銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

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第74話:裁きの時 800年10月~801年3月29日 統合作戦本部前~ハイネセンポリス

 ラグナロック戦役は銀河に途方もない損害を与えた。戦死者は一億四〇〇〇万人、負傷者は三億人と推定される。その他、帝国領では一億人以上が経済的混乱による飢餓や疫病で死亡し、一〇〇〇万人が休戦協定後の混乱で死亡した。銀河総生産は開戦前の八九パーセントまで減少した。全人類の一・三パーセントが死傷し、銀河の富の一一パーセントが失われた計算だ。

 

 帝国が勝利宣言を出し、同盟が敗北宣言を行ったので、公式的には帝国がラグナロック戦役の勝者ということになった。しかし、同盟軍の未帰還者三七〇〇万人に対し、帝国軍の未帰還者は一億人以上と言われる。また、同盟軍が帝国領の五割を占領したのに対し、帝国軍は同盟領に一歩たりとも足を踏み入れていない。最終的に同盟軍を追い返したとはいえ、戦力も物資も枯渇しており、痛み分けに限りなく近い勝利だった。フェザーンも経済的に大きな打撃を被っている。ラグナロック戦役に勝者はいない。

 

 このような戦争を起こした人々に対し、憂国騎士団は宣戦を布告したのである。ラグナロック戦役を推進した政治家・軍人・官僚・財界人・文化人、解放区民主化支援機構(LDSO)の元幹部などが次々と襲撃を受けた。九月一八日から一〇月二日までの間に、五件の暴行事件、四件の放火事件、二件の爆弾事件が発生した。

 

 一連のテロ事件は、人々の目をラグナロック戦犯問題へと向けさせた。レベロ元議長の和解政策、マスコミの冬バラ会批判キャンペーンによって消えた火種に、暴力が火を着けたのだ。

 

「戦犯を許すか否か」

「正義のための暴力を認めるか否か」

 

 人々はこの問いに様々な答えを出す。リベラル層は非暴力こそが正義だと訴えた。保守層は秩序を重んじる立場から暴力を否定する。大衆主義者は「何よりも優先すべき正義」があると主張し、憂国騎士団への共感を示す。全体主義者は暴力を容認するが、「絶対的な指導者によって行使されるべき」と保留を付けた。リベラルな面と大衆主義的な面を併せ持つ反戦派は、暴力を否定する者と「反戦派も制裁を行うべきだ」と主張する者に分かれた。

 

 マスコミも盛り上がった。大手マスコミは遠征推進派の要人を「冬バラ会に騙された被害者」と擁護している手前、憂国騎士団を厳しく批判した。一方、右派マスコミは遠征推進派のスキャンダルを報道し、憂国騎士団を側面から支援する。左派マスコミは憂国騎士団を嫌っているが、権力者の粗探しは好きなので、遠征推進派のスキャンダルを追いかけた。

 

 最も人数の多い政治的無関心層は、大手マスコミの建前論よりも、右派と左派のスキャンダル報道に関心を向けた。

 

「オネスティ元情報交通副委員長に、第二次ヴァルハラ会戦の放映権をめぐる収賄疑惑が浮上」

「LDSO元幹部の退職金は三〇万ディナール、再就職先は超有名大学や超一流企業」

「第八陸戦隊司令部の裏金作りを、元経理部員が匿名で告発」

 

 こうしたニュースは無関心層の怒りをかき立てた。自分たちは不況で苦しんでいるのに、国費を浪費した連中が大金を懐に入れた。それだけで万死に値すると思われたのである。

 

「正義の味方!」

「反腐敗の闘士!」

「真の愛国者!」

 

 今や憂国騎士団はヒーローとなった。各地の支部に入団希望者が殺到し、ネットにはテロ行為を賞賛する書き込みが溢れる。風が右向きに流れ始めた。

 

 俺が関わっている「ペンション・アーミー(年金軍)」にとっても、憂国騎士団人気は追い風となった。ペンション・アーミーとは、待遇改善を求める退役軍人の運動だ。改革派には「税金にたかる奴ら」と批判され、ヤン大将ら軍部良識派には「右翼の集まり」と白い目で見られたが、最近は支持者も増えてきた。

 

「生きていけるだけの年金を寄こせ!」

「我々には報酬を受け取る権利がある!」

「兵士を人間らしく扱え!」

 

 首都圏ペンション・アーミーの一二万人が軍都オリンピアに結集し、巨大な統合作戦本部ビルを取り囲んだ。俺はその最先頭に立った。

 

「憂国騎士団が来たぞ!」

 

 青地にPKCの文字と五稜星が描かれた旗が現れると、退役軍人たちは歓声をあげた。統一正義党の支持者すら例外ではない。

 

