銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第66話:美しく素晴らしき戦い 799年4月10日~24日 アーデンシュタット~ヴァナヘイム~シャンタウ~ヴァルハラ

 第一統合軍集団司令部が撤退を通告してから間もなく、遠征軍総司令部は撤退許可を出した。時刻が通告の五分前にあたる「四月一〇日二〇時二九分」になっているのは、第一統合軍集団の撤退申請が正式に許可されたとの形式を整えるためだ。

 

 この件を抗命事件として扱った場合、現役の宇宙艦隊司令長官が一〇〇〇万人を率いて抗命したことになる。他の前線部隊が同調する可能性も少なくない。そうなれば、「占領地に居座って有利な講和につなげる」という戦略が崩れるだけでなく、戦争継続すら不可能になる。総司令部としては譲歩せざるを得なかった。

 

 それから間もなく、ヨトゥンヘイムの第三統合軍集団と第六統合軍集団、スヴァルトアールヴヘイムの第四統合軍集団、アルフヘイムの第五統合軍集団、ニダヴェリールの第七統合軍集団にも撤退許可が与えられた。第五統合軍集団はミズガルズ、その他の軍集団はアースガルズに向かって退却を始めた。警備担当の三個軍集団は引き続き担当地域に留まる。

 

 撤退許可とほぼ同時に、作戦参謀アンドリュー・フォーク少将が病気療養すると発表された。なお、具体的な病名は明らかにされていない。記者会見の席には、総司令官ロボス元帥、総参謀長グリーンヒル大将、副参謀長兼作戦主任参謀コーネフ大将らは現れず、作戦参謀リディア・セリオ准将が発表役を務めた。この女性は冬バラ会の実質的ナンバーツーで、人々からはアンドリューに代わる遠征軍の支配者だと見られた。

 

 本国政府はヴァナヘイムとヨトゥンヘイムとアルフヘイムの解放区を諦め、アースガルズ確保を最優先にすると発表した。旧帝都圏さえ確保すれば、市民への言い訳も立つと考えたのだろう。

 

 ウランフ大将は幹部会議の出席者に抗命の決定を隠すよう指示した。どのような形であっても、要求が通った以上は争う理由がないとの判断からだ。全面衝突を避けるために動いてくれたグリーンヒル大将への配慮もあった。

 

 日付が変わり四月一一日になった直後、警報がけたたましく鳴り響いた。スクリーンには膨大な数の光点が映る。

 

「第九惑星方面から敵艦隊が前進してきます! 数は一五〇〇から一六〇〇! 二〇分前後で接触する見込みです!」

 

 オペレーターの叫びとともに、前方展開部隊一二〇〇隻は戦闘モードに切り替わった。前衛に第三六機動部隊とビューフォート独立戦隊とアコスタ独立戦隊が展開し、後衛にマリノ独立戦隊とバルトハウザー独立戦隊が予備として控える。

 

「一歩たりとも敵を通すな! 五三〇〇万人の盾になるのが我らの役目と心得ろ!」

 

 俺は前衛の最前列で指揮をとった。一二〇〇隻が五三〇〇万人の盾ならば、自分は一二〇〇隻の盾になろう。無能者が人の上に立つには、それくらいの気構えが必要だ。

 

 敵は二列縦隊を組んで突っ込んできた。戦術も何もないただの力押しだが、一・三倍の兵力と大型艦偏重の編成が生み出す打撃力は侮れない。

 

 前衛部隊が突っ込んでくる敵を受け止める。ビームとミサイルを敵の艦列目掛けて撃ちこみ、中和磁場を張り巡らせて敵のビームを防ぎ、迎撃ミサイルで敵のミサイルを叩き落とす。小細工無しの真っ向勝負だ。

 

「望むところだ! 受けて立つ!」

 

 口先で猛将っぽいことを言いつつ、内心で胸を撫で下ろす。俺は戦術的な駆け引きがまったくできない。相手が力押しで来てくれて本当に助かった。

 

 このような戦いで決め手になるのは勇気の量だ。敵はヒルデスハイム艦隊の前衛だけあって高い練度を有するが、第一統合軍集団の切り込み役を担ってきた俺たちには及ばない。非戦闘員を守るという大義を見出したことで、落ちきっていた士気は激しく燃え上がり、失われていた規律は鉄石のように堅固となった。

 

 数時間にわたって乱打戦が続いた。最大戦力の第三六機動部隊を率いるポターニン准将は堅実な防戦に徹し、小戦力のビューフォート代将とアコスタ代将が両翼を固く守る。次第に敵に疲れが見えてきた。

 

 俺は左隣を向いて参謀長チュン・ウー・チェン代将に問いかけた。

 

「参謀長、そろそろいいか?」

「問題ありません」

「よし、予備を投入する!」

 

