銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)   作:甘蜜柑

91 / 136
第83話:破局への疾走 801年11月8日~9日 ボーナム総合防災センター

 どんな顔をすれば良いのかわからなかった。この人が敵になることは予想できた。だが、実際に敵として現れると、平静ではいられない。

 

「お久しぶりです、クリスチアン大佐」

 

 俺は再建会議の使者エーベルト・クリスチアン大佐と握手を交わす。かすかに手が震えた。

 

「顔色が少し悪いな。ちゃんと飯を食っているか? 睡眠は足りているか?」

 

 クリスチアン大佐はじろりと俺を睨む。凶悪な人相のせいで怒っているように見えるが、実際は心配する顔だ。

 

「二日前から節食しています。タンクベッドを一日二時間使っていますので、睡眠時間は問題ありません」

「いい状態ではないな。貴官は頭脳も肉体も人並みだが、人の何倍も動かすことで並以上の働きができる。カロリー不足はパフォーマンスを低下させる。タンクベッドは肉体には効くが、メンタルには効かん。何日も続けると抑うつ状態になるぞ」

「お気遣いありがとうございます」

「感謝には及ばん。食糧不足も多忙も我々の責任だ」

「お互い様です。あなたの苦労は俺たちの責任ですから。戦場とはそういうものでしょう」

「まったくだ」

 

 笑いあった後、俺は顔を引き締めた。

 

「本題に入りましょうか」

「単刀直入に言う。民主政治再建会議と和睦せよ」

「条件は?」

「これを読め」

 

 クリスチアン大佐はバッグから文書を取り出し、俺に手渡す。説明するのが面倒なのだろう。この人はそういう人だ。

 

 再建会議は想像以上に良い条件を出してきた。市民軍を政治勢力として認めるという。一つの組織として活動しても構わないし、グループ単位に分かれて活動しても構わない。再建会議への参画を望むなら、市民軍幹部を副議長や委員長に登用する。批判勢力として活動するのも自由だ。次期選挙への参加資格も与えられる。また、同盟選挙管理委員会の構成を再建会議系二名、市民軍系二名、中立派一名とし、左右両派が共同で選挙を管理する。

 

 市民軍を大衆党の後継勢力にする形だ。大衆党幹部とトリューニヒト派官僚さえ切り捨てれば、大きな権力が手に入る。

 

「凄い譲歩ですね。内部から不満が出てもおかしくないですよ」

「そんなに凄いのか」

「目を通していないんですか?」

「貴官ら兄妹の処遇以外はどうでもいい」

 

 クリスチアン大佐らしい答えである。

 

「まずいでしょう。使者なんですから」

「構わんだろう。読みたくないなら読まんでいいと言われたしな」

「なるほど」

 

 敵の意図が理解できた。俺とクリスチアン大佐の個人的な関係に頼ったのだ。和睦案といい、使者の人選といい、再建会議はうまい手を打ってくる。

 

「貴官がトリューニヒトを好きなのはわかるが、愛国者なら国家を第一に考えろ。再建会議は軍の独立性を尊重するそうだ。どちらが正しいかは明らかだろう。軍人としての良心に従え」

「俺は民主主義の軍人です。議長を支えるのが良心的判断だと考えます」

「軍人は政治家個人に仕えているのではないぞ? わかっているのか?」

「心得ております」

「シビリアン・コントロールとは、市民が決定権を持つということだ。政治家は軍事のプロたる軍人を尊重し、軍人は市民の代表たる政治家を尊重し、協力して国を守る。それがあるべき姿だ。政治家と軍人の関係は上官と部下の関係であって、主君と臣下の関係ではない」

 

 クリスチアン大佐の目が鋭く光る。

 

「だが、トリューニヒトは違う。他人が自分の思い通りに動かなければ気が済まない。市民も軍人もみんな自分の臣下だと勘違いしている」

「そんなことはありません」

「トリューニヒトと貴官の関係も、政治家と軍人の関係ではない。主君と臣下だ」

「違います」

 

 声がかすかに少し震える。

 

「あるいは父親と子供の関係かもしれん。貴官はトリューニヒトを喜ばせたいと思い、孝行を尽くす。トリューニヒトは貴官を可愛がり、様々なことを教える」

「俺の父はパラディオンに……」

「貴官と小官は一三年の付き合いだが、父親の話題は一度か二度しか出ていない。貴官は実の父より、トリューニヒトに親しみを感じているのではないか?」

「…………」

 

 完全に図星だった。前の人生で見捨てられてから、父に対しては一線を引いていた。トリューニヒト議長の方が父親のように思えた。

 

「トリューニヒトは親しい者には甘く、疎遠な者には冷淡だ。一家の父親ならそれでいい。だが、一国の指導者としては最悪だ」

「でも、良い人なんですよ」

「そう答えるしかないだろうな。貴官はあの男の“子供”なのだから」

「子供が親を見捨てるとしたら、それは親が親であることをやめた時でしょう。あの人は“父親”として俺をかわいがってくれる。ならば、俺は“子供”として『悪いことはしないでほしい』と願います」

