幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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神器の正体

 

「ぅ……ん……?」

 

俺が目を覚ましたのは見知らぬ部屋などではなく、自分の部屋だった。

 

見慣れた風景ではあるが、一つ違うとすれば、俺の隣にはイッセーがベッドに突っ伏して寝ているという事くらいだ。季節的にも布団などなくても大丈夫なのが幸いだ。イッセーに風邪を引かれでは困るからな。

 

時刻は十一時半。完全に遅刻だ。俺とイッセーの皆勤がぁぁぁぁ…………と思っていると、机の上に置き手紙があるのを見つけ、イッセーを起こさないようにベッドから降りるとそれを手に取る。書いたのはリアス部長らしい。

 

『おはよう。

怪我などは一応治しておいたのだけれど、多分貴女が目を覚ました頃には既に学校が始まっているでしょうから、私達が誤魔化しておいてあげるわ。だから皆勤はまだ続いているので嘆かないように。あの後の事について詳しく話を聞きたいから、出来れば今日の深夜寄ってくれると助かるわ。後、貴女を家まで運んだのはイッセーだからお礼を言っておくといいわ』

 

おおっ!流石は我らがリアス部長だ!悪魔パワーマジパネェ!

 

それはそうと今俺は制服ではなくパジャマなのだが、この手紙を読んでみるに家に俺を運んだのはイッセーだ。ということは俺を着替えさせたのはイッセーという事に…………流石にないか。多分、リアス部長達のうち誰かが着替えさせてくれたんだろう。怪我の方は全く痛くないってことは治してくれたのはアーシアか?本当に便利だな。ほら、傷跡一つ残さず綺麗さっぱり無くなっ「あ……れ?智代?」て………

 

「「……………」」

 

俺とイッセーは無言で見つめあったまま、固まっていた。

 

何故そんな事になったのかというと、俺は昨晩レイナーレの光の槍に太腿を貫かれたわけだが、それはかなり股関節に近いところだったので確認する為には裾を捲る程度では見えない訳で、俺はそれを見ようとして普通にパジャマのズボンを少しだけ下ろしている訳で、となるとまあ下着が見えるよな普通。ビバ、ラッキースケベ。

 

「ご、ごごごご、ごめん!」

 

「ああ、気にするな。事故だ」

 

そう。ただの事故。気にする必要はない。主人公体質だしな。バトルの数=ラッキースケベくらいの割合だと俺は思う。多すぎる気もするが。

 

「あのさ、智代」

 

「どうした?」

 

「智代って貞操観念が緩いっていうか、無防備過ぎないか?」

 

顔を背けたまま、イッセーが呆れたような声で言う。うーん、だってまだ男で過ごしていた時の時間の方が二年多いわけだし、両親に矯正させられたのはあくまで表面上くらいだからなぁ。それに感覚的には男に共感するところの方が多いし、いざ変な輩に襲われても大抵は宙を舞っているしな。

 

「いくら智代が強いって言っても性欲を持て余した男子高校生は野獣みたいなもんだから、もう少しそういう所に気配りをだな」

 

「という事はイッセーも野獣というわけか」

 

「何でそうなる⁉︎……………まあ、事実だけど」

 

事実なのかよ。それに事実だとしても心の中で留めておけよ。

 

「それよりもだ」

 

スッとイッセーは立ち上がり、俺の目の前まで歩いてくると少し怒ったような表情で問いかけてきた。

 

「何で逃げなかったんだよ?」

 

「逃げようとはしたぞ。逃げられなかっただけで」

 

「嘘だ。初めから逃げるつもりなんてなかったんだろ」

 

俺の言葉をあっさりと否定する。まるで全部お見通しだと言っているかのように。そしてイッセーの言う通り、逃げようなんて微塵も考えていなかった。初めからレイナーレを殺すつもりであの場所に残った。誰にも邪魔されず、あいつを殺す場を設ける為に。

 

「何でそんな無茶な事をしたんだよ」

 

