーン経済に一日あたり二〇〇〇億マルクの損失を与えるという。先代自治領主ワレンコフの時代から囁かれてきたフェザーン経済危機の可能性が、現実のものとなりつつある。

 

 フェザーンのルビンスキー自治領主は窮地に立たされた。勢力均衡論者からは同盟の一人勝ちを許した責任を問われ、親同盟派からは同盟に協力しなかったことを批判され、親帝国派からは帝国を支えきれなかったことを批判され、財界主流派からは解放区ビジネスに乗り遅れた責任を問われる。人道援助の名目で帝国各派に莫大な援助を行う一方で、同盟政府に撤退を求めているものの、事態打開の見通しは立っていない。

 

 地球教総大主教シャルル二四世がフェザーンを訪問し、三〇万人の信者を集めて銀河平和を祈願するミサを行った。この時期に信徒が少ないフェザーンを訪れた理由は不明だ。様々な憶測が飛び交っている。

 

 フェザーンや地球教と近いトリューニヒト下院議長は、すっかり影が薄くなった。国防委員会の軍縮案を批判したり、遠征軍の戦力不足を指摘したりするものの、大きなニュースが連続するせいで話題にならない。

 

 遠征に反対した二人の閣僚のうち、レベロ財政委員長は留任した。彼の財政運営能力は遠征を遂行する上で不可欠だった。ホワン人的資源委員長は上院選挙の後に閣外へと去った。現在は解放区住民の本国移住を促進する議員立法に力を入れている。

 

 同盟政府は五年間で二億人を解放区から同盟本国に移住させる計画を立てた。ゲルマン系一億人と非ゲルマン系一億人を受け入れることで、経済発展を促すのが狙いだ。それとは別に一〇〇億人を超える非ゲルマン系を旧自治領から他の惑星に移す計画もある。移住先の候補には困らない。かつてオリオン腕には三〇〇〇億人が住んでいた。ゲルマン系が住む惑星はスペースが有り余っているし、人口減少に伴って放棄された可住惑星を再開発させてもいい。

 

 アースガルズ、ミズガルズ、ニヴルヘイムの解放区で有権者名簿の作成が始まった。一二月の制憲議会選挙を目標に作業を進める。選挙終了後に各解放区は星系共和国となり、星系憲法を制定してから自由惑星同盟の正式加盟国となる予定だ。

 

 解放区では選挙に向けた動きが加速している。政党はテレビにコマーシャルを流し、政治番組に指導者を出演させた。街中には政党のポスターが溢れかえった。各地で政治家が集会を開いて演説を人々に聞かせた。国民平和会議(NPC)や進歩党といった本国の大政党は、解放区政党との提携に情熱を注いだ。

 

 有力な解放区政党といえば、「自由共和運動」と「前進党」と「自主自立党」の三党だ。自由共和運動は帝国領内で活動してきた反体制組織、前進党はかつての帝国体制内改革派、自主自立党は帰国した亡命者を母体とする。いずれもハイネセン主義を掲げており、最も穏健なのが前進党、最も急進的なのが自主自立党である。

 

 全銀河亡命者会議が自主自立党の中核となった。会議代表のラシュワンは「私は党の代表ではない。人民の代表だ」と言って無所属で出馬するため、フィンク第一副代表が党首、バーゼル副代表が幹事長に就任した。党を結成するにあたり、貴族出身のメンバーは「フォン」を名前から外し、財産の大半を寄付することで無産平民となった。バーゼル幹事長に至っては、全財産九〇万ディナールを貧民に分け与えたという。

 

「今どきバーゼルさんみたいな政治家はいないですよ。いっそハイネセンで立候補してもらえませんか。一票入れますから」

 

 若いニュースキャスターが手放しで褒め称える。まったくもって呑気なことだ。バーゼルにはサイオキシンで稼いだ三億帝国マルクがある。九〇万ディナールなんて痛くも痒くもない。

 

 とんでもないことにルドルフ主義の政党を作ろうとした者がいた。ハルダート星系警備管区だけでも四党が届け出たと聞く。解放区全体では二〇〇〇党から三〇〇〇党はあるらしい。普通の帝国人はルドルフ主義しか知らないため、こんなことになったのだろう。もちろん、同盟憲章違反なので政党登録は認められない。果てしなく黒に近いグレーゾーンにいる党がいくつか登録を認められるに留まった。