 

 前の人生で俺は親から見捨てられた。あれほど辛い経験はなかった。だから、自分から見捨てることはしたくない。

 

「わかっている。小官には子供も孫もいるからな。親が親でいる間は、子供は子供であることをやめない」

「申し訳ありません。俺には議長を捨てることはできません」

「予想はついていた。万に一つの可能性に賭けたが駄目だな」

「申し訳ありません」

 

 心が激しく痛む。恩師の厚意を裏切りたくない。しかし、トリューニヒト議長の信頼を裏切ることもできない。

 

「謝らんでいい。対象が誰であれ、人を裏切れないのは賞賛すべきことだ」

「恐れ入ります」

「貴官は大食いでよく眠る。軍人向きだと思った。だが、ここまで大きな存在になるとは予想できなかった」

「大佐のご指導のおかげです」

「貴官を相手に一戦するのも悪くない。強敵と戦うのも戦の醍醐味だ」

 

 クリスチアン大佐は口を大きく開けて笑う。

 

「絶対に死ぬなよ。貴官を捕まえたら、助命されるよう掛け合ってやる」

「大佐もお体を大事にしてください。市民軍が勝利したら、すべてに替えてあなたの助命をお願いします」

「生意気なことを言うではないか」

 

 クリスチアン大佐は俺の肩を叩く。

 

「それぐらいの覚悟がなくては、あなたとは戦えません」

「妹にもよろしく伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

 

 俺は笑顔で敬礼をした。クリスチアン大佐との関係に涙は似合わない。

 

「小官は帰るぞ。兵の面倒を見てやらねばいかんのでな」

「返事は聞かなくてもよろしいのですか?」

「すぐには決まらんのだろう」

「ええ、会議にかけて結論を出します」

「上からは『話が終わったらすぐに戻れ。返事を持ち帰る必要はない』と言われている。結論が出たら、再建会議事務局のファイフェルに送ってくれ」

 

 それだけ言うと、クリスチアン大佐は背を向けて早足で歩きだす。何かを振り切ろうとしているようだった。俺はずっと頭を下げ続けた。

 

 クリスチアン大佐と別れてから一〇分後、市民軍は幹部会議を開いた。出席者は部長、管区司令官、顧問など五三名。過半数は遠方から立体画像として参加する。

 

 幹部たちは配布された和睦案のコピーを見ると、驚きの表情を浮かべた。チュン・ウー・チェン参謀長代理ですら意表を突かれたような顔だ。敵がここまで譲歩するというのは、誰にとっても予想外だった。

 

「論外ですな」

 

 サンドル・アラルコン中将は、和睦案のコピーをわざとらしく放り投げた。積極攻勢の猛将は会議の席でも真っ先に発言する。

 

「悪くないと思うがねえ」

 

 ホワン・ルイ下院議員が肯定的な姿勢を見せると、アラルコン中将が噛み付いた。

 

「悪いことばかりでしょう。我々の要求は一つも通っていない」

「完全な民主主義とはいかんが、民主主義寄りにはなった。暫定政権を左右両派が共同で運営し、再選挙も左右が共同で管理する。市民軍が大衆党支持者の受け皿になるから、トリューニヒトに投票した者の民意は尊重されるだろう。いい落としどころではないかね」

「馬鹿な! トリューニヒト政権を見捨てて民主主義を守るなど、詭弁にもほどがある!」

 

 アラルコン中将は声を荒げる。

 

「重要なのは政権を守ることではない。市民を守ることだ。市民あっての民主主義なんだ。政権存続なんぞ、市民数十万人の命の代償としては安いものさ」

「ご立派な信念ですな。自分の政権が潰されそうな時にも、同じことを言えますか?」

「もちろんさ。私の首ごときで流血を避けられるなら、喜んで差し出すよ」

 

 ホワン議員は表情も声色も変えずに答えた。自己犠牲の精神を誇るようでもなく、崇高な理想を語っているようでもなかった。夕食のメニューについて話す時も、この人は同じような顔をするだろうと思える。

 

「流血を恐れていては、国を守ることはできませんぞ」

「民主主義国家においては、市民を守ることは国家を守ることと同義だ。市民を守らない国家など誰も信用しない。首星で市民数十万人が死ぬような事態になれば、同盟の威信は地に落ちる」

「引くべきでない場面で引くよりはずっとましです。譲歩してばかりの国家には、市民を守ることなどできません。妥協しない姿勢こそが必要です」

「市民数十万人の命は、妥協する理由としては十分だ」

 

