幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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戦闘校舎のフェニックス
朝の鍛錬とホームステイ


 

ここは何処だ?

 

何故か俺ーーー大神智代は教会にいた。そして周囲には見知った人々。イッセーや俺の両親に松田や元浜。グレモリー眷属までいる。一体どういうことだ?そもそも悪魔なのに教会にいるなんてマズくないか?

 

何がどうなっているのかまるでわからん。一体何のお祝いだ?

 

「大丈夫か、智代?急にそわそわし始めて」

 

隣から聞き覚えのある声がして、横を向くとイッセーがいたーーータキシードを着て。

 

んん?何だ?誰かの結婚式か何かか?…………なんて鈍い事は言わない。だって俺が今着ているのはウェディングドレスなんだから。そしてその隣にはタキシードを着た我が幼馴染み、イッセーがいる。

 

ともすれば答えは一つ。俺とイッセーの結婚式である事に他ならない。

 

ファァァァァァ⁉︎何で!どうして俺とイッセーが結婚するの⁉︎何時からそんな関係になったんだ⁉︎わからない!わからないぞ!

 

何か神父のおっさんがありがたいお言葉を話し始めているが、それどころじゃねえ!表面上は真顔で通せているが、脳内は絶賛パニックだ!

 

だって結婚だぜ!夫婦になるんだぜ⁉︎ということはだな。家庭を築いていくことになるわけだし、やはりイッセーは一人っ子だから子ども必要になってくる訳じゃん?そうなると俺はイッセーと………その……性交渉をしなきゃいけなくなるわけで…………

 

無理だ!別にイッセーの事が嫌いな訳じゃないし、好きな方だが抱く抱かないの話になると別だ!いくら身体は成熟した女だからって精神はまだ男の方が勝ってるから………でも、イッセーなら別に………あぁぁぁ⁉︎訳わかんなくなってきた!

 

「では誓いのキスを」

 

神父のおっさんがそういうとイッセーが此方を向き見つめてくると顔が近づいてきて………

 

「やめろ!」

 

ガバッと起き上がると見慣れた部屋だった。なんだ夢か………

 

「おおおお俺は何もしてねえ!」

 

「ひゃぁっ⁉︎いいいイッセー⁉︎」

 

割と近くにあったイッセーの顔を見て思わず飛びのいてしまった。反射的に手を出さなかったのは我ながら感心するが、それでも悲鳴を上げてしまったのはさっきの夢の所為だ。

 

何であんな夢を見たのだろうか?皆目検討もつかないが、今は俺が起きた時に変なリアクションを取ったせいで驚いてひっくり返ってるイッセーだ。

 

「だ、大丈夫か?イッセー」

 

「お、おう。ミンチにされるかと思った……」

 

ミンチとは失敬な。幾ら何でもそんな事はしない。

 

しかし、まだ陽は昇っていないというのに何故起こしに来たのだろうか…………あ、そういえば。

 

部屋の窓から下を覗くと其処にはジャージ姿のリアス部長がいた。こちらの視線に気づいたのか、碧眼をこちらに向け、苦笑しながら「早くしなさい」と口を動かしていた。

 

すぐに準備しなければ!

 

一気にボタンを外して用意しておいたジャージに着替える。イッセーがいる?気にするな、見られても減るものではない。減るのはイッセーの理性くらいだろうが、この程度なら多分大丈夫だろう。

 

「智代……いくら急いでるとはいえ、俺も男なんだからその辺りはもう少しだな……」

 

「下着姿くらい問題ない。流石に裸は抵抗を覚えるが、急いでいる時はこれくらい構わない。それよりも早くリアス部長の所に行くぞ」

 

「そうだな」

 

ソッコーでジャージに着替え終えた俺はまだ僅かに頬を赤く染めたままのイッセーと共に朝練へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「し、死ぬ……」

 

「イッセー、だらしなく走らないの。後でダッシュ十本追加するわよ」

 

俺とイッセーは互いに呼吸を乱しながら、早朝の住宅街を走り込んでいた。

 