 恐れを知らないマリノ代将と用兵下手だが働き者のバルトハウザー代将が、天底方向へと猛進した。数千本のビームが功名心に駆られた敵の下腹部を痛打する。艦首を下に向けて迎撃態勢をとった敵下方部隊を突き破り、ビームとミサイルを盛大にばらまき、密集した敵艦をなぎ倒す。

 

「今だ! 全艦突撃!」

 

 俺の号令とともに前衛部隊が突っ込んだ。内外から攻め立てられた敵はみるみるうちに崩れていき、やがて全面的な敗走に移った。

 

 ヴァイマールの司令室が歓声に満たされた。正面から殴り合って勝つほど気持ちいい勝ち方はない。これで部下はまずます盛り上がるだろう。士気重視というより、士気しか頼るもののない俺にとって最高の結果だった。

 

「追撃は不要! 戦闘要員は休憩をとれ! 支援要員は全力で補給や整備を進めろ!」

 

 俺はすぐさま次の指示を出す。兵士に休みを取らせ、艦艇に補給を行い、そう遠くないうちに訪れるであろう次の戦いに備える。

 

 非戦闘員が退避するまで時間を稼ぐのが、俺たち追撃阻止部隊に課せられた任務だ。シュテンダールのような最前線には、同盟人民間人も親同盟派民間人もいなかったため、すぐに退避作業が終わった。しかし、後方では思うように進んでいない。少なくとも半日はアーデンシュタットに留まることになるだろう。

 

 ウランフ大将は第一統合軍集団の艦艇六万隻を二つに分け、三万隻を非戦闘員の退避支援、三万隻を前線に残して追撃阻止部隊とした。これまでは五万隻を前線に配備し、一万隻を後方警備に充ててきたので、二万隻が引きぬかれた計算だ。一方、レーンドルフ方面には五万隻のブラウンシュヴァイク派艦隊がいる。一・七倍の敵を防ぐのは容易ではない。

 

 もっとも、退避支援部隊の任務はさらに困難だ。五三〇〇万人が乗れる船を確保し、五三〇〇万人を暴徒やテロリストから守りつつ船に乗せ、巨大船団をシャンタウまで無事に航行させなければならない。目前の敵に集中すれば良い分だけ、俺たちの方がまだましだと思える。

 

 数時間後、ましだと言ってられない状況に追い込まれた。敵部隊二〇〇〇隻がアーデンシュタットに侵入してきた。その背後にはヒルデスハイム艦隊本隊三〇〇〇隻が控えているという。こちらの兵力は先程の戦いで一二〇〇の大台を割り込んだ。どう見ても勝てるはずがない。

 

 俺は落ち着いた顔を作ってスクリーンを眺めた。もっとも、心臓は狂ったように躍り出し、腹はきりきりと痛み、背中に冷や汗がにじんでいる。

 

「勝ちすぎたかな」

「本気にさせてしまいましたね」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長はいつものようにのんびりした顔で応じた。

 

「どうしようか?」

「勝ち目がありません。全力で離脱しましょう」

「逃がしてくれるかな?」

「援軍を呼びましょう。ヒルデスハイム艦隊の総数は一〇〇〇〇隻。その半分をこちらに差し向けた計算になります。その分、他の方面が薄くなり、味方に戦力的余裕が生じているはずです」

 

 敵が五〇〇〇隻を投入してきた事実から、チュン・ウー・チェン参謀長はこれだけ多くのことを読み取った。目の前しか見えない俺にはできないことだ。

 

「よし、参謀長の言う通りにしよう」

 

 俺は全面的に提案を受け入れると、アーデンシュタットから離脱すると同時に、近隣の味方に援軍要請を出した。

 

「司令官閣下、ホーランド機動集団本隊より承諾の返事が来ました」

 

 副官コレット少佐が本隊からの通信文を持ってきた。予想以上に早い返事だ。「ヒルデスハイムを討ってください」と書いたのが効いたのだろう。見敵必戦のホーランド中将はこういう言い回しを好む。

 

 前方展開部隊は全力で逃走……、いや転進してホーランド中将との合流を目指した。合流予定宙域のソーレン星系は、退避作業に悪影響を及ぼさないギリギリの線だ。

 

 後ろからはヒルデスハイム艦隊五〇〇〇隻が追いかけてくる。推進力の強い戦艦部隊七〇〇隻がその先頭に立つ。捕捉されたら撃滅されることは疑いない。

 

「大型艦と小型艦が一緒になっていては追いつかれます。小型艦を先に行かせ、大型艦を殿軍として時間を稼ぎましょう」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長とラオ作戦部長の進言に従い、俺は戦艦一四〇隻と巡航艦三一〇隻を率いて殿軍となった。戦艦部隊の先頭を叩いて離脱し、敵が追いついてきたら再び先頭を叩いて離脱する。これを何度も繰り返した。

 