 ラグナロック戦役の後、左側からは「間違った戦争をした」と責められ、右側からは「お前らが弱いから負けた」と責められた。軍の上層部ですら「敗軍に誇りなどあるか」と過去を否定する。唯一親軍的だった憂国騎士団を支持する退役軍人は多い。

 

 憂国騎士団数千人がペンション・アーミーと合流した。その中に白マスクと戦闘服を身に着けた行動部隊は含まれていない。前の世界の戦記には書かれていないが、団員のほとんどは私服姿の一般市民だ。年齢も性別も様々で傾向がわかりにくい。『憂国騎士団の真実』という本によると、大都市の中流層が多く、所得も学歴も同盟市民の平均より高いそうだ。

 

「ようこそお越しくださいました」

 

 ペンション・アーミーの指導者スラクサナ退役少将が、憂国騎士団の現場責任者に向かって敬礼をする。

 

「礼には及びません。軍人の皆様をお助けするのは、愛国者として当然の義務です」

「そうおっしゃってくださるのはあなた方だけですよ」

 

 スラクサナ退役少将の言葉は、この場にいる者全員の思いを代弁していた。

 

「今日は行動部隊も来ております」

「それは頼もしい!」

 

 退役軍人たちが大いに盛り上がる中、俺だけは真っ青になった。

 

「待ってください。行動部隊が来るなんて聞いてないですよ」

「スマラン裁判が延期になりましたので、こちらに来ることになりました」

「暴力沙汰は起こさないでください。ペンション・アーミーは規律ある軍人の運動ですから」

「心得ております」

「ごらんください」

 

 俺は前方を指差す。数千人の陸戦隊が統合作戦本部の周囲を固めている。

 

「彼らも軍人です。我々とともに命がけで国を守ってきた戦友です。戦友同士が殴り合っては不名誉の極み。行動部隊の方々には、自制いただけるようお願いします」

「承知しました」

「信じても良いんですね?」

「愛国者に二言はありません」

 

 憂国騎士団の現場責任者がたじろぎながら答えると、スラクサナ退役少将が救い船を出す。

 

「フィリップス少将、ほどほどにしておけ」

「こういうことはどれだけ確認しても、確認しすぎではありません」

 

 俺はあえて頑なな態度をとる。役割とは記号のようなものだ。行き過ぎと思われるぐらいでないと、規律の番人という役割は務まらない。

 

 押し問答のような会話を繰り返していると、西の方角から大きな雄叫びが聞こえた。白マスクに戦闘服を着た屈強な集団が駆けてくる。憂国騎士団行動部隊だ。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 一人で二〇人分は叫んでるんじゃないかと思える行動部隊の叫びに、一般団員やペンション・アーミーが共鳴し、デモ会場は凄まじい怒号に包まれた。これまでにないほど盛り上がっている。予想外の事態が起きるんじゃないかと不安になった。

 

 行動部隊の先頭にいる人物がこちらを見たのに気づき、俺もまっすぐに見返した。本音を言えば視線を逸らしたい。だが、怯えているのがばれたら舐められる。

 

「フィリップス少将閣下ではありませんかっ!」

 

 先頭の人物が駆け寄ってきて敬礼をした。俺もとりあえず敬礼を返す。

 

「小官をお忘れになりましたかっ!?」

 

 忘れたのかと聞かれても、この怒号の中では声の違いがわからないし、マスクをかぶっているので顔がわからない。

 

「隊長、隊長! マスク取りましょう! 顔わかんないですよ!」

 

 行動隊員の一人が先頭の人物にマスクを取るよう促す。

 

「ああ、そうか。うっかりしていた」

 

 隊長と呼ばれた男はマスクを外し、改めて敬礼をした。

 

「ご無沙汰しておりました! ヴァンフリート四=二基地憲兵隊のラプシンであります!」

「ああ、貴官か! 懐かしいなあ!」

 

 俺の心は喜びで一杯になった。レオニード・ラプシン予備役大尉は、ヴァンフリート四=二基地にいた時の部下で、基地攻防戦で再起不能の重傷を負った。そんな人物が元気に動いているのだ。嬉しくないはずがない。

 

「今は憂国騎士団行動部隊で、大隊長を任せていただいております」

 

 ラプシン予備役大尉は誇らしげに胸を張る。

 

「今の任務に誇りを感じているんだな」

「もちろんです。私は幼い頃から祖国を守りたいと願ってきました。一度は軍人の道は断たれましたが、憂国の騎士として戦場に戻ったのです」

「それは良かった」

 

 八割は本音、二割は社交辞令だった。ヴァンフリート四=二基地憲兵隊の生き残りに対しては、負い目を感じている。だから、ラプシン予備役大尉が幸せなのは嬉しい。暴力集団にいるのは感心しないが、あえて口にすることでもない。

 

「行動部隊の仲間はすべて私と同じです。不本意な理由で戦場を去り、再び戦場に立てる日を待ち望んできました。憂国騎士団が我々に新しい戦場を与えてくれました」

 

