幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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男子二人の懸念事項

 

 

 

 

今日一日の修行を終え、俺達は夕食を食べていた。

 

テーブルには来る途中木場が取ってきた山菜のおひたし、部長が仕留めてきた(どうやったのか気になる)猪の牡丹肉の生姜焼き、これまた部長が釣ってきた川魚の塩焼き、その他にも各種色とりどりの料理をずらりと並べている。

 

「どれも美味しいですわ」

 

そう言いながら朱乃さんは美味しそうに食べてくれる。他の皆も箸を止めずに食べてくれていた。今日の修行で疲れたためとはいえ、ここまで美味しそうに食べてくれていると作った側としても嬉しい。

 

因みに調理器具は今日持ってきた大量の荷物の中身だった。当然他の物もあったが、八割がた調理器具。どうやってあの中に入っていたのか甚だ疑問だが、今更常識的ツッコミなど無意味だろう。悪魔だもん。

 

「うむ。いつ食べてもイッセーの料理は美味しいな。専業主夫として生きる道もあるレベルだ」

 

「褒めてくれてありがとう。その時は智代にでも婿としてもらってもらうよ………はい、おかわりのご飯」

 

「ありがとう。そうだな、考えておこう」

 

などとついいつも通りのやり取りをしてしまう。

 

実際、どうかはわからないが、俺の家事スキルは確実に一般的な男子高校生よりは高いらしい(智代談)。専業主夫になんてなるつもりはないが、近頃は家事スキルの高い成人男性が多いと聞くし、出来ないより出来る方が良いだろう。

 

「二人共、本当に仲が良いね」

 

「………カップルみたい」

 

「はぅぅ……お二人の仲の良さが羨ましいですぅ……」

 

という木場達の声が聞こえてきた。第三者から見てもそういう風に見えるのか。父さんや母さんにも同じ事を言われたが、親特有のハッピー思考だと思ってたし、今もそうだが智代は怒ることも恥ずかしがる事もしないので俺の方もリアクションに困る。智代が嫁っていうのは嬉しいけど、想像するのが難しいしな。木場辺りが相手なら想像するのも比較的簡単なんだが…………

 

「イッセー」

 

「………あ、すみません。考え事してました」

 

「良いわよ、別に怒ってないから。もう一度聞くけれど、今日一日修行してみてどうだったかしら?」

 

「………俺が一番弱かったです」

 

「そうね。それは確実ね。朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験こそ皆無だけれど実戦経験は豊富。感じさえ掴めれば闘えるわ。貴方とアーシアは別。貴方は対人としてのやり取りこそ私達より豊富だけれどそれはあくまで人間的常識の範疇に収まるレベル。はっきり言ってないに等しいわ。アーシアに関してはそれも無しだから実戦経験はゼロ。それでもアーシアの回復、貴方の赤龍帝の籠手は無視できない。相手もそれは理解しているはず。最低でも逃げられるぐらいの力は欲しい………と言いたいけれど貴方の回避能力と危機察知能力に関しては私達も感心しているわ。言い方は悪いのだけれど私は貴方の実力はもっと下だと思っていたの。けれど、圧倒的でないにしても実力差のある祐斗や小猫の攻撃を全てでないにしても躱せるというのはある程度の実力がある証拠よ、誇っていいわ、イッセー」

 

褒められてるのか?これ。事逃げる事だけに関して言えば俺もそれなりに高いと自負している。こう見えてもバイクに乗った暴走族凡そ二百人から自分の足だけで逃げ切った事もある。威張れた話ではないが、其処だけなら智代よりも遥かに高い…………まあ、智代は全部倒しちゃうから逃げる必要がないだけなんですけどね。瞬きした直後には宙に舞っている。

 

「修行を始める前まではせめて逃げられるぐらいの力はと思っていたのだけれど、私が思っている以上に貴方の実力があるようだから、明日からは今日よりもハードな修行になるから覚悟しておきなさい」

 

今日よりもハード………だと……⁉︎ただでさえ、木場に木刀でどタマかち割られ、小猫ちゃんにはどつかれ、今の筋トレだけでも気を失いそうなのにそれよりキツいとか俺………この合宿が終わった後も生きてるかな?

 

「さて、食事も終わった事だし、お風呂に入りましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

おおっ!温泉!ということは露天風呂か!なかなか趣きがあるな!

 

こういう時、露天風呂といえば覗きが定番なのだろうが…………

 

冗談交じりに部長達を一瞥してみると部長や朱乃さんはともかく小猫ちゃんと智代から凄まじい殺気が飛ばされてきた。なんとなくわかるぞ、小猫ちゃんは『覗いたら殺す』で、智代は『馬鹿な事を考えるな』と目で語っている。我ながら読心術は目を見張るものが痛っ⁉︎

 

上から何か落ちてきた……っていうか、テニスボールくらいの……雹?しかも何か書いてあるし、なになに『冗談でも覗こうとしたら社会的に抹殺する』………はい、わかりました。二度と冗談でも考えたりしません。そういうのは松田と元浜の特権でした。俺には最強の幼馴染みがいるので本気でも冗談でも不可能です。

 

「イッセーくん。覗きは諦めて僕と裸の付き合いをしよう。背中、流すよ」

 

「お、おう。つか、初めから覗くつもりなんてねえよ」

 

本心から覗こうなんて微塵も思ってない。だって覗いたら生き地獄を味わうんだぜ?天国は一瞬、地獄は半永久的なんてハイリスクローリターンじゃねえか。絶対にやらない。さっきのはちょっとした冗談なだけだ。まあ、これを機に木場とも親交を深めるとするか。たった二人の男子だしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜、生き返る〜。露天風呂っていうのはやっぱり良いもんだな」