 四月一二日、俺はソーレン星系でホーランド機動集団本隊と合流した。味方の総数は三九〇〇隻で敵の八割弱といったところだ。

 

「精鋭諸君! 天空を見よ! 数億年の輝きが見ているぞ! 星々の記憶に我らの名を刻みつけようではないか!」

 

 ホーランド中将が拳を振り上げると、三九〇〇隻が歓呼をあげながらヒルデスハイム艦隊に向かっていった。

 

 密集隊形で前進する敵に対し、ホーランド中将は芸樹的艦隊運動を習得した精鋭一七〇〇隻を率いて正面攻撃を仕掛けた。三倍の敵に正面から挑むなど狂気の沙汰にしか見えないだろう。だが、負けると思っている者は一人としていない。

 

 精鋭が数十隻単位に分かれて散開し、自由自在に隊形を変えながら進んでいく。敵の砲火は散開隊形の隙間をすり抜け、味方の砲火は密集した敵を的確に捉えた。ホーランド中将は敵艦列の結節点を直感で見抜き、効果的に分断する。空いた穴に俺が先頭部隊を率いて入り込む。

 

「上も下も右も左も前も後ろも敵だらけだ! 撃てば当たるぞ!」

 

 俺が床を蹴って叫ぶと、先頭部隊五〇〇隻が近距離砲を一斉に撃ち放った。ウラン弾の雨が敵艦を宇宙の塵へと変えていく。傷口が大きくなったところに、ホーランド中将の旗艦「ディオニューシア」、エスピノーザ部隊、バボール部隊、ヴィトカ部隊が殺到する。

 

 勇猛だが守勢に弱いヒルデスハイム艦隊は激しく動揺した。統制を取り戻そうとする努力は、ホーランド中将の速攻によってことごとく失敗に終わった。

 

「我が軍の勝利は目前にあり! 前進して敵を分断せよ!」

 

 ホーランド中将は後方の二二〇〇隻に攻撃参加を命じた。オウミ副司令官とハルエル少将に率いられたこの部隊は、独立部隊・予備役部隊・元帝国兵部隊で構成されており、芸術的艦隊運動が使えない。それでも、このような局面では大きな破壊力を発揮する。

 

 ソーレン会戦はホーランド機動集団の大勝利に終わった。三割を失って後退した敵に対し、味方が失った兵力は五パーセントにも満たない。

 

 その後も撤退戦が続いた。第一統合軍集団司令官ウランフ大将、第一一艦隊司令官ルグランジュ中将、第五艦隊司令官メネセス中将の三名が指揮する追撃阻止部隊は、敵の波状攻撃を退ける。第四地上軍司令官ベネット中将が率いる退避支援部隊は、非戦闘員の保護に全力を尽くす。

 

 非戦闘員を守るために一〇〇〇万人が心を一つにした。人間を強くするものは信頼だ。第一統合軍集団の兵士は大義を信じ、大義のために戦う指揮官を信じ、大義を共有する戦友を信じることができた。この時、彼らは銀河で最強の兵士だった。

 

 

 

 第一統合軍集団がブラウンシュヴァイク派と激戦を繰り広げている間、同盟軍は各地で後退を重ねていた。

 

 ヨトゥンヘイム方面では、第三統合軍集団がラインハルト率いる帝国軍国内艦隊と戦い、第五次ビブリス会戦とキルヒハイン会戦で敗れた。基幹部隊の第七艦隊と第一〇艦隊は精鋭であったが、疲れきっていた。天才ラインハルトの前ではわずかな隙ですら命取りになる。軍集団司令官ホーウッド大将の戦略、第一〇艦隊司令官オスマン中将の用兵、前衛を担うモートン中将やヘプバーン中将の勇敢さをもってしても、味方を敗北から救うことはできなかった。

 

 艦隊戦での連敗は、ヨトゥンヘイムの反同盟勢力を勢いづけるとともに、親同盟勢力の寝返りを促した。同盟軍地上部隊は暴徒や民兵に取り囲まれた上に、アースガルズ予備軍の絶え間ない襲撃を受け、進むも引くも困難となった。艦艇戦力の四割を失った第三統合軍集団には、地上部隊を救う余力はない。上陸戦部隊の第六統合軍集団は自分の身を守るので精一杯だ。

 

 レンテンベルク方面では、第二統合軍集団とメルカッツ艦隊のにらみ合いが続いている。動きが少ないことから、第八艦隊をヨトゥンヘイム方面の救援に送った。

 

 アルフヘイム方面では、第五統合軍集団がリッテンハイム派主力部隊の猛攻を受けた。老練なルフェーブル大将が指揮をとり、歴戦の第三艦隊を基幹とする精鋭も数の圧力には勝てなかった。現在はミズガルズのヴィーレフェルトまで退き、インディペンデンス統合軍集団とともに防戦を続ける。