 和睦をめぐる対立は価値観の対立でもあった。ホワン議員は市民あっての国家だと考えるが、アラルコン中将は国家あっての市民だと考える。ホワン議員は犠牲を抑えることを重視するが、アラルコン中将は強さを見せることを重視する。

 

「多少の犠牲も必要だろう」

 

 トリューニヒト派のウォルター・アイランズ上院議員が口を挟んだ。

 

「数十万人の命だぞ。『多少』と片付けるには多すぎやせんかね」

「先人は自由を血であがなった。長征グループは二四万人の同志を失った。自由を望むのならば、流血は避けられん」

「犠牲が必要な時はある。それは認めるさ。今は違うがね」

 

 ホワン議員はアイランズ議員をあっさりと退けた。政界有数のリベラル論客には、右翼の建前論など通用しない。

 

 ジョアン・レベロ下院議員が立ち上がった。ホワン議員と並ぶリベラルの巨頭に出席者の注目が集まる。

 

「クーデターによる政権交代など容認できない。市民に選ばれていない者による統治は、民主主義の原則に反する」

 

 生命と原則という二択に対し、レベロ議員は原則を取った。

 

「市民を犠牲にすることはできん」

 

 ホワン議員は盟友の顔をまっすぐに見据える。

 

「ホワン、私だって血は流したくない。だが、クーデターを認めたら、もっと多くの血が流れるのだ。政策が気に入らないからクーデターを起こす。選挙結果が気に入らないからクーデターを起こす。そんなことを認めれば、選挙や議会を尊重する者はいなくなる。市街戦が政局を動かす時代になるのだぞ」

「将来より今に目を向けてくれ。経済は破綻寸前だ。地方政府や軍隊は自分の判断で動いている。混乱に乗じて分離独立を目指す動きもある。そんな時に首都で市街戦が起きたらどうなる? 行きつく先は内戦だ」

 

 幹部の意見は真っ二つに分かれた。統一正義党支持者、科学的社会主義者は強硬論を唱える。中道派は和睦論を支持した。日和見主義者は曖昧な態度をとる。トリューニヒト派は六割が強硬論者で、四割が和睦論者だ。リベラルの大多数は流血回避を望んだが、レベロ議員の原則論に同調する者もいる。

 

 俺は黙って聞いていた。議論の軸になっているのは、アラルコン中将、ホワン議員、レベロ議員の三名だ。アラルコン中将の主張は、庶民や兵士には受けるだろうが情緒的過ぎる。ホワン議員の主張は、合理的だが共感を得るのは困難だろう。レベロ議員の主張は、わかりやすい正論だが堅苦しい。

 

「フィリップス提督の意見を伺いたい」

 

 誰かがそう言うと、全員の視線が司令官席に集まった。議論はほぼ出尽くしている。強硬論者と和睦論者はほぼ拮抗状態だ。俺の決断が大勢を決するだろう。

 

 感情と計算と理想が脳内を交錯し、目の前にいる人と別の場所にいる人と死んだ人の顔が浮かんでは消えていき、一つの答えをはじき出す。俺はおもむろに口を開いた。

 

「この条件では不十分だ。同胞同士で殺し合うのは不本意だが、それでも受け入れられない。私は民主主義国家を守るために戦ってきた。クーデターを認めることは、共に戦った戦友への裏切りであり、信頼してくれた上官への裏切りであり、命を賭けてくれた部下への裏切りであり、支えてくれた市民への裏切りであり、国家の礎となった先人への冒涜だ。トリューニヒト政権の復帰、大衆党幹部の公職追放解除、三月選挙の尊重を求めたい」

 

 市民軍は再建会議から提示された和睦案を突き返し、トリューニヒト政権の復帰、大衆党幹部の公職追放解除、三月選挙の尊重を改めて要求した。

 

 水面下で交渉が続けられた。誰も内戦は望んでいない。経済的にも追い込まれている。それでも合意には至らなかった。

 

 再建会議が譲歩した背景には、「目的を実現するためなら何でも差し出す」という強固な決意がある。彼らは三年後の下院選挙まで待てなかった。ハイネセン記念大学経済研究所によると、国家財政が三年以内に破綻する確率は八五パーセントだという。警察と検察の急速な権力拡大、極端な外資優遇政策なども危機感を呼び起こす。トリューニヒト政権の存続など論外だ。

 

 市民軍は譲歩できない立場である。トリューニヒト議長がいれば、ハイネセン主義政策を部分的に実施するとか、小規模な軍縮をやるとか、そういった譲歩もできる。しかし、市民軍には政治的なことを決める権限がない。支持者の反リベラル感情や反エリート感情も障害となった。

 

 一五時二〇分、俺と再建会議議長ボロディン大将のトップ会談が始まった。直接対面するのではなく、通信回線を開いて話し合う。

 