後ろから自転車に乗ったリアス部長がイッセーに檄を飛ばす。相変わらずスパルタな事で。

 

先月のこと、偶然神器本来の力に目覚めたことで辛くも堕天使一行を屠る事に成功した俺だが、相手はたかだか中級の堕天使。確かに人外でこそあるが、下っ端も下っ端であるレイナーレ達程度に苦戦を強いられるようでは今後のストーリーにおいて助っ人にすらなり得ない。神器を、特に神滅具を持っているのに護られてばかりでは話にならないし、もし何かの間違いで俺から神器を抜き取られて敵の手に渡れば、それこそイッセー達の障害になりかねない。そう思って、俺はイッセーの鍛錬に付き合う形でこうして早朝から鍛錬をしているのだが、現時点においては俺の方がイッセーよりもまだ身体能力が高いので、ペースを合わせることも兼ねて、両手足首に魔力で重りのようなものを付けてもらっている。実際には重りというか、重力系等の魔術を両手足首にかけているので付けているというニュアンスは少し違うか。

 

そんな訳でイッセーよりも俺の方が疲労が溜まりやすいのだが、イッセーの方がへばっている。いくら俺よりも軽いとはいえ、重力魔法をかけてもらうのはやめておけといったのに。

 

「ご、ゴール………」

 

そう言って公園に到着するとイッセーは倒れこむ。よほど応えたらしい。

 

「お疲れ様、さて、五分休憩したらダッシュいくわよ」

 

目の前に鬼がいた。いや、悪魔だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「七十ニ……七十三……」

 

「智代はともかく、イッセー。貴方は神器の特性上、基礎が高ければ高いほど意味があるわ。キツイかもしれないけれど、今後の事も考慮して、初めのうちから多少のスパルタは我慢してちょうだい」

 

「こ、これで多少ッスか……?」

 

「ええ。だって智代は貴方よりも重い負荷と数をこなしているわよ?」

 

「比較しないでください………悲しくなります……」

 

泣きながら腕立て伏せとか器用な真似をするな。まあ親のお蔭でこれでも見た目以上に力は強いので、強ちイッセーが言っていることは間違いではない。

 

「ふぅ………終わり」

 

「げぇっ⁉︎もう終わってる⁉︎」

 

「イッセー。後、二十回よ」

 

「ぬおおおおおっ‼︎」

 

最後の力を振り絞ってイッセーが残り二十回を終わらせる。相変わらず根性と底力には目を見張るものがある。

 

「それにしても、そろそろ来てもおかしくはないんだけれど……」

 

「へ?誰か来るんですか?」

 

イッセーがそんな疑問を口に出した直後、「すみませーん」と聞きなれた声が耳に届いた。

 

「イッセーさーん、智代さーん、部長さーん!遅れてすみませーん……はぅっ!」

 

と金髪の少女ーーーアーシアがまたもや何もないところで転んでいた。何時もながら何故両手をバンザイしたまま、顔からずっこけるのだろうか?どう足掻いても先に手をつきそうなものだが。

 

「大丈夫か、アーシア?」

 

転んだアーシアの元へと駆け寄り、手を差し伸べると顔をさすりながら立ち上がる。

 

この子は悪魔になって運動音痴は直らなかったようだ。そういえば原作でも体力は人並み以上にあるのにこういう部分は人並み以下だったな。うぅむ。謎だ。

 

「ア、アーシア?どうしてここに?」

 

「毎朝、イッセーさんと智代さんがここで部長さんとトレーニングをしていると聞きまして、その、私もお二人の力になりたいなーって。今日はお茶くらいしか用意できませんでしたけど」

 

そう言ってアーシアはコップにお茶を淹れると俺と腕立て伏せを終えたイッセー、そしてリアス部長に渡してくれる。

 

ちょうど喉が渇いていたのでとてもありがたい。

 

ふと、リアス部長の方を見てみると、何かを考え込むように思案している。

 

そうか、もうそんな時期か。

 