 

 ガイエスブルク方面では、第四統合軍集団とブラウンシュヴァイク派ガイエスブルク方面軍が死闘を繰り広げた。司令官ヤン大将は二万隻を率いて後衛となり、数が多く活力に富んだ敵を良く防いだ。副司令官カンディール中将は一万隻と地上部隊を指揮して、非戦闘員の保護に努めた。

 

 ニダヴェリール方面では、第七統合軍集団が非戦闘員や地上部隊を収容しつつ後退した。この方面にいる帝国軍辺境艦隊は精鋭だが数が少なく、追撃を阻止するのはさほど難しくない。むしろ、反同盟勢力の蜂起、親同盟勢力の裏切り、アースガルズ予備軍の襲撃の方が厄介といえる。

 

 レーンドルフ方面の第一統合軍集団はどの方面よりも苦しかった。過労が兵士から判断力と集中力を奪い、業務効率を著しく低下させた。敵を撃退するたびに損害と疲労が蓄積された。膨大な非戦闘員を抱え込んだことで、食糧や生活物資の備蓄が底をついた。士気がまったく落ちていないのが救いだ。

 

 俺の部隊は最後尾で戦い続けた。単独で戦うこともあれば、同格の部隊と協力して戦うことやホーランド中将の指揮下で戦うこともあった。そのすべてで勝利を収め、敵の進撃を遅らせる代わりに消耗した。

 

 

 

 

 

 四月一七日の朝、コレット少佐が嫌な知らせを持ってきた。

 

「第三六戦艦戦隊のスー先任代将が心筋梗塞で倒れました」

「病状は?」

「命に別状はありません。しかし、当分は安静が必要とのことです」

「そうか、それは良かった」

 

 俺の胸は安堵と罪悪感で半々だった。ここ数日、過労で倒れる者が相次いでいる。火力の要として貢献してくれたスー先任代将の脱落は、感情的にも戦力的にも辛い。

 

 落ち込んだ気持ちに、サンバーグ後方部長の報告が追い打ちをかけた。水素燃料が著しく不足しているというのだ。

 

「このまま機動戦を続けると、シャンタウに着くまでに水素燃料がなくなります」

「ウラン弾とミサイルの残量はどうだ?」

「いくらかは余裕があります」

「接近戦主体に切り替えた方がいいかもな」

 

 サンバーグ後方部長が退出した後、俺はラオ作戦部長を呼び、機動戦から接近戦に切り替えた場合はどうなるかを聞いた。

 

 戦略戦術は使える物資に左右される。ホーランド流の機動戦は、損害を出さない代わりにエネルギーを大量に使う。一方、実弾兵器と単座式戦闘艇を用いた接近戦は、エネルギー消費が少ないが損害も多い。判断が難しいところだ。

 

 話し合いが終わると、コレット少佐がまた嫌な知らせを持ってきた。今度は総司令部から全軍にあてた命令文だ。

 

「軍需工場をすべて破壊しろだって?」

 

 心の底からうんざりした。そんなことに戦力を回す余裕など今はない。いや、今でなくともなかった。オーディンが陥落して以降、遠征軍は必要な任務に割く戦力すら不自由していた。

 

「セリオ准将は何を考えてるんですかね?」

 

 ラオ作戦部長はうんざりした顔をする。アンドリューの療養に伴い、セリオ准将がロボス元帥との連絡を一手に引き受けることとなった。世間では前任者と同様にロボス元帥を操ってると思われているのだ。

 

「本気で命令したわけではないと思うよ。何が何でも実施しろとも言ってない」

「そういえば、三日前と五日前にも同じ命令を受け取りました」

「統一正義党への義理だろうな」

 

 俺は本国政局に絡んだ命令だと見当をつけた。極右政党「統一正義党」は、「なぜ帝国を焦土にしないのか」「軍需工場を破壊し、後顧の憂いをなくせ」と騒いでいる。実現性も必要性も皆無なのだが、政府や総司令部は戦争継続派の統一正義党をおろそかにできない。

 

「なるほど。閣下の政局眼はさすがです。戦術眼は全然……」

「昼飯にしようじゃないか!」

 

 仕事が一段落したところで、士官食堂へ昼食をとりに行った。今日から士官の食事はカロリー換算で二〇パーセントカットされる。戦闘任務中に支給される増加食は、三日前から支給停止になった。非戦闘員を収容していないため、退避支援部隊よりは余裕があるが、それでも減らさなければならなかった。

 

「きついですね。軍艦乗りにとって食事は数少ない楽しみですから」

 

 アシャンティ艦長からヴァイマール艦長に横滑りしたドールトン大佐が溜息をつく。

 

「一日三〇〇〇カロリーじゃねえ」

 