 ラプシン予備役大尉に陶酔や狂信の色は見られない。非人間的な白マスクの下には人間の顔がある。

 

「統合作戦本部の軍服貴族どもは、軍人から戦場を奪いました。軍人を天職と決め、戦うための教育だけを受け、戦うことしか知らない者をゴミ屑のように放り出しました。軍隊に関わる仕事も癒着だと言って禁止します。けしからん奴らです」

「気持ちはわかる」

 

 俺は煽動になりかねない言葉を慎重に避ける。

 

「今の軍首脳には血も涙もありません。統合作戦本部次長のヤンは、『軍人になりたくてなったわけではない』『さっさと軍を辞めて年金で暮らしたい』と放言していると聞きます。首脳には聖職たる軍人の自覚がない。命がけで戦った兵士や大事な装備を『削るべきコスト』だと言う。私の愛した軍は過去のものになりました」

「言いたいことはわかるが、噂を事実のように言うのは良くないぞ」

「ヤンが言いそうなことです。国家を軽んじる男ですから」

「ラプシン大尉、『言った』と『言いそう』を混同するな。戦場にあるのは事実だけだ。期待で動いたら負けるぞ」

 

 俺は太い釘を刺した。ヤン発言を事実だと信じる人は多いが、現状では噂に過ぎない。

 

「失礼いたしました。『常に戦場にある心構えでいろ』という閣下の教え、心に刻みつけておきます」

 

 ラプシン予備役大尉は恐縮の極みといった感じだ。周囲の人々は感心したように俺を見る。単なる方便のつもりが、「勇者の中の勇者」という虚名のおかげで教訓になってしまう。

 

 実を言うと、俺もヤン発言は事実だと思う。前の世界で読んだ『レジェンド・オブ・ザ・ギャラクティック・ヒーローズ』や『ヤン・ウェンリー提督の生涯』にも、そういう発言が載っていたからだ。アッテンボロー提督やキャゼルヌ提督の回想録にも、似たような発言が載っていた。事実だと思っていても、この場では噂話だと言い張った方がいい。

 

 この世界には二つの陣営がある。一つは国家や軍隊に価値を感じておらず、自由に振る舞うのが好きな陣営。もう一つは国家や軍隊を価値あるものと感じ、全体に奉仕するのが好きな陣営。ヤン・ウェンリーは前者の陣営に属し、戦記も前者の価値観で書かれているので、軍人を軽く見る発言は賞賛される。しかし、俺が属する後者の陣営では、事実かどうか分からなくても怒りを買う。同じ発言も価値観が違うだけで正反対の評価を受けるのだ。

 

「フィリップス提督にお願いがあります」

 

 ラプシン予備役大尉が何かを決心したように言った。

 

「どうした?」

「我々に名将の訓示をいただけませんでしょうか」

「わかった」

 

 俺は即答した。元部下への善意もあるし、自分なりの計算もある。

 

「ありがとうございます」

「ここに来ている行動隊員を全員集めてくれ」

 

 三分後、俺の前に行動隊員五〇〇名が整列した。退役軍人や元警察官を集めた戦闘部隊だけあって、統率が行き届いている。

 

「行動隊員諸君! 諸君はかつて兵士であり警察官であった! 諸君は今も制服に誇りを持っているか!?」

「持っております!」

「兵士は死ぬまで兵士だ! 警察官は死ぬまで警察官だ! 体にどんな服を着ていようとも、諸君は心に制服を着ている!」

「その通りです!」

「よろしい! 私は諸君を兵士や警察官として扱おう! なぜなら、私も兵士だからだ!」

「かしこまりました!」

「兵士は規律に従って行動するものだ! 警察官は秩序の守り手だ! 制服に恥じない行動を期待する!」

「仰せのままに!」

 

 憂国騎士団行動部隊は俺の訓示に従い、騒ぎを起こさなかった。こんな時、「勇者の中の勇者」という虚名は役に立つ。

 

 

 

 オウミ准将の名誉回復を求める裁判は、おかしな方向へと進んでいた。当初、原告側弁護団は戦死認定を得るのが困難と見て、「ストレスに起因する公務災害」との認定を求める方針だった。公務災害と認定された場合、自殺者であっても戦死者と同等の扱いを受け、一階級特進や軍人墓地への埋葬資格などが与えられる。しかし、オウミ准将の母親はあくまで戦死認定にこだわり、右翼が同調した。その結果、法廷は退艦拒否が美しい死だとアピールする場と化した。

 

 違和感を覚えつつも頑張っていると、「スマランさんの名誉回復を求める会」から退会勧告のメールが来た。

 

「覚悟はしていたけど、やっぱりへこむな」

 

 俺はため息をついた後、マフィンを二個食べて糖分を補充した。オウミ裁判とスマラン裁判が両立できないのはわかっていた。わかっていてもきつい。

 