 

 同盟本国の上院と下院は、ヴァルハラ星系を「エリジウム星系」、惑星オーディンを「惑星コンコルディア」に改名する案を可決した。銀河連邦時代の旧名に戻すことで、帝国の終焉と銀河連邦復活を印象づけるのが狙いだ。

 

 これを皮切りに、解放区の地名を銀河連邦時代に戻す案が相次いで提出された。銀河連邦の最初の首星「テオリア」、共和主義の聖地「タブラ・ラーサ」の名称を復活させる案が議会で審議されている。

 

 解放区でも改名ブームが巻き起こった。各星系、各惑星、各州、各都市の臨時政府は、地名を銀河連邦時代のものに戻し、皇帝や貴族にちなんだ公共施設の名前を変えた。

 

 銀河連邦を簒奪すると、ルドルフは全銀河の地名をゲルマン風に変えた。新時代の支配者がゲルマン系だと示すためだ。そして、病院や公園や道路などは「支配者からの贈り物」とされ、皇帝領では皇帝や皇后や皇子、貴族領では領主の名前が与えられた。ゴールデンバウム朝は支配の象徴として地名を利用したのだ。旧支配者の存在感を消し去るには、改名は必要な手続きだった。

 

 最近は「国名を銀河連邦に改めるべきだ」と主張する者も現れた。同盟は銀河連邦の後継国家を自認している。旧首星を奪還した今が改名の好機というわけだ。

 

「名実ともにゴールデンバウムの帝国は終わりました! 偉大な銀河連邦が復活するのです!」

 

 コーネリア・ウィンザー国防委員長が声高らかに宣言した。

 

「自由万歳!」

「民主主義万歳!」

「銀河連邦万歳!」

「アーレ・ハイネセン万歳!」

「コーネリア・ウィンザー万歳!」

 

 歓呼の渦が巻き起こり、無数の拳が天に向かって突き上げられた。すべての人が美しい国防委員長に熱狂する。

 

 俺はこの放送を星系警備管区司令部で見ていた。周囲からは拍手と歓声が聞こえる。この司令部にも、ウィンザー国防委員長を支持する者は多い。

 

「いやあ、素晴らしいですね! 司令官閣下もそう思いませんか!?」

 

 人事参謀カプラン大尉が満面の笑顔で話しかけてくる。とても鬱陶しい。

 

「そうだね」

「俺ね、子供の頃からウィンザー先生のファンなんです! ほら、お姉様って感じじゃないですか! フリーダム・ニュース、毎日見てたんですよ! ニュースの内容は全然わからなかったですけど!」

 

 カプラン大尉は大声で自分の馬鹿っぷりをアピールする。仕事中は冬眠中の熊よりも動かないのに、雑談になると発情中の猫よりも騒がしい男だ。

 

「君の言いたいことはわからないでもない」

 

 俺は適当に流した。正直言って突っ込むのも面倒くさかった。他の幕僚は「何言ってんだ、おまえ」と言わんばかりの表情でカプラン大尉を見る。特にイレーシュ副参謀長とニコルスキー人事部長の目が厳しい。

 

「フィリップス司令官、パンでもいかがですか」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長が、何くわぬ顔で潰れたサンドイッチを差し出す。ハムとチーズが挟まったサンドイッチだ。空気を読まないようで読めるのが、本当に読めないカプラン大尉との違いだろう。

 

 俺は潰れたサンドイッチを二つ食べてから、コーヒーカップに手を伸ばした。右手で取っ手を掴み、左手をカップに添えてコーヒーを飲む。もちろん砂糖とクリームでどろどろのコーヒーだ。喉が糖分で潤ったところで、三つ目のサンドイッチに手を出した。

 

 

 

 八月になっても膠着状態は続いた。戦えば同盟軍が勝つのだが、戦力が少ないせいでこれ以上先に進めない。

 

「遠征軍の戦力は充実しています」

 