「……ケリをつける為だ。私とあの堕天使のな。それにイッセーや他の者を巻き込むわけにはいかない」

 

「馬鹿、それで智代が大怪我したら何の意味もないだろ」

 

「死ななければ問題はない」

 

「そういう問題じゃねえって。俺は智代に傷ついて欲しくないんだ。だからこれから一人で無茶しないって約束してくれ。その時は俺も一緒だ」

 

「約束はでき「約束だ」……わかった」

 

こういう時のイッセーの気迫にはつい頷いてしまう。まあ、今回は此方に非があるわけだし、どちらにしても今後は俺が巻き込みたくなくてもイッセーの神器がそれを引き寄せるのだから無駄な努力だな。

 

「わかってくれたなら、それでいい………………無事で良かった……っ!」

 

ぐいっと俺の身体を引き寄せるとそう呟きながら強く抱き締めてくるイッセー。突然の行動に俺は少しの間呆然としていたが、すぐに抱き締めかえした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜。俺は置き手紙に書かれていた通り、イッセーと共に部室にいた。

 

俺たちがついた頃には既に眷属全員が集まっており、更に駒王学園の制服に身を包んだアーシア・アルジェントがいた。

 

「こんばんは、智代。怪我の具合はどうかしら?」

 

「はい、完治しています」

 

「そう。やはりこの子の治癒能力は無視出来ないわね。いち堕天使が上に黙って欲するのも頷けるわ」

 

リアス部長が頷きながらそう答える。あれ?何でリアス部長はその事を知ってるんだ?まさかあの時、あの場所にいたわけないよな?

 

「あの堕天使達の目的をリアス部長は知っていたんですか?」

 

「知っていたわけでは無いわ。貴女をこの学園まで運んだ何者かの書いた手紙に書かれていたの。要約すると『今回はいち堕天使が目先の欲に眩んで暴走した結果で其方に非はない。だけどアーシア・アルジェントの身柄は其方に預かって欲しい』という具合ね。おそらく彼女の治癒の力がまた今回のような争いの火種になりかねないから私達に預けたというところかしら。ある意味妥当な判断ね」

 

「私を誰かがこの学園まで運んだのですか?リアス部長たち以外の誰かが」

 

「おそらくだけれどね。貴女の帰りが遅いからって、イッセーがここを飛び出した時にちょうど校門で壁に寄りかかって気を失っている貴女と人影を見たと言っていたわ。ねえ、イッセー」

 

「はい。どんな奴かはわかりませんでしたけど確かに見ました」

 

となると俺はそいつのお蔭でこうして生きている訳か。いや、流石にあの怪我で死ぬとは限らないが、五体満足かどうかはわからない。何せ太腿に風穴を開けられてたんだからな。

 

「その者の事について後にしておきましょう。いずれ相見えるでしょうから。今は私の新しい眷属(・・・・・)アーシア・アルジェントの自己紹介よ」

 

「あ、あ、アーシア・アルジェントです…………此の度、リアス部長の新しい眷属として悪魔に転生する事になりました…………よ、よろしくお願いしますぅ……」

 

言葉を噛みながら、おどおどとした様子でアーシアは頭を下げる。

 

新しい眷属?悪魔に転生した?何でアーシアが?原作と違って死んでないのに。

 

「何故彼女が悪魔に?」

 

「先程話したけれど、彼女は今後争いの種にならないように私達へと預けられた。けれど、今後またその力を他の堕天使や何処からか情報を聞きつけた悪魔にでも狙われたら元も子もない。となると一番安全なのは悪魔に転生して私の眷属になる事。そうすればグレモリーの眷属に手を出そうだなんて輩はそうそう現れないだろうし、堕天使も迂闊に手は出せないわけ。もちろん本人にも選択肢はあげたわ。悪魔に転生せずにある程度の制限を設けた生活を送るか、それとも悪魔に転生して自由な生活を送るかのどちらかってね」

 