 オウミ裁判の対極にスマラン裁判がある。スマラン氏は沈没した乗艦から脱出したために、軍を追放された元艦長だ。何の落ち度もなかったのだが、僚友三名は死亡し、一人だけ生き残ったせいで卑怯者扱いされた。当人は批判を苦にして自殺し、遺族が二〇年以上にわたって名誉回復を求めている。

 

 前の人生で卑怯者として叩かれた経験から、スマラン氏のことが他人事とは思えない。だから、六年前に「スマランさんの名誉回復を求める会」の会員となった。現役軍人は政治活動への関与を制限されているが、署名用紙に名前を書いたり、末端会員として会費を支払ったりする程度の自由はある。微力ながらも名誉回復に寄与したかった。

 

 退会勧告のメールには、「オウミ氏の退艦拒否を名誉ある行為だと主張するのは、スマランさんの選択を不名誉であると主張するに等しいです」と記されていた。俺はオウミ准将もスマラン氏も肯定できるが、それはどちらにも共感しているからだ。

 

 理屈の上ではオウミ准将とスマラン氏の名誉は両立しない。オウミ准将が名誉ある死を遂げたのならば、乗艦を捨てて生き残ったスマラン氏は卑怯者になる。そして、スマラン氏の選択が正しいとしたら、オウミ准将の選択は間違いということだ。そして、規則や法律といったものは理屈で動く。ヤン大将やアッテンボロー少将らが戦死認定取り消しにこだわるのは、スマラン氏のような人物の名誉を選んだからだ。簡単に「ヤンやアッテンボローは冷たい」とは言えない。

 

 各地で同じような裁判が行われていたが、政治的無関心層はオウミ裁判に興味を持った。退艦拒否を美しいと思ったわけではない。オウミ准将の顔を美しいと思ったのだ。彼女は小動物を思わせる童顔と輝くような美肌を持ち、四〇歳手前だったのに二〇代半ばに見えた。提督としては無能だったが、かつては艦長や戦隊司令として偉功を立てた。美貌と過去の活躍が「悲劇の名将」というイメージを作った。

 

「結局はイメージか」

 

 俺はうんざりした。大多数の人から見れば、彼女がどんなキャラクターなのか、どの有名人が彼女を支持しているかだけが重要なのだ。

 

 そこまで考えたところで首を横に振った。イメージを支持しているにせよ、オウミ准将への支持に変わりはない。頭のいい人は行為が正しいかどうか、イデオロギー的に見てどうかを重視するので、オウミ准将本人はどうでもいい。

 

「イメージは活用しないと」

 

 俺は気を取り直して鏡を見た。ゆるくウェーブした赤毛、つり目気味の猫目、張りとつやのある頬。一一年前にエル・ファシルへ降り立った頃と比べると、張りとつやが増した程度の違いしかない。しかし、この平凡な童顔に付随するイメージは強烈だ。

 

 憂国騎士団の武器が暴力だとすれば、俺の武器はイメージだった。イメージは暴力より強い。ただのチビでも屈強な武装集団を抑えられるのだから。

 

 一〇月中旬、俺はラグナロック帰りの予備役軍人一〇五名と連名で、帝国領遠征軍首脳部に対する軍法会議を求める訴訟を起こした。

 

「公式見解によると、冬バラ会が敗北の全責任を負っているそうです。しかし、冬バラ会代表のフォーク少将は、五人いる作戦参謀の一人です。冬バラ会で最も階級が高いホーランド中将は、ずっと前線で戦っていました。一介の参謀や前線指揮官が遠征軍の実権を握っていたとすれば、首脳陣は何をしていたのでしょうか? 何もしなかったのならば、首脳陣の無為を責めるべきです。彼らに権限を委ねたのであれば、首脳陣の監督責任を問うべきです。すべて冬バラ会が悪いと言われても納得できません」

 

 そこまで言ったところで、俺は一旦言葉を切る。続きを読み上げるには覚悟が必要だ。息を吐いて呼吸を整える。

 

 心の中に迷いが残っていた。アンドリューはあくまでロボス元帥をかばうだろう。ロボス元帥やビロライネン中将とは一緒に働いたこともある。グリーンヒル大将は好意を示してくれた。キャゼルヌ中将は有害図書愛好会グループと親しい。できれば、敵対したくないが……。

 

 部下の顔を思い出した。ポレン・カヤラル、ミシェル・カイエら古参の忠臣たち。セルゲイ・ポターニン、エドゥアルド・フランコ、パチャリー・ソングラシン、チコ・アヴレイユら第三六機動部隊の精鋭たち。セバスチャン・マーキス、ルーベン・タヌイ、ロシル・アコスタら新参組。みんな俺には過ぎた部下だった。

 