 ボロディン大将は完璧に身なりを整えていた。クリーム色の頭髪を丁寧に撫でつけ、口ひげをきれいに刈り込み、軍服にはしわ一つない。端整な顔立ちと相まって、ダンディな印象を与える。スマートで知的という宇宙軍軍人の理想を体現したような風貌だ。

 

 本物を目の前にすると、自分が外見を飾っただけの小物だと思い知らされる。ボロディン大将を黄金とすると、俺は金ぱくを貼り付けたプラスチックにすぎない。

 

 敬礼を交わし合った後、ボロディン大将が柔らかい声で語りかけてきた。

 

「フィリップス提督、和睦に応じる気はあるかね」

「トリューニヒト政権の復帰、大衆党幹部の公職追放解除、三月選挙の尊重。これらの条件を受け入れていただけるのなら、喜んで応じましょう」

 

 俺は毅然とした態度で応じた。相手の貫禄に圧されているが、態度には出さない。動揺を隠すのが司令官の義務である。

 

「譲ってはもらえないか」

「それだけはできません」

「トリューニヒト政権を復帰させるべきではない。なぜなら――」

 

 ボロディン大将はトリューニヒト政権批判を始めた。バラマキと軍拡のせいで同盟経済が破綻寸前だとか、軍需産業と癒着しているとか、警察と検察を使って批判者を潰しているとか、人気取りのために兵士や市民を死なせたとか、不正選挙で政権を取ったとか、いつもと同じ話だった。それでも、具体的かつ論理的な話し方のおかげで、説得力がありそうに聞こえる。

 

「あなた方のやったことには正当性がない。まず――」

 

 俺は再建会議の非を責めた。あなたたちのやっていることは独裁だとか、言葉を飾ってもクーデターに過ぎないとか、民意を無視しているとか、市民軍の公式見解と全く同じ内容である。具体的な話には踏み込まず、原則論や精神論を振りかざす。

 

 話し合いは平行線のまま進んだ。事前交渉が終了した段階で、和睦は不可能との結論が出た。この会談は単なる儀式でしかない。

 

 和睦交渉は打ち切りとなり、市民軍も再建会議も警戒レベルをレッドに引き上げた。帝国軍がハイネセンから二光秒(六〇万キロメートル)の距離に迫った場合と同じレベルだ。全面衝突は避けられない情勢となった。

 

 

 

 緊張が高まる中、「再建会議派の正規軍がハイネセンポリスに向かっている」との報告が相次いだ。前線部隊は持ち場から離れ、予備役部隊と交代した。戦闘車両やトラックが首都に通じる星道を占拠する。兵士と装備を満載した列車が首都へと向かう。輸送機が首都圏の空を埋め尽くす。

 

「首都以外の地域を捨てるのか。何を狙っているんだ?」

 

 俺は右隣を向いた。そこにいるのは、最も信頼すべき助言者チュン・ウー・チェン准将である。

 

「褐色のハイネセン攻略に全力を注ぐものと思われます。戦場を一か所に絞ることで、戦いに巻き込まれる人間を減らす。大軍を投入して速戦即決をはかる。指揮系統を破壊し、物資不足に苦しむ市民軍を瓦解に追い込む。少ない犠牲で勝つための策です」

「なるほど」

「犠牲者数十万というのは、ハイネセン全土で戦うことを想定した場合の数字です。褐色のハイネセンだけなら数万人で収まります」

「再建会議は本当に戦争がうまいね」

「褐色のハイネセンだけで戦ったら確実に負けます。戦闘員のほとんどが素人ですから」

「敵が集結したらおしまいだ。全力で食い止めるぞ」

 

 市民軍は敵の集結を阻止することに全力を注いだ。義勇兵やデモ隊が道路を塞ぐ。太洋艦隊、東部軍、南部軍は、敵の大陸間移動を妨げた。再建会議内部の協力者は、意図的な手抜きをした。

 

 第一陸戦遠征軍はマナサスタウンを集結地点に定めたが、一一師団中の七個師団しか集まらなかった。トレモント陸戦隊航空基地から到着した輸送機が空っぽだったのだ。

 

「再建会議は第七八陸戦航空団による組織的犯行と断定、同航空団司令ジェリコ・ブレツェリ宇宙軍代将ら将校一六六名の逮捕状を発行しました」

 

 ハラボフ少佐が淡々と報告を読み上げる。

 

「輸送機の乗員はどうなった?」

「全員逮捕されました」

「トレモント基地の様子は?」

「ブレツェリ代将と将兵二〇〇〇人が守りを固めています。大半は航空兵と後方支援要員で、陸戦部隊は警備部隊一個中隊のみです」

「まずいな」

 

 俺は眉間にしわを寄せた。外征専門部隊である陸戦隊の基地は、防衛拠点としての機能を持っておらず、正規軍の攻撃に耐える能力はない。一個中隊では守り切れないだろう。

 