それは選択肢を与えたと言うのだろうか。いや、まあ確かに事実ではあるが、それなら大抵のやつは悪魔に転生するっていうだろう。実際、アーシアが天使側にいた時も堕天使側にいた時も殆ど自由なんてなかっただろうし。まさしく悪魔の囁きというやつだな。

 

「本当に私なんかが皆さんのお役に立てるかわかりませんが、精一杯頑張ります。あ、改めてよろしくお願いします」

 

ぺこりとお辞儀をするアーシアに全員が拍手をすると、アーシアは恥ずかしそうに顔を赤らめる。

 

「さて、自己紹介も終わったところで囁かなパーティを初めましょう………と言いたいのだけれど、イッセー、智代。貴方達の神器についてわかった事があるわ」

 

「俺達の神器について……ですか?」

 

怪訝そうに聞くイッセーにリアス部長は頷く。イッセーはともかく、やっと俺の神器の正体がわかるのか。原作じゃ氷雪系の神器なんて全く描写がなかったからわからなくて困っていたところだ。

 

「先ずはイッセー。私は初めて貴方の神器を見たとき『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』と思っていたの。所有者の力を一定時間倍にするごく有り触れた神器………けれど、それじゃあ辻褄が合わないの」

 

「何がですか?」

 

「転生する時に貴方に使用した駒の消費量よ。人間を悪魔に転生させるとき、『悪魔の駒』を用いるのだけれど、その時の転生者の能力次第で駒を通常よりも多く消費しなくてはいけなくなるの。チェスの世界でもこういう格言があるわ。女王の価値は兵士九個分。戦車の数は五個分。騎士と僧侶の価値は兵士三個分。そんな風に価値基準があるのだけれど、悪魔の駒においてもそれは同様。転生者においてもこれに似たような現象が適用されるの。騎士の駒二つ使わないと転生させられないものや戦車の駒二つを消費しないといけないものもいる。それは駒との相性もあるのだけれど、二つ以上の異なる駒の役割は与えられないから、駒の使い方は慎重になるのよ。一度消費したら、二度と悪魔に駒をもたせてはくれないから」

 

「えーと、それって俺が悪魔に転生する時に消費したのは『兵士』一つ消費だけではなかった……って事ですか?」

 

「ええ。貴方を転生させるとき『兵士』の駒を全部使用したのよ。そうしないと貴方を悪魔に転生させる事が出来なかったの」

 

「………マジっすか?つまりあの時『私の兵士は貴方だけ』って言ったのはーーー」

 

「兵士の駒を貴方に八つ使用したから他に転生させられる者はいないからよ。だけど、神器を持っていること以外、ごくありふれた一般人である貴方がありふれた神器の『龍の手』じゃあ八つも駒は使わない。そうなると考えられる神器は一つ。一時的にとはいえ、魔王や神すらも超える力を得られるという至高の神器と呼ばれる『神滅具』の一つーーー『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。持ち主の力を十秒ごとに倍にしていく規格外も規格外のものよ」

 

「そんな反則級のものがこのイマイチパッとしない籠手なんすか?」

 

イッセーは赤龍帝の籠手を眺めながら不思議そうな顔をしている。まあ、目覚めて間もないし、一段階目のギアが上がるイベントを俺が叩き壊しちゃったからな。ただの宝玉ついてる籠手にしか見えないよな。

 

「あくまで私の憶測の域を出ないけれど、貴方に兵士の駒を八つ消費した事と堕天使に命を狙われた事を考えれば辻褄は合うわ。それに違ったとしてもイッセーには駒を八つ消費する程の可能性が隠れている訳だから、どちらにしても面白いわ」

 

そういう考え方もあるか。まあイッセーにはこれといって才能は無かったような気がするから、それこそえげつないイレギュラーが起きてない限り、あれは赤龍帝の籠手だ。

 

「次は智代の番ね。言う前に確認しておきたいのだけど、貴女が最初に神器に目覚めたのはいつ?」

 

「六年ほど前です…………だが、それ以降はあの堕天使と出会うまで使えなかった」

 