 イレーシュ副参謀長は切れ長の目に憂いの表情を浮かべる。宇宙軍軍人に支給される食事は一日あたり三八〇〇キロカロリーで、小食でなければ満足できない量だ。それが二割減らされたのだから嘆くのは無理もない。

 

「それはともかく、サンドイッチが食べられなくなりました。困ったものです」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長がプレーンベーグルを手にとった。最近、彼のポケットの中から潰れたサンドイッチが消えた。

 

「最近は甘い物も食べられなくなった」

 

 俺は愚痴をこぼす。最近はマフィンをほとんど食べられなくなり、コーヒーを砂糖でドロドロにできないので、糖分不足に苦しんでいる。

 

「艦長のおっしゃることはもっともと思いますが、司令官と参謀長と副参謀長は基準が少々ずれ……」

 

 ラオ作戦部長が何か言おうとしたところで、テレビからチャイム音が鳴った。この音はきわめて重要かつ緊急な連絡の時だけ鳴る音だ。

 

 スクリーンに第一統合軍集団司令官ウランフ大将が現れた。これはただ事ではない。食堂に緊張が走る。

 

「第一統合軍集団本隊はニーダークンブト星系第三惑星近辺にて、帝国軍一万隻と遭遇した。これより遅滞戦闘を行い、非戦闘員を逃がすための時間を稼ぐ」

 

 俺は幕僚たちと顔を見合わせる。ニーダークンブトは最前線にも関わらず、人口が多いために退避作業が遅れていた。本隊の兵力は五〇〇〇隻か六〇〇〇隻程度だったはずだ。

 

 ウランフ大将は帝国軍の名将メルカッツ上級大将と近い性質を持っている。劣勢を互角に、互角の戦いを優勢に持っていけるが、負け戦を勝ち戦にすることはできない。疲れた兵を率いて二倍の敵に勝つのは無理だ。そして、彼に非戦闘員を見捨てて逃げるという選択はない。このままでは確実に全滅する。

 

 俺は真っ青になった。ウランフ大将は第一統合軍集団、いや同盟軍の柱石とも言うべき人だ。個人的にも死んでほしくなかった。酷評であっても、小細工なしに切り込んでくるタイプは嫌いではない。

 

「救援しないとまずいぞ。ニーダークンブトまで何光年だ? いや、まずはホーランド司令官に具申しないと。コレット少佐、紙とペンを出してくれ。いや、端末だ。ノート端末を出してくれ。具申書の下書きを書くから」

 

 ごちゃごちゃ言ってるところに、ウランフ大将の力強い声が響いた。

 

「救援の必要はない。五〇〇〇隻もいれば、時間を稼いで包囲を突破するには十分だ。他星系の退避作業に支障をきたさないよう、戦線維持に努めることが諸君の務めと心得てほしい。本隊が敵兵力の二割を釘付けにすれば、その分だけ諸君の負担が減り、非戦闘員が退避しやすくなるというものだ」

 

 食堂にいる者すべての顔が驚きに包まれた。ウランフ大将はニーダークンブトの非戦闘員だけでなく、すべての部下と非戦闘員のために時間稼ぎをするつもりだ。驚かずにいられようか。

 

「諸君を一人でも多く生かすのが指揮官たる者の義務だ。諸君が進む時は最先頭に、退く時は最後尾に立つのもまた指揮官たる者の義務だ。遠慮することはない。私が稼いだ時間を使って生き延びろ。私が稼いだ時間を使って一人でも多くの非戦闘員を救え。それが指揮官たる私が諸君に課す義務だ」

 

 俺は食い入るように画面を見つめる。ノブレス・オブリージュ、高い地位を持つ者はそれに見合った義務を背負わねばならないとの理念が人間の形を取って現れた。その奇跡にすっかり見とれていた。

 

 自他ともに認める小物でも何が美しいかぐらいはわかる。部下を死なせたくはないし、指揮官が先頭に立つのは当然のことだとも思うが、そのために命を賭けられる自信はない。勇敢なように振舞ってきたのだって、人々の期待を裏切るのが怖かっただけだ。ウランフ大将がなぜ身を捨てられるのかはまったく理解できないし、共感もできない。それなのにどうしようもなく美しい。

 

「自由惑星同盟は自由の国だ。自由の国は諸君に自由であることのみを求める。国のために死ぬ人間ではなく、自由に生きる人間であることを求める。私は自由を愛している。ただ一つの与えられた正解ではなく、無数の答えの中から好きなものを自由に選べることが、何よりも幸福だと思う。正しいことも間違ったことも自由に選べる国、優等生もはみ出し者も自由に振る舞える国、賢者も愚か者も好きなことを言える国、国を愛する自由も国を憎む自由もある国を守るために、私は戦ってきた」

 

 ウランフ大将の顔に優しい表情が浮かんでいた。恋人について語っているようにすら見えた。

 