 トレモント基地のブレツェリ代将に連絡を入れた。彼はダーシャの父親で、俺の義父だ。第七八陸戦航空団は、再建会議内部で隠れ市民軍として頑張ってきた。何としても救援したい。

 

「第九機動軍先遣隊の一部を援軍に送ります。ヘリなら一時間の距離です。どうか持ちこたえてください」

「援軍はいらんよ」

 

 ブレツェリ代将はそっけなく答える。

 

「一個中隊ではどうしようもないですよ」

「一個旅団が来たってどうしようもない。敵はいくらでも援軍を出せる。君が一個連隊を送ったら二個連隊が来るし、一個旅団を送ったら二個旅団が来るだろう。本格的な戦闘に発展したらどうする? 今のハイネセンは、密室にゼッフル粒子が充満しているような状況だ。一つの火花が大爆発を起こすかもしれん。下手なことはするな」

「おっしゃることはわかりますが……」

「援軍を送らなくたって私は死なんよ。まだ平均寿命の三分の二しか生きていないんだ。あの世に行ったら、子供たちに『早すぎる』と怒られる」

 

 これほど沈痛な笑いを見たことはなかった。ブレツェリ代将には四人の子供がいたが、みんな戦死した。

 

「かしこまりました」

「君も死ぬなよ。義理の子供にまで先立たれたりしてはたまらんからな」

「大丈夫です。ダーシャに叱られたくないですから」

 

 俺はダーシャの怒り顔を思い浮かべながら微笑む。もう一度彼女に会えるのならば、叱られたっていい。だが、今はやるべきことがある。

 

「私の心配などするな。一兵でも多く集めろ。褐色のハイネセンを守り切れ。自分が勝つことだけを考えろ。君の勝利は私の勝利だ」

「ありがとうございます」

「感謝するなら、私ではなく部下に言ってやってくれ。逮捕覚悟で輸送機に乗った連中も、トレモント基地にこもっている連中も、君とは何の縁もない。それなのに命を賭けたのだ」

「おっしゃる通りです」

 

 俺は通信対象をブレツェリ代将個人から基地全体に切り替えてもらい、トレモント基地の将兵に感謝の言葉を伝えた。言葉しか送れないのは心苦しいが、何も言わないよりはずっといい。

 

 首都圏西部で軍隊が反乱を起こしたとの情報が入った。ジェファーソン川河岸地域と首都圏を結ぶ交通路が停止し、敵の五個師団が動けなくなったという。

 

「反乱部隊は宇宙軍の軍服を着用し、『市民軍エリヤ・フィリップス戦隊』を称しています。指揮官、兵力規模などについては不明。オレンジ色の旗を掲げているとの情報もあります」

「エリヤ・フィリップス戦隊?」

 

 俺は首を傾げた。市民軍には、「アーレ・ハイネセン自由旅団」や「アッシュビー連隊」など偉人の名前を称する部隊もある。しかし、俺ごときの名前を使うとはどういうことか? オレンジ色の旗というのもわからない。右翼なら白旗、保守なら青旗、リベラルなら黄旗、科学的社会主義者なら赤旗を使うはずだ。

 

 そこに「エリヤ・フィリップス戦隊が交信を求めている」との知らせが入った。交信に応じると伝えると、スクリーンに見覚えのある顔が映った。

 

「エリヤ・フィリップス戦隊副司令シェリル・コレット中佐であります!」

 

 アッシュブロンドの髪とぽってりした唇を持つ美人が敬礼をする。俺の副官だったコレット中佐だ。クーデター中は内通者として市民軍のために働いた。

 

「おお、君だったか。良くやってくれた」

「もったいないお言葉です!」

 

 勢いの良すぎる返事が返ってきた。声はトランポリンのように弾み、アーモンド型の大きな目がきらきらと輝き、白い頬が真っ赤に染まり、コレット中佐が興奮していることが一目でわかる。

 

「いくら褒めても足りないぐらいだよ。君はいつも予想以上の成果を出してくれる」

「大したことはしておりません。閣下のご指示のおかげです」

「君の実力だ」

 

 俺は苦笑いした。協力者とは連絡が取りづらいので、大雑把な指示しか出していない。

 

「部下の功績は上官の功績です」

「まあ、そうだな。君の上官と話がしたい。エリヤ・フィリップス戦隊の司令に代わってくれないか」

「閣下が司令です」

「俺が司令!?」

「私の上官はフィリップス提督です! 部隊旗の色は閣下の髪の色に合わせました! 人参色の赤毛ですから!」

 

 コレット中佐のテンションは急上昇し、俺のテンションは急降下していく。

 

「君が事実上の司令ということでいいのかな」

「閣下が司令です!」

「最上位者なんだから司令ってことでいいじゃないか」

「他に副司令が二名います! カプラン君とキサ中佐です!」

「カプラン君って君の友達か?」

「私と一緒に閣下にお仕えしたカプラン君です!」

「ああ、あのカプランか」

 

