幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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色々忙しくて投稿が遅れてしまいました。

月曜日からは大学が始まるので投稿速度が落ちますのでご了承下さい。


修行といえば山籠り

「ひーひー……」

 

「イッセー、ガンバだ」

 

「お、おう……俺、頑張るよ……」

 

巨大なリュックサックを背負い、肩にまで荷物をかけたイッセーは本当にひーひー言いながら山を登っていた。俺はというと自分の荷物だけ。リアス部長曰く『女性の貴方が筋肉質になる必要はない』との事。早い話が小猫のような見た目とはかけ離れたパワーを手に入れてもらいたいらしい。俺としても男の時ならいざ知らず、女のままでゴリマッチョは嫌だ。

 

ところで今俺たちは何処にいるのかというと、山にいる。

 

正式名称はない。ただの山だ。

 

別に登山を楽しむとか、ピクニックに来たのだとか、そういうのじゃない。

 

十日後に控えたライザーとのレーティングゲーム。

 

その十日後の為に俺達は山に登り、目的地にあるリアス部長の別荘に向かっているのだ。

 

何故山なのか?と問われればリアス部長曰く「修行をする場所は山と決まっているでしょう?」とやたらとドヤ顔で言われた。まあ、山の中の方が修行効率が良いって何かの漫画で言ってたような気もするし、間違いではないだろう。

 

目的地に到着するまでの間も修行の一環らしく、イッセーと木場は大量の荷物を持って歩いている。そしてその後方にはさらに大量の荷物を持った小猫。イッセーはこの世の終わりみたいな顔で歩いてるのに小猫は涼しい顔をしている。流石は『戦車』としか言いようがない。

 

「イッセー。あともう少しよ、頑張りなさい」

 

やや前方からリアス部長が檄を飛ばす。リアス部長の隣にいるアーシアは心配そうにイッセーを見ていた。

 

「………あの私も手伝いますから」

 

「いいのよ。イッセーは神器の性質上、宿主が強くなるためには多少の無理は必要だもの。それに思ったよりもずっと早いようだから、この分なら到着前に倒れる事は無さそうね……もう少し荷物を増やすべきだったかしら?」

 

おい、そういうのを本人の前で言ってやるなよ。イッセーの表情がさらに酷い事になったじゃん。

 

「部長、山菜を摘んできました。夜の食材にしましょう」

 

そう言いながら涼しい顔で祐斗が通り過ぎていく。自分と同等の荷物を持ちながらも涼しい顔で悠々と足を進める祐斗にイッセーは対抗意識を燃やしたのか、唸りながら歩みを早める………が、その横を痺れを切らした小猫がスッと通り過ぎ行った。

 

「……お先に」

 

「ぐぉぉぉ!負けてたまるかぁぁぁぁ!」

 

イッセーはさらに歩みを早めるが、やはりイッセーと二人には身体能力差があり、目的地の別荘到着までイッセーが抜く事はなかった。

 

「………もう……無理……」

 

そう言いながら荷物を置いて早々にイッセーは床に倒れこむ。

 

「対抗意識を燃やして無理をするからだ。修行が始まる前に満身創痍でどうする」

 

木造の別荘に辿り着いた俺達はリビングに一旦荷物を置き、動きやすい服装に着替えようとしていた。

 

リアス部長達は既に二階に向かったが、俺は無駄に頑張りすぎて、現在床にぐでっているイッセーをつついていた。

 

あまりのグロッキーぶりにモザイクがかかるか、十分くらい放置してたらハエが集りそうだ。或いは両方、もうそれ死んでんじゃね?