「自由な生を全うしてもらいたい。それが私からの願いだ。最後に諸君に感謝する。諸君は良き部下であり良き戦友であった。共に戦えたことに感謝する」

 

 ウランフ大将が深々と頭を下げて最敬礼をした途端、俺はすっと立ち上がって最敬礼を返した。両目からは涙がこぼれ落ちる。これで泣かない者がいたら、それは人間ではない。

 

 他の者も命令されたわけでもないのに、俺と同じように最敬礼の姿勢をとる。怠け者のカプラン大尉ですら例外ではなかった。ウランフ大将の姿がテレビから消えた後も、真っ暗な画面に向かってみんなで敬礼を続けた。

 

 放送から二日後、本隊の生き残りから「ウランフ大将戦死」の報が伝えられた。彼は非戦闘員を逃がした後、残存兵力三〇〇〇隻を率いて包囲を突き破ったが、自分自身は逃げきれなかった。足の遅い艦を逃がすために戦っていたところ、旗艦に直撃弾を受けたのだそうだ。報告を聞き終えると、俺はニーダークンブト星系の方向を向いて敬礼した。

 

 

 

 ウランフ大将が亡くなると、第一一艦隊司令官ルグランジュ中将が追撃阻止部隊の指揮を引き継いだ。

 

「徹底的に時間を稼げ! 市民の盾となるのだ!」

 

 追撃阻止部隊は司令官が交代した後も強かった。ルグランジュ中将は前任者と比較すると指示や判断の正確さに難があったものの、士気を高める力は勝るとも劣らない。ウランフ大将の戦死はむしろ兵士の奮起を促した。

 

 一方、敵の総司令官ミュッケンベルガー元帥と総参謀長シュターデン上級大将は、私兵軍と予備役を総動員して攻撃のペースを上げた。

 

 四月一九日二三時、ホーランド機動集団は、レムベルク星系第五惑星宙域で帝国軍四二〇〇隻と遭遇した。同星系第一四惑星宙域で三三〇〇隻を撃退してから八時間後、隣接するマウシュバッハ星系で三八〇〇隻を撃退してから二〇時間後のことだ。

 

「冗談じゃない! 一日で三回目だぞ!」

 

 オペレーターの一人がうんざりした声をあげた。今や第一統合軍集団にとって戦闘はルーチンワークに成り果てており、連戦の倦怠感が連勝の喜びを上回っている。

 

 敵は半球状の陣を敷いた。攻撃力に欠けるものの側面攻撃に強い陣形だ。艦艇の三分の二は予備役分艦隊のエンブレムが付いた旧式艦、三分の一は宇宙艦隊総司令部直轄のエンブレムが付いた現役艦が占める。

 

「参謀長、敵の狙いは何だと思う?」

 

 俺はチュン・ウー・チェン参謀長の意見を求めた。

 

「防御に徹することで消耗を誘うつもりでしょうね」

「こちらが速戦即決狙いなのはわかってるわけか。ちゃんと研究してるんだな」

「シュターデン総参謀長は理屈倒れと言われます。裏返してみると、理屈が通用する場面では強いのでしょう」

「速戦即決で片付ける方法はあるか?」

「あります」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長は、パンの在庫を聞かれたパン屋のように言い切った。

 

「ごらんください、予備役部隊は艦列の間隔がやや広くなっています」

「艦同士の衝突を避けるためだな。距離を詰めたまま艦を動かせるだけの練度がない」

「その通りです。半球陣の防御力は見かけの七割か六割といったところでしょう」

「突破するのは難しくなさそうだ」

「問題は正規兵です。ただし、積極的に戦わない可能性が高いでしょう。この二日間で戦った敵の編成を見るに、正規兵と予備役兵と私兵の混成部隊ばかりでした」

「コアになる正規兵は温存するってことかな」

「予備役兵と私兵だけでは戦力になりませんからね。敵の戦略が波状攻撃である以上、新規部隊編成に必要な正規兵は大事にすると思われます」

「ありがとう、よくわかった」

 

 俺は心からの感謝を込めて言った。自分一人では目前の敵が強いかどうかはわかっても、何を考えているかはわからない。チュン・ウー・チェン参謀長と問答することでようやく理解できる。

 

 ホーランド中将はいつものように速戦即決を選んだ。芸術的艦隊運動が使えないため、全軍三二〇〇隻が一丸となって突撃する。俺が紡錘陣の先頭に立ち、ホーランド中将がハルエル少将とエスピノーザ准将を従えて第二陣となり、第三陣のヴィトカ准将とバボール准将、第四陣のオウミ准将が後に続く。

 

 ホーランド機動集団は対艦ミサイルを乱射しながら敵右翼へと突っ込んだ。絶妙なタイミングと角度から行われた突撃に敵は対処しきれない。薄い艦列をあっという間に破った。

 