 俺は笑顔をひきつらせた。カプラン少佐は元部下だが、仕事ぶりがいい加減なので「指揮官向きだ」と適当なことを言って追い出した。一緒に仕事をしたくない人物ナンバーワンである。

 

「とりあえず、カプラン君に代わりますね!」

「今は一刻を争う時だ。戦いに専念してくれ」

 

 俺は逃げを打った。コレット中佐一人でも頭が痛いのに、カプラン少佐まで出てきてはたまらない。

 

 通信を終えると、俺は左側を向いた。副官代理ハラボフ少佐は目が合った途端、さりげなく視線を逸らす。嫌われている気がするが、好かれすぎるよりはましだと思えてくる。

 

 敵を足止めする一方で、味方を呼び寄せた。北大陸の第九機動軍と第九陸戦遠征軍は、手薄になったジェファーソン川流域を進軍する。東大陸の第七機動軍と第七陸戦遠征軍は、輸送機に乗って飛び立った。ジェファーソン川流域の義勇兵一〇〇万人もハイネセンポリスへと向かう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「私もハイネセンポリスに行くぞ」

 

 スクリーンの向こう側で、宇宙艦隊司令長官代理ルグランジュ大将が笑っている。

 

「どういうことです?」

「ラガにいるよりは、決戦場にいた方が役に立てるだろう。角材を振り回すぐらいはできる。こいつには自信があるんでな」

 

 ルグランジュ大将は軍服の袖をまくって力こぶを作る。

 

「かしこまりました。提督が来るまで持ちこたえてみせましょう」

「負けても構わんぞ。私が褐色のハイネセンを取り返してやる」

「指揮をとるのは、ファルスキー将軍とシューマッハ提督でしょう」

「細かいことを気にしすぎだ。だから、貴官は背が伸びんのだ」

「まだ諦めていませんよ」

 

 俺はぐっと拳を握る。指揮官はいつも前向きでなければならない。おしまいだと思っていても、表向きは諦めていないように振る舞うものだ。

 

 意外なところから援軍がやってきた。リベラリスト三万人が志願してきたのだ。人間の盾となって、褐色のハイネセン攻撃反対の意思を示したいのだという。

 

 市民軍は喜んで彼らの申し出を受け入れた。攻撃に反対する人々の存在は、味方の士気を向上させ、敵の士気低下を促すだろう。妹は「敵の工作員が紛れ込んでいるかもしれない」と懸念を示したが、首脳陣はメリットの方が大きいと判断した。

 

 リベラリストは何よりも流血を嫌う。ジェメンコフ自由と権利委員長が辞表を提出するなど、高名なリベラリストの再建会議離脱が相次いだ。反戦派のマスコミは再建会議批判に転じた。リベラル系の市民団体が相次いで抗議声明を出し、武力行使を中止するよう求めた。

 

 再建会議の軍人には、同胞と戦いたくないと考える者が少なくない。辞表を提出する者や脱走する者が相次いだ。第一機動軍配下の第一航空軍は、褐色のハイネセン攻撃作戦に協力しない意向を示している。

 

 和睦交渉決裂の影響は市民軍にも及んだ。和睦論者は流血を避けられなかったことに失望した。日和見主義者は逃げ出すタイミングを計っている。軽い気持ちで参加した者は怖気づいた。

 

 反戦市民会議ソーンダイク派は再建会議や市民軍の離脱者を吸収し、有害図書グループのモラン准将と手を結び、勢力を急拡大させた。ハイネセン記念スタジアムで集会を開き、再建会議や市民軍の双方に戦闘中止を求めている。

 

 一八時、再建会議は復員支援軍に対し、武装解除を求めたと発表した。復員支援軍との対立を初めて認めたのである。

 

 イゼルローン回廊は一触即発の状態となった。要塞周辺では復員支援軍とイゼルローン方面艦隊が睨み合っている。シヴァ方面艦隊がイゼルローン方面艦隊の支援に向かった。ハイネセン駐在の宇宙部隊には、イゼルローンへの出動命令が下された。復員支援軍司令官ヤン大将はトリューニヒト政権の復権を求めており、全面衝突は避けられないだろう。

 

 再建会議と復員支援軍の対立は、ハイネセン情勢に多少の影響を与えた。ヤン派の第六陸戦遠征軍司令官ビョルクセン少将が辞任し、自宅に引きこもった。心労によるものとみられる。親ヤン的なことで知られるルイス准将は、ソーンダイク派に身を投じた。

 

 一九時、再建会議は「復員支援のために借りた帝国軍基地三四か所を返還する」と発表した。復員支援軍の後方拠点を帝国に引き渡したのである。ニヴルヘイム総監メルカッツ元帥率いる帝国艦隊三万隻は、復員支援軍の兵站拠点「アムリッツァ・ドライ」基地の接収に向かった。