 テレビの中でアンドリューが強弁した。声には落ち着きがなく、表情は何かに苛ついているようでく、目は異様な輝きを放っている。長年の夢がかなったというのに、幸せそうには見えない。

 

 ラグナロック作戦が始まって以降、アンドリューは遠征軍のスポークスマンを務めている。最近は実情とかけ離れたことばかり言ってるせいで、一部の兵士からは「おとぎの国のアンドリュー」とあだ名された。

 

 どうしてこんなことになったのだろうか? 前の世界の無能参謀そのままではないか。やりきれなくなってテレビを消した。

 

 戦力が少ない理由、アンドリューが強弁する理由のどちらも俺にはわかる。スペース・レギュレーション戦略の基準ならば、遠征軍の戦力は十分だ。イゼルローン無血攻略やオーディン攻略を成功に導いた戦略を否定したら、たちまちプロから非難を浴びるだろう。スポークスマンは自分の一存で物を言える立場ではない。

 

 俺はため息をついてから書類を開いた。普段はラフマディア准将に地上を任せているが、地上にいる時は俺が地上の責任者だ。

 

 ハルダート管区には三つの有人惑星がある。ハルダート第三惑星バルトバッフェル、ハルダート第四惑星シュパル、アルテングラン第六惑星ボッケナウだ。

 

 このうち、最も条件が悪い惑星は間違いなくボッケナウであろう。なにしろ酸素がない。解放前は「ボッケナウ自治領」と呼ばれていて、二〇〇万人が五世紀前の気密ドームに住んでいた。他の自治領と同じように、慢性的な食糧不足と不衛生な環境が人々の肉体を蝕み、無気力と絶望感が人々の心を占拠する。膨大な時間と資金を注ぎ込まない限り、人間らしく暮らせる環境にするのは難しい。

 

 ハルダート星系警備隊は、本国政府が発表した「自治領民はすべて他の惑星に移住させる」との方針に従った。移住先が見つかり次第送り出し、この一か月で移住した者は六万人にのぼる。

 

 他の二つの惑星は水も植物も豊かだ。バルトバッフェルには一四〇〇万人、シュパルには九〇〇万人が住んでいる。住民の貧しい暮らし、インフラの貧弱さといった点においては、他の帝国領と変わらない。

 

「似たような条件なのに、どうしてここまで違うんだろうな」

 

 俺はバルトバッフェルとシュパルの数字を見比べた。バルトバッフェルは何から何までシュパルより悪い。

 

 バルトバッフェルが抱える諸問題のうちで、最も深刻なのは電力不足である。一日あたり四時間から八時間の停電が起きた。バルトバッフェルの北半球は猛暑の季節だ。冷房が使えないと暑くて眠れない。しばしば冷蔵庫が止まるため、生鮮食品や冷凍食品が店頭から消えた。エレベーターの扉に「使用停止」の紙が貼られた。夜間にいきなり照明が消える。電気を使うものすべてが信用ならなくなった。

 

 解放前からバルトバッフェルでは停電が日常茶飯事だった。発電設備や送電設備が老朽化している上に、予算不足からメンテナンスがろくに行われず、電力網は崩壊しかけていた。それに拍車をかけたのがバルトバッフェルLDSOの政策だ。バルトバッフェル電力公社を分割民営化し、従業員の大量解雇や不採算発電施設の閉鎖を行った。こうして電力供給能力が低下したのである。

 

 電力不足が老朽化したインフラをさらに弱体化させた。断水が頻繁に起きている。信号機が止まるたびに車の流れが止まった。固定端末の通信網が不安定になったため、携帯端末への依存度が極端に高まり、回線混雑が酷くなった。

 

 インフラの弱体化に加えて、公共サービスの停滞が市民生活を阻害した。役所は業務時間を三分の二まで短縮し、公共交通機関は運休している時間の方が長くなり、公営病院は新規患者の受け入れを停止し、学校は無期限休校となった。

 

 公共サービスがここまで停滞した要因としては、解放前の民生軽視政策、解放後の性急な改革があげられる。帝国の公共サービス部門の特徴は、低い予算と少ない職員と大きな赤字だ。バルトバッフェルLDSOは大手術を施した。赤字を減らすために予算と職員を一気に減らした。水道公社や公共交通公社などの公営企業をすべて解体してしまった。組織の改編が激しすぎて、職員は自分がどの部署に属しているのかを忘れる有様だ。役所の幹部職員、医師、教師の過半数がLDSO布告第三号に引っかかり、公職から追放された。

