幼馴染みは赤龍帝   作:幼馴染み最強伝説

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レーティングゲーム〜序盤戦〜

 

 

 

「良し!」

 

旧校舎の玄関で俺は気合を入れていた。

 

隣には小猫ちゃんと智代。次の作戦は俺達三人で行う事になる………って言っても、俺はあまり表立って闘えないけど。

 

「いい、三人とも。体育館に入ればバトルは避けられないわ。指示通りにお願いね。彼処は重要な場所にはなるわ」

 

玄関まで見送りに来てくれた部長に俺達三人は頷く。

 

目的地は体育館。其処で起こるであろうバトルに勝つこと。動く駒は俺、小猫ちゃん、智代だ。失敗は許されない。俺だけは絶対にリタイアするわけにはいかない。ライザーを倒す前に俺が倒れるわけにはいかない。

 

「では、僕も動きます」

 

「祐斗、例の指示通りに動いてちょうだい」

 

「了解」

 

「アーシアは私と待機。けれど、イッセー達の合図があったら、私と共に前へ出るわ。絶対に貴女はやられちゃダメよ。回復サポート要員に倒れられたら元も子もないわ」

 

「は、はい!」

 

アーシアも緊張しながら元気よく返事をした。

 

アーシアの回復能力は俺達の生命線。あの力があるから、多少の無茶な作戦も可能になる。

 

俺の消耗を抑えつつ、アーシアと部長を護りきるのが勝ちへ持っていくための必要な要素だ。

 

「朱乃は頃合いを見計らって、お願いね」

 

「はい、部長」

 

全員の確認を取ると部長が一歩前に出る。

 

「さて、私の可愛い下僕達。準備はいいかしら?もう引き返せないわ。敵は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。さあ!消しとばしてあげましょう!」

 

『はい!』

 

全員で返事をしたと同時に駆け出した。

 

さあ、後戻りは出来ないぜ、兵藤一誠!まあ、鼻っから後戻りする気なんてないけどな!

 

途中で木場と別れ、小猫ちゃんと智代と共に体育館へ。

 

正面からは新校舎と繋がっているため、其方からは入れない。侵入がバレるからな。

 

体育館の裏側にある裏口から侵入し、演壇の裏側に出る。演壇には幕がかかっていない為、内部が丸見えだ。

 

俺は其処からそろりとコートを見ようとするが…………止めた。

 

「……バレているな」

 

智代がぼそりと呟いた直後、体育館に大声が響いた。

 

「そこにいるのはわかっているわよ、グレモリーの下僕さん達!貴方達がここへ入り込むの監視していたんだから」

 

女の声だ。やっぱりバレてたか。

 

俺達は堂々と壇上に姿を現す。体育館のコートには女性悪魔が四名。

 

チャイナドレスのお姉さんと双子、そして智代に瞬殺された女の子だ。智代が姿を見せた瞬間から敵意は完全に智代に向いていた。

 

確か、棍を使うあの子は『兵士』だった。他のチャイナドレスのお姉さんは『戦車』。双子は両方『兵士』だったはずだ。ここに来る途中、部室で敵の写真つきで説明を受けたからわかる。

 

『兵士』三、『戦車』一か。人数的には一人あっちが多いが、大した問題じゃない!

 

「手筈通りに行こう。私は『兵士』三人、小猫は『戦車』を頼む」

 

「……はい」

 

俺はまだ闘えない。俺が闘うのは絶対にそうせざるを得ない時だけ。それは皆で話し合って決めた事だ。だから俺は静観する。

 

智代と小猫ちゃんは互いに敵と対峙する。『戦車』のお姉さんは八極拳の構えを取り、小猫ちゃんも拳をかまえた。

 

対して智代と対峙している棍使いの子とチェーンソーを取り出した双子は嘗められていると思ったのか、怒りの表情に染まっていた………ん?チェーンソー⁉︎

 

当たったら無事じゃ済まないどころの騒ぎじゃないぞ⁉︎死ぬだろ‼︎まさかとは思うが今まで誰かゲーム中の事故で殺してないだろうな⁉︎

 

「貴女、嘗めてるの?私達相手に一人だなんて!」

 

「安心しろ、実力差を考慮した結果だ。それでも私は神器を使う必要などないが」

 

明らかな挑発。あちらもそれをわかっているだろう。だが、人間に見下されたというのが余程許せなかったのか、まんまと挑発に乗った。

 

「馬鹿にして!」

 

「絶対に解体するんだから!」

 

棍やチェーンソーを構えた女の子達が一斉に智代に仕掛けた。

 

智代は一瞬身を低くしたかと思うと武器を振り上げた女の子達に肉薄し、蹴りを叩き込んだ。一人につききっちり一発だ。蹴り飛ばされた女の子達は吹っ飛んで体育館の壁に叩きつけられた。

 

一瞬かよ…………やっぱり智代の強さは次元が違う。木場が「悪魔に転生すれば部長や朱乃さんより強い」と言ったのがよくわかる。なにせ、神器抜きでもこの強さだ。俺何か比にならないだろう。

 

『確かに。あの娘の強さは今のお前とでは次元が違う。擬似的な禁手の状態なら話は別だが、通常ならおそらく高める前にダウンさせられているだろうさ』

 

言われなくてもわかってる。でも、いつかは智代を護ってやれるくらい強くなるんだ。それが俺の目標だから。

 

「お疲れ………って程でもないか?智代」

 

「ああ。殊の外、自分が強くなっている事に少し驚いている。本当ならまだ闘っている予定だったのだが、まだ動けないようだ」

 

「小猫ちゃんの方ももうすぐ終わりそうだし、そろそろ朱乃さんに連絡しておかないとなーーー朱乃さん?」

 

『こちらは準備出来てますよ、イッセーくん』

 

彼方も準備は万端なようだ。小猫ちゃんも『戦車』のお姉さんとの打撃戦を制し、相手はその場に膝をついていた。数秒でも相手の動きが止まった時点で俺達の作戦は完了だ。

 

俺達はライザーの下僕の子達を尻目にその場から離脱する。

 

「な⁉︎これだけ優勢で逃げる気‼︎ここは重要な拠点の一つなのに!」

 

逃げるさ。でもな、君達のリタイアは確定だぜ?