 

「僕も着替えてくるけど………」

 

「どうした……木場?」

 

「覗かないでね」

 

青色のジャージを持って一階の浴室へ向かう祐斗は冗談交じりにそう言う。

 

「マジで殺すぞ、この野郎!」

 

疲れて余裕がないはずだというのによほど苛ついたのか、イッセーはふらふらと立ち上がりながら殺意の籠った視線で祐斗を睨んだ。

 

そういえば、最近………というよりも以前から「イッセー×祐斗」というBLカップルが我が校で流行していたな。その理由の一因が木場とイッセーに恋愛事で噂が立たないかららしい。尚、男子のほぼ全員は俺とイッセーが陰で付き合っていると思っているらしい(松田談)。イッセーはそれを知らないらしいが、多分聞かれたら全否定するだろうな。俺もそうするし。

 

イッセーが一休みしている間に俺も着替えに行くとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇レッスン1 祐斗との剣術修行◇

 

水色のジャージに着替えた俺は早速修行に入った。

 

最初の修行は祐斗との剣術修行。

 

俺は基本的に無手で闘うスタイルなのだが、もし何かしら武器や防具を使用しなければ相手に触れられないとなった時、必然的に武器を使わざるを得なくなる。

 

其処で俺は氷で武器を作って闘うスタイルも身に付けようと考えて、剣術修行をする事になった。

 

今は木刀でしているが、本番ではこれが氷の剣で、相手が真剣だ。修行だからといって気を抜くわけにはいかない。

 

カンッと木刀のぶつかり合う音が響き渡る。

 

「智代さん、粗いけどなかなかいい太刀筋だね。もしかして我流かい?」

 

「基本的な事は幼い頃、両親にな。後は日常生活で勝手に鍛えられた」

 

主につっぱってる方々に。こんな所であの鬱陶しい奴等とのやり取りが役に立つとは。人生何があるのかわからないものだ。

 

「ず、随分バイオレンスな日常だね………」

 

俺の返答に祐斗は苦笑していた。まあ、女が送るような日常生活で無い事は確かだしな。とはいえ、それもこれも俺が普通じゃないから仕方のないことだし、結果的には良い方向に働いているから良しとしたい。

 

「取り敢えず、今の私の目標は祐斗。お前に全力を出させることだな」

 

そうすれば戦術の幅も増えるしな。手札が多いに越したことはない。

 

「追いつかれないように頑張らなきゃ………ッ⁉︎」

 

祐斗が其の場を飛び退くと何かが凄い勢いで通過し、「ぐえっ」という蛙が潰されたような声と共に木にぶつかる。まあ、イッセーなんだけどね。

 

「イッセーくん?大丈夫かい?」

 

「うぐぉぉぉ………腹に風穴が空いたかと思った……」

 

心配そうに駆け寄る祐斗。祐斗の心配とは裏腹にイッセーは腹部を摩りながら立ち上がっている。あいつの根性と打たれ強さには感心させられる。原因の大半は俺なのだが、それを抜きにしても十分凄い。

 

それにしても何故イッセーがここに?確か今は小猫と組み手をしているはずだが………

 

「………すみません。お邪魔してしまいました」

 

イッセーの飛んできた方角から姿を現したのは黄色いジャージを着た小猫。所々汚れているが、大したダメージは無さそうだ。となるとやはり『戦車』の防御力を神器抜きのイッセーがぶち抜くというのは無理があるか。

 

「修行は捗っているか?」

 

「……思いの外、イッセー先輩が強かったので、少し本気を出しました」

 

「その結果が今の状態か」

 

予想以上にイッセーが出来るもんだから手加減を止めて、普通に組み手をしに行ったんだな。『戦車』の攻撃力でぶん殴ったらこんなに吹っ飛ぶのか。骨の二、三本は逝きそうだな。いや、マジで。

 

「イッセーと組み手をした感想はどうだ?」

 

「………弱いです…………けど、打たれ強さと勘の良さは凄いです。今の一撃も見えてなかった筈なのに当たる直前に後ろに跳んで威力を殺されました」

 

威力を殺しても腹に風穴が空くかと思うくらいの威力なの⁉︎怖い!ロリっ娘怖すぎィ!