 

 バルトバッフェルの場合、自由の恩恵を最も享受したのは犯罪者だろう。強盗、空き巣、自動車泥棒、ひったくりが昼夜を問わず起きるようになった。麻薬の売人が現れない場所はない。

 

 同盟軍にテロ行為を仕掛ける者まで現れた。兵士を狙った銃撃、手投げ弾や地雷による攻撃、軍用車両に対する待ち伏せ攻撃が相次いだ。この一か月だけで一四名が犠牲となった。

 

 インフラや公共サービスとは違い、バルトバッフェルの治安はもともと高い水準にあった。帝国の為政者は治安維持を重視する傾向が強い。人口一四〇〇万のバルトバッフェルには、七万一〇〇〇人の警察官、一四万八〇〇〇人の治安部隊隊員、一万二〇〇〇人の武装憲兵がいた。過剰なほどに充実した治安組織は、「反民主組織」として解散命令を受けた。その間隙に入りこんだのが犯罪者であった。

 

 バルトバッフェルLDSOはすべてを更地にした後に、民主的な警官だけで構成される新警察を建設し、民主的な軍人だけを同盟軍に編入しようと考えた。その判断自体は間違っていない。帝国人警察官にとっては、拷問は一般的な尋問手段であり、市民から金品を脅し取るのは公認された権利だった。帝国人軍人は民間人を犠牲にするのを悪いと思っていなかった。同盟だったら懲戒免職を食らうような人物は掃いて捨てるほどいる。こんなのをそのまま雇うなんて無理だ。

 

 旧組織の解体という判断自体は正しかったが、それ以外は完全に間違っていた。新組織の核となるべき警察幹部や将校が公職から追放された。収支バランスにこだわるあまり、予算の支出を嫌がった。再訓練に必要な人材を確保しようとしなかった。そのため、新組織の建設はまったく進んでいない。LDSOや同盟企業は傭兵を雇って身を守る有様だ。

 

 解放前より良くなった点としては、身分制の撤廃、言論規制の撤廃、政治犯の釈放、貿易の完全自由化、女性や障害者を対象とした積極的差別是正措置の導入、そして食糧不足の解消があげられる。ただし、食糧不足については、バルトバッフェルLDSOの手柄ではない。軍が流通ルートを守っているおかげだ。

 

 結局のところ、バルトバッフェルLDSOは住民を自由にする代わりに、生活難をもたらした。シュパルでもこういった問題はあるものの、バルトバッフェルほど酷くはない。

 

 どちらのLDSOが有能かと聞かれたら、一〇〇人中九八人はバルトバッフェルLDSOに軍配をあげるのではないか。スタッフには一流の人材が揃っている。カミロ・アギーレ代表は、「七九〇年代の一〇大奇跡の一つ」と称されるガンジスシステムズ再建の立役者だ。各惑星のLDSOは立派な建物に事務所を構えたが、バルトバッフェルLDSOの事務所は廃ビルを修復して使った。

 

 一方、シュパルLDSOは実績のない人ばかりだった。代表のマオ博士は温厚だが実務能力に欠けた。

 

 LDSOは民主化を最優先事項にあげる。彼らに言わせると、税金を使うのは将来に禍根を残すことで、行政機構や公務員は減らすべき金食い虫に過ぎず、独占的な公営企業は自由競争を阻害するし、個人の自由を圧迫する治安機関など存在すべきではない。何よりも自由を優先するのがハイネセン主義なのだ。

 

 優秀なバルトバッフェルLDSOは短期間で行政機構を破壊した。無能なシュパルLDSOは結果として行政機構を温存した。

 

 他の惑星も似たような状況だ。行政改革は行政機能の低下を引き起こし、経済改革は経済を混沌に陥れ、治安機関の解体は治安悪化を招いた。人々は自由とパンを得た代わりに仕事と安全を失った。

 