「母艦からスパルタニアンを発進させろ! 他の艦は近距離砲に切り替える!」

 

 ここからは接近戦の時間だ。単座式戦闘艇「スパルタニアン」が敵の単座式戦闘艇「ワルキューレ」を制圧し、駆逐艦は敵艦に肉薄して電磁砲を叩き込む。接近戦に弱い戦艦や巡航艦はやや離れた場所から支援に徹する。

 

「仰角二〇度! 一一時方向へ集中砲火を浴びせろ!」

 

 すべての艦がホーランド中将の指示通りに砲撃すると、敵は驚くほどの速度で崩れていった。凡人に見えない弱点が彼には見えるのだ。

 

 日付が変わる前に敵は総崩れとなり、ホーランド機動集団は一日で三度目の勝利を収めた。この日に被った損害は二〇〇隻程度、敵に与えた損害の合計はおよそ二〇〇〇隻である。苦境にあってホーランド中将の輝きは一層強くなったように思われた。

 

 この快勝は従軍記者によって本国へと伝えられた。敵の妨害電波が酷いので本国のニュースは見れないが、軍用回線で送られてくる軍の機関誌「三色旗新聞」によると、かなり大きく報じられているらしい。

 

 素晴らしい活躍にもかかわらず、現代のミシェル・ネイになるというホーランド中将の夢は叶わなかった。

 

「ホーランド提督は現代のナポレオン・ボナパルトだ!」

 

 今日の三色旗新聞にはこんな見出しが踊る。なんと、ミシェル・ネイの主君であり、人類史上五指に入る戦争の天才になぞらえられたのだ。ダーシャによると、ホーランド中将はとてもご満悦らしい。

 

 コレット少佐が何も言わずに三色旗新聞を開いた。提督紹介コーナーに、「勇者の中の勇者、ミシェル・ネイが我が国にいた」と記された見出しと俺の顔写真が載っている。

 

 驚くべきことに、俺が現代のミシェル・ネイになってしまった。ネイと俺の共通点なんて赤毛以外にはないのに。

 

「戦略がだめなところも似てるよ」

 

 イレーシュ副参謀長が二つ目の共通点を教えてくれた。いずれにせよ、この程度で現代のネイと呼ばれるのは気がひける。そもそも俺はホーランド配下最強ですらない。統率力はハルエル少将に劣り、勇敢さはエスピノーザ准将に劣り、戦術能力は全員に劣る。

 

「しかし……」

 

 俺が反論しかけたところで、イレーシュ副参謀長が右手をすっと伸ばして俺の口元に当てた。

 

「今は大人しくネイをやっててくださいね」

「…………」

「ホーランドは真性の馬鹿ですけど、指揮官として何をすべきかだけは知ってるんですよ。真性の馬鹿ですけど」

 

 彼女の冷たい笑顔は恐ろしいほどに美しく、有無を言わさぬ迫力があった。

 

「そ、そうします」

 

 内心では不本意なものの、ここまで言われては引き下がるしかない。彼女は一〇年前からずっと俺を正しく導いてくれた。きっと今回も正しい。

 

 報告書を読むと、みんながナポレオンやネイの再来を期待する気持ちがわかると同時に、俺自身が英雄にすがりたい気持ちになった。

 

 前方展開部隊は死にかけていた。作戦開始時に一二二七隻を数えた艦艇は九三四隻まで減った。過労と物資不足で戦闘効率が著しく低下しており、各艦が発揮できる戦闘力は平常時の七割から八割といったところだ。

 

 救いがたいことに、これでも第一統合軍集団の中ではかなりましな方だ。ホーランド機動集団所属部隊は、司令官の戦局眼のおかげで時間をかけずに勝てた。他の部隊はさらに消耗していた。追撃阻止部隊は三分の一を失い、残りは疲弊の極みにある。退避支援部隊は死者こそ少ないものの、精神的・肉体的消耗は追撃阻止部隊より酷いらしい。

 

 こんな状態になってもなお、兵士たちは高い戦意を保っている。奇跡としか言いようがない。ルグランジュ中将の手腕もさることながら、市民の盾たる使命感、ウランフ大将戦死の影響が大きかった。

 

「民主主義が始めた最悪の戦争が、民主主義における最良の軍人を見せてくれるなんてね。本当に皮肉だね」

 

 通信画面の向こうでダーシャは力なく笑った。

 

「まったくだ。ノエルベーカーさんの言葉もあながち間違いではなかったのかもな」

「ヘルクスハイマーLDSOの代表だっけ? なんて言ってたの?」

「君が思っているほど人間はエゴまみれではない。もっと人間の可能性を信じろってね」

 

 ノエルベーカー氏にそう言われた時、俺は彼こそが信じ過ぎだと思ったものだ。前の人生で俺は汚いことをたくさんやり、多くの汚い人間に出会い、自分も他人も信じなくなった。その影響が今も残っている。しかし、ウランフ大将や第一統合軍集団兵士を見ると、ノエルベーカー氏に一定の説得力を感じるのだ。