何の時期かというと、そろそろリアス部長に婚約の話について一悶着あるのだ。その相手というのはレーティングゲームが普及し始めてから一気にその地位を向上した、まあ悪く言えば成り上がりの貴族であるフェニックス家の三男である才児ライザー・フェニックス。

 

これがなんとまた絵に描いたような高飛車で高慢ちきな野郎で、トドメに節操なしの種まき鳥ときたものだ。ただでさえ、自分をリアス・グレモリー個人として見てくれる相手以外は嫌だと言っているのに、其処にそんなホストのような男が相手としてくれば嫌なのは当たり前だ。そんな事で喜ぶのはただの面食いだけだ。

 

まあ、その事についてはおいおいわかることだ。願くば、あいつが原作よりも酷い性格をしていない事を祈ろう。

 

「どうかしたんですか、部長?」

 

イッセーが声をかけると、ハッと我に返ったようにリアス部長は咳払いをした。

 

「いえ、何でもないわ。それより、ちょうどいいわね。今日にしようと思っていたから、このままイッセーのお家に行きましょう。もう荷物が届いている頃だろうし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こ、これは一体」

 

自宅玄関前に積み置かれた段ボール箱を見て、イッセーは片眉を吊り上げていた。

 

ああ、成る程な。結局、ここに来るんだな、アーシア。出来れば俺の家に住む方が良かったのだが、生憎とうちの親は面倒くさい上にフリーダムだから、言いくるめるのが面倒だ。そこはかとなく暗示とか効かなそうな気がする。それに下手すると悪魔事情とかバレかねない。まあ、流れ的には原作通りだし、イッセーは原作よりエロくないし、特に問題はないか。

 

「さあ、イッセー。この段ボールを部屋へ運んでおあげなさい」

 

「へ?運ぶ?これ、誰の荷物ですか?」

 

「アーシアの荷物よ。運んであげるのが紳士的だと思わない?」

 

「ア、アーシアの荷物っ⁉︎」

 

「そうよ、今日からアーシアは貴方の家に住むの」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族会議ーーー。

 

一男子高校生からしてみれば世界の名だたる会議の中で一番重要ともいえる交渉の場だ。

 

そして家族で権力者であるご両親様の一声が決定権を持つ。俺たち子どもはいかに言葉巧みに交渉を続けられるか鍵になるわけだが………今回に限っては俺に打つ手はないような気もする。

 

俺が交渉しても意味がないし、何より権力者たる我が両親は部長の前では何故か縮こまっている。

 

「お父様、お母様、そういう事情でこのアーシア・アルジェントのホームステイをお許し下さいますか?」

 

部長が優雅に朗らかに無茶な注文を両親に突きつけていた。

 

当の二人はアーシアをまじまじと見つめながら、お互い耳打ちをしている。ああ、こんなシーン前にも見たな。確か、智代の両親が海外旅行に行くから智代の事を俺に任せたいと言ってきた時だ。あの時は我が両親が盛大に反対しまくったっけ。結局言いくるめられてたけど、あまりの親の信頼の低さに涙が出そうになったよ。今も俺にチラチラと視線を向けてくる。何故ここまで信用されていないのか。前科なんてないというのに。

 

「アーシア……さんでいいかな?」

 

「はい、イッセーさんのお父様」

 

緊張の面持ちでアーシアが答えると父さんは感無量になっていた。まあ、わからないでもない。俺だって美少女に「お兄ちゃん」とから言われたら理由そっちのけでホームステイを許可する。

 

「お父さん!」

 

母さんが父さんを小突くと、ハッと我に返る。

 

「ゴ、ゴホン!ホームステイするにしても我が家には思春期真っ盛りの息子がいる。ただでさえ、智代ちゃんみたいな美少女の世話を任せられているというのに、キミまでうちに来たら、それこそうちの息子がなにかしでかすかもしれない」

 

「何もしないっての。少しは息子の事を信用してくれよ」

 

「そうは言ってもねぇ………貴方が持っているエッチなDVDのジャンルって全部ーーー」

 

「だあああああっ⁉︎あんたは俺を社会的に抹殺するつもりか⁉︎」

 