 こんな状況でもLDSOの支持率は高い。どの惑星でも九五パーセント前後を保っている。バルトバッフェルLDSOはなんと九六・三パーセントだ。俺が独自で調査した数字だから、情報操作がはたらく余地はない。食糧供給と支配階級排撃が支持されてるのだろうか。

 

「食糧が生命線だな」

 

 俺はそう結論づけてマフィンを二個食べた。食糧が供給されてる間は、住民はLDSOと同盟軍を支持する。食糧の流通ルートだけは最優先で確保しよう。

 

 もっとも、食糧だけに頼り切るのは危険だ。インフラや治安の悪化を喜ぶ住民はいない。俺は工兵部隊に電気網や水道網の修復、衛生部隊に医療支援、通信部隊に通信網の修復、犯罪多発地域の部隊にパトロール強化を命じた。

 

「軍隊がしゃしゃり出るのはまずくないですか? 民間経済を阻害することになりかねません」

 

 作戦参謀メッサースミス大尉が異議を唱えた。士官学校戦略研究科出身者の間には、LDSOの改革を支持する空気が強い。

 

「民間経済なんてどこにある? 企業が活動できる状態じゃないだろう」

「我々の仕事は環境を整えるまでだと考えます」

「俺たちの仕事は治安維持だ。管区内の安定を優先しないと」

 

 それだけ言って、俺は話を打ち切った。戦略研究科で教えるハイネセン学派の学問は、自由を与えればうまくいく下地があるのを前提としている。銀河広しといえども、そんな下地があるのは、同盟中央宙域(メインランド)の大都市圏とフェザーンぐらいだろう。

 

 端末から呼び出し音が鳴った。発信者欄を見ると、バルトバッフェルのボンガルト州を統括するグロージャン地上軍大佐だ。

 

「こちら、フィリップスだ。何があった?」

「ボンガルト同性愛者センターの工事現場で爆発が起きました。多数の死傷者が出ています」

「これで三件目か」

 

 俺は拳をぐっと握りしめた。現地人保守層は同性愛者の権利擁護に反発している。テロを辞さない者も存在する。ルドルフがばらまいた偏見は今もなお健在だ。

 

 同盟では問題にならない肌の色が、解放区では大きな問題になった。旧皇帝領や旧貴族領ではゲルマン系以外は劣等人種だと教育する。白い肌の者はゲルマン系に見えないこともないが、黒い肌の者や黄色い肌の者は明らかに違う。現地人は露骨に軽蔑の視線を向けた。現地人が黄色い肌の同盟軍人に注意されたことに逆上して銃を抜いたり、黒い肌の同盟軍人が現地人の罵詈雑言に耐えられなくなって殴ったり、肌の色に絡んだトラブルが各地で起きている。

 

 ブラウンシュヴァイク公爵は現地人の偏見を最大限に活用した。劣悪遺伝子排除法の厳格化はその一端だ。また、ラグナロック作戦を「奴隷が優等人種を支配しようとする陰謀だ」と吹聴し、シトレ元帥、ウランフ中将、ヤン中将、ホワン議員など色のついた肌を持つ同盟要人の写真を使って恐怖心を煽る。LDSOが推進する老人福祉や障害者福祉を「弱者を生かして帝国社会を弱める陰謀」、同性愛者の権利擁護を「同性愛を流行させて優等人種の血を絶つ陰謀」と決めつけた。ブラウンシュヴァイク公爵は治安情報部門の出身だ。このような煽動はお手の物なのである。

 

 同じ頃、フェザーンのゴシップ誌が、ローエングラム元帥と腹心のキルヒアイス大将が同性愛の関係にあるとの記事を掲載した。ローエングラム元帥とキルヒアイス大将が二人が同居している事実、ローエングラム元帥がその美貌にも関わらず女性と交際しない事実などを指摘し、ローエングラム元帥がキルヒアイス大将の髪を触っている写真を載せ、「二人の美しい若者のベッドシーンが目に浮かぶようだ」と締めくくった。ブラウンシュヴァイク公爵が仕掛けたと噂される。

 

 解放区を舞台に、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの亡霊とアーレ・ハイネセンの亡霊が抗争を繰り広げていた。




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