 

ズドオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンッ‼︎

 

俺達三人が体育館を出てすぐに巨大な雷が体育館を襲い、消し飛ばした。

 

「撃破」

 

朱乃さんの声がして振り返ると、其処にはニコニコ顔の朱乃さんが悪魔の翼を広げて空に浮いていた。右手を天にかざしている。その手はパチパチと電気が迸っていた。

 

今の一撃は朱乃さんが放ったものだ。俺達が体育館に入った時から予め最大級の一撃が放てるようにと力を高めていてくれた。それを先程の合図で放ったんだ。

 

今回の作戦。それは重要なポイントを押さえるのではなく、あえて破壊すること。相手の下僕を巻き込むことを前提に。

 

アナウンスが流れる。

 

『ライザー様の『兵士』三名、『戦車』一名、リタイア!』

 

良し、先ずは四人!まだ数はあちらの方が多いがこの調子ならやれるはずだ。

 

「この調子で頑張ろうぜ、二人とも」

 

「………はい」

 

「私達の役目は戦力を削ぎつつ、イッセーを無傷でライザーのところに送り込む事だからな。それは必ず遂行する………さっ!」

 

ドォォォォン‼︎

 

突然の爆発音。開始早々、順調に進んでいるから油断した。

 

やられた、そう思ったのだが、その爆発は俺達の目前で氷の壁により防がれていた。

 

「獲物を狩る時、獲物が何かをやり遂げた瞬間が一番狩りやすい…………『犠牲(サクリファイス)』か。ゲーム初心者に最も有効な手の一つだな。ライザーの『女王』」

 

智代の見上げた先、其処には翼を広げて空に浮遊している人影が一つ。フードを被り、魔導師の格好をしている女性がいた。智代の言う通り、あれはライザーの『女王』だ。その人は不意打ちで放った一撃が防がれたせいか、眉を顰めていた。

 

「何故私の攻撃がわかったの?」

 

「わかったわけではない。ただ、すべての攻撃を警戒していただけだ」

 

涼しい顔をしてそう返す智代。

 

相変わらずかっこいいな。モテる理由がわかるぜ。

 

ふと智代がアイコンタクトを送ってきた。幼馴染みである俺達だからこそ通じるものだ……………了解。

 

「ブーステッド・ギア、スタンバイ」

 

『Boost‼︎』

 

倍化が始まった。後は十秒待つだけだが、それまで相手が待ってくれる保証はどこにもない。

 

「神滅具、赤龍帝の籠手に永遠の氷姫。勝つのはこちらだけど、いると厄介なのに変わりはないわ。さっさと消えてもらいましょうか」

 

魔導師の腕がこちらに向けられる。俺達が身構えた瞬間、俺達を庇うように間に朱乃さんが入った。

 

「あらあら。貴女のお相手は私がしますわ。ライザー・フェニックスさまの『女王』、ユーベルーナさん。『爆弾王妃(ボム・クイーン)』とお呼びすれば良いのかしら?」

 

「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ、『雷の巫女』さん。貴女と闘ってみたかった」

 

「それはそれは光栄の至りです………ですが」

 

『Boost‼︎』

 

二回目の倍化!これで四倍だ!

 

行くぜ、覚醒して得た赤龍帝の籠手の力を見せてやる!

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)‼︎」

 

『Transfer‼︎』

 

俺は智代の肩に手を置いてそう叫んだ。すると籠手から高められた力が智代に流れ込み、そのオーラを高めさせた。

 

ブーステッド・ギア・ギフト。

 

その効果は籠手で高めた力を他の者、もしくは物に譲渡し、爆発的に向上させられること。俺は四倍まで高めた力を智代に譲渡したんだ。だから今の智代は文字通り、普段の四倍強い。

 

「小猫!」

 

「……行きます」

 

智代は軽くジャンプすると小猫ちゃんの拳の上に乗る。そして小猫ちゃんが拳を振り抜くのと同時に再度跳躍した。その瞬間、俺達の視界から智代が消え、何かが地面に叩きつけられ、クレーターを作っていた。

 

「クッ………バカな。私が反応出来ないなんて」

 

クレーターの中にいたのはライザーの『女王』。そしてその隣には智代が立っていた。多分、さっきの木場すら遅く見えるほどのスピードで接近して蹴ったのだろう。

 

「イッセー!先程の力のお返しだ!」

 

そう言って智代がこちらに何かを投げてきた。受け取って見てみると…………なんだこれ?小瓶?

 

「なっ⁉︎それはフェニックスの涙⁉︎何故貴女がそれを⁉︎」

 

「先程くすねた。これからリタイアするのだから、使わないというのは勿体ないだろう?ーーー朱乃先輩」

 

「終わり、ですわね」

 

先程よりも弱いがけれども強力な一撃がライザーの『女王』に放たれた。

 

『ライザー様の「女王」。リタイア!」

 

レーティングゲーム序盤戦は俺達の大勝利に終わり、ゲームはそろそろ中盤戦に差しかかろうとしていた。


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