 

「絶体絶命だなあ」

 

 俺はイゼルローン回廊周辺の勢力図に視線を向けた。どう見ても、再建会議と帝国軍が復員支援軍を挟み撃ちにする態勢である。メルカッツ艦隊は一週間、シヴァ方面艦隊は二週間でイゼルローンに到達する。四週間後にはボロディン大将率いる再建会議本隊がやってくるのだ。第二次ヴァルハラ会戦の結果から推測すると、ボロディン大将の用兵は、メルカッツ元帥とほぼ互角だ。イゼルローン要塞を早期に攻略しない限り、ヤン大将に勝ち目はない。

 

「現実逃避はやめようね」

 

 イレーシュ後方部長が勢力図を取り上げた。実のところ、イゼルローンより褐色のハイネセンの方がずっと危ういのだ。

 

 市民軍は敵のハイネセンポリス集結を阻止できなかった。デモ隊は催涙ガスによって無力化された。再建会議派の予備役部隊一三〇万が義勇兵を封じ込めた。再建会議内部の協力者が次々と逮捕され、無事だった者は逃亡した。太洋艦隊が第六陸戦遠征軍の移動を阻止したものの、その他の部隊はハイネセンポリスに到着したのである。

 

 二三時二〇分、褐色のハイネセンは完全に包囲された。北のコルヒオに第一地上軍の六個師団、東のフックス川対岸に独立部隊四個師団、南のチャンセラーズに第一陸戦遠征軍の五個師団、西のブール=ブランシュに第五地上軍の八個師団が集結した。一五個師団相当の兵力が予備として控える。首都防衛軍の首都管区隊と北部軍は、包囲軍に加わっていない。第五地上軍司令官ラッソ中将が三八個師団五六万八〇〇〇人の大軍を指揮する。

 

 市民軍は七重のバリケードを築いた。その内側を守るのは、民間人義勇兵二八万人、退役軍人義勇兵一〇万人、正規軍人四万人、警察官三万人など戦闘員四五万人。市民ボランティア八四万人は非戦闘員だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「数だけなら互角なんだけどな」

 

 俺はマフィンを食べながらため息をつく。民間人義勇兵は完全な素人だ。警察官は武器の扱いには慣れているが、集団戦闘に慣れていない。正規軍人や退役軍人義勇兵にしても、軍艦乗り、パイロット、後方支援要員などは戦力にならなかった。武器は質量ともに不足している。

 

 援軍は未だに到着していない。フェーブロム少将の第九機動軍は、予備役部隊と北部軍南部管区隊に挟まれた。アムリトラジ少将の第九陸戦遠征軍は、北部軍東部管区隊及び予備役部隊と睨み合っている。ファルスキー中将の第七機動軍とシューマッハ少将の第七陸戦遠征軍は、第五航空軍に阻止された。

 

 さらに悪いことに、敵は化学戦部隊を投入してきた。催涙ガスを使ってデモ隊を一人も死なせずに鎮圧した部隊である。市民軍が持っているガスマスクは二〇万個に過ぎない。戦闘員の過半数が戦わずして無力化されることになる。

 

 日付が変わって九日になっても、ソーンダイク派はハイネセン記念スタジアムに居座っていた。戦闘が中止されるまで動かない構えだ。クリスチアン大佐がスタジアム周辺の守備隊を指揮しているので、前の世界と違って虐殺事件は起きないだろう。妹は「クリスチアン大佐は短気だから」と心配するが、考え過ぎだと思う。

 

 九日〇時二〇分、復員支援軍がイゼルローン方面艦隊を攻撃したとの情報が入った。正面から艦隊戦を挑んだそうだ。

 

 一時になると、俺は最後の見回りに出た。車に乗って褐色のハイネセンを巡り、自らの目で市民軍の現状を確認し、人々に親しく声を掛ける。指揮官先頭の精神は戦ってない時も必要である。

 

 数えきれないほどの旗がバリケードを飾っていた。同盟国旗、同盟軍旗、市民軍旗は団結の象徴だ。与党と野党が党旗を並べ、反戦市民連合を除く全国政政党が一堂に会した。市民団体、労働組合、宗教団体、市民軍派自治体なども旗を掲げる。地方出身者は星系旗や惑星旗を持ち込んだ。旗の数は市民軍が超党派連合軍であることを示す。

 

 市民ボランティアは横一列に並んで手を繋ぎ、人間の鎖を作った。非武装の民間人を前面に出すことで、敵の戦意を喪失させるのだ。リベラリスト三万人もこの中にいた。

 

 正規軍人と義勇兵と警官がバリケードを守った。地上戦の経験が乏しい二線級部隊で、小火器しか持っていない。

 