 戦友の顔を思い出した。タリア・ハルエル、カルメン・エスピノーザ、マリサ・オウミ、ジャン=ジャック・ジェリコー、マニーシャ・バボール、クリスチナ・ヴィトカらホーランド機動集団の強者たち。みんな頼りになる戦友だった。

 

 そして、ほんわかした丸顔、くりっとした目、つやつやした黒髪のダーシャ・ブレツェリ。最高のパートナーだった。

 

 みんな回廊の向こうで死んだ。仇を討とうとは思わないが、納得はしたかった。部下、戦友、パートナーが死んだ理由を知りたかった。

 

 俺は決心した声明文の残りをゆっくりと読み上げる。目の前にいる生者と心の中にいる死者に聞かせる。

 

「遠征軍総司令官 ラザール・ロボス同盟総軍退役元帥

 遠征軍総参謀長 ドワイト・グリーンヒル宇宙軍大将

 遠征軍副参謀長兼作戦主任参謀 ステファン・コーネフ宇宙軍大将

 遠征軍情報主任参謀 カーポ・ビロライネン宇宙軍中将

 遠征軍後方主任参謀 アレックス・キャゼルヌ宇宙軍中将

 遠征軍地上作戦担当参謀 カレマ・デューベ地上軍中将

 遠征軍通信部長 アデルミラ・メディナ宇宙軍技術中将

 遠征軍政策調整部長 ルカーチ・イロナ少将待遇軍属

 遠征軍総司令部顧問 カール・フォン・ライヘンバッハ中将待遇客員提督

 

 以上の九名に対する軍法会議を要求します」

 

 遠征軍首脳陣九名の名前を読み終えると、一斉にフラッシュが光った。この光の数は訴訟に期待する人の数であると同時に、反感を持つ人の数でもある。

 

「私たちは罰を与えるために訴訟を起こしたのではありません。ただ真実を知りたいだけです」

 

 最後にそう付け加えた。俺の戦いは心の戦いだ。イメージを利用して他人の心を掴み、自分の心を納得させるために戦うのだ。

 

 

 

 イメージ戦略において、ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長の右に出る者はいない。何度となく失敗を繰り返し、一度は失墜したかに思われたが、イメージの力で頂点に上り詰めた。

 

 政権発足以降、トリューニヒト議長は穏健な政権運営を行った。議会を支配する改革派に対しては、協調的というより従属的な態度をとった。改革派の悲願だった「報道被害者救済法」や「反憎悪法」などの成立にも、彼は力を貸している。フェザーンとの債務交渉や辺境勢力との一時和解に成功し、交渉能力を見せつけた。

 

「トリューニヒト議長が憂国騎士団に戦犯を罰するよう命じた」

 

 このような噂がネットを中心に流れた。トリューニヒト議長本人は明言していないし、直接的な証拠は一つもなかったのだが、多くの人が信じた。少し前ならば、そのような疑いが生じた時点で辞任に追い込まれただろう。しかし、今はそうではない。

 

 改革者レベロが去った後、閉塞感は強まる一方だった。改革は停滞し、景気は真冬日のように冷え込み、収入は右肩下がりで落ち、税金は右肩上がりで増えていく。辺境問題は解決の糸口すら見えない。元からの同盟市民と帝国人移民は衝突を繰り返す。誰もが一日一日を生き残るのに精一杯で、長期的な計画をたてる余裕もなく、場当たり的な対応に終始する。治安の悪化、教育現場の荒廃、麻薬の蔓延、インフラの劣化、捕虜解放事業の停滞も深刻だ。

 

 同盟的価値観に対する信頼が大きく揺らぎ、カウンターカルチャーが盛んになった。自由主義や民主主義の限界が論じられるようになり、ファシズムや科学的社会主義の再評価が進んだ。ハイネセン流の「責任ある自由」に対し、「完全なる自由」を掲げて快楽を徹底追求する「ネイキッド」が現れた。ラグナロック反戦運動の一派が「より完全なハイネセン主義」を求めて過激化し、既成秩序に反抗した。自然回帰や脱文明を模索する動きも生じている。

 

 銀河連邦末期以来の宗教ブームが起きた。地球教団は貧困者や病人のための慈善活動を展開する一方で、上流階級にも影響力を広げ、全銀河を巻き込むムーブメントへと発展した。終末論を唱えるイェルバ教や光に満ちた千年王国、帝国から流入した古代宗教なども流行った。

 

 市民は風穴を開けてくれる何かを求めた。それが暴力であったとしても構わなかった。いや、暴力である方が望ましいとすらいえた。乱暴でなければ穴は開かないのだから。

 

 憂国騎士団、正義の盾、革命的ハイネセン主義学生連盟、銀河赤旗戦線が街頭で抗争を繰り広げる。彼らは政党の集会にも殴り込んだので、NPCや進歩党や反戦市民連合は武装警備隊を組織した。

 