「どうした、イッセー?別に思春期の男子ならそういうものの一つや二つ持っていてもおかしくはないだろう」

 

「そうね。寧ろ健康そのものと思うわ」

 

そういう事じゃないんですよ。俺が持ってる秘蔵の物は数が少ない分、あるジャンルに統一されてるんだが…………絶対に智代の前じゃ言えない。マジで公開処刑だ。

 

「それにホームステイなら智代ちゃんの方が適任なんじゃない?同じ女の子同士なんだし」

 

「そうしたいのは山々ですが、私はあまり料理が得意ではありませんし、アーシアも日本に来てまだ日が浅いので、経験が豊富な叔母様にアーシアの日本での生活の補助をしていただきたいのです。それに私はお世辞にも女性らしいとは言えませんから」

 

確かに智代はあまり料理が得意じゃなかったな。だから、よくうちにご飯を食べに来させるし、日によっては俺が作ったりしている。お蔭で料理の腕はそれなりに上達したので、感謝している。

 

智代に任せれば万事解決だと踏んでいた母さんは思わぬ反撃と正論に唸る。あと一押しのようだ。

 

「もし宜しければ、今回のホームステイは花嫁修業も兼ねてーーーというのはどうでしょうか?」

 

『花嫁⁉︎』

 

なんだそれ⁉︎次から次へと予想外の言葉が出てきてびっくりだ。

 

「アーシアはイッセーの事を慕っています。それは私や智代も同じです。イッセーは直情的な部分もありますが、思慮深く、非常な洞察力に長けていますし、彼の校内での人望の高さはその優しさによるものです。私もアーシアもイッセーのそのようなところに惹かれてますわ。特にアーシアは。ねぇ?アーシア」

 

「は、はい!イッセーさんには何時もお世話になっています。この前もーーー」

 

そう言って満面の笑みで俺に助けてもらっている日々を嬉々として語り始めた。

 

死ねる!恥ずかしさで死んじゃうよ、俺!

 

両親はと言うと、口ではああ言いつつも、自分の子どもが褒められているのは親として嬉しいらしく、感心して頷いていた。

 

「アーシアさん。こんな冴えない息子だけど、よろしくお願いできるかい?」

 

「そんな事ありません。学園の皆さんもイッセーさんの事を素敵だと仰ってましたよ」

 

「リアスさん。アーシア・アルジェントさんは是非我が家でお預かりしますよ!」

 

「ありがとうございます。お父様。というわけでイッセー。これからアーシアをよろしくお願いね。アーシア、これからイッセーのお家にご厄介になるのよ。失礼のないように。イッセーの親御さんと仲良くね」

 

「本当によろしいのでしょうか?私なんかが……ご厄介になるなんて……迷惑じゃ……」

 

困惑した様子のアーシアに部長が言う。

 

「日本の文化、生活に慣れるにはその土地の者のお家で習うのが一番。貴方に『部員の中で一緒に住みたいのは誰?』と訪ねたら、イッセーか智代がいいと言ったでしょう?」

 

成る程、そういうことか。アーシアは部長の元で厄介になっていたわけだけど、日本文化に慣れる事も兼ねての俺の家への引越しだったのか。

 

「は、はい。確かにそう言いましたけど……」

 

「いいんだよ、アーシアさん。我が家で日本に慣れなさい。これから永住するかもしれないんだから!」

 

「ほら、お父様もこうおっしゃっているのだから」

 

部長の笑みをみて、困惑していたアーシアもやっと笑顔を見せる。

 

「わかりました、部長さん。なんだか、わからないところもありましたが、イッセーさん、イッセーさんのお父様、お母様、不束者ですが、これからよろしくお願いします」

 

こうして、俺の両親はまんまと懐柔され、アーシアと一つ屋根の下で暮らす事になったのだが、その時部長が「……花嫁、ね」と少しだけ寂しげな表情を浮かべていた事を俺はその時とても気になっていた。

 

「ところでイッセー。先程、叔母様が言っていたDVDのジャンルの事だがーーー」

 

「言わん!絶対に言わんぞ!」

 


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