 地上戦経験者を要所に配置した。装備は正規軍並みであるが、部隊の質にばらつきがあった。部隊組織を維持したまま市民軍に加わった部隊は強い。実戦経験者を適当に集めた部隊は強くない。傭兵部隊は意外と強力で、地球教系列のアース・セキュリティサービス(ESS)は主力部隊の一つだ。

 

 司令部が特殊部隊の奇襲を受ける恐れがあったため、妹のアルマは総合防災公園と総合防災センターを人間で満たす策を立てた。特殊部隊はプライドが高い。非武装の民間人が大勢死ぬような作戦には同意しないだろうと考えた。また、狭い場所に密集した群衆に対しては、催涙弾を使いづらいことも見越している。市民ボランティア一〇万人がボーナム総合防災公園に集められた。

 

 絶望的な状況にあっても、市民軍は活気を失っていない。パイプテントの下では、軍人と警官と民間人が笑いながら食事を楽しむ。屋内では住民が火炎瓶や簡易ガスマスクを製造中だ。バリケードの周辺では最後の補強工事が進んでいる。楽器を演奏したり、歌を歌ったり、ダンスを踊ったりする者もいた。

 

 俺は「市民軍工兵隊司令部」と書かれたテントに入り、市民軍工兵隊司令官シュラール技術少将に頭を下げた。

 

「補強工事はおしまいにしてください。重機を瓦礫作りに回したいのです」

「もう少し続けさせていただきたいんですがねえ」

「大丈夫でしょう。シュラール将軍のバリケードですから」

 

 これはお世辞ではない。シュラール技術少将はチーム・セレブレッゼの一員で、銀河最高の工兵と呼ばれたこともある人だ。

 

「今度こそ完璧にやりたいんですよ」

「ヴァンフリートでも完璧でした。あれだけ兵力差があったら、イゼルローンの外壁だって壊れます」

 

 俺は必死になってなだめる。シュラール技術少将はヴァンフリート四=二基地の工事責任者を務め、基地攻防戦では防御工事を指揮した。完璧な工事ができなかったせいで負けたと悔やみ続けているのだ。

 

「ヴァンフリートの失敗を繰り返してはいかんのです」

「…………」

 

 何も言えなかった。俺もシュラール技術少将もヴァンフリートの生き残りだが、その後の人生は対照的だった。光の当たる道を歩いた者の慰めなど白々しいだけだ。

 

「あなたに声をかけていただいた時、生き伸びた理由がわかりました。この戦いのために生かされたのです」

 

 シュラール技術少将の表情は晴れ晴れとしていた。探し物を見つけたかのようだった。

 

「絶対に勝ちますよ」

 

 俺は力強く言い切った。シュラール少将がどのような心情を抱き、何を見付けたのかはわかったが、それは口にしない。

 

 ボーナム総合防災センターに戻り、司令室に入った。部隊を率いている人はみんな前線に出ていき、幕僚・顧問・オペレーターなどが残っている。

 

「参謀長代理、パンはあるか?」

「ありますよ」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長代理はポケットから潰れたポテトサンドを取り出した。

 

「ポテトサンドか。幸先がいいな」

 

 俺はドーソン大将を思い出しながら、ポテトサンドをほおばる。

 

「喜んでいただけて何よりです」

「君の潰れたパンを食べないと、戦ってる気がしないんだ」

「妹さんもそうおっしゃってました」

 

 チュン・ウー・チェン参謀長代理が左斜め前をちらりと見た。妹が潰れたバターロールを両手で持って食べている。

 

「あいつは食べ物だったら何でもいいんだ。食い意地が汚いから」

「あなたと同じじゃないですか」

「一緒にしないでくれ」

 

 俺が不満顔をすると、司令室に笑い声が響いた。アラルコン中将、ホワン議員、アブダラ副参謀長、ベッカー情報部長らが口を開けて笑う。コレット中佐、メッサースミス中佐らは控えめに微笑む。イレーシュ後方部長は子供を見るような優しい目だ。ハラボフ少佐は無表情を崩さない。レベロ議員はいつもの神経質な表情だ。チュン・ウー・チェン参謀長代理はのほほんとしている。妹は潰れていないサンドイッチに手を伸ばした。

 

 警報が笑い声を中断させた。スクリーンに敵兵の姿が映る。

 

「サウス・セブンティーンのグラナダ義勇戦士団です! バリケードを強行突破されました!」

「こちら、ノースウェスト・ファイブのESS第三大隊! 大量の催涙弾が飛来しています!」

「イーストエンド・ナインのカール・パルムグレン連隊より報告! マーカットビルが占拠されました!」

 

 一一月九日四時一一分、早朝の静けさを光と音の洪水が破壊した。装甲服を装備した歩兵が怒涛のように押し寄せる。戦闘車両がまっしぐらに突き進む。催涙弾が雨のように降り注ぐ。上空をヘリと航空機が飛び回る。再建会議の総攻撃が始まった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。