 

と思ったが、そういえばレイナーレも俺が苦しむように加減していた筈なのに尋常じゃない蹴りの威力だったな。石を蹴る感覚で人蹴って骨を折れるとか人外サマサマだよな。

 

「悪い、智代。邪魔したな」

 

俺と小猫が話している間に凄まじい速さで復活したイッセーは何事もなかったかのように普通に歩いていた。もう言葉もない。俺の空中コンボも百くらいまでならダメージ無さそうだ。

 

「イッセー。頑張って強くなろう」

 

「おう。部長をあんな種まき鳥と結婚させられないからな!…………………それに智代をあんな野郎の下僕になんかさせてたまるか」

 

「何か言ったか?」

 

「な、何でもない。それじゃあ修行に戻るから!行こうぜ、小猫ちゃん!」

 

イッセーは逃げるように小猫と共に走り去った。変な奴だ。

 

さて、一時中断したが、俺も祐斗との修行を再開するとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇レッスン2 朱乃先輩との魔力修行◇

 

「そうじゃないのよ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ?」

 

「そうは言われましても、これ結構難しいですよ?」

 

必死の形相で手に魔力を集めようとするイッセーだが、一向に集まっていない。俺とアーシアはその横で手のひらに魔力を集めている。因みにアーシアは緑で俺は青だ。アーシアはともかく、俺は多分神器の影響かもしれないな。

 

「出来ました!」

 

「あらあら、やっぱり、アーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんね」

 

俺よりも一足早くアーシアは手のひらにソフトボール大の魔力の球体を作り出していた。一歩遅れで俺も魔力を集める事に成功したが、野球のボールくらいのサイズで、アーシアより二回り小さい。イッセーは…………まだ迷走しているようで米粒程度の魔力しかない。仕方ない、ここは一つ助言をしてやるか。

 

「イッセー」

 

「智代か。今集中してるから話しかけないで欲しいんだけど……」

 

「お前の場合、手のひらに集めずに指先に集めたらどうだ?レイガンの要領で。そちらの方がイメージが湧きやすいのではないか?」

 

「それなら………」

 

俺の助言通り、早速イッセーは手のひらに集めるのを止めて、指先に魔力を集め始める。するとものの数十秒でスーパーボールサイズの魔力の球体が出来た。うむ、やはり読み通りだ。

 

「うおっ、本当に集まった!………けどやっぱ小さい」

 

それは仕方ないよ、イッセー。だって才能ないもん。とは口が裂けても言えない。そんな事したらイッセーが吐血して倒れるから。才能がないって自分で言うと大して傷つかないけど、他人に言われるとマジで泣きそうになるよね。

 

「イッセーくんも出来たようなので、次はその魔力を炎や水、雷に変化させます。これはイメージから生み出すことも出来ますが、初心者は実際の火や水を魔力で動かす方が上手くいくでしょう」

 

朱乃先輩が水に魔力を送ると水は鋭い棘とかして、ペットボトルを内部から突き破った。

 

「では、早速始めてみましょう」

 

そう言って朱乃さんは俺達三人の前にペットボトルとアルコールランプを置く。試しに水の方に魔力を送り込んでみると…………凍った。

 

あ、あれ?おかしいな。普通に魔力を送り込んだだけなんだけど………気を取り直してアルコールランプの方はどう…………また凍った。おい、おかしいだろ。何で水はともかく火まで凍るんだよ。何がどうなってんだ、コンチクショウ。

 

「どうやら智代ちゃんの魔力性質は『氷』のようですわね」

 

「魔力性質……ですか?」

 

「はい。魔力を扱えるほぼ全ての者には必ず魔力に性質があります。私は『雷』、ライザー氏は『炎』、例外ですがリアス部長は『滅』です。とはいえ、それはあくまで扱うのに長けた性質ですので、扱えないというわけではありません。智代ちゃんは『氷』のようですが…………神器が目覚めた事でより性質が強くなってしまったのかもしれませんね。他の性質を引き出そうにも智代ちゃん自身の性質が強すぎて全てが『氷』の魔力に変換されてしまっています」

 

「つまり、私は氷の魔術以外使えないと?」

 

「そういうことになりますわ」

 

マジですか…………折角手から炎出したり、風を駆使して空を飛んだり、必殺パワーの雷撃使おうとか思ってたのに!俺のロマンが崩れ去ったよ!イッセーですら炎の体積が増えてるってのに!俺は増えるどころか消え去ってるよ!