 

「いいこと言うね。私もそう思うよ。エリヤは人間という生き物を低く評価しすぎてる。だから、トリューニヒト議長みたいな人に夢中になったり、ヤン大将の才能に魅了されたりするの」

「あの二人は本当に偉い人だから」

「でも、人間だよ。エリヤと同じ人間」

「生物的にはそうだけど、価値が違うぞ」

「そんなことは言ってほしくないよ。なんたってエリヤは私の夫なんだし」

「すまん」

 

 俺はすぐさま謝った。

 

「帰ったら子供作らない? 親になったらきっとわかるよ」

 

 ダーシャのほんわかした丸顔に笑いが浮かぶ。

 

「考えておく」

 

 それからは帰ったら何をしたいか、どこに行きたいかを時間が尽きるまで話し続けた。この時、明日死ぬかもしれないなんてことは考えなかった。ダーシャの未来図に俺がいるのに、勝手に死ぬのはよろしくない。

 

 四月二四日、第一統合軍集団の最後尾がシャンタウ星系にたどりついた。この時点で残った戦力は宇宙艦艇四万六九〇〇隻、地上部隊三〇八万人、宇宙軍と地上軍の合計は七七九万人だ。

 

 この二週間で一万三九〇〇隻の艦艇と二四三万人の兵士が失われた。追撃阻止部隊は最終的に四割を失った。退避支援部隊のうち、地上部隊の四分の一が逃げ遅れてしまい、宇宙部隊二一〇〇隻が撃沈・大破された。逃げ遅れた地上部隊の中には、帝国軍を足止めするためにあえて残った者も少なくない。なお、この数字の中には、退避作戦に加わった民間船船員や傭兵などは含まれていない。

 

 退避対象者五三〇〇万人のうち、四二〇〇万人が退避し、一一〇〇万人が取り残された。本国や総司令部は「八割が助かった。空前の壮挙だ」と喜んだが、作戦に加わった者は二割が逃げきれなかったことを悔やんだ。

 

「シャンタウに第一統合軍集団が集結した。あと半日で第四統合軍集団の最後尾が着く。これで盤石だ」

 

 俺は笑いながら部下たちに言った。前の世界では、七九九年四月二四日はあのヴァーミリオン会戦が始まった日だった。もうすぐヴァーミリオンの勝者ヤン・ウェンリーがシャンタウにやってくる。なんと幸先の良いことか。

 

 そこにコレット少佐が緊迫した表情で通信文を持ってくる。コンコルディア(旧オーディン)の総司令部から送られてきたものだ。

 

「ブローネ星系で第七艦隊・第八艦隊・第一〇艦隊が帝国軍国内艦隊に敗北」

 

 俺の笑顔が凍りついた。ブローネはヨトゥンヘイムとアースガルズを結ぶ要衝だ。あのラインハルトがアースガルズに侵攻してくる。

 

 この瞬間、アースガルズだけは確保したいという本国政府と総司令部の意図は潰えた。本国では即時講和派が評議会不信任案を議会に提出し、国会議事堂の周辺では反戦派デモ隊五〇万人と軍隊一〇万人が睨み合っている。帝国三派はフェザーンの仲介で連合を組んだ。もはや即時講和以外に道はないように思われた。今ならニブルヘイムと下ミズガルズだけは手に入る。

 

 ところが、総司令部は予想の斜め上を行っていた。ミズガルズを守る第五統合軍集団を除く六個統合軍集団に、ヴァルハラへの集結命令を出したのだ。

 

「艦隊決戦で一発逆転狙いかよ」

「なんで奴らのメンツのために戦わなきゃいけないんだ」

「ふざけるな」

「セリオは頭が狂ってるんじゃないか」

 

 第一統合軍集団の兵士は一斉に不満を漏らした。市民や国家を守るための戦いなら、命を惜しむつもりはない。だが、政府首脳や軍幹部のメンツを守るための戦いなら話は違う。最高潮だった士気は地の底まで下がり、疲労だけが残った。

 

 それでも、第一統合軍集団は命令に従い、第四統合軍集団と合流した後に退却戦へと移った。戦意が萎えきった同盟軍に対し、ヴァナヘイム奪還を成し遂げた帝国軍は勢いづいていた。

 

 ヴァルハラに到着するまでの三日間は、筆舌に尽くしがたいものだった。敵は勢いに乗っている上に数が多い。味方は疲れきって戦意をなくしている。ヤン大将の知略とルグランジュ中将の豪勇をもってしても、追撃を防ぐのは困難を極めた。この戦いで第一統合軍集団と第四統合軍集団が出した損害は、シャンタウに着くまでの二週間で出した損害に等しかった。


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