 暴力肯定の風潮が強まる中、トリューニヒト議長が戦犯を制裁させたという噂は、「そうかもしれない」から「そうであってほしい」に変わった。

 

 一一月一四日、トリューニヒト議長はラグナロック戦犯問題に対する見解を明らかにした。

 

「政府には市民を納得させる義務があります。ラグナロックについては、恩赦取り消しや特別法廷設置も視野に入れた対応が必要でしょう」

 

 それは遠征推進派への宣戦布告であると同時に、与党に対する宣戦布告でもあった。国民平和会議(NPC)主流派と進歩党右派は、積極的にラグナロック戦役を推進した人々だ。ガーディアン・ソサエティ、人民自由党は野党の立場から支持票を投じた。進歩党左派と楽土教民主連合は反対票を投じたが、和解政策を進めてきたので責任追及には消極的だった。

 

 トリューニヒト議長は戦争責任者に対する恩赦の取り消しを閣議で提案したが、賛成一、反対一〇で否決された。賛成者はもちろんトリューニヒト議長自身である。

 

 ネグロポンティ下院議員ら下院議員九名が「ラグナロック特別戦犯法廷設置法」を提出した。議員立法とはいっても、提出者は全員トリューニヒト派に属している。当然のことながら、上院でも下院でも否決された。

 

 この頃からトリューニヒト議長は、改革派との対決姿勢に転じる。閣議に提出された改革案にことごとく反対し、「議長以外全員の賛成によって決定」という異常な評決が続いた。公共事業の拡大や地方補助金の増額など金のかかる政策を閣議で提案し、ことごとく否決された。トリューニヒト派議員が失業者のために大金を支出する議員立法を議会に提出したが、すべて否決された。

 

「私は市民のためを思っているのに、議会がノーと言うんだ」

 

 提案が否決されるたびに、トリューニヒト議長は力なく笑った。明るくて強気な彼が落ち込む姿は、同情を呼び起こした。

 

 一方、改革派は戸惑った。トリューニヒト議長を強引に辞めさせると、自分たちが「市民の敵」のレッテルを貼られかねない。NPC主流派と進歩党右派はグループ全体が戦犯に等しいし、進歩党左派にもハイネセン主義の見地から遠征に関わった者がいるのだ。与党に重量級の議長候補は残っていなかった。来年の選挙を考えると、トリューニヒト下ろしは難しい。

 

 トリューニヒト議長は改革派批判に戦犯批判を絡めることで、「トリューニヒトVS改革派」の構図を「市民VS戦犯」にすり替えた。レベロ元議長やホワン前議長など戦犯でない改革派には、「戦犯擁護者」のレッテルを貼り付ける。こうして、巨悪相手に孤軍奮闘するヒーローができあがった。

 

 トリューニヒト議長は与党議員の戦争責任を徹底的に批判し、改革案の成立を徹底的に妨害し、市民の喝采を浴びた。政権支持率が高まるにつれて、NPCと進歩党の支持率は下がった。

 

 一二月二七日、トリューニヒト議長に対する不信任案が可決された。与党は議長の人気稼ぎに使われることに耐えられなくなったのだ。新議長にはクリップス元法秩序委員長が選ばれた。かつてトリューニヒト議長とともにパトリオット・シンドロームを煽り、後にラグナロック反戦運動に参加した人物である。

 

 不信任案が可決された翌日、トリューニヒト派の上院議員二七名と下院議員五七名がNPCを離党し、新党「大衆党」を立ち上げた。前の世界で彼が率いた政党と同じ名前だ。上院では第六党、下院では楽土教民主連合と同数の第五党となった。

 

 大衆党代表となったトリューニヒト前最高評議会議長は、『ヨブ・トリューニヒトと市民の二〇の約束』と題された政策綱領を発表した。

 

「一つ、緊縮財政を積極財政に転換し、国の力で経済を動かします。

 二つ、公共事業を拡大し、国の力で雇用を作ります。

 三つ、社会保障を充実させ、国の力で市民の面倒を見ます。

 四つ、所得の再分配を進め、国の力で格差と貧困を撲滅します。

 五つ、辺境への再分配を進め、国の力で辺境を活性化させます。

 六つ、増税は行わず、景気対策と金融政策による税収増で財政を賄います。

 七つ、帝国との講和交渉を打ち切り、民主主義防衛の聖戦を再開します。

 八つ、外征部隊を一二個艦隊・八個地上軍体制に戻し、強大な機動戦力を再建します。

 九つ、地方方面軍を軍集団編制に戻し、航路警備体制と対テロ体制を再建します。

 一〇、地方部隊を統括する国内総軍を設け、国土防衛体制を確立します。

 一一、各星系共和国に民兵隊を作り、国防軍の補助兵力とします。

 一二、警察官の増員、街頭防犯カメラの増設を進め、分厚い防犯体制を作ります。

 一三、麻薬犯罪、性犯罪、組織犯罪の三悪を撲滅します。

 一四、公務員を増員し、民営化事業の再公営化を進め、強力な行政機構を再建します。

 一五、インフラ整備に多額の予算を投入し、社会基盤を再建します。

 一六、学校教育では同盟的価値観や同盟の偉大な歴史を重点的に教え、愛国心を育てます。

 一七、移民教育に力を注ぎ、同盟市民と移民の文化的統合を目指します。

 一八、新規移民の受け入れを一〇年間凍結し、今いる移民を大事にします。

 一九、捕虜となった同胞を速やかに帰還させます。

 二〇、フェザーンとの関係強化に務め、共存共栄を図ります」

 