「大抵の場合は一度目覚めれば使えるのだけど、もしかしたら智代の場合は一度目は一時的に解放出来ただけで堕天使の時に完全に目覚めたという事かしら?」

 

俺もその辺りがわからないんだよなぁ…………てっきり制約か何かついているのだとばかり思っていたが、今は使える訳だし、昨日ははぐれ悪魔の時とは比較にならないくらい力が漲ってた。今も使えるかどうかはわからないが、神器って一度覚醒するとその後も使える事が多いし、多分使えるだろう。

 

「昨晩の一戦。痕跡を消すために一度寄ってみたのだけど、興味深いものを見たわ」

 

そう言ってリアス部長はポケットから一枚の写真を取り出すと机の上に置いた。その写真に映っていたのは昨日の一軒家………だったもの。

 

何故『だったもの』なのかというと家の殆どが氷に覆われていたからだ。どう考えても俺の能力が原因だよな……これ。

 

でもおかしい。俺が凍らせたのは堕天使達だけだったはず。家ごと凍らせた覚えはないし、そもそも凍らせた直後にどちらも粉々に砕け散った。

 

「この家の他に異常のある場所は無かったわ。室内に一つ、玄関先に三つの凍りついた堕天使の羽が落ちていただけよ。智代、心当たりはある?」

 

「堕天使達については私が殺った………しかし、家については全く心当たりがない」

 

俺がそう言うとリアス部長は何処か納得したように頷く。

 

「やはりね。そうするとこの家は智代が堕天使達を屠った時の余波(・・)でなったものという事になるわ」

 

「ですが、部長。ちゃんとした神器使いに目覚めて間もない彼女に余波のみで家の大半を凍りつかせられるとなると相当強力な神器という事になります」

 

「ええ。おそらくだけど、彼女に宿っている神器もただの神器ではなく『神滅具』だと踏んでいるわ。そして氷雪系最強の神器。十三ある神滅具の一つーーー『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』」

 

『永遠の氷姫』………だと?

 

原作じゃ名前しか出てこなかった神器だったはず。それにこの神器はラヴィニアっていう魔法少女?の神器じゃなかったか?どうなってんだ?

 

「運命の悪戯かしらね。『神滅具』がこんなにも近しい人間同士に宿るなんて。ある意味私達がこうして出会ったのは必然かもしれないわ」

 

神滅具は惹かれ合う習性があるんだっけか?もしかしたら戦いを呼び寄せる習性なんかも無条件にあったりして。それはドラゴンだけにしてほしいところだ…………まあ、幼馴染みがイッセーの時点でどっちだろうと関係ないが。

 

「変な空気にしてごめんなさいね。どうしても伝えておきたかったから」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

自分の神器の事が分かったというのはありがたい。それが神滅具となると尚更だ。高めていけば人外相手でも十分にやり合える。

 

「さて、必要な話を終えたところでパーティを始めましょう」

 

リアス部長が指を鳴らすとテーブルの上に大きなケーキが現れた。おおっ!無茶苦茶美味しそうだ!

 

「た、偶には皆で集まってこういうのもいいでしょ?あ、新しい部員も出来たことだし、ケーキを作ってみたから、皆で食べましょう」

 

しかも手作りケーキですか!これはこれでご褒美感があっていいな!

 

こうして俺たちは夜遅くに新入部員歓迎パーティを始め、グレモリー眷属に新たに『僧侶(ビショップ)』としてアーシア・アルジェントが加わる事になった。

 

 

 





こんな感じで締めてみました。ちょっと無理矢理だったかな?イッセー活躍の機会をオリが覚醒する形で食べちゃったから変な感じになっちゃいました。

アーシア悪魔化は割と仕方ない感じです。まあ、悪魔は常にギブアンドテイクですので、こういう形も悪くないかなぁとしてみました。

次は時系列の問題で小説8巻の短編です。特別やる必要はないのですが、やっておいて損はないのでやっときます。

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