 

「まだ望みが無いわけではありませんので、もう少し頑張ってみましょう」

 

「………はい」

 

結局、俺は水と火を凍らせる事しか出来なかった。イッセーとアーシアの慰めがより俺の心の傷を抉ったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッスン3 小猫との組み手◇

 

「はぁっ!」

 

「クッ……」

 

俺の回し蹴りにガードをしつつも苦悶の声を上げる小猫だが、そのまま俺の足を掴んで投げ飛ばそうとする。俺はそれを振り払い、距離を置いた。

 

大抵の奴はこれで宙を舞うのだが、普通に受け止められる辺りに悪魔の凄さを感じる。

 

「………えい」

 

お返しとばかりに放たれる拳打の嵐。ジャブのような感覚で打たれているのだが、どれもプロボクサーのストレートよりも重い一撃なのは間違いない。当たったら即ダウンだ。でも手加減してくれているだろうし、当たっても死にはしないと思うが……

 

「………」

 

目が本気なのは大丈夫なのだろうか………手加減してくれてるよな⁉︎してないとマジでお腹に拳大の風穴空くからな⁉︎俺死んじゃうから!

 

とかなんとか思ってたら懐に入られた。防御………する暇はない!

 

小猫の拳がボディーに入る直前に俺は蹴りを左肩に当てて態勢を崩させる事で力を逃した。そのお蔭で拳は当たったが全くダメージはない。殆ど条件反射にも等しい行為だったが、何とか成功したようだ。

 

「………流石に噂されるだけの事はあります。イッセー先輩よりもずっと強いです」

 

「小猫達が相手にしていた者達に比べれば、私のしていた事は本当に子どもの喧嘩だ。褒められる程でもない」

 

「でも強いのは事実です…………かなり場数も踏んでいるみたいですし」

 

「小学生の頃から、同校他校問わず、色々な者から狙われていたからな」

 

喧嘩の数なら負けてねえ的なやつ。果たしてあれを喧嘩と称せるかは甚だ疑問だが、確かに場数は結構踏んできたな。三桁は余裕である。集団戦ですら五十は超える上に酷い時は俺が倒した奴ら全員が徒党を組んでやって来た。あの時は色んな意味で危機を感じた。だってあれだぜ?俺をボコった挙句犯すとか言ってるんだぜ。すごい悪寒がしたのを今でも覚えているが、あの時は俺とイッセーともう一人で総勢千人くらいを全員倒すという偉業?を成し遂げたので、今となっては良い思い出だ。

 

小猫なら一人でも勝てそうだよな。だって攻撃効かなさそうだし、拳一発で十人くらいまとめて倒せそうだし。俺でも三人が限界なのに。

 

「おっと」

 

振るわれた拳を足で受け止めた。おおっ、側からみればかなりかっこいい事してるように見えるな、俺。

 

「………そろそろ本気で行っても良いですか?」

 

本気で来られると俺かなりヤバいんですけど…………いや、本気でもいいか。別に。某赤い彗星さんも言ってた「当たらなければどうという事はない」と。これから俺は相手の攻撃に当たらないように闘わなければいけない以上、ここで練習しておかないとマズいな。

 

「わかった。私も本気で行くぞ」

 

イッセーの基礎体力トレーニング(と言う名のスパルタ地獄)が終わるまでの間、俺と小猫の組み手は続いたが、互いに一撃もクリーンヒットすることは無かった。

 

 

 


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