 二〇の約束は「国家が全てを管理する」という理念で貫かれていた。自己選択と自己責任の原則とは真っ向から対立する。

 

 リハビリ中のレベロ元議長は「全体主義だ」と厳しく批判した。ハイネセン主義では、政府の役割拡大は独裁への道とされる。政府が社会や経済への統制を強めると、市民は政府に逆らえなくなり、奴隷同然になるとハイネセン主義者は言う。

 

 反ハイネセン的な思想は目新しいものではない。公然と反ハイネセン主義を掲げる国政政党もある。統一正義党はラロシュ主義という名前の全体主義を掲げる。汎銀河左派ブロックの科学的社会主義は、ハイネセン主義者が「ルドルフ主義と同等以上の危険思想」と評するイデオロギーだ。

 

 大衆党の何が目新しいかといえば、トリューニヒト代表のキャラクターであった。議会で選ばれたのに議会が歓迎しない提案を繰り返し、与党のトップなのに与党を叩き、あげくの果てに与党から不信任案を提出された。是非はともかくインパクトは凄い。

 

 トリューニヒト代表の強烈な個性が大衆党ブームを引き起こした。結党時に一七パーセントだった政党支持率は二五パーセントまで上がった。他政党から離党した議員や無所属議員が次々と入党し、国会議員の数は一か月で結党時の倍になった。全選挙区に候補者を立て、単独過半数を目指すという。

 

 人気が大きくなると、批判も大きくなるものだ。ウィンザー元国防委員長は、「詐欺師でも、もう少しましな嘘をつくんじゃないかしら」と切り捨てた。ホワン元議長は、「悪意を持って国政を混乱させた男が国を変えるなんてね。酷い冗談だ」と皮肉る。経済学者トリム教授はトリューニヒト政権の治績を分析し、「結果を出していないのに人気だけが膨れ上がった」と評した。知識層の間では強引な手法への反発が根強い。政治資金をめぐる疑惑もささやかれる。

 

「凄く批判されてますけど、大丈夫ですか?」

 

 俺が心配すると、トリューニヒト議長は茶目っ気たっぷりに笑った。

 

「彼らは頼まれもしないのに、私の名前を連呼してくれるんだ。広告費が節約できて助かるよ」

「悪口を信じる人がいたらどうするんです?」

「知られないよりは嫌われる方がずっといい。うちの候補者が街頭に立つ時は、『銀河一の嫌われ者、大衆党がやってまいりました』と言わせるようにした」

「あなたには敵いません」

 

 小物が心配するまでもなかった。今のトリューニヒト代表にとっては、悪評すら己を飾るアクセサリーでしかない。

 

 トリューニヒト代表は糾弾対象から冬バラ会を外し、メンバーの寝返りを誘った。冬バラ会の証言が取れれば、遠征推進派要人を攻撃する材料になる。しかし、これはうまくいかなかった。どのメンバーも家族ぐるみで囲い込まれていたのだ。敵は汚れ仕事の報酬をきっちり払っていた。

 

 憂国騎士団の暴力はいっそう過激になった。戦犯を拉致して土下座と自己批判を強要し、その様子を動画としてネットに流す。NPCや進歩党の集会に殴り込み、壇上を占拠して戦犯批判の演説を行う。襲撃対象は進歩党左派や軍部良識派など「戦犯擁護者」にも広がった。

 

 二月一三日、憂国騎士団はグエン・キム・ホア広場で集会を開き、反戦的な本・体制批判の本など三万八〇〇〇冊を焼いた。風に流されやすい同盟市民もこの行為には引いた。

 

「なんという奴らだ! 規律も何もない! ただの過激派ではないか!」

 

 携帯端末の向こう側から、クリスチアン予備役中佐の怒声が聞こえた。彼は規律と秩序の信徒である。反戦思想や体制批判は嫌いだが、過激な行動はもっと嫌いなのだ。

 

「俺もそう思います」

 

 俺は心の底から同意した。憂国騎士団に対する心証はラプシン予備役大尉の件で和らいだが、それでも許せないことはある。規律なき右翼に存在意義はない。

 