 

「キツい修行の後だからね。尚更だよ」

 

俺と木場は湯船に浸かりながら修行の疲れを癒していた。互いに背中を流しあって、わかったことがあったが、木場はあまり筋肉質ではないらしい。全体の肉のつき方を俺と比較してみてもパッと見は俺の方がムキムキに見える。しかし筋力で勝っていてもその他の面では負けているのでなんの意味もないし、木場とてその辺りは心得ているはずだ。力勝負に出るような愚行には出ないだろう。

 

………そういえば智代も筋肉質な肉体じゃないのに俺よりも圧倒的に力が強いのは何故だろう?肉のつき方もいいし………ハッ!いかんいかん、前の智代の下着姿が脳裏をよぎった。服越しにすら、そのスタイルの良さがよくわかるのに下着姿だと更に顕著だ。って、また考えてしまった。取り敢えずこれから離れよう。

 

「なあ、木場」

 

「うん?」

 

「智代の事どう思う?」

 

「どう思う?それは女性としてかい?それとも実力の事?」

 

「りょうほ………あ、いや、後者で」

 

思わず両方って言いかけた。

 

幸い、木場には勘付かれていなかったようで顎に手を当てて考える素振りを見せる。

 

「表の人間としては常軌を逸した強さだと思うよ。特殊な環境でいた訳でもなく、毎日修行をしてたわけじゃないのにあの強さには目を見張るね。ただ、裏の人間ならやっぱり彼女もかなり実力は低いかな。当然といえば当然だけど。神器を含めて中級クラスって所じゃないかな?」

 

「それってつまり俺達よりは強いって事か?」

 

俺がそう聞くと木場は首を横にふる。

 

「どうだろうね。相性の問題もあるだろうし、彼女は人間で僕達は悪魔。夜闘えば此方が有利だし、イッセーくんは自分の力が高まるまでの間逃げ続ければ彼女を圧倒的に上回る力が手に入る。僕も神器の特性上、色んな魔剣が創れるから一概にどっちが強いかとは言い切れないね…………けど、もし彼女が悪魔になるとすれば、間違いなく僕達とは一線を画した強さになるだろうね。それこそ部長よりも強いかもしれない」

 

確かに元々スペックの高い智代が悪魔に転生したらまるで勝てる気がしない。ただでさえ、人外スペックを誇る智代が悪魔になる事で補正がかかってしまえば、俺なんて蹴り一発で粉々なんじゃないか?考えただけでも身震いする。

 

「彼女が人間でも悪魔でも、今回のレーティングゲームはイッセーくんと智代さんが勝利の鍵を握る事になるだろうね。『赤龍帝の籠手』に『永遠の氷姫』。君一人でも戦況が大きく左右されるというのにそこにもう一人神滅具の保持者がいるとなるとビギナーズラックもあるかもしれないね」

 

「その言い方、智代が入ってくれてなかったら勝てる見込みはなかったって言ってる風に聞こえるぞ」

 

「まあ、実際そうだしね。彼女もそれを見越して僕達側に参戦してくれたんだと思うよ。其処はイッセーくんも気づいていたんじゃないかい?」

 

「………まあな」

 

散々種まき鳥とかいって馬鹿にはしたが、正直あいつは強いと思う。別にオーラで強さがわかるとかそういうのじゃなくて、単にあいつ自身の慢心さをみればそれが特にわかる。あいつ自身の眷属が部長の眷属である俺たちよりも強いだけではない、慢心できるだけの実力を持っているということだ。それにあいつ『フェニックス』とかグレイフィアさんが言ってた気がするし、フェニックスが俺の知っているものなら相当厄介………っていうか勝てる気がしない。だって死なないもん。勝ち負け以前の問題だ。それとも精神崩壊にでも追い込むか。

 

「今はどうなんだよ、勝率」

 

「僕の個人的な見解は二割、良くて三割って所かな。良くてといってもそれは僕達の作戦全部が上手くいけばって事だけど」

 

実質二割か。一人で其処まで戦況が変わるものなのか、流石としか言いようがない。

 

「でもそれはあくまで今の話。レーティングゲームまでには半々くらいにはなるんじゃないかな」

 

「そんでもって俺たちが勝つ」

 

「うん。その為には死ぬ気で修行しないとね」

 

部長が言っていた。俺の神器である赤龍帝の籠手は宿主のスペックが高ければ高いほど効果が絶大だと。確かに1が2になるよりも2が4になった方が良いに決まっている。

 

「それはそうとイッセーくん。君は智代さんの事をどう思っているんだい?」

 

「藪から棒にどうしたんだよ」

 

「なんとなく訊いてみたくてね」

 

智代の事、ねぇ。

 

「容姿端麗、才色兼備、立てば戦乙女、座れば大和撫子、歩く姿美の女神って所か。幼馴染みとして凄く鼻が高い」

 

「あはは………イッセーくんは彼女の事が大好きなんだね(異性として)」

 

「?当たり前だろ(幼馴染みとして)」

 

何時だって我が幼馴染みは最強なんだ。あんな色んな意味で常軌を逸した幼馴染みは世のどこを探してもいないはずだ。人外の方々は知らないけどな。

 

「智代さんとは何時知り合ったんだい?」

 

「知り合ったのは幼稚園の頃だが……あの時は酷かった」

 

話しかけた開口一番あれだもんな。酷いにも程がある。

 

「?」

 

「いや、何でもない。智代と付き合いが出来たのは幼稚園の頃からで…………」

 

俺はこの後のぼせる一歩手前まで木場に俺と智代の出会いを話し続けたのだが、木場はそれを真剣に聴いてくれたのでとても嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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