 焚書の後も憂国騎士団の人気に陰りは見えなかった。市民は戦犯への制裁をエンターテイメントとして楽しんだ。口先では「テロは良くない」と言いつつ、本音では新しい制裁動画を心待ちにしていたのである。

 

 世の中が大荒れでも、軍だけは安定している。良識派の指導のもと、合理化と意識改革が着々と進んだ。昇進して国防研究所幹部となったチュン・ウー・チェン准将によると、文書手続きが簡略化され、休みが取りやすくなり、パワハラやセクハラに対する対処が早くなったそうだ。また、現場が活発にアイディアを出し、上層部は積極的に良いアイディアを取り入れ、みんなで改善しようという空気があるらしい。業務の質は著しく向上したという。

 

「俺は軍にいない方がいいのかな」

 

 軍に残った人の話を聞くと、そんなことを思ってしまう。良識派の人事はかなり公平だ。能力やや人格や思想に問題がなければ、他派閥でも隔たりなく登用される。俺の元部下にしても、昇進した者や良いポストを得た者が多い。

 

 エル・ファシル危機以来の腹心ウルミラ・マヘシュ少佐は、戦略部入りを果たした。戦略部と言えば、国防委員会の政策中枢だ。地味な経歴からすると異例の抜擢である。

 

 所用でアッテンボロー少将に会った時に礼を言うと、「能力のある者を使うのは当然です」とつまらなさそうに返された。相手は実力主義者だ。これ以上の賛辞はない。自分が褒められるより、部下が褒められる方がずっと嬉しいものだ。

 

「政治家との付き合いで出世できる時代は、終わりましたんでね」

 

 アッテンボロー少将は最後に冷水を浴びせてきた。毒舌は本で読むと面白いが、自分が言われるのは嫌なものだ。

 

 リムジーヌ星系航路保安隊司令官ドーソン予備役中将は、サンドバッグを購入して「ダスティ」と名付けたらしい。ちなみに彼がサンドバッグを叩く時は、拳ではなく金属バットを使う。そうしたくなる気持ちが少しだけ理解できた。

 

 回廊の向こう側では、オーディン政府の中央集権改革が激しい抵抗を受けた。ラグナロック戦役中、同盟軍は親同盟派住民による民兵を作り、帝国軍は反同盟派住民の蜂起を促した。平民は両軍がばらまいた武器を手に入れ、戦乱の中で実戦経験を積み、巨大な武力を手に入れたのである。終戦後、増税に怒った平民が各地で蜂起した。特権削減に不満を持つ貴族、論功行賞に不満を持つ軍人、共和主義革命を企む親同盟派残党、貴族打倒と真の選民支配を目指すルドルフ原理主義者、辺境外縁部の独立政権がこれに絡み、収拾がつかない状態だった。

 

 こんなに混乱が酷くては同盟人捕虜の帰還が進まないので、同盟政府は一年前から四個分艦隊と六個軍を派遣し、帝国軍を手伝わせている。オーディン政府は「国内情勢の悪化」を理由に追加派兵を求めた。

 

 銀河の混迷が深まる中、宇宙暦八〇一年三月二九日に上院・下院同時選挙が行われた。上院は半数にあたる四一一議席、下院は一六三九議席すべてが改選される。

 

 トリューニヒト前最高評議会議長率いる大衆党は、上院で二六二議席、下院で九八三議席を獲得し、両院で第一党に踊り出た。辺境で圧倒的な強さを見せ、中央宙域でも大量の票を得た。勝因としては戦争責任問題もさることながら、七八〇年代から続いてきた改革路線への不満が大きい。アイランズ元天然資源副委員長など七九八年上院選挙で落選した者は復活を遂げた。

 

 一方、NPCと進歩党はほとんどの議席を失った。辺境では全滅に近い敗北を喫し、地盤である中央宙域の大都市圏でも大衆党に食われた。大衆党の勝因を裏返せば、そのまま彼らの敗因になるだろう。大都市圏偏重の改革路線、戦争責任問題が仇となった。レベロ元議長とホワン元議長が残った進歩党はまだ幸いだ。NPCは党最高幹部八名のうちクリップス議長を含む六名が落選し、党を支配してきた議長経験者「ビッグ・ファイブ」五名のうち二名が落選した。旧与党の痛手は計り知れない。

 

 旧野党は汎銀河左派ブロックがわずかに議席を増やしただけで、その他の党は大幅に議席を減らした。現状不満票が統一正義党と反戦市民連合から大衆党に移ったのが大きい。

 

 下院で単独過半数を獲得する政党が出たのは二〇年ぶりとなる。ただし、上院では今回改選された議席の六割以上を獲得したものの、七九八年に改選された議席をほとんど持っていないため、大衆党単独では過半数に届かない。それでも、下院を抑える大衆党から新議長が出るのは確実だ。ヨブ・トリューニヒトの時代がこれから